■ 大型補強の浦和レッズJ1は3位でACL出場を果たした浦和が積極的な動きを見せていて、日本代表経験のあるDF森脇(広島)、MF関口(仙台)、FW興梠(鹿島)を獲得し、さらには、ユーティリティーなDF那須(柏)の獲得にも成功した。レギュラークラスでチームを離れた選手はおらず、戦力は格段にアップした。
ここ数年の浦和の補強と言うと、1.5列目や2列目タイプを集め過ぎるなど、ピント外れの補強が多かったが、今オフは、ウイークポイントの1トップにFW興梠を獲得し、さらには、33歳のMF平川とDF坪井の後釜候補として、MF関口とDF森脇という中堅の実力者を加えた。弱点を確実に強化する見事な補強ができたと言える。
同じくACLの出場権を得た仙台は、MFヘベルチ(C大阪)、MF佐々木(G大阪)、DF石川(新潟)、DF和田(東京V)らを獲得した。MFヘベルチとMF佐々木については、試合の流れを変える切り札で、DF石川とDF和田は左SBのレギュラー候補と言えるが、中でも、万能型のDF和田の獲得は大きい。今シーズンは、リーグ戦とACLを並行して戦うことになるが、層を厚くすることに成功したのは間違いない。
その一方で、リーグ王者の広島は、今オフ、即戦力の補強はほとんどなかった。ボランチのMF岡本(鳥栖)を呼び戻したことで、ボランチの層は厚くなったが、それ以外のポジションは、替えの利かない選手が多い。ACLのグループリーグが組み込まれるリーグの序盤(3月・4月・5月)は苦労するかもしれない。
■ FWダヴィを獲得した鹿島その他のチームで大型補強を行ったのは、鹿島である。J2で大きな存在感を示したFWダヴィ(甲府)とMF中村充(京都)の両獲りに成功し、MF野沢(神戸)も呼び戻した。J2得点王のFWダヴィについては、札幌時代や名古屋時代もJ1でトップレベルの結果を残しており、15ゴール程度は期待できる。2012年は決定力不足で苦しんだので、大きな戦力と言えるだろう。
一方、MF中村充は、京都とは全くプレースタイルが異なるチームで新たなチャレンジを始めることになった。ドリブルができて、パスが出せて、得点力も増してきているので、日本代表クラスの実力を秘めたタレントと言えるが、鹿島というチームは、MF中村充のようなタイプを選手を使いこなすのに長けたチームではないので、最初は、苦しむのではないかと考えられる。
FWダヴィが加入したので、「4-2-2-2」のサイドハーフで起用される可能性が高いが、味方選手との距離が遠くなると、彼の良さは発揮されない。FWダヴィも癖のある選手であるが、MF中村充も癖のある選手で、2人とまとめてチームにフィットさせるのは、至難の業である。同ポジションには、MF野沢とMF遠藤もいるので、MF中村充をフィットさせる作業というのは、後回しになるのではないかと思われる。
そのため、今シーズンの始めから、レギュラーポジションを獲得して活躍するのは、難しいと思う。ただ、類希な才能を持ったアタッカーなので、早い時期にチームにフィットして、存在感を発揮するようになれば、2009年以来のリーグ制覇も見えてくる。キーマンの1人であるのは、間違いない。
■ 意欲的な鳥栖5位と大躍進した鳥栖は、オフの補強も意欲的だった。争奪戦になっていたエースのFW豊田の引き留めに成功し、さらには、チャンスメーカーのMF水沼を完全移籍で獲得した。流出の噂もあった攻撃の軸の2人の慰留に成功したことが、何よりも大きい。
さらに、広島に戻ったボランチのMF岡本の代役探しもテーマになっていたが、MF末吉(福岡)の獲得に成功し、補強ポイントの1つだった左SBも、横浜FMで存在感を発揮していたDF金井を獲得した。DFキム・クナンが抜けた穴をDF金正也(G大阪)が埋められるかどうかは、シーズンが始まってみないと分からないが、パーフェクトに近い補強ができたと言える。
