■ 第25節J1の第25節。10勝8敗6分けで勝ち点「36」の川崎フロンターレ(7位)と、13勝6敗5分けで勝ち点「44」のサンフレッチェ広島(3位)が等々力競技場で対戦した。川崎Fは先週の土曜日にナビスコカップの準決勝の1試合目を戦っているが、0対2から3ゴールを挙げて3対2で浦和に勝利した。一方の広島はやや調子を落としていて、ここ4試合勝ちなし。甲府(23節)とFC東京(24節)に敗れて2連敗中と正念場を迎えている。
ホームの川崎Fは「4-2-3-1」。GK西部。DF田中裕、井川、ジェシ、登里。MF山本真、稲本、森谷、中村憲、レナト。FW大久保。怪我で離脱していたMFレナトはリーグ戦では20節のFC東京戦(H)以来の出場となる。得点ランキングの首位を走るFW大久保は23試合で18ゴールと超ハイペースでゴールを量産している。トップ下のMF中村憲も好調で21試合で6ゴールを挙げている。新外国人のMFアラン・ピニェイロはベンチスタートとなった。
対するアウェーの広島は「3-4-2-1」。GK西川。DF塩谷、千葉、水本。MF青山敏、森崎和、ファン・ソッコ、清水、森崎浩、高萩。FW佐藤寿。24試合で7ゴールを挙げているMF石原が出場停止のため、MF森崎浩が3節の鹿島戦(H)以来のスタメンとなった。右WBは怪我上がりのMFミキッチがベンチスタートで、韓国代表のMFファン・ソッコがスタメンで起用された。エースのFW佐藤寿は24試合で15ゴールを挙げている。
■ 2対0で川崎Fが勝利試合は前半10分にホームの川崎Fが先制する。右サイドの攻防で右SBのDF田中裕が粘ってボールをキープして、裏に走ったMF中村憲にスルーパスを出すと、MF中村憲はグラウンダーで折り返すような素振りを見せながら右足でキーパーのニアサイドをぶち抜いて幸先よく先制ゴールを奪う。MF中村憲は今シーズン7ゴール目となった。中断明けの14節以降では12試合で7ゴールとハイペースでゴールを重ねている。
その後も川崎Fが試合のペースを握って、たびたび、広島ゴールを脅かすと、前半ロスタイムに右サイドのMF森谷を起点にして、MF中村憲のスルーを受けて完全フリーとなったMFレナトがドリブルでゴール前に突進すると、まず、左サイドのFW大久保にパスを出して、その後、戻ってきたボールを左足で流し込んで貴重な追加点を挙げる。MFレナトは今シーズン10ゴール目となった。前半は2対0と川崎Fがリードして折り返す。
後半になると、川崎Fがペースダウンして、広島もボールを回せるようになる。後半15分のMFレナトのPKを日本代表のGK西川がキャッチして3点目を阻むと、MFミキッチの投入も相まって、その後は、アウェーの広島が一方的に攻める展開となる。再三に渡って、MFミキッチが右サイドから仕掛けて際どいシーンを作るが、ゴールを奪うことはできない。結局、試合は2対0でホームの川崎Fが勝利して、広島は5試合勝利なしとなった。
■ 5試合勝利なしとなった広島優勝争いに加わっている広島は下り坂に入っている。怪我人が続出しているわけではないが、この日は、MFミキッチがベンチスタートで、MF石原が出場停止だったので、フルメンバーをそろえることはできなくて、川崎Fの勢いを食い止めることはできなかった。久々のスタメンとなったMF森崎浩のプレーが注目されたが、ほとんどボールに絡むことができなくて、得意の左足を披露するシーンは無かった。期待に応える働きはできなかった。
MFミキッチの代わりに右WBで出場したMFファン・ソッコにとっては、フラストレーションのたまる展開となった。川崎Fの左サイドは、MFレナトとDF登里がいるので、攻撃力がある。それも考慮されたのか、守備力の高いMFファン・ソッコをスタメンで起用したが、攻守とも、いいプレーはできなかった。MFレナトがあまり守備をしないので、前半からMFファン・ソッコのところだけは、比較的、自由が与えられたが、最後の精度を欠くシーンが多かった。
これで5試合勝利なしで、ここ7試合では1勝4敗2分けと苦しんでいる。流れを変える新戦力の台頭が期待されるが、プロ初出場となった高卒ルーキーのMF浅野はアグレッシブなプレーを見せた。シャドーの位置で起用されたが、左サイドでボールを受けてDFジェシをスピードでぶち抜いたシーンは圧巻で、瞬間的なスピードはプロでもトップレベルである。懸命に動き回った姿勢もグッドで、インパクトを残すJリーグのデビュー戦となった。
