■ 劇的な勝利3連敗中のアビスパ福岡が、ホームの博多の森に、独走態勢に入りつつある首位のコンサドーレ札幌を迎えたJ2の第18節。
試合は、前半15分にMF久藤のパスを受けたFWリンコンが反転してからシュートを決めて福岡が先制するが、後半開始2分に、札幌がMF大塚のシュートのこぼれ球をMF西谷が押し込んで同点に追いつくと、さらに、後半44分にFW石井のゴールで2対1と勝ち越す。FW石井の劇的なゴールで、札幌が2対1で勝利した。
■ 辛抱する時間試合のポイントとなったのは、先制点を奪われても、やみくもに同点ゴールを狙いにいかなかったコンサドーレのしたたかな戦い方にあったと思う。
今シーズンは、J1もJ2も、人数をかけて攻撃的に戦おうとするチームが多くなってきているが、その一方で、十分なリスク管理が出来ておらず、攻守のバランスの良くないチームも目立つ。特に、先制点を奪われてから、無理に攻めに行ってバランスを崩して、試合を壊してしまうことがよくある。
早い時間に追いつきたい気持ちはよく理解できるが、追加点を許してしまったら、元も子もない。暑さも考慮に入れて、慌てることなく試合を進めた札幌の冷静さは、光った。
■ 三浦監督のサッカーは好きではないけれど・・・ボクは、三浦監督のサッカーは好きではない。DFラインと中盤にきれいな2ラインを形成してゾーンで守るやり方は、大宮時代も結果は出ているが面白みには欠ける印象をもつ。この試合でも、前半は、FWダビィにお任せのサッカーで、見るべきポイントは少なかった。
とはいっても、第18節終了時点で、2位のベガルタ仙台に勝ち点差「10」をつけてJ1昇格レースを突っ走る好成績は、素直に評価したいと思う。組織的に戦おうとしても、そう簡単にはうまくいかないものであり、結果を残すことは容易ではない。
札幌という大都市にチームを持っていて、これ以上サポーターを待たせるわけにはいかないチーム事情も考慮すると、今は何よりも結果が求められているのだ。
■ フッキの穴を感じさせないダヴィ三浦監督の採用する、<4-4-1-1>のシステムでは、前線の2人に多大な負担がかかるが、今シーズンの札幌では、ファーストトップに入るFWダヴィが、素晴らしいパフォーマンスを見せて、チームを引っ張っている。
体格や風貌はチェルシーのFWドログバを思い起こさせる。身体能力の高さで、相手をなぎ倒すように突進するドリブルは圧巻であり、昨シーズン在籍したFWフッキの穴は埋めようがないかのように思われたが、見事に、フッキを忘れさせるほどの活躍を見せている。FWダビィがいなくなったら、どうするのかという心配がでるほど、FWダヴィへの依存度は高い。
■ 勝てないチーム一方の福岡は、勝てないチームの焦りが、随所に見受けられた。FWリンコンやMF田中、MFアレックスが絡む攻撃は、札幌以上に魅力的ではあるが、勝ち続けている札幌と、負けが続いている福岡の精神的な優劣が、最後の結果に表れてしまった。
J2の長いシーズンでは、チーム状態がよくない時期は必ず訪れる。このとき、いかにして早く元に戻せるか、普段どおりの戦いができるかがポイントである。まだ、巻き返すチャンスは十分残っているので、1試合でも早く立て直さなければならない。
■ ドリブルと積極性が光る田中佑昌五輪代表候補である福岡のFW田中。もともとは、フォワードの選手だが、今シーズンは、右ウイングに近いポジションで起用されている。その田中が、この試合では積極的に仕掛けるドリブルで、多くのチャンスを生み出した。
田中に限らず、この世代の選手は、一日一日、着実に進歩していくので、昨日までの常識は通用しない。同じく五輪世代で、同様に、J2でゴールを重ねている、FW豊田(山形)、FW萬代(仙台)らと切磋琢磨して、存在感を示して欲しい。
■ リンコンはいい選手福岡では、やはり、FWリンコンがいい。足の長さを生かしたポストプレーも魅力的だが、なんと言っても、得点能力の高さが、際立つ。右足、左足、ヘディングと、ストライカーとして、バランスが取れていて、容易にはマークできない選手である。
昨シーズンから、福岡のウイークポイントとなっていたCFのポジションだが、ようやく頼れるエースを手に入れることが出来た。今シーズンの福岡は、間違いなくJ1昇格レースに最後まで、絡んでくることだろう。
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