■ ホムスタへ 万博競技場でガンバ大阪の勝利を見届けたあと、神戸のホームズスタジアムに向かう。
ホームズスタジアム(通称ホムスタ)は、1970年に神戸市立中央球技場として開場された球戯場で、2002年ワールドカップ開催のために40000人規模の収容能力を有するスタジアムとして改築された近代的なスタジアムである。2002年のワールドカップでは、「ロシア vs チュニジア」、「スウェーデン vs ナイジェリア」、「ブラジル vs ベルギー」の3試合が行われた。
ホムスタは、神戸の繁華街である三ノ宮からは、電車(地下鉄)で15分程度。立地条件としては悪くはない。
■ 好調のヴィッセル ホームのヴィッセル神戸は、開幕戦でFC東京と1対1で引き分けたあと、第2節の川崎F戦は4対1と圧勝。ナビスコカップの初戦でも浦和レッズをアウェーながら、1対0で下している。特に優勝候補といわれた川崎Fを下した試合は圧巻だった。
神戸は<4-4-2>。GK榎本。DF石櫃・北本・柳川・内山。MF金南一・ボッティ・栗原・古賀。FWレアンドロと大久保。日本代表のFW大久保はバーレーンから帰国したばかりであるがスタメン出場。しかしながら、DF河本が怪我のためベンチ外。FW吉田、MF田中、MF朴らがベンチに控える。
対する磐田は第2節のG大阪戦で3対0と圧勝し、今シーズン初勝利を飾った。システムは<3-5-2>。GK川口。DF加賀・大井・茶野。MF河村・上田・駒野・成岡・西。FW萬代とFWジウシーニョの2トップ。FW前田、FWカレン、DF田中を怪我で欠く。
■ ジュビロペースの前半 試合は、立ち上がり直後の時間帯は神戸が攻め込んだが、前半10分以降は、磐田が主導権を握り続ける。2トップとの連携からトップ下のMF西がゴール前に攻め込む形で、2度のビッグチャンスを作る。その2度のチャンスをMF西が決めきれず嫌な感じも漂ったが、前半31分にFW萬代のクロスを神戸のMF金がクリアしきれずにオウンゴール。磐田が先制点を奪う。
前半はそのまま1対0の磐田リードで折り返し。前半に関しては、神戸の出来が悪かったというよりは、磐田の前線からの守備が良過ぎた結果といえる。2トップとMF西が前線から相手のボール保持者に対して積極的にプレッシャーをかけて自由を与えず、苦し紛れのフィードをボランチのMF河村とMF上田が拾って、二次展開するケースが多かった。
■ ボッティの活躍 リードを許した神戸は、後半から左サイドのMF古賀をウイングに近い形に上げる3トップに変更。ボランチのMFボッティも高めのポジションを取って、MF金の1ボランチ気味の布陣に変更した。結果的に、これが大成功した。磐田は3バックのため、前線の3人に対してCBが1対1で対処せざる得ない状況となり、さらにはMFボッティのマークが甘くなって、MFボッティから鋭いパスが面白いように前線に送られるようになった。
後半4分にFW大久保のシュートのこぼれ球をゴール前につめていたMFボッティが押し込んで同点に追いつくと、さらに後半21分にもMFボッティのクロスからファーサイドのMF栗原がダイレクトで合わせて勝ち越しに成功する。
■ 決勝ゴールは栗原圭介 2対1と逆転に成功した神戸だったが、後半25分に不用意なボールの失われ方からピンチを迎えると、最後は磐田の新外国人FWジウシーニョにJリーグ初ゴールを決められて同点に追いつかれる。神戸としては後半は完全にペースを握っていただけに、もったいない失点であった。
これで2対2となったが、好調の神戸はすぐに勝ち越しに成功する。後半27分に、DF石櫃の右サイドからのクロスをMF栗原が巧みにトラップし、その流れから右足で勝ち越しゴールを突き刺して3対2とリードを奪う。磐田は最後に猛反撃を見せたが、神戸の体を張ったディフェンスの前に同点ゴールを奪うことは出来なかった。
結局、戦前の予想通りの打ち合いの試合は、3対2で神戸が勝利。勝ち点を7として、2位に浮上した。
■ 大きな役割を果たす栗原圭介 ハーフタイムを挟んで3トップに変更した神戸は、見事に前半の悪い流れを払拭した。自慢の2トップのFW大久保とFWレアンドロにゴールは生まれなかったが、ベテランのMF栗原が2ゴールと奮起。MFボッティも1ゴール1アシストと大活躍を見せた。