■ 「過去最高」の中村憲剛一方の川崎Fは、後半はパフォーマンスが落ちてしまったが、前半のサッカーは見事だった。FW大久保はもちろんのこと、戻ってきたMFレナトもキレキレで、MF森谷も効果的に絡んできた。鮮やかだったのは、前半終了間際の2点目のゴールシーンで、「これだけ綺麗にカウンターが決まるのは、珍しい。」と感じるほど、美しいカウンターで追加点を奪った。完璧に広島の守備を崩したお手本のようなカウンターだった。
MFレナトが戻って来たのは、大きい。欠場中はDF登里が左サイドハーフで起用されて、攻守両面でいいプレーを見せていたが、やはり、MFレナトはスペシャルな選手である。後半15分にPKを外した後は、がっくり来たのか、攻撃に絡めなくなったが、一人でも打開できるし、味方を使うこともできる。MF中村憲とFW大久保の2人だけでも、相手は大変であるが、MF中村憲とFW大久保とMFレナトの3人になるとシャットアウトするのは、ほぼ無理である。
MF中村憲も好調を持続させている。今シーズンは、序盤戦こそ、コンディション不良で苦しんだが、アジア最終予選とコンフェデの中断明けから、2ヶ月ほどいい状態が続いている。パフォーマンスが悪かった試合はほとんどなくて、トップ下の位置で自由自在にプレーしている。最近は、日本代表から外れているが、ザッケローニ監督も実力は十二分に分かっている選手なので、いつ呼ばれても、大丈夫である。
MF中村憲も来月の31日で33歳になるので、ベテランの域に入っているが、そういうことを感じさせないプレーを見せている。1980年生まれなので、MF小野、MF稲本、FW高原といった黄金世代の1つ下に当たるので、パフォーマンスが落ちて来ても、全くおかしくないと言えるが、むしろ、かつてないほど、いい状態をキープしており、本人も語っている通り、「過去最高」とも言える圧巻のパフォーマンスを続けている。
■ チームを率いる風間監督31歳になったFW大久保にも同じことがいるが、風間監督のサッカーに出会ったことで、新たなステージに到達することができた。若くて、プロの世界ではあまり実績の無いMF森谷やMF大島やDF登里のような選手が監督との出会いによって目覚めることは、それほど珍しくは無いが、MF中村憲やFW大久保のように国際Aマッチを50試合以上も経験している日本を代表する選手が30歳を超えて、ワンランク上のレベルに達するというのは、かなり珍しいと思う。
思うような結果が出ない時期もあったので、風間監督に対しては、賛否両論あったが、今のサッカーは見事というしかない。王様になれる選手が何人もいると、機能しなくなるのが普通であるが、FW大久保も、MFレナトも、MF中村憲も、風間サッカーの中で100%以上の能力を発揮しており、互いの存在がマイナスに作用するのではなくて、高いレベルで融合できている点は、驚くしかない。
前に風間監督の本を読んだ時、『選手たちが「見ている場所」と「見ている距離」を変えるだけで、Jリーグは劇的に変わる。』という言葉が強く印象に残ったが、一方で、プロの選手たちなので、「そんなに簡単に変わらないだろう。」と思っていたが、これだけのサッカーを見せられると、「風間監督の言うことが正しかった。」と脱帽するしかない。3月と4月で出遅れたので、優勝争いには絡むことができていないが、エンタメ性は抜群である。
リードしているときは、「ゆったりとしたペース」になることもあるが、「得点が欲しい。」というときの攻撃の迫力は尋常ではない。MF中村憲を中心としたコンビネーションからチャンスを作るシーンも多いが、FW大久保やMFレナトのような一人で打開できる選手のために、勝負できるシチュエーションを整えることもスムーズにできる。「個」なのか、「組織」なのかという議論がばかばかしく感じるほど、両者が高いレベルで噛み合っている。
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