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■　ここまで4勝2敗2分け

広島ならびに浦和で手腕を発揮したペトロヴィッチ監督を招聘した札幌に対する注目度は相当に高かった。「最も注目を集めているJ1のクラブの1つ」に挙げられたが開幕から3試合勝ちなし。出だしはやや躓いた。雲行きが怪しくなった時期もあったが4節の長崎戦(H)で劇的な形で初勝利を挙げると5節は鬼門だったカシマサッカースタジアムでドロー。6節は名古屋、7節は湘南を相手にいずれもホームで勝利した。

7節終了時点で3勝2敗2分けで勝ち点「11」。6位と好位置に付けている。8節の柏戦(A)も後半終了間際にFW都倉が決勝ゴールを決めて逆転勝利。ここ5試合で4勝1分けと波に乗っている。6節の名古屋戦(H)は3対0の完勝だったがそれ以外の3勝はいずれも後半の終了間際に決勝ゴールが生まれている。きわどい試合が多くなっているが最後まで勝利を目指して戦う中で劇的なゴールがいくつも生まれている。

J1は広島が頭1つ抜け出す形になっているが2位以下は大混戦である。前評判が高かった川崎Fや鹿島や浦和や磐田などがやや出遅れているので札幌は上位進出の大きなチャンスを迎えている。昨シーズンは「とにかくJ1に残留すること」を目標に掲げて戦ったが今シーズンは「もっと上」を狙える立ち位置である。試合を重ねるごとに内容が良くなっているのでビッグシーズンになる可能性が高まっている。

■　シュート数がJ1最多

昇格2年目の札幌がJ1の主役の1つになりつつあるが表1はチームスタッツを比較したものである。2018年は7節終了時点の数字になるが明らかに異なる箇所がいくつもある。まず目に付くのはシュート数である。2017年は１試合平均で11.4本だったが2018年は16.7本。激増しており、16.7本というのはJ1の18クラブの中で最多となる。FW都倉は6位タイの20本、MF三好は9位タイの18本のシュートを放っている。

パス数も377.0本から510.0本に増加しているが最も目立つのはドリブル数である。11.2回から18.1回に激増している。MF三好、MF駒井、MF白井康など「個の力」を持った選手を昨オフは重点的に補強したが、MF三好はドリブルCBP/90分がJ1で4位、MF駒井も13位に位置する。ペトロヴィッチ監督というとパスサッカーがイメージされがちであるが広島時代も、浦和時代も、個で仕掛けられる選手を重要視した。

ボール支配率が45.1%から56.2%になった点も目に付く。2017年はJ1で15番目だったが、今シーズンは2番目。59.8%の横浜FMに次ぐ高い数字を残している。四方田監督時代の高さや強さを持った選手を重要視するパワーサッカーもなかなか面白かったがペトロヴィッチ監督になってからは単純にシュートチャンスや個で仕掛ける場面が激増している。エンターテイメント性の高いサッカーになっている。

表1. チームスタッツの比較 (2017年と2018年)

項目	2017年	2018年
試合数	34	7
得点	1.15	1.43
失点	1.38	1.14
シュート	11.4	16.7
枠内シュート	3.2	4.6
枠内シュート率	28.0%	27.5%
パス	377.0	510.0
クロス	15.9	20.0
直接ＦＫ	12.2	12.3
間接ＦＫ	2.1	0.6
CK獲得本数	4.1	7.0
スローイン	18.6	20.0
ドリブル	11.2	18.1
タックル	19.6	21.1
クリア	28.4	20.4
インターセプト	2.2	3.9
オフサイド	1.8	3.9
警告	1.4	1.4
30ｍライン進入	39.0	46.1
ボール支配率	45.1%	56.2%

■　課題は枠内シュート率の低さ

クロス数も15.9本から20.0本に増加しており、30mライン進入回数は39.0回から46.1回にアップした。さらにはCK獲得本数も4.1回から7.0回に増えている。得意としているセットプレーの機会も増えている。これだけ攻撃に関するあらゆるスタッツが伸びているので当然の話になるが1試合平均の得点数も増えている。8節を終えた時点で4勝2敗2分けというのは決してフロックではない。裏付けのある結果と言える。

どちらかというと守備を重視するサッカーを志向していたチームが攻撃的なサッカーへのモデルチェンジを試みる場合、荒いサッカーになりがちであるが、ここまでのところ、いい具合にバランスが取れている。もともと持っていた札幌の良さである「堅実な守備」はそのまま。ベースが崩れることなく、その上にいい具合にミシャ式のサッカーが浸透しつつある。1試合平均の失点数は1.38から1.14に減っている。

もう1つ注目したいのはインターセプト数になる。2.2回から3.9回に増えている。インターセプト数は4.4回の広島に次いでJ1で2番目。前向きなサッカーが出来ている証と言える。課題を挙げると「枠内シュート率の低さ」になる。27.5%というのはJ1で15番目。J1平均の32.6％を下回っている。シュートチャンスは多く作れており、シュート精度が上がって来ると楽な試合展開になるケースが増えるはずである。