■ アジア三次予選2014年に開催されるブラジルW杯のアジア三次予選の5試合目。3勝1分けですでに「2位以内」を確定している日本は、アウェーで北朝鮮と対戦。北朝鮮の平壌でA代表が試合を行うのは、1989年6月以来で22年ぶりとなる。過去は「0勝1敗2分け」と平壌では勝利が無い。北朝鮮は1勝3敗の勝ち点「3」で、すでに「3位以下」が決定している。過去の対戦成績は、7勝5敗4分け。FIFAランキングは日本が17位で、北朝鮮は124位となっている。
日本は「4-2-3-1」。GK西川。DF駒野、栗原、今野、伊野波。MF細貝、長谷部、清武、中村憲、岡崎。FW前田。この前のタジキスタン戦からスタメンを入れ替えてきて、連続でスタメンとなったのは、DF駒野、DF今野、MF長谷部、MF中村憲、MF岡崎の5人だけで、スタメンは6人が変更となった。
■ 北朝鮮が「1対0」で逃げ切る前半はホームの北朝鮮ペースで進む。5万人の大観衆の後押しを受けて、勢いよく攻め込んでくる。日本はボールの落ち着きどころを見つけられず、ボールを奪っても、すぐにボールを失う展開となる。北朝鮮の攻撃はロングボールが中心だったが、前線の選手がしっかりと起点となって、そこから厚みのある攻撃を見せる。しっくりこない日本は、前半途中にMF中村憲のポジションを下げて、トリプルボランチ気味の布陣に変更し、ボールを落ち着かせようとするが、劇的な効果は生まれず。前半はシュートはわずかに2本で、見せ場のないままで前半を折り返す。
日本は、後半も同じ11人で試合に入ったが、後半5分に先制ゴールを許す。相手のフリーキックからハイボールに競り負けてゴール前に落とされると、MFパク・ナムチョルがDF駒野にヘディングで競り勝ってゴールを決める。MFパク・ナムチョルは、後ろから競りに来たので、レフェリーによってファールで笛を吹く可能性のあるプレーだったが、ノーファールの判定で北朝鮮の先制ゴールが認められた。
ビハインドとなった日本は、後半17分にMF中村憲を下げてMF内田を投入し、システムを「3-4-3」に変更する。すると、右サイドのMF内田が高い位置で起点になって、少し流れが良くなる。しかし、ゴールは遠く、シュートチャンスも作れない。すると、ザッケローニ監督は、後半31分にFW前田に代えてFWハーフナー・マイクを投入し、今度は、前線に高さを加えてくる。
日本にとって追い風となったのは、後半32分にFWチョン・イルグァンが2枚目のイエローカードを受けて退場になったことで、数的優位になると、ようやく、日本がボールを支配して、ゴール前のシーンを連続して作るようになる。後半43分には、右サイドに流れたFWハーフナー・マイクのパスからFW李忠成がネットを揺らすがオフサイドの判定で同点ならず。結局、最後までゴールを奪うことはできず、0対1で終了。ザッケローニ監督は、17試合目にして初黒星となった。
■ ザッケローニ監督は初黒星メンバーを大きく代えた日本は、完全アウェーの雰囲気に飲まれてしまって、自分たちのサッカーができなかった。9月に行われたホームでの試合は、先制するまでは時間がかかってしまったが、チャンスはたくさん作っていて、日本が圧倒したが、この日は、逆に北朝鮮が前半からチャンスを作リ続けて、日本を圧倒した。
序盤からうまくいかなかったので、ザッケローニ監督も早めに手を打ってきて、前半20分あたりでMF中村憲のポジションを下げて、パス回しを安定させようとしたが、MF中村憲のところにボールが集まらず、逆にFW前田が孤立する結果となったので、あまり効果的ではなかった。もちろん、絶対に勝たないといけない試合であれば、もっと違った交代や変更になったと思うが、最後まで、しっくりこない試合だった。
懸念された人口芝の影響は大きかったと思う。タジキスタンのピッチと比べると、キレイに見えたが、ボールの弾み方が不規則で、変な弾み方をすることが多くて、選手はナーバスになっていたように感じられた。
■ 無敗記録がストップ北朝鮮戦は消化試合ということで、試合前から、どういうメンバーを起用してくるのかが注目されていたが、ザッケローニ監督は、システムは同じで、メンバーを半分ほど入れ替えてきた。『スタートから「3-4-3」を使うべきだ。』という声も大きかったが、個人的には「4-2-3-1」のシステムで、「使える駒」を増やす段階だと思うので、やり方は賛成したいが、コアメンバー不在の影響は大きかった。
これで、ザッケローニ監督は初黒星となった。本人は、「無敗」ということは全く意識していなかっただろうが、一度、「負け」という結果が出ると、周囲はうるさくなってくる。残念ながら、「どうにかして、ザックジャパンを叩いてやろう。」と意気込んでいる人は少なからず存在する。よって、こういう結果に終わると、そういう人たちの声が大きくなる可能性もある。
W杯予選とはいえ、北朝鮮戦は完全な消化試合であり、しかも、MF遠藤、MF香川ら主力を起用していないので、重く受け止める必要のない試合なのだが、そういう人たちにとっては、消化試合であっても、主力が出ていなくても、関係ない。岡田ジャパンのときも、そういう傾向にあったが、テストすべき試合で、テストしにくい雰囲気になるのは、チームにとって好ましいことではない。残念ながら、初黒星を喫したことで、今後は「メディア」とも戦っていく必要がある。