いまさら触れるまでもないが、相変わらずMF栗原の貢献度は高い。すでに34歳という年齢になっているが衰えは全く見られず、ボランチと前線をつなぐリンクマンとして申し分ない働きを見せている。しかも、この試合では試合を左右する2ゴール。開幕戦のゴールと合わせて、すでにリーグ戦では3ゴールを挙げており、シャドーストライカーとしても大きな存在となっている。
ボッティ、栗原、古賀、金南一の中盤は、地味ではあるが高い有機性を保っている。すべての選手がハードワークできることが素晴らしく、またタイプが全く異なった4人が集まっていることが、攻守における可能性を高める要因となっている。
■ 爽快感のあるサッカー 最後の時間帯は磐田の猛攻に苦しんだが、それでも、後半のヴィッセル神戸のサッカーのサッカーは非常に質が高く、また非常に面白かった。ボールを奪った瞬間に攻撃の選手が一斉にアクションを起こし、前線で激しい動きが連続するサッカーは非常にダイナミックである。
技術の高い選手が揃っていることもあるが、パス回しもダイレクトがほとんどで、迷いながらパスを出すシーンは皆無。窮屈感がほとんどなく、流行の「考えて走るサッカー」というよりは、「高度にオートマナイズされているので、局面局面で選手たちが考える必要がなく、無意識のままプレーすることの出来る組織的なサッカー」ということが出来る。
前へ前へと進んでいくこのサッカーは、2006年あたりの川崎フロンターレのような爽快感がある。代えの利かない選手が多いので怪我だけが心配だが、シーズン終了後に、当時の川崎Fのような驚きの成績を残しているかもしれない。
■ 前半は良かったが・・・ 磐田は前半の出来は非常に良かった。前線からのプレスが効果的で、ダブルボランチのMF河村とMF上田の位置からうまくボールが展開が出来ていており、FWジウシーニョやMF成岡も絡んで、厚みのある攻撃を見せた。守備面でも、神戸の2トップに対するマークが徹底されており、前半の神戸は右サイドDF石櫃が裏のスペースに抜け出てクロスを上げたシーンくらいしかチャンスがなかった。
しかしながら、いい形で試合を進めていながら、決定機に決められない悪いパターンで悪循環にに陥っていった感がある。確かに前半31分に神戸のDF金南一のオウンゴールで1点を奪ったが、もっとすっきりした形でゴールできていれば、チーム全体がもっとリズムに乗れていたのではないかと思われる。
■ 収穫は成岡とジウシーニョ 磐田ではMF西が引き続いて好調をキープしているが、この試合ではMF成岡とFWジウシーニョも悪くなかった。
MF成岡は慣れない左ウイングバックでのプレーとなったが、左サイドでボールを受けてタメを作る仕事が効果的で、さらには中央に切り込んでいくプレーにも可能性を感じさせた。本来であれば、MF成岡の優れた得点感覚を中央(トップ下)で使って有効活用したいが、現状ではMF西が欠かせない選手となっているため仕方がない。
ウイングバックといっても、磐田の両サイドは3バックに吸収されて、5バックの形になることは少なく、それほど守備的な役割が多いというわけではない。したがって、攻撃的な持ち味を損ねることはないだろう。現状では右サイドの攻撃が機能不全に陥っているため、左サイドから切り崩しに期待がかかる。
第2節が出場停止のためリーグ戦では2試合目のスタメンとなったFWジウシーニョは、後半25分に同点ゴール。ゴールシーン以外でも、頻繁にサイドに流れてチャンスメークを行う姿勢を見せるなど、そのプレー内容は柏戦と比べると大きく改善された。依然として、スペシャルな選手であるかというと疑問符は付くが、FW前田とFWカレンが戻ってくるまでそれなりの結果を残してもらえれば、御の字だろう。
■ 右往左往する駒野 一方で右ウイングバックのMF駒野は、気の毒なほどボールに絡めずに終わった。バーレーン戦の疲れの影響というよりは、まだチームにフィットできていない影響の方が大きく、チーム全体で駒野を生かそうとする意識もなく、ほとんどいい部分を出せずに90分を終えた。
