■ 最終戦のマレーシア戦来年1月に行われるU-23アジア選手権の本大会出場を賭けたアジア一次予選の3戦目。2連勝スタートの日本は開催国のマレーシアと対戦した。日本の入ったI組は2試合を終えた時点で日本が2勝で、マレーシアとベトナムが1勝1敗で、マカオは2連敗となっている。先に行われたベトナムとマカオの試合はベトナムが7対0で大勝したのでベトナムは2勝1敗。日本は引き分け以上で文句なしの首位通過が決定する。
日本は「4-2-3-1」。GK牲川。DF室屋、植田直、奈良、安在。MF遠藤航、大島僚、荒野、久保裕、野津田。FW鈴木武蔵。スイスのヤングボーイズでプレーするMF久保裕がトップ下に入って、新潟のFW鈴木武蔵が1トップの位置に入った。ここまで出場機会が無かった磐田のGK牲川や明治大学のDF室屋や札幌のMF荒野らがスタメンで、ベトナム戦で2ゴールを挙げたFC東京のMF中島翔はベンチスタートとなった。
■ 前半41分の久保裕也のゴールが決勝点試合は第2戦のベトナム戦と同じで日本が攻め込みながらもなかなか先制ゴールが奪えないもどかしい展開となる。MF野津田のFKやMF遠藤航のミドルシュートなど決まってもおかしくないシュートはいくつかあったが、マレーシアのキーパーの頑張りもあってゴールを奪えず。しかし、前半41分に左SBのDF安在のクロスからMF久保裕がヘディングシュートを決めて前半終了間際に日本が先制に成功する。
後半も日本がボールを保持して圧倒的に攻め込む展開になる。マレーシアは「5-4-1」あるいは「5-3-2」のようなかなり守備的な布陣を採用。人数をかけて懸命に守ったが、攻撃にかかる枚数は少ないので、日本にとって危ないシーンはほとんどなかった。早く2点目を奪って楽になりたかったが、前半と同様で数多く獲得したセットプレーを生かせず、1対0のままで時計が進んでいく。
マレーシアは勝たないとリオ五輪出場の可能性が消滅する状況だったが、得失点差では日本やベトナムと大差があった。僅差で勝利しても無理な状況だったこともあって、最後まで攻撃的なサッカーにシフトチェンジすることはなかった。結局、前半41分のMF久保裕のゴールが決勝点となって、そのまま1対0で日本が勝利した。日本は3連勝で首位通過決定。2勝1敗のベトナムも最終予選進出が決定した。
■ エース候補の久保裕也が決勝ゴール先の2試合と同様に劣悪なピッチコンディションで、パスを繋ぐサッカーをするのは難しい環境だった。1ゴールだけとやや物足りない結果だったが、第2戦のベトナム戦と比べると内容は良かった。変なミスはほとんどなくて、(相手の攻撃意欲が低かったことも大いに関係しているが、)マレーシアがゴール前に攻め込んできたのはほんの数回程度。1対0ではあったが、危なげない試合だったと言える。
決勝ゴールを決めたのはMF久保裕だった。先のベトナム戦はほとんど良さを出せずに後半早々にベンチに下がったが、手倉森監督はもう一度チャンスを与えた。生き残りを賭けた勝負の試合だったが、期待に応えて大きな仕事をした。今回はトップ下に入ったが、FW鈴木武蔵が最前線にいてその下にMF久保裕がいるとサイドからクロスが上がったときの期待感は増す。狙い通りの形から生まれたゴールだった。
MF南野にも同様のことがいえるが、海外でプレーしている選手は様々な制約がある。今回はMF久保裕は「出場時間はトータルで180分まで」という条件で参加しており、MF南野は「参加するのは1戦目と2戦目のみ」という条件があった。所属クラブでも戦力として計算されていることもあって、Jリーグでプレーしている選手と比べると自由が効かない。来年1月のU-23アジア選手権に呼べるかどうかも微妙である。
絶対的な力を持っているならば、日本サッカー協会ならびに手倉森監督は何としてでも代表に呼ぼうとするだろうが、同レベルの選手が他にもいるのであれば、無理をして呼ぶことはないだろう。ということで、この2人に関しては他の選手よりも代表入りのハードルは高いので、今回の一次予選で力を見せつけなければならなかったが、MF南野も、MF久保裕も、一応、1つゴールを挙げて存在をアピールできた。
