◆ ロシアW杯のシンガポール戦“驚き”の結末だった。
2018W杯アジア2次予選の初戦。
日本代表は、ホームにシンガポールを迎えたこの戦いで引き分けてしまった。
8戦のうちの1つ…と割り切ってしまえば、それほど深刻になることもない。
しかし、“格の違い”で、精神的に優位に立つことが大事な2次予選において、“付け入る隙”を露呈してしまったことは、大失態と言えるだろう。
ショッキングな結果とは言え、これまでの歩みにおいても、同様の試合が散見される。
格下相手の取りこぼし、慢性的な決定力不足…
これは、過去幾度となく指摘され続けてきた日本サッカーの“持病”だ。
それに対する批評も、代わり映えしない。
サイド攻撃の徹底、ダイレクトパスの使用…、
気合が足りないといった精神論も、よく聞かれる。
余談になるが、試合後、笑顔でサポーターに拍手を送った本田が批判されている。
日本サッカー史上、類を見ないミスター・ストイックに、精神論を説ける日本人が、果たして何人いるのだろう?
話を元に戻す。
同じような試合、同じような批判。
螺旋階段のように、似た光景が繰り返される。
果たして、この螺旋に、答えはないのだろうか?
私は、この問題の根っこに、日本人の精神性が絡みついているように思う。
システマチックに構築された品質管理、石橋を叩いて渡る安全志向、徹底した無駄の排除…
日本人は、歯を食いしばって、真面目に課題と向き合い続けることで、世界の信頼を勝ち得てきた。
世界を驚かせた奇跡的な復興の原動力だ。
これは、真面目で悪く言えば堅物な、日本人の精神性に下支えされたものと言える。
一方、この精神性故に、日本人は、融通が利かない、応用力がない、指示待ちなどと揶揄されてきた。
これは、サッカー選手として、致命的な欠点に成り得る。
『攻撃は“驚き”だ!!!』
とは、78W杯を優勝したアルゼンチン代表の監督、セサル・ルイス・メノッティの言葉。
ゴールは、相手を驚かすことから生まれる…ということだろう。
『新しいシステムを生み出した者が勝者だ』と言ったマルセロ・ビエルサの考えにも通底する。
愚直に必然性を積み重ねてもゴールは生まれない。
必要なのは、一瞬の閃きからくる意外性…
シンガポール戦の後だけに、耳が痛いご託宣だ。
一本調子の楔のパス、同じエリアに放り込まれるクロス、横並びになって裏を狙うFW…
確かに、シンガポール戦の日本代表に、意外性は感じられなかった。
得点を生み出すため不可欠なファクターとして、“驚き”を織り込むことに、もっと意識的になるべきだろう。
具体的に言えば、
・自分たちが得意とするものではなく、相手の苦手とするものを選択する意識
・相手の意表を突くため、あえて、前半に偏った戦術をとるといった仕掛け
・場面ごとに相手の心理を読んで駆け引き
こうした意識を持つことが重要になってくる。
長い目で見れば、育成から、意外性や遊び心の重要性を植え付けることも必要だろう。
日本サッカー全体の、早急な意識改革を求めたい。