■ J1の開幕戦J1の開幕節は3月7日(土)に8試合が行われて、清水と鹿島の試合のみ1日遅れとなる3月8日(日)に開催された。鹿島は久々にACLに出場しているが、初戦はウェスタン・シドニー・ワンダラーズにホームで1対3で敗れて、2節もKリーグのFCソウルにアウェイで0対1で敗れて2連敗スタート。2試合とも内容は悪くなかったが、絶対的なストライカーがいない点が響いている。FCソウル戦(A)から中3日の試合となる。
ホームの清水は「4-2-3-1」。GK櫛引。DF三浦弦、ヤコヴィッチ、平岡、犬飼。MF本田拓、八反田、村田和、大前、竹内涼。FW長沢駿。注目のFWピーター・ウタカとMFミッチェル・デュークはベンチスタートとなった。FWピーター・ウタカはナイジェリア出身で、MFミッチェル・デュークはオーストラリア代表経験がある。最終ラインは右SBがDF三浦弦、左SBがDF犬飼なので、CBタイプが4人並ぶ形となった。
対するアウェイの鹿島は「4-2-3-1」。GK佐藤昭。DF西大伍、植田直、ファン・ソッコ、山本脩。MF柴崎岳、梅鉢、カイオ、土居、金崎。FW高崎。ACLで結果が出ていないことや過密日程の影響もあってメンバーを大きく入れ替えてきたが、何と言ってもGK曽ヶ端がベンチスタートになったことが最大の驚きで、2007年10月の磐田戦から続いていた連続フルタイム出場記録がここで途切れてしまった。
■ 3対1で清水エスパルスが勝利試合はどちらかというとホームの清水ペースで進んでいく。ニューイヤーカップの3戦目の浦和戦からスタメンで起用されているMF村田和のところからサイドを突破してチャンスを作っていく。先制ゴールが生まれたのは前半40分で、高い位置でMF梅鉢からボールを奪うとMF八反田が左サイドのMF大前に絶妙のパスを通す。パスを受けたMF大前が落ち着いて右足で決めてホームの清水が先制に成功する。
後半開始から鹿島はMFカイオを下げてMF遠藤康を投入。すると、後半24分に日本代表のMF柴崎岳の浮き球のパスから裏を取ったMF遠藤康が右足でシュート。これはクリーンヒットしなかったが、GK櫛引がキャッチしきれずにゴールイン。実際にゴールラインを割っていたのか否かはかなり微妙だったが、ゴールは認められた。途中出場のMF遠藤康のゴールで鹿島が1対1の同点に追いついた。
追いつかれた清水は後半29分に右サイドからMF村田和がゴール前に鋭いクロスを入れると、飛び込んできたボランチのMF本田拓が決めて2対1と勝ち越しに成功する。そして後半46分にもカウンターからボールを持ち運んだMF村田和の折り返しをMF大前が豪快にミドルシュートを突き刺して試合を決める3点目のゴールを奪う。結局、エースのMF大前が2ゴールを挙げた清水が3対1で勝利して白星発進となった。
■ 強力なトライアングルと4CBシステム清水はニューイヤーカップの3試合の出来が非常に悪かったのでチーム状態が不安視されていたが、強豪の鹿島を下して好発進となった。ニューイヤーカップの3戦目の浦和戦からスーパーサブ的な存在だったMF村田和をスタメンで起用しているのが、MF村田和をスタメンで起用するようになってからは多くのチャンスが作れている。なかなか攻撃の形を作れずに苦労した清水とは全く別のチームになっている。
MF村田和は浦和戦は1ゴール2アシストで、プレシーズンマッチの甲府戦は1アシストで、この日も2アシストと結果を出し続けている。単独で右サイドを切り裂くことが出来るので、分かりやすいチームの武器になっている。また、出遅れていたFW長沢駿が甲府戦から戻って来たのも大きい。MF村田和とFW長沢駿とMF大前の3人がいればある程度以上のチャンスは作れるので、鹿島相手の3ゴールも驚きではない。
MF村田和をスタメンで起用するようになった点、FW長沢駿が復帰してきた点の2つが大きいが、最終ラインを4人のCBで固めている点もプラスに作用している。もともとSBの層は薄かったが、DF吉田豊が鳥栖に移籍したことでさらに手薄になった。右SBで起用されることもあったMF河井も出遅れていたので、「左右のSBはどうするのか・・・。」という状態だったが、割り切ってDF三浦弦とDF犬飼を起用している。
両者とも「CBとしては攻撃力もある。」と言えるが、やはり、SBというのは専門職なので本職のSBと同じようなプレーをするのは無理である。攻撃参加する回数はあまり多くない。ただ、MF村田和を中心にして前目の選手だけでもチャンスが作れるようになったので、左右のSBが攻撃に参加せずとも大丈夫な状態になっており、後ろの選手は守備に専念できているのでカウンターを食らう機会も少なくなった。
さらに言うと、ニューイヤーカップではセットプレーでやられるケースが多かった。当時はFW長沢駿が不在で、高さのある選手が3・4人ほどしかいないことが多かったが、ピッチ上に本職がCBとなる選手が4人も入っていると空中戦でやられる可能性は低くなる。「4CBシステム」は苦肉の策と言えたが、今のところはうまく機能しており、清水はあらゆる部分がプラスの方向に作用しつつある。流れは非常にいい。
