鹿島アントラーズ→ 昨シーズンの途中に名門クラブである鹿島の監督に就任した石井監督にとって開幕からチームを指揮するのは初めての経験だったが見事に12勝2敗3分けという好成績を残して2016年の1stステージを制覇した。最後は川崎Fや浦和との優勝争いになったがタイトル未経験の川崎F、終盤に失速する傾向のある浦和を尻目に最後に6連勝と突っ走った。メンバーは大幅に若返っているが伝統の勝負強さは健在だった。
今シーズンの鹿島は開幕前から「優勝候補の一角」と言われていたが春先から安定した戦いを続けた。開幕はアウェイのG大阪戦。新しく完成した吹田スタジアムで行われる最初のJ1の公式戦だったが新鋭のMF鈴木優が決勝ゴールを決めて1対0で勝利。この勝利は若手中心の鹿島にとってはとてつもなく大きな意味を持った。3節はアウェイで仙台、8節はホームで柏に敗れたが、わずか2敗で1stステージを制覇した。
セレーゾ前監督のときに一気にチームが若返ったので経験の少ない選手も増えているがリオ世代のDF植田直の活躍が目立った。昨シーズンは「3番手 or 4番手のCB」という立場だったのでスタメンから外れる試合も多かったが1月に行われたU-23アジア選手権でMVP級の働きを見せて自信をつけてチームに帰ってきた。高さと強さとスピードを生かしたダイナミックなプレーでDF昌子とともに最終ラインを支えた。
日本代表のFW金崎が無事に戻ってきたのは大きかった。昨シーズンは鹿島への期限付き移籍という立場だったので契約期間が終了した時点でポルトガルのポルティモネンセSCに戻った。実際にポルトガル2部の試合に2試合ほど出場しているが2月12日(金)に鹿島への完全移籍での加入が発表された。電撃復帰となったが1stステージは15試合で8ゴール。多くのゴールに絡んでエースにふさわしい活躍を見せた。
他にはブラジル出身のMFカイオの活躍も際立った。石井監督は就任当初から「MFカイオは切り札として起用したい。」という構想を持っており、石井監督になってからはスタメンから外れる試合が増えていた。切り札としてもかなり有効だったが結局は左SHのレギュラーとして起用されるようになった。これだけのポテンシャルを持った選手なのでベンチに座らせておく時間が長くなるのは単純に勿体ないと言えた。
ベテランのMF小笠原とGK曽ヶ端の貢献度の高さも見逃せないところである。鹿島は昨オフに積極的な補強を行ったがボランチはMF永木とMF三竿健、キーパーはGK櫛引が加入。共にポジション争いは激しかったがレギュラーを守り通した。ここ数年で1992年生まれの選手を中心とした若手が台頭してきたのでオリベイラ監督時代の主力のほとんどがポジションを若手に譲ったがこの2人はレギュラーを守り通している。
石井監督の選手起用の巧みさも外せないポイントの1つである。もちろん、選手層が厚いチームなので「ベンチスタートになっている選手はもちろんのこと、ベンチ外になっている選手もレベルが高い。」というところはあると思うが、石井監督は長きに渡ってフィジカルコーチとしてチームを支えてきた指導者なので選手のコンディションを見極める専門家でもある。抜擢された選手の多くが期待に応える活躍を見せた。
残念ながら1stステージはそれほど多くの出場機会は得られなかったがMF永木、MF鈴木優、DF伊東幸、DFブエノあたりはチャンスを与えられたときはスタメン組と比べても遜色のないプレーを見せた。五輪代表としてU-23アジア選手権を戦ったGK櫛引やMF三竿健あたりがほとんど or 全く試合に絡めなかったほど。選手層の厚さはJ1屈指と言える。若手の成長と効果的な補強によって戦力が充実してきた。