■ 下平監督になってからV字回復を果たす。2015年に「クラブの切り札」と言われていた吉田監督を満を持してトップチームの監督に据えた柏レイソルだったが、結局、吉田監督は1年のみで退任。ブラジル出身のメンデス監督を招聘した。大きな決断だったが、開幕3試合で0勝2敗1分けと低迷すると、3節の磐田戦(H)がドローに終わった直後にメンデス監督の退任が決定した。「家族の健康上の問題」と説明されたが「事実上の解任」という見方が一般的である。
後任として下平監督が就任。かなり危うい状況に陥ったが、6節のFC東京戦(H)で今シーズン初勝利を挙げると、ここからJ1のリーグ戦に限定すると5試合連続完封勝利。驚きの「V字回復」を果たした。開幕ダッシュに失敗したことを考えると14勝9敗9分けという成績は一定以上の評価が出来る。緊急登板だったにもかかわらず、チームをしっかりと立て直した下平監督に対する評価は高くて「続投は確実」と言える。
吉田監督時代と比べると縦へ向かう意識がアップしてアグレッシブなチームに生まれ変わったが、攻撃陣ではFWディエゴ・オリヴェイラとFWクリスティアーノとFW伊東純の強力なトライアングルが対戦相手の脅威になった。3人とも強烈な「個の力」を持っている選手で一人で決定機を作ることができる。このタイプの選手は1人でも相当に厄介であるが、そういう選手が3人もいると手の打ちようがなくなる。
ただし、「個の力」に頼ったサッカーではない。柏というと育成年代から一貫してパスサッカーに取り組んでいるチームで、スタメンの半数以上が下部組織出身の選手となるが、チームの根幹はパスサッカーである。個人能力で打開するだけのサッカーではないし、パスワークだけのサッカーでもない。両方がミックスされたバリエーションに飛んだ攻撃が可能になっており、いいときのサッカーは非常に魅力的だった。
一方の守備陣はオフに経験豊富なGK菅野とDF鈴木大が退団したが、柏ユース出身のGK中村航、DF中谷、DF中山雄の3人がレギュラーに定着した。守備の要となるポジションの選手が「21歳と20歳と19歳のトリオになる。」というのはJリーグの20数年の歴史を振り返ってみてもほとんど記憶にない。ちなみに3人とも早生まれの選手となるが、年代別代表の中でも中心となって活躍してきた。(or している。)