■ 「3-4-3」の使い道は?ザッケローニ監督は、1点ビハインドの後半17分にMF内田を投入してきたが、外れたのはMF中村憲で、これによって「3-4-3」にシステムが変更となった。これまでも何度か試してきたが、完成度が低いままの「3-4-3」なので、ここで使ってくるとは意外だったが、攻撃に関しては微妙な感じで、MF内田はアグレッシブに動いて悪くなかったが、中央で混雑するシーンも目立って、中途半端なままで終わってしまった。
使いどころに困る「3-4-3」であるが、この試合のように、相手の前線に高さのある選手がいて、ロングボールを蹴ってくるようなチームと対戦するときは、使い道もあるのかなと思う。「4-2-3-1」のときは、DF今野とDF栗原の二人が、相手の長身フォワードに対応していたが、こぼれ球を拾うことができず、劣勢になってしまった。しかし、「3-4-3」になると、DF今野がカバーに入るケースが増えるので、状況が良くなると思われる。かなり守備的なサッカーになってしまうが、相手の長身フォワードに対応できないときは、「3-4-3」もありかと思う。
■ スタメン抜擢の選手はアピールできず日本は、タジキスタン戦からスタメンを大きく入れ替えてきたが、代わりに起用された選手は、揃って十分なアピールはできなかった。この試合は、新しい選手だけでなく、ほとんどの選手が低調なパフォーマンスに終わったので、アピールするのは難しい状況だったが、DF栗原も、DF伊野波も、MF細貝も、MF清武も巡ってきたチャンスを生かすことはできなかった。
特に残念なプレーだったのは、左SBに起用されたDF伊野波で、守備力を期待されていたと思われるが、相手の右サイドを自由にし過ぎて、きっちりとサイドをケアすることができなかった。攻撃に関しては、ザッケローニ監督も多くを期待していないはずなので、できなくても仕方がないが、守備はしっかりこなさないと、継続してチャンスを得るのは難しくなる。
DF吉田に代わって起用されたDF栗原も、低調だった。ハイボールに強い選手であるが、相手の長身選手に競り負けるケースが目立ち、決勝ゴールのシーンでも、しっかりと跳ね返すことができなかった。ビルドアップに関しては、どうしてもDF吉田に劣るので、こちらも守備でアピールしたかったが、期待されたプレーはできずに終わった。
あまりいい試合にはならなかったが、収穫と言えるのは、タジキスタン戦では今一つだったMF内田が高い位置に入ってまずまずのプレーを見せたことと、GK西川がアウェーの雰囲気に飲まれず、落ち着いたプレーを見せたことである。特に、GK西川はハイボールもしっかりとキャッチしていて、安心感があった。現状ではGK川島が「絶対的な存在」になっているが、GK西川は、フィード力があって、「攻撃の起点」にもなれるため、GK川島とは違った良さがある。
■ 完全アウェーでの戦い22年ぶりという平壌での戦いとなったが、想像以上の雰囲気だった。君が代のときに、ブーイングで音がかき消されそうになったのは「序の口」で、普通では考えられないようなムードで試合が進んでいった。驚いたのは、試合中のマスゲームで、ハングル文字で書かれていたので、誰にアピールしたかったのかは不明だが、プレー中に文字が浮かび上がってくる演出は、これまで見たことが無かったので、びっくりだった。
サポーターの反応については、マスゲームのことを気にしながら観戦する必要があったので、試合に集中しきれないところもあったと思うが、シュートシーンやファールのシーンでは大きな声が上がっていた。面白かったのは、北朝鮮の選手にイエローカードが出ているシーンでも、歓声が上がっていたことで、ルールを把握できていない人が多かったのでは?と推測するが、確かに統制は取れていた。
したがって、雰囲気はこれまでになかったような感じだったが、意外とレフェリーは落ち着いていて、公平なジャッジだった。これは、前述のように、サッカー観戦に不慣れな人が多かったため、場に合った応援ができず、レフェリーに本当の意味でのプレッシャーをかけられなかったのが理由といえる。余計なお世話かもしれないが、こういうときは、それなりに競技について理解している人をスタジアムに入れるのが定石であり、キャスティングには失敗したように思う。
関連エントリー 2007/12/16
オシムジャパンを殺したのはセルジオ越後か? 2009/06/14
岡田ジャパンを見る目が無駄に厳しすぎるのではないかと思う。 2010/02/12
杉山サンが酷過ぎる 2010/02/18
そもそも日本人で№1の監督は誰なのか?を考える。 2011/10/14
日本代表の第3ボランチは誰だろうか? ~ 推薦したい候補 (6名) → J3+(メルマ) 2011/11/12
vs タジキスタン代表(away) 採点&寸評 → J3+(メルマ) 2011/11/16
vs 北朝鮮(away) いくつかの疑問と考えたこと → J3+(メルマ)
- 関連記事
-
トラックバックURL:https://llabtooflatot.blog.fc2.com/tb.php/2726-f29d3528
入国審査で4時間軟禁「現時点では 分からない」試合2日前になっても、試合球を教え
入国審査で4時間軟禁「現時点では分からない」試合2日前になっても、試合球を教えてもらえない等22年ぶりの平壌の試合で、様々な妨害をされたザックJAPANただ、既に最終予選進出...
| トップページ | 人気ブログランキング | Jリーグブログ村 | 全記事一覧 (2018年-2023年) | お気に入りに追加 |