■ 開幕戦J1の開幕戦。元日本代表で左サイドバックの相馬直樹氏を監督に迎えた川崎フロンターレが、ホームにモンテディオ山形を迎えた。川崎Fは昨シーズン5位。山形は昨シーズン13位。
ホームの川崎Fは<4-2-2-2>。GK杉山。DF田中裕、井川、横山、小宮山。MF稲本、柴崎、中村憲、登里。FW楠神、矢島。FWジュニーニョはコンディション不良で欠場。MF山瀬功はベンチスタート。
対する山形は<4-1-2-3>。GK植草。DF小林、石井、園田、石川。MF佐藤、秋葉、船山。FW北村、長谷川、宮沢。鹿島から加入のMF船山がスタメン。GK清水がベンチスタートでGK植草が先発となった。
■ 川崎Fが快勝試合の序盤は山形ペース。シンプルな攻撃で主導権を握る。しかし、シュートまで持ち込むことができずにいると、徐々に川崎Fがリズムを作りはじめる。前半34分にはFW矢島がハーフウェーラインからドリブルを始めると、相手DFをパワーで振り切って突進。最後はGKのタイミングを外してシュート。これが決まって川崎Fが先制する。
さらに、その4分後にも川崎Fは中央でボールを受けたMF中村憲のスルーパスから左サイドをMF登里が抜け出して左足でシュート。これが決まって2点目を挙げる。アジア大会の金メダリストのMF登里はリーグ戦は2009年以来のゴールで通算2ゴール目。前半は2対0の川崎Fリードで折り返す。
後半は開始から川崎Fがペースを握る。山形は後半30分になってようやくこの試合で初めてのシュートを放つなど、攻撃がうまくいかない。川崎Fは終盤にMF山瀬功を投入。試合終了間際にドリブル突破から強烈なシュートを放つなど、見せ場を作る。結局、川崎Fが危なげない展開で逃げ切って2対0で勝利。開幕戦を勝利で飾った。一方の山形はシュートわずかに3本。ほとんど決定機を作れないままで敗れた。
■ 相馬監督が初勝利①川崎Fは元日本代表で相馬監督が初勝利を挙げた。2010年はJFLの町田ゼルビアで19勝11敗4分けでリーグ3位と結果を残し古巣の監督に就任。監督経験は1年のみということで「経験不足」が心配されていたが、きっちりとした試合運びで相手のシュートは3本のみ。まずは順調なスタートを切った。
1998年のフランスW杯組で、現在もJ1あるいはJ2でプレーしているのは、GK楢崎、GK川口、MF服部、MF小野、MF伊東、FW岡野の6人だけ。指導者として新たなスタートを切った選手も多く、昨シーズンはDF秋田豊氏が京都サンガで指揮を執ったが、その中でも、相馬氏は現役時代から「理論派」として知られており、指導者としての大成を期待する声が大きかった。今シーズンのJ1の新監督の中でも特に期待したい監督である。
ただ、ドーハ組を見ても、誰が指導者に向いているかというのは、現役時代の振る舞いだけでは判断できないのも事実であり、ドーハ組では都並氏、柱谷氏が複数回にわたって監督として失敗しているのに対して、長谷川健太氏、高木琢也氏が成功をおさめている。現役時代に何も考えていないように見えた人が成功することもあるし、「クレバー」と言われた人が、指導者になった途端、「クレバーではない部分」を見せるようになったりする。
■ 相馬監督が初勝利②元日本代表監督のイビチャ・オシム氏は、現役時代はドリブラーだったという。元ユーゴスラビア代表で、1964年の東京オリンピックにも出場しているが「一度、ボールを持ったら離さなかった。」という話が伝わってきている。191㎝のドリブラーというのも凄いが、セルフィッシュな選手だったようである。
当時と今とでは時代とは異なるとはいえ、「考えて走るサッカー」には、あまり適さないプレーヤーだったようで、「現役時代のときのプレースタイルと選手に要求していることが違いすぎる。」という話は、オシム氏を語るには欠かせないものであるが、自分の幻影時代になかったものを要求したり、追求する指導者は多いようである。
相馬監督がどういうことを選手に要求し、チームを作っていくのかは、しばらく様子を見る必要はあるが、今の川崎Fは世代交代の時期であり、FWジュニーニョが欠場し、ヴィトール・ジュニオールがシーズン前に退団したので、外国人選手もゼロ。日本代表クラスの選手と外国籍選手がスタメンに並んでいた頃と比べるとスタメンは小粒になった。ただ、その分、相馬監督は自分のカラーに染めやすいメンバー構成になっており、FW楠神、MF登里といったノビリロの多そうな選手も少なくない。「タイトル獲得」という大目標はあるが、軸となるMF中村憲も健在で、難しいシチュエーションではなくて、スタートとしては恵まれた環境といえる。
■ 山形はシュート3本一方の山形はシュート3本に終わった。前半の立ち上がりと、後半のラスト10分ほどは形を作ったがゴールは遠かった。得点量が無いチームなので、先に失点してしまうと苦しくなるが、前半で2点リードを奪われたことで、手の打ちようがなくなってしまった。
昨シーズンの開幕前は、FW田代、MF増田という実力のある選手をレンタルで獲得したことで「前評判」も高かったが、今シーズンはその二人もいなくなって、効果的な補強もできなかった。ということで、降格圏内に予想する人が多かった。不安は「得点力」。昨シーズンも、34試合で29ゴールでリーグ最少だったが、さらに、そのうちの10ゴールを挙げたFW田代がいなくなった。FW田代はずっとスタメンで出場していたわけではないが、勝負どころで勝ち点を稼ぐゴールを奪っており、相手の警戒心も大きかった。
当然、FW長谷川にかかる期待は大きくなる。2009年はJ1で31試合で10ゴールを挙げた実績があるが、昨シーズンは25試合で1ゴール。FW田代との併用となったため、出場時間は短かったが、1ゴールのみというのはさびしい数字であり、チームの総得点が伸びない大きな理由となった。3トップを組むFW北村、FW宮沢はフルに出場したとして期待できるのは5ゴール程度であり、FW長谷川がどれだけゴールができるか。それにかかっている。
■ 船山は不発もう一人、キーとなるのは鹿島アントラーズから加入のMF船山。<4-1-2-3>の「2」のポジションを任されており、守備だけでなく、攻撃でも中心になっていかないと困るポジションであるが、この日はほとんど見せ場を作れなかった。
MF船山は2010年は鹿島で出場機会がゼロだったが、2009年はシーズン途中にC大阪にレンタルで移籍して、15試合で5ゴール。第3クールの初戦で司令塔のMFマルチネスが離脱した後、レギュラーに定着し、昇格争いをしていたC大阪の中盤を支える活躍を見せた。MF増田と比べると、ミドルシュートを含めた「得点力」では上であり、レギュラーでプレーすることになれば、シーズン5ゴール程度は期待できる。
ということで、戦力的には厳しい山形であるが、しかしながら、そう簡単に下位に低迷するとも思えない。昨シーズンとベースになる部分は変わっておらず、選手もFW田代、MF増田が抜けたくらいで、他の選手は残っており、MF小林監督もいろいろと策を練ってくるだろう。
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