駒野の右サイドからのクロスは定評があるが、そのクロスを上げるシーンがほとんどないので力を発揮しようがない。現状では、守備では破綻をきたしてはいないのでウイークポイントにはなっていないが、対面の神戸のDF内山と同程度の活躍では、大金をかけて獲得した選手なだけに不十分である。
■ ホームズスタジアムの雰囲気 2001年にオープンしたホームズスタジアム。この試合は、「雨」で「日曜日のナイトマッチ」という悪条件が重なっていたが、観客数は最低限といえる1万人をクリアした。やはり、前節のフロンターレ戦のポジティブなイメージが良かったのだろうか、スタジアムは活気に溢れていた。
雨のためスタジアム内の屋根は閉ざされていたが、それがかえってサポーターの声援を反響させる結果となり、さらには不利な条件が重なってライト層の足を遠ざけたことが、逆にコア層だけをスタジアムを呼び込む要因となった。そのため、観衆が1つ1つのプレーに集中できる高密度の空間を生み出された。
関東圏には、「さいたまスタジアム」や「日産スタジアム」、「国立競技場」とビッグマッチを開催できるスタジアムがいくつもあるが、開催圏には「長居スタジアム」しか見当たらず、日本代表マッチが開催されるのは、長居スタジアムだけという状況が続いているが、ホームズスタジアムは長居スタジアムはもちろんのこと、
さいたまスタジアム にも、
フクダ電子アリーナ にも、
ビッグスワン にも、
豊田スタジアム にも、決して負けてはいないと考える。
■ 総括 3対2という派手なスコアはもちろん、両チームが見せた試合内容も十分に、第三者的存在を満足させるだけの試合となった。(ただ1つ、残念だったのは、村上主審がうまく試合をコントロール出来ずに、相手チームとの接触でFWレアンドロが大怪我を負って戦列を離れてしまうことである・・・。)
美しいスタジアムと質の高いゲーム内容という2つの大きなアピールポイントを持つ今シーズンのヴィッセル神戸は、もっと多くの神戸市民を惹き付けることのできるチームになったことは間違いない。少なくともこの試合も、川崎Fに続いて、「また次の試合も観にいきたいな。」と観衆に思わせるだけの試合をすることが出来た。
試合終了後、4月27日(日)にホームズスタジアムで行われるガンバ大阪戦の前売りのチケットが販売されていた。迷わず購入した。
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>>> オケンさん
どうもコメントありがとうございます。雨が降っていて寒かったので屋根が閉まっていて助かりましたが、やっぱり天気が良くて屋根が開いている状態の方が良かったですね・・・。レアケースなら嬉しいですけど。
関西圏でいうと、長居とホムスタぐらいしか大型のスタジアムが無いですけど、やっぱりホムスタが№1でしょうね。
>>> 埼玉・水色さん
どうもありがとうございます。太田は昨シーズンの後半からあまり調子が良くないようで、守備面を考えると駒野になるのでしょうね。内山監督の太田の起用方法にも問題はありましたが、太田自身はかなり悩んでいるようですね。
>>> チャンさん
どうもコメントありがとうございます。神戸に行ってきました。スタジアム内はいい雰囲気でしたよ。後半は面白かったです。
ただ、レアンドロの怪我が残念です。
神戸へようこそ。後半は良いゲームだったのではないでしょうか。
栗原は戦術眼が非常に優れていますし、非常に大きな存在です。技術も運動能力もずば抜けているわけではない、ああいう選手が生きるという点では良いサッカーを出来ていると感じています。
非常に面白いレポートでした!!!
しかし駒野より太田のほうがいい気がするんですが・・・神戸とは相性悪いな。。。
連戦だったんですね!羨ましい限りです
僕は関西圏のスタジアムにしか行ったことないけど、やっぱホムスタはダントツですね!屋根バージョンは逆にレアで羨ましいです!
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