■ サイドハーフでハマりそうなMFミッチェル・デューク3対1で勝利した清水は非常にいいスタートを切ったが、MF村田和のいる右サイドと比べると左サイドはやや弱い。この日が24歳の誕生日だったMF竹内涼が左サイドハーフで起用されたが、なかなか攻撃に絡めなかった。他にもMF石毛、MF澤田、MF高木善、MF枝村、MF河井、FW白崎などがいるので、まずまず駒は豊富と言えるが、いずれの選手も決め手に欠ける。今の時点では一番の悩みどころになっている。
「MF村田和のいる右サイドからはたくさんのクロスが入って来る。左サイドハーフのポジションに『ゴール前に入って来て仕事のできる選手』がいたら・・・。」と思って試合を観ていたが、途中出場でオーストラリア代表経験のあるMFミッチェル・デュークは「こういう選手がいたらなあ・・・。」と思い浮かべたタイプとかなり似通っていた。懸念材料になっていた左サイドハーフでハマりそうな感じがする。
MFミッチェル・デュークは186センチの長身である。本人は「自分はCFなど真ん中でプレーした方が生きるタイプ」と語っていると言うが、Aリーグではウイングの位置でプレーすることも多かったと言う。長身であるにもかかわらず、テクニックがあって、運動量もありそうで、力強さもある。多くのJリーガーが苦手にしそうなタイプの選手なので、この選手が左サイドハーフにおさまったら、かなり面白いことになる。
ニューイヤーカップの1戦目の磐田戦と2戦目の熊本戦の2試合はいいところがほとんど無かったが、ここに来て清水はポジティブ要素がたくさん出てきた。MF村田和とFW長沢駿とMF大前の3人だけでも強力な攻撃陣と言えるが、ここにMFミッチェル・デュークも絡んでくるようなことがあると相手チームは大変である。いい具合にチームが循環しつつあるので、清水は序盤戦の要注意チームと言える。
■ 試合の行方を左右した2つのジャッジ一方の鹿島はACLを含めると公式戦は3連敗となった。まず、ACLの影響でベストメンバーで開幕戦を戦うことが出来なかったのは気の毒である。ホームでFC東京と対戦したG大阪はほぼベストメンバーで、アウェイで神戸と対戦した柏もベストに近いスタメンだったが、浦和と鹿島の2チームはメンバーを大きく入れ替えて戦わざる得なかった。毎年のことではあるが、ACLに出場するチームは大変である。
その中でもGK曽ヶ端を外してGK佐藤昭を先発で起用してきたのは驚きだった。ACLの2試合はDF昌子などCB陣のミスが目立った。GK曽ヶ端に大きな落ち度があったとは思えなかった。キーパーは運動量が少ないポジションなので、過密日程になってもあまり関係ないので、当然のようにGK曽ヶ端がスタメンで起用されると思ったが、まさかのベンチスタート。偉大な記録はここで終止符が打たれた。
長い間、トニーニョ・セレーゾ監督の下でプレーしてきたGK曽ヶ端である。十分な信頼関係を築いているとは思うが、メンタル的なケアは必要である。何も記録がかかっていないのであれば「休養」というのもアリだと思うが、8シーズンに渡って続いている大記録なので、勿体ない気がする。代役のGK佐藤昭の出来は悪くなかったが、3失点と結果は出なかった。次の試合でどちらを起用するのか?は興味深い。
この日は「誤審」とも言える試合の行方を左右する2つの大きなジャッジがあった。1つは後半24分のMF遠藤康のゴールシーンで、清水の右SBのDF三浦弦がライン上でクリアしたように見えたが、鹿島のゴールが認められた。そして、1対2で迎えた後半36分にMF金崎が放ったシュートをライン上で左SBのDF犬飼が体でブロックしたシーンはシュートがDF犬飼の腕付近に当たっており、PKが妥当だったと思う。
ただ、1つ目のシーンに関しては同情の余地がある。メインスタンド側の副審が判断を下すことになるが、副審が立っていたライン上にちょうどMF遠藤康とDF平岡の2人がいたので、その奥で行われたDF三浦弦とMF金崎の攻防を見ることはほぼ無理だった。副審の位置からは完全な視覚になっていた思われる。DF三浦弦がギリギリところでクリアできたように思えたので、清水にとってはアンラッキーだった。
2つ目に関しては主審はいい位置で見ていた。シュートがDF犬飼の腕付近に当たったことは確認できたと思うので、「故意ではない。」と判断したと推測できる。強烈なシュートだったので「避けることはできなかった。故意ではない。」とも言えるが、あれだけ腕を広げていると印象は良くない。「100%誤審」とは言い切れないが、誤審と言われても仕方がないようなジャッジで、ここでは鹿島がアンラッキーだった。
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