MF久保裕のいいところは万能性である。フォワードとしても万能で、ストライカーとしても万能である。いろいろな形からゴールを奪うことが出来るが、なおかつ、ドリブルもできて、パスも出来て、シュートも上手である。ただ、その一方で、「(世界レベルで考えると)突出した武器がない。」とも言える。『武器を作ること』が京都時代からの課題と言えるが、このゴールは非常に良かった。
■ フル代表入りも視野に入ってきたMF遠藤航先のベトナム戦はMF久保裕を含めてほとんどの選手の出来がいまいちだったが、今回の試合は極端に出来の悪い選手はいなかった。ほとんどの選手が少なくとも及第点のプレーはできた。特別良かった選手は見当たらないが、右SBのDF室屋、ボランチのMF遠藤航、左SBのDF安在、左サイドハーフに入ったMF野津田などは「試合に出場した選手の中では出来の良かった選手」のグループに組み込むことができる。
ボランチのMF遠藤航は3試合連続スタメンとなった。今回は中1日の3連戦だったので、「どの選手もスタメン出場するのは2試合まで」だと思っていたので、MF遠藤航を3試合連続でスタメン起用したのはかなりの驚きだった。他に3試合連続スタメンの選手はおらず、手倉森監督が絶大な信頼を寄せていることが分かるが、厳しいコンディションにも関わらず、マレーシア戦でも攻守両面でいいプレーを見せた。
MF遠藤航は所属の湘南では右ストッパーでプレーしている。中盤でプレーする機会はほとんどないので、「ボランチでのプレーに慣れること」が大事である。「ボランチに慣れさせる。」という意図で3試合ともスタメンで起用した可能性も考えられるが、もう1つ、今回の五輪代表は守備型のボランチの人材が不足している。「彼のような役割をこなせる選手が少ない。」というチーム事情も関係しているだろう。
リオ世代はCBの人材が豊富で、ボランチの人材が不足していることもあって、当初から手倉森監督はMF遠藤航をボランチで起用しているが、徐々に中盤でプレーすることに慣れてきてプレーの質も上がってきている。攻撃力も年々向上しているので、(CBとしてはサイズが無いので苦しいが、)ボランチあるいはアンカーのポジションであればフル代表も狙えるところまで来ている。着実に成長している選手の1人と言える。
■ 持ち味を発揮した左右のSB右SBのDF室屋、左SBのDF安在の2人もなかなか良かった。DF室屋は前半はどちらかと言うと抑え気味で、守備の局面で1つ大きなミスを冒してしまったが、後半は持ち味のフリーランニングの多さでチームに貢献した。普段は大学でプレーしているが、身体的な能力が高くて、攻撃的なセンスもまずまず。右SBだけでなく、左SBでもプレーすることができるので、チームにとってはありがたい選手である。
前半41分のMF久保裕の決勝ゴールをアシストした東京VのDF安在は3月11日(水)に行われたU-22ミャンマー戦を含めた4連戦で一番アピールできた選手と言えるのではないか。この世代は左SBはやや人材難で、柏のDF山中が1番手だったが、左利きの左SBは彼くらい。「攻撃力の高い左SBを発掘すること。」が1つのテーマになっていたが、この4試合でDF安在は非常にいいアピールが出来た。
無事に本大会の出場権を獲得した五輪代表の活動はこれで一区切りがついた。次の目標はリオ行きがかかった来年1月のU-23アジア選手権となるが、メンバー入りを賭けたサバイバルが始まる。今回のメンバーの大半は1993年生まれと1994年生まれの選手であるが、1995年生まれや1996年生まれの選手も今後はたくさん候補に挙がってくるだろう。年下の世代の突き上げに期待したいところである。
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