◆ 06シーズンを振り返る■ 迷走した山本時代ドイツW杯を目前に控えて山本昌邦監督はチームを去った。山本氏はリーグ戦2試合目となる浦和戦で、いきなり4バックシステムを採用するなど、相変わらず、奇抜な采配でチームに混乱をもたらした。W杯の中断前は11位に低迷。優勝候補の一角と目されたチームは下位に沈んだ。
中断明けからアジウソン氏が監督に就任すると、アジウソン監督は積極的に若手を起用し、チームの若返りを進めた。名波はレンタルでセレッソ大阪に移籍し、FW中山がスタメンで出場する機会はほとんどなくなり、服部もレギュラーポジションを失っていった。
若手の成長は目覚しく、新人の犬塚やユース出身の上田がレギュラーを獲得し、菊地もオールマイティーな選手として、チームに不可欠な存在となった。
■ 内容の伴った後半戦の戦いぶりリーグの後半では、浦和に3対2、川崎に4対3、G大阪に3対2と競り勝つなど、3強を相手にしても、対等以上に戦えるチームとなった。後半戦で、前田・太田・福西・ファブリシオ・菊地の5人で中軸が固定されるようになると、非常に質の高いクリエイティブなサッカーを見せた。
ジュビロ伝統のスタイルはパスをつないで崩すサッカーであるが、黄金時代のジュビロのサッカーが、今なお、高く評価されるのは、テクニシャンぞろいでありながら単にテクニックを見せびらかすだけのチームではなかったから。一見すると、技術力だけで崩しているように見えても、見えない部分で、泥臭くスペースメーキングを行う選手が必ず存在した。
オシム流の「走るサッカー」は、「クリエイティブなサッカー」と対極に位置するものと誤解する向きもあるが、高度な守備戦術を誇る現代サッカーでは、足元のパスだけで、相手DFを崩すことは不可能に近い。したがって、クリエイティなサッカーをするためには、必ず、そのベースとして走ることが必要となってくる。黄金時代のジュビロは、「走るサッカー」とは表現されなかったが、運動量も多く、走りの質も高かった。昨シーズンのジュビロも、”走ること”と”テクニック”が高次元でシンクロナイズされていた。
■ 2枚看板の太田と前田アジウソン監督のアクションサッカーを体現するのが、MF太田。アジウソン監督によって、右サイドアタッカーから中央のポジションにコンバートされると、豊富な運動量をベースに圧倒的な活躍を見せた。おそらく、太田は、リーグの中で動き直しの回数が一番多い選手だろう。プレーが途切れることなく、90分間、フルパワーを持続できる体力は、おそろしい。今、リーグで最も価値のある選手かもしれない。
太田と並ぶ2枚看板の前田は、エースストライカーとして完全に独り立ちした。15得点はチームのスコアリングリーダーで、試合終了間際の劇的なゴールが多かった。器用な選手なので、サイドに流れたり中盤に下がったりしたときでも効果的なプレーができるタイプではあるが、アジウソン監督によって、真ん中にとどまるように指示されると、その結果、得点力が増大した。また、得点力だけではなく、ポストプレーヤーとしても秀逸であった。
◆ 07シーズンの展望■ 試合運びの課題最終的には5位に食い込んだが、後半戦の試合内容を見る限り、もっと勝ち点を重ねても良かったが、無駄な失点が多く勝ち点を取りこぼす試合が多かった。
昨シーズンは、試合の後半、半ばに入ると途端にリズムを崩して自滅するケースが何試合も見られた。立ち上がりから、フルパワーで試合に入っていくチームなので後半にスタミナ切れを起こす可能性は他のチームよりも高いチームではあるが、それにしても試合運びのまずさが気になった。若さゆえの経験不足からくる問題なのかもしれないが、リーグ制覇のためには、なんとかして解決しなければならない課題である。
■ 鍵を握るアジウソンの手綱さばきスタメンを予想してみると、中山・西・村井・成岡・船谷がサブに回ることになる。いずれも、フル代表や五輪代表の経験者 or 候補であり、多彩な能力をもつタレントである。金の移籍が濃厚でCBの層の薄さは気になるものの、それ以外のポジションは、タレントが複数、存在する。選手層を考えると、浦和レッズに匹敵するかもしれない。
ブッフバルト監督は、小野や永井、田中達也らをサブに置くことを躊躇せず、チームから不協和音が発生することはなかったが、サブが豪華というのは、プラス材料だけではない。アジウソン監督の手腕が試される。
■ 6人目は誰?前述したように、前田・太田・福西・ファブリシオ・菊地の5人は固定されたが、6人目は最後まで、定まらなかった。6人目の選手を見つけることが、まず、最初の課題となる。
その候補は、FWカレン、MF村井、MF西、MF成岡、MF船谷の5人。
カレンは、05シーズンに13得点を挙げた実績をもつ。前田との2トップの相性は悪くなく、カレンが入れば、前線からの攻撃的な守備も期待できる。
村井は、典型的なサイドアタッカーで、村井が入れば攻撃がワイドに広がるだろう。昨シーズンの途中の大怪我も克服し、今シーズンに期するものがあるだろう。
西は、右サイドのポジションを太田に奪われたが、依然として、高い能力をもつアタッカーである。タイプとしては太田と似ており、2人同時にピッチにたつことで、相手はかなりのプレッシャーを感じることだろう。
成岡は、オールラウンドな素質をもつ中盤の選手で、試合中に隠れていながら、突如、ゴール前に顔を出してゴールに絡むプレーを得意とする。ラストパスを出す能力も備えている。
船谷は、左利きの天才肌の選手。プレーにムラはあるが、その潜在能力は侮りがたく、レギュラーを獲得したとしても不思議はない。
それぞれが色を持った選手なので、どんな組み合わせになっても、面白いだろう。
■ 余力をもつ左サイドの上田ボクは、今シーズン、ジュビロ磐田が優勝すると予想したが、その理由は、昨シーズンのサッカーよりも、もう少し進化しそうな予感があるからである。特に、左サイドバックの上田は、もっと効果的なプレーが出来そうである。
アジウソン監督によって、左サイドバックで起用された上田は、シーズン後半は、完全に主力のひとりとなった。彼は、今の若手の中では、かなり特異な、味方を使う能力にに長けている。上田がボールを持ったとき、2人3人と絡んでチャンスメークを行うシーンがよく見られたが、特に、第3者の使い方に優れたプレーヤーだというイメージをもっている。
遅攻のときは、ほとんどが左サイドの上田の位置から攻撃が始まるのだが、左サイドバックで起点が作れることは、他のチームにはないジュビロのストロングポイントである。上田が、昨シーズン以上のプレーが出来れば、ジュビロの攻撃は、もっと華やかになるだろう。
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