■ 第25節J1の第25節。9勝12敗3分けで勝ち点「30」の川崎フロンターレと、9勝10敗5分けで勝ち点「32」のヴィッセル神戸が等々力競技場で対戦。川崎Fは、MF中村憲、MF稲本、FW黒津ら怪我人が続出しており、クラブワーストの7連敗中。W杯予選のため中断期間があったので、その間に、うまくリフレッシュできているかがポイントになる。
ホームの川崎Fは「4-2-2-2」。GK杉山。DF田中裕、井川、菊地、田中雄。MF柴崎、田坂、楠神、山瀬功。FWジュニーニョ、矢島。GK相澤がスタメンから外れて、GK杉山がゴールマウスを守る。GK杉山はリーグ戦4試合目のスタメンとなった。
対するアウェーの神戸は「4-2-2-2」。GK徳重。DF近藤、北本、河本、林。MF三原、田中英、朴康造、大久保。FWポポ、吉田。SBのレギュラーのDF石櫃とDF茂木が体調不良で欠場。同志社大出身のルーキーのDF林が左SBで初スタメンとなった。
■ 川崎Fの連敗は止まらず試合はアウェーの神戸ペースで進む。いい距離感でボールを保持して、鋭いカウンターからチャンスを作る。ホームで連敗を止めたい川崎Fも、FWジュニーニョを起点に何度かビッグチャンスを作るも、神戸のGK徳重が好セーブを見せてゴールを許さない。
すると、前半39分に神戸はスローインからFW吉田がうまくDFラインを突破してGKと1対1のチャンスを作ると、切り返してから右足で落ち着いて決めて先制に成功する。FW吉田はリーグ戦は7ゴール目。前半はアウェーの神戸が1対0でリードして折り返す。
先制して楽になった神戸は、後半6分に追加点を挙げる。川崎FのDF菊地の不用意なGKへのバックパスをMF朴康造が奪うと、MF朴康造がゴールに流し込んで2対0とリードを広げる。MF朴康造はリーグ戦4ゴール目。川崎Fは、FW小林、MF登里ら攻撃的なカードを切るも、なかなかいい形の攻撃ができない。すると、後半43分に神戸は途中出場のMFボッティを起点にして、FWポポ→MF大久保とつないで、MF大久保がフリーでヘディングシュートを決めて3対0とリードを広げる。MF大久保はリーグ戦は8ゴール目となった。
結局、試合は3対0で神戸が快勝して8位に浮上。一方の川崎Fは、泥沼の8連敗で12位。降格圏となる16位の甲府も敗れたため、勝ち点は「9」は変わらなかったが、さすがに危ない雰囲気になってきた。
■ ヴィッセルが快勝甲府、浦和、横浜FM、新潟を相手に4連勝し、一気に順位を上げてきた神戸だったが、23節は最下位の福岡を相手に引き分け。さらに24節はホームでガンバ大阪に0対4と完敗するなど、ここ2試合は勝利から遠ざかっていたが、踏ん張りどころの試合で完勝し、勝ち点を「35」まで伸ばした。J1に残留するために必要な勝ち点は「37」と言われているが、あと1勝となって「リーチ」をかけたことになる。
神戸でスタメン出場した選手のほとんどが「及第点以上」といえるパフォーマンスだったので、誰かひとりだけをヒーローとして取り上げるのも難しいが、あえて名前を挙げると、GK徳重のプレーが光った。前半は、川崎Fも何度かDFラインを崩してシュートチャンスを作ったが、GK徳重がいいポジションを取っていて、ゴールを許さなかった。
この完封勝利で、神戸は25試合で32失点となったが、これはリーグでは6番目に少ない失点数である。これについては、フルタイム出場を続けているGK徳重の力によるところは大きい。GK徳重というと、国見高校時代から将来を嘱望されてきた大型GKだったが、プロに進んでからは出番に恵まれずに不遇の時期を過ごしてきたが、昨シーズンから徐々に出場機会を増やしていくと、今シーズンは、ようやくレギュラーポジションを確保した。
187㎝と高さもあるが、ハイボールも、キャッチングも安定感があって、波の少ないGKである。個人的には、J1の中で、もっとも過小評価されている選手の一人ではないかと思う。
■ 両サイドバックが奮闘神戸は、DF石櫃、DF茂木という両SBが欠場となったが、代わりに起用されたDF近藤とDF林の二人が遜色ないプレーを見せた。守備だけでなく、攻撃でも良さを発揮し、途中交代となったが出来は良かった。
右SBで起用されたDF近藤は、妙なキャラクターばかりが注目されるが、右SBとして慣れてきたのか、最初の頃と比べると落ち着きも出てきて、攻撃でも、守備でも、少しずつ進歩してきている。回数はそれほど多くないが、縦に突破するときは迫力があって、一番の武器になっている。
一方、左SBで起用されたDF林はプロ初スタメンだったが、後半15分までプレー。タイミングのいい攻撃参加とビルドアップを見せて、まずまずのプレーを披露した。165cmという身長なので、SBとしても「高さ」の部分では不安を感じるが、DF茂木とは全く違ったタイプのSBとして、今後も出番は増えていくだろう。チームとしても、DF林の左SB起用に目途がつくと、DF茂木をいろいろなポジションで使えるようになるので、幅が広がっていく。
■ 川崎Fはセットプレーを生かせず対する川崎Fは、これで8連敗。W杯予選のため、リーグ戦は中断されていたので、この期間に気持ちを切り替えることができていればよかったが、悪い流れは変わっていなかった。これまでの7連敗は、勝敗がどちらに転んでもおかしくない試合展開で、紙一重のところで「黒星」という結果に終わっていたが、この試合は、終始、神戸が自分達のサッカーをしていて「勝てる可能性」は非常に低かった。
観ていて感じるのは、セットプレーで得点の香りがしないことである。神戸も、GK徳重とDF北本とDF河本の3人を除くと、それほど高さのあるチームではないので、もっとセットプレーで可能性のあるシーンを作れていても不思議ではないが、前半・後半とコーナーキックを多く獲得しながら、ほとんど生かせなかった。
キッカーには、MF田坂がいるのある程度、質の高いボールは入ってきたが、ゴール前で競る側の選手に「これといった選手」がいないので、怖さは感じなかった。後半41分になって、左SBのDF田中に代えて184cmのFW棗を投入したが、もう少し早いタイミングでFW棗を入れても面白かったのでは?と感じた。
■ クラブワーストの8連敗ホームでも連敗を止められなかった川崎Fとしては、MF稲本、MF中村憲、DF小宮山という怪我人が戻ってくるのを、待つしかないような状況になってきている。代わりに起用されているMF楠神、MF田坂、DF田中も能力の高い選手なので、大きく見劣りするわけではないが、こういう状況になると、1勝するだけでも大きなパワーが必要になって来ている。彼らでは「荷が重い」ように感じる。
過去を振り返ってみても、川崎Fというチームは、最初にJ1に昇格したときはインパクトを残せずにすぐに降格となったが、2005年にJ1に再昇格してからは、これ以上ないくらい順調なJ1生活を送ってきている。もちろん、あと少しのところでタイトルを逃すというシーズンが続いているので、悔しい思いをすることも多かったはずだが、それほど、トータルで見ると幸せなことが多かった。
したがって、これだけの落ち込みというのは、クラブの歴史でも初めてといえる。悪い流れを乗り越えたことで、クラブとして成長を遂げたチームも、他にたくさんあるので、このピンチを乗り越えたとき、新しいフロンターレが生まれると思うが、クラブに携わる人にとって、厳しい状況になってきている。
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