MFチョン・ウヨン(磐田)とDF伊野波(神戸)を獲得した磐田の補強も高評価できる。もともと、フォワードと2列目にはタレントがたくさんいたが、最終ラインについては手薄で、チームの弱点になっていたが、DF伊野波が加わったことで、1ランク上となった。
■ FW大久保は新天地で輝くのか?他に目立つのは、FW大久保(神戸)、DF中澤(G大阪)、MF山本真(札幌)らを獲得した川崎F、DF濱田(浦和)、DFキム・クナン(鳥栖)、FW田中達(浦和)を獲得して、さらには、FW川又(岡山)を呼び戻した新潟、アタッカーのMF楠神(川崎F)に加えて、DF椋原(FC東京)とDF新井場(鹿島)とSBの補強を行ったセレッソ大阪である。
風間監督になって2年目を迎える川崎Fで注目されるのは、何と言っても、元日本代表のFW大久保である。30歳を超えて、ここ数年は、怪我も増えており、満足いくパフォーマンスはできていない。C大阪でも、神戸でも、チームの顔としてプレーしてきたが、川崎Fには、FWレナトとMF中村憲がいるので、彼らのサポート役に回ることになるが、新しい役割をこなすことができるか、否か。
最終節で奇跡の残留を果たした新潟は、レギュラーのDF鈴木とDF石川を引き抜かれたが、DF濱田とDFキム・クナンを獲得した。ともに、高さがあって、かつ、攻撃的な能力も高いので、魅力的なCBコンビと言えるが、一方で、経験の豊富な選手ではないので、安定感という意味では、疑問符が付く。
駒が揃った攻撃陣は、FW田中達に注目が集まる。近年は、出場機会に恵まれず、結果を残すことはできていないが、チャンスが与えられたときは、存在感を発揮した。2012年シーズンは得点力不足に泣いた新潟は、FW田中達のような1.5列目的なアタッカーを必要としていたので、タイムリーな補強と言えるが、期待どおりに結果を残すことができるか。
一方、2012年は14位だったC大阪は、伸び盛りのMF楠神を獲得した。新外国人選手が加わる可能性もあるが、これ以上、2列目の補強が無いと仮定すると、MF柿谷、MF南野、MF楠神という魅力的なトライアングルで新シーズンに挑むことになる。MF楠神のスタイルというのは、C大阪のサッカーにマッチしているので、素晴らしい補強と言えるだろう。
■ MF東を獲得したFC東京その他では、MF東(大宮)を獲得したFC東京、FWバレー(アル・アラビ)を獲得した清水が目に付く。FC東京は少数精鋭で、清水もビッグネームはFWバレーくらいなので、補強の目玉と言えるが、MF東はチームメイトの力を引き出す能力に長けており、かつての力を維持できていると仮定すると、FWバレーには、圧倒的な個の力がある。両者とも、攻撃の中心になって活躍できるのではないか。
FW藤田祥(千葉)を獲得して、FW端戸(北九州)とDF田代(町田)を呼び戻した横浜FMも、地味ながら、戦力をアップさせている。3人ともに、2012年のJ2で存在感を発揮したが、高さがあって、運動量があって、献身的なプレーもできるFW藤田祥は、特に、大きな戦力になるのではないか。対して、町田で攻撃的なセンスを伸ばしたDF田代と、J2で14ゴールを挙げたFW端戸の2人は大きく成長してチームに戻ってきた。
最後に優勝候補の一角である名古屋は、今年も新卒選手中心の補強となった。DF牟田(福岡大学)、MF望月(野洲)、DFハーフナー・ニッキ(名古屋U-18)と今年も逸材を加えており、他クラブが羨むような補強ができているが、即戦力クラスは、FW矢野(新潟)とMFヤキモフスキーの2人だけで、FW金崎とFW永井も抜けるので、攻撃の駒が不足している。FW田中輝、MF田鍋ら、若手の台頭が期待される。
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