■ サンスタートニックカップユースチームの日本一を決める「Jユース・サンスタートニックカップ」の決勝は、FC東京U-18とサンフレッチェ広島ユースの対戦となった。
17回目となる今大会は、予選リーグにJ1、J2の34クラブ(カターレ富山とファジアーノ岡山は不参加)が参加。8つのグループに分かれて予選リーグを戦い、各グループで2位以内になった16チームと、日本クラブユースサッカー連盟代表の4チーム(三菱養和ユース、横河武蔵野ユース、Honda FC、アミーゴス鹿児島U-18)を加えた合計20チームで決勝トーナメントを行い、日本一を決める。
FC東京は2007年以来で4度目の決勝進出。ここ3年間の成績は、優勝1回、準優勝1回、ベスト4が1回と素晴らしいものであり、近年、最も好成績を残しているクラブの1つである。対するサンフレッチェ広島は2006年以来で、何と7度目の決勝進出である。
2006年大会は、この両チームが決勝戦で対戦してるが、FW平繁龍一、MF横竹翔、MF岡本知剛らを擁した広島が2対0で勝利。このときのFC東京U-18には、GK権田修一、DF吉本一謙、DF椋原健太、FW森村昂太らが在籍した。
#1 サンスタートニックカップ
■ 試合の前に・・・アクセスが良好なスタジアムとして知られる大阪の長居スタジアムは、大阪市の東住吉区にある。新幹線を利用する場合は、JR新大阪駅で地下鉄の御堂筋線に乗り換えて28分。この場合は最寄り駅が地下鉄の長居駅となるが、大阪駅を起点にする場合は、JR鶴ケ丘駅かJR長居駅で下車することになる。駅から歩く距離は、どの駅でも大差は無く、2分ほど歩くと巨大なスタジアムが現れてくる。
#2 長居スタジアム
準決勝と決勝は、セレッソ大阪のホームである長居スタジアムで行われる。キックオフ予定時間は13:33だったので、少し寄り道をしてみる。目的地は「仁徳天皇陵」。中学校の社会(歴史)の授業の最初の最初で習うはずであるが、「仁徳天皇陵」は、世界最大の前方後円墳であると言われている。(ただし、本当に「仁徳天皇」が祀られているのか、微妙になって来たので、最近は「仁徳天皇陵」ではなく、「大仙陵古墳」と言われている。)
「仁徳天皇陵」を見物するには、JR三国ヶ駅か、JR百舌鳥 (もず)駅のどちらかで降りることになる。JR三国ヶ丘駅は、前述のJR長居駅から和歌山方面に5駅。同じく、JR百舌鳥 (もず)駅は6駅のところに位置する。JR長居駅から電車で10分から15分ほどの距離となる。
この辺り一帯にはたくさんの古墳があって、「百舌鳥古墳群」と呼ばれている。「仁徳天皇陵」は、クフ王のピラミッド(エジプト)、始皇帝陵(中国)とともに、世界三大陵墓の1つとされている。その周囲は「2718m」。1周歩くと45分ほどである。ということで、来シーズン、長居スタジアムを訪問する方は、是非。(ただし、内部には入れないので、ご注意を・・・。)
#3 仁徳天皇陵
#4 前方後円墳
■ 13:33にキックオフ12:00ごろにJR百舌鳥 (もず)を発って、キックオフ時間の約1時間前となる12:30ごろに長居スタジアムに到着。入場は無料で、バックスタンドとゴール裏は解放されていない。
グループリーグの8試合で46得点で4失点。草津ユースに21対0という衝撃的なスコアで勝利し、7勝1分けという好成績で決勝トーナメントに進んできた。決勝トーナメントに入っても、三菱養和に4対1、名古屋ユースに7対1、ガンバ大阪ユースに5対1と圧倒的なスコアで勝ち上がって来たFC東京U-18。
スタメンは、GK崔創喜。DF廣木雄磨、平出涼、松藤正伸、阿部巧。MF三田尚央、年森勝哉、山崎直之、梅内和磨。FW山口潤、重松健太郎。DF廣木はU-17の日本代表として先日のナイジェリアU-17世界大会にも出場している。DF阿部、DF平出、FW重松が来シーズン、トップチームに昇格することが発表されている。右サイドハーフのMF三田尚央は今大会、ここまでの11試合で20ゴール。得点王が確実となっている。
対するサンフレッチェ広島ユースは、GK田村昇大。DF宗近慧、越智翔太、森保翔平。MF宮本徹、中山雄登、茶島雄介、大崎淳矢、早瀬良平、水頭廉。FW砂川優太郎。トップチームと同じ<3-6-1>のシステム。FW大崎はトップチームでの出場経験もあって、6月7日のナビスコカップのアルビレックス新潟戦でもゴールをマークしているU-18日本代表選手である。こちらも来シーズンはトップチームでプレーすることが決定している。DF森保翔平はアルビレックス新潟のヘッドコーチに就任することが発表されたばかりの元日本代表MF森保一氏の息子である。森保一氏も長居スタジアムに観戦に訪れていた。
#5 決勝戦
■ 3年ぶりの日本一試合は序盤から予想通りというべきか、前評価の高かったFC東京が攻め込む。積極的に前からプレッシャーをかけて広島に自由を与えず。広島はMF大崎がドリブルで打開しようとするも、すぐに囲まれてしまう。
優勢のFC東京は前半26分に直接FKのチャンスを獲得。これを、背番号「10」を背負うFW重松が直接決めて先制する。無回転気味の強烈なシュートだったが、広島のGK田村は正面のボールをはじいてしまった。
