■ 準決勝の相手はイラクU-23アジア選手権の準決勝の1試合目。イランとの死闘を制してベスト4入りを決めた日本は強豪のイラクと対戦した。イラクは2014年1月に行われたU-22アジア選手権を制覇している。このときは「1991年1月1日以降に生まれた選手」が対象なので「1993年1月1日以降に生まれた選手」が対象となる今大会とは異なるが1993年・1994年生まれが中心となる2013年のU-20W杯ではアジア勢最高の4位に輝いている。
日本は「4-2-2-2」。GK櫛引(鹿島)。DF室屋(明治大)、DF植田直(鹿島)、DF奈良(川崎F)、DF山中(柏)。MF遠藤航(浦和)、MF原川(川崎F)、MF南野(ザルツブルク)、MF中島翔(FC東京)。FW鈴木武蔵(新潟)、FW久保裕(ヤングボーイズ)。準々決勝のイラン戦でスタメンだったDF岩波(神戸)、DF亀川(福岡)、MF矢島慎(岡山)、FWオナイウ阿道(千葉)の4人はベンチスタート。FW鈴木武蔵は2戦目のタイ戦以来の出場となる。
■ 後半48分に生まれた劇的な決勝ゴール試合の序盤は静かな展開となるがどちらかというと日本が主導権を握る展開になる。イラクは11番のMFファラジや10番のMFヒスニー・ファイサルなどドリブルに特徴を持った選手が多いがこの日はロングボール主体の攻撃。DF岩波の代わりにスタメンに入ったDF奈良は180センチとCBとしては小柄なのでDF奈良のエリアを狙って執拗にロングボールを蹴ってくるがDF奈良もうまく対応して相手に自由を与えない。
すると前半26分に中盤でMF遠藤航がボールを奪ってカウンター。MF中島翔のスルーパスから左サイドの裏を取ったFW鈴木武蔵が左サイドをスピードに乗ったドリブルで突破するとゴール前のクロスに飛び込んできたFW久保裕は合わせて日本が先制に成功する。FW久保裕は今大会3ゴール目となった。しかし前半43分にイラクがCKを獲得すると最後はMFナティクに頭で押し込まれて1対1の同点に追いつかれる。
後半は追いついたイラクペースとなる。日本は中盤の戦いで劣勢を強いられて守らされる展開になる。イラクは何度もCKを獲得してゴール前のシーンを作るが決定打は出せず。そのまま1対1で後半の終盤を迎えたので「またしても延長戦か・・・。」と思われた後半48分にFW浅野拓とMF南野の関係からチャンスを作ると最後はこぼれ球をボランチのMF原川が左足で豪快に決めて土壇場で2対1と勝ち越しに成功する。
結局、MF原川のゴールが決勝点となって日本が2対1で勝利。U-23アジア選手権の決勝進出を果たすとともにリオ五輪の切符を確保した。日本は1996年のアトランタ五輪から続く連続出場が「6」となった。4年後の2020年は東京五輪なので「7大会連続出場」が確定したことになる。一方のイラクは連覇ならず。3位決定戦に回ることになった。3位決定戦は1月29日(金)、決勝戦は1月30日(土)に行われる予定になっている。
■ 苦しい展開になったが・・・。準々決勝のイラン戦に続いて苦しい展開になった。前半26分にカウンターから先制ゴールを奪ったが前半43分にミスがらみで失点。立ち上がりはあまり勢いがなかったイラクは先制されると元気が出てきたので押し込まれる時間が長かったが手倉森JAPANの持ち味である「粘り強い守備」で1対1のスコアを維持したままで後半の終盤に突入すると後半48分にリオ行きを引き寄せる劇的なゴールが決まった。
ちょっと前にイラクはベンチスタートだった11番のMFファラジを投入した。「イラクのメッシ」の異名を持つほどの攻撃的なセンスを持った選手である。「勝負に出た。」と言えたが、後半48分のMF原川の決勝ゴールの場面では左サイドハーフに入っていたMFファラジが「攻め残り」をしていたので日本の右サイドハーフのMF南野がフリーに近い状態でエリア内に侵入することができた。日本が相手の隙を付いた。
好セーブを見せたGK櫛引、中盤の底でフィルター役になったMF遠藤航、持ち味である強引なドリブルでチャンスを作ったMF南野、先制ゴールのFW久保裕などの活躍も光ったが、ヒーローは何と言ってもMF原川である。正直なところ、それまでのプレーはあまりよくなかった。らしくないミスが多かったので、「MF原川を下げてMF大島僚やMF三竿健を投入してもいいのでは?」と思っていたが最後に大仕事をした。
準々決勝のイラン戦でゴールを決めたMF豊川やMF中島翔にも当てはまるが注目度の高い勝負のかかった試合でゴールを決めることができるとサッカー人生がガラッと変わる。「あの試合でゴールを決めた選手」という形で現役を引退するまでサッカーファンの間で語られることになる。それまでのプレーは及第点以下と言えたが、一発で評価が劇的に変わってしまう。このあたりはサッカーの面白いところである。
■ スタメン抜擢に応えたDF奈良竜樹準々決勝のイラン戦のスタメンから4人を変更したがDF岩波ではなくてDF奈良を起用したのは驚きだった。コンディションの問題なのか、怪我の問題なのか、詳しい事情は分からないが、単に戦術的な理由でのスタメン変更であったならば結構なギャンブルである。安定していたDF岩波とDF植田直のコンビではなくなったので試合前の時点では「一番心配な要素」と言えたが、DF奈良は手倉森監督の抜擢に応えた。
昨シーズンはFC東京でプレーしたがJ1では出場機会なし。今回の代表メンバー23人の中には所属クラブで出場機会に恵まれなかった選手が少なくない。メンバー発表のたびに「J1あるいはJ2でレギュラーとして試合に出続けている選手を選ばずに何でベンチあるいはベンチ外の選手を五輪代表に招集するのか?」と話題になったが能力を信じて手倉森監督が招集し続けてきた選手が今大会は頑張っている。
20歳前後の時期というのは短期間で急激に伸びることがある。浦和のMF関根貴や鳥栖のMF鎌田などが典型例と言えるが彗星のごとく表舞台に登場してくる選手が必ず出てくる。そういったスター候補を五輪代表に呼ばないと周囲は騒がしくなるがこれまでの歴代の五輪代表の歩みを振り返ってみると「新しく出てきた選手を組み込む作業に手間取ってチーム作りが思うように進まなかった。」というパターンが多い。
理想はそういった選手を五輪代表の戦力にしてチーム力を高めることであるが「ある程度のところ」で割り切ることも必要になってくる。手倉森監督はどちらかと言うと選手選考に関しては保守的なタイプである。新戦力を積極的に抜擢するタイプではないが長い時間をかけて信頼関係を築いてきた選手の頑張りが目立つ大会になっているので「今回の手倉森監督の選手選考は当たった。」と言えるだろう。
■ アジア制覇を期待したい。無事に「リオ行きの切符を獲得すること」というノルマを果たしたが1月30日(土)には決勝戦が控えている。対戦相手がカタールになるのか?韓国になるのか?は分からないがせっかく苦労してここまで登りつめたので何としてでもアジアチャンピオンになってもらいたいところである。(改善すべきポイントは少なくないが)北朝鮮・イラン・イラクといった「難敵」を撃破してきた手倉森JAPANは勢いに乗っている。
選手たちはこれまでは「絶対負けられない。」という大きなプレッシャーを背負った状態でプレーしてきたが切符を確保したことで幾分かはプレッシャーから解放されるだろう。過去の5試合はいずれもロングボール中心のリスクレスのサッカーだったがつなげるところはきちんとつなぎたい。CBのDF植田直やDF岩波やDF奈良を含めて「つなぐサッカー」に適した選手は多いので質の部分もこだわってほしい。
欲を言えばきりがないがそれでも最低限の結果を残せたことは高評価に値する。もちろん、リオ五輪の本大会で好成績を残すことも大事であるがその過程も大事である。今回の23人以外にもリオ五輪出場を狙っている選手はたくさんいる。オーバーエイジがあることを考えると「日本人選手であれば誰にでもチャンスがある。」と言える。日本サッカーに携わる人全てを幸せにする勝利になったと言えるだろう。
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