先制したFC東京の勢いは衰えず、FW重松やMF三田が果敢に仕掛けて、広島DFにプレッシャーをかける。劣勢の広島は、前半36分にDF森保が2枚目のイエローカードで退場となる。これで10対11人となってしまう。前半は、FC東京が1対0でリードして終了。
後半になると、一人少ないことを感じさせないほどの動きで広島も決定機を作るようになるが、FC東京のGK崔創喜のファインセーブもあってゴールを奪えず。何度か決定機を逃したFC東京だったが、後半35分にMF三田がGKとの1対1から確実に決めて2対0とリードを広げる。今大会の得点王のゴールで、突き放した。
結局、2対0で勝利したFC東京が勝利。3年ぶりの日本一となった。
#6 試合前
■ 強かったFC東京ここまでの圧倒的なスコアでの勝ち上がりを証明するように、FC東京は決勝でも強さを見せつけた。後半になると、ラストゲームということもあって、広島も素晴らしいファイティングスピリットを見せて、好ゲームとなったが、それでも、ゴール前に迫った回数ではFC東京が圧倒的に多かった。スコアは2対0だったが、もう少し得点差がついていても、おかしくない内容だった。
FC東京はここ4年間で3度目の決勝進出で、2度目の日本一。FC東京には目立って背の高い選手はおらず、特別、フィジカルに恵まれているような感じは受けないが、実際には、一人一人のフィジカルが強くて、1対1の勝負では、決して当たり負けしなかった。イーブンのボールは、ほとんど、FC東京が競り勝って、拾っていたような印象さえ受けた。
前半から飛ばしていたので、いつかスタミナが切れるのではないかという心配もあったが、結局、最後までスタミナは落ちなかった。いい時間帯に2つのゴールが決まって精神的にも有利になったとはいえ、最後まで落ちない運動量は驚異だった。
#7 歓喜のイレブン
■ エースストライカーの重松攻撃面では、トップチームへの昇格が決まっているFW重松が先制ゴールを決めて優勝に貢献した。同じくU-18日本代表で背番号「10」の広島のMF大崎と対決が注目されたが、この日はFW重松のプレーが上回った。22人の中でも、存在感は際立っていた。
173cmということで大きな選手ではないが、相手を背負っても難なくプレー出来るし、ほとんどボールを奪われない。ドリブルの時は、完全に自分の間合いを持っているので、広島のDFは飛び込むことも出来ず、確実にボールをキープした。
FC東京は、2007年大会の優勝の立役者だったMF大竹洋平が即戦力となって、1年目からJ1のピッチに立ってゴールを決めたが、同じように1年目から出てきても全く不思議ではない選手である。
■ 貫いたスタイル一方の広島は苦しい試合となった。立ち上がりからFC東京に圧倒されて、簡単にはボールキープも出来ない状態。前半26分に先制ゴールを許して、さらに、前半36分にDF森保が退場。絶体絶命となったが、ここから意地を見せた。
失点シーンは、GK田村のミスといっていいものであり、この年代ではチーム全体がパニックになってもおかしくは無かったが、彼は、ここから巻き返して見せた。結局、ゴールは奪えなかったが、彼らは、逆境になればなるほど進化を発揮する「美しい敗者」だった。
広島ユースのスタイルは、トップチームでペトロビッチ監督が目指すスタイルと非常に良く似ている。パス回しのリズムや、タイミングや、選手の距離感は、そっくりといっていいレベルである。危ない横パスもあって、強烈なプレスをかけてくるFC東京の餌食になるシーンもあったが、それでも、最後までスタイルを貫いた姿勢は見事だった。
ペトロビッチ監督が就任したのは2006年の途中。このサッカーで2009年は4位に入った。トップチームとユースチームが同じサッカーを志すことが、必ずしも正しいとはいえないかもしれないが、身近にお手本があって、どういうサッカーをすればいいのかの1つのモデルがあるということは、大きなことである。
#8 対照的なイレブン
■ 2人のゴールキーパー試合終了後、力の限りを尽くした広島のイレブンの多くは、ピッチに倒れ込んで、立ち上がることが出来なかった。歓喜するFC東京のイレブンとは対照的だった。
その中でも、2人のゴールキーパーの姿が印象的だった。スタメンで出場したGK田村昇大はFW重松の(ブレ球とはいえ、)正面ともいえるシュートを防ぎきれず、後ろにはじいてしまった。彼は、試合終了後、無情のホイッスルを聞いたその場所で、仲間達がやってくるまで、立ち上がることが出来なかった。
そのGK田村のプレーをベンチから見ていたのが、控えのGK大森圭悟。ピッチに立てなかったという悔しさと、大舞台で大きなミスをしてしまったライバルを思う気持ち。その胸の中には、いろいろな思いの混ざった複雑な感情があったことだろう。彼は号泣していた。
Jリーグの試合でも、両チームの選手はそれぞれの思いを胸に100%の気持ちで熱い戦いを見せてくれる。が、3年分の思いのつまったユース年代の最後の戦いは、それとは違った熱いものと切なさを感じさせる。試合終了後、この試合に出場した選手と、この試合に出場できなかった選手のみんなが、悔いのないサッカー人生を送ることが出来たら・・・と思った。本当にいい闘いだった。
#9 2人のゴールキーパー①
#10 2人のゴールキーパー②
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