■ 第23節8月28日(水)に行われたJ1の第23節。9勝8敗5分けで勝ち点「32」のFC東京(8位)と、6勝11敗5分けで勝ち点「23」のサガン鳥栖(14位)が国立競技場で対戦した。FC東京はACLの出場権争いに食い込みたいが、3試合勝利なし。一方の鳥栖は残留争いに巻き込まれているが、ホームで大宮(21節)と仙台(22節)に勝利して、現在2連勝中。夏の移籍市場でDF菊地やGK林を補強した効果が表れている。
ホームのFC東京は「4-2-3-1」。GK権田。DF徳永、加賀、森重、太田。MF高橋秀、長谷川アーリアジャスール、石川、東、三田。FW渡邉千。エースストライカーのFW渡邉千は21試合で15ゴールを挙げて、得点ランキングの2位に付けている。ボランチのMF米本が出場停止のため、MF長谷川がボランチに下がって、大卒ルーキーのMF三田がスタメン出場となった。
対するアウェーの鳥栖は「4-2-3-1」。GK林。DF丹羽、菊地、呂成海、金民友。MF高橋義、藤田直、水沼、池田、早坂。FW豊田。エースのFW豊田は22試合で14ゴールを挙げていて、得点ランキングは4位タイに付けている。夏の移籍市場でC大阪から加入のFW播戸はベンチから出番を待つ。J1通算で87ゴールを記録しており、日本代表でも7試合で2ゴールを挙げている。
■ 3対2で鳥栖が競り勝つ試合は前半40分にアウェーの鳥栖が先制する。左サイドのMF金民友のクロスをゴール前のFW豊田が豪快なヘディングシュートを決めて先制に成功すると、さらに前半41分にも、MF早坂のパスを受けたMF池田が個人技で相手の守備陣を翻弄してから右足で決めて2点目を挙げる。MF池田は今シーズン5ゴール目となった。前半は2対0とアウェーの鳥栖がリードして折り返す。
2点を追うFC東京は、後半17分にMF三田とMF石川を下げて、FW平山とMFルーカスを投入。すると、後半36分に左SBのDF太田のクロスからFW平山がヘディングシュートを決めて1点差に迫る。FW平山は2010年の11月以来となる久々のゴールとなった。さらに、直後の後半39分にはバイタルエリアでボールを受けたFW渡邉千が鋭い反転から左足で強烈なミドルシュートを決めて2対2の同点に追い付く。
追いつかれた鳥栖だったが、追いつかれた1分後の後半40分に右サイドのMF水沼のグラウンダーのクロスをFW豊田が合わせて3対2と勝ち越しに成功する。FW豊田はこの試合も2ゴールの活躍で、得点ランキングで2位タイとなる今シーズン16ゴール目となった。結局、3対2で競り合いを制した鳥栖がJ1残留に向けて大きな勝ち点「3」を獲得した。一方のFC東京は4試合勝利なしとなった。
■ 久々の国立競技場ウイークデイに行われるFC東京のホームゲームは、サポーターの利便性などを考慮して、アクセスのいい国立競技場で行われることが多くなっている。頻度は高いので、FC東京の選手のほとんどは、特別な感情は無いと思うが、鳥栖の方は、聖地の国立競技場で試合を行うのは、2006年の7月の東京Vとの試合以来なので、久々だった。テンションが上がる要素の1つと言えるが、見事に勝ち点「3」を獲得した。
このときの試合は、国立競技場で生観戦しているので、どういう試合だったのか、何となく覚えている。鳥栖では、FW新居、MF山城、FW鈴木など、東京Vでは、FWマルクス、FW森本、DF石川らがプレーしていて、鳥栖のFW鈴木と東京VのFWマルクスがゴールを決めていると思うが、メンバーは様変わりしている。時の流れを感じるが、唯一、その試合も経験しているMF高橋義が同じようにチームを引っ張った。
3連勝となった鳥栖は勝ち点「26」となった。23節を終えた時点で、16位の湘南との差が「9」となったので、安全圏に入ったと言えるが、夏の移籍市場で補強したGK林とDF菊地の加入の効果は絶大で、FW播戸もムード作りに貢献している。3人とも前のクラブでは出場機会を失っていたので、試合勘不足が懸念されていたが、大きな問題もなく、このクラスの選手をシーズン途中に獲得できたのは、ラッキーだった。
■ 勝負強さが光るFW豊田陽平グアテマラ戦とガーナ戦の日本代表メンバーからは外れてしまったが、FW豊田は2ゴールと結果を残した。1点目のヘディングシュートは彼らしさが満載の素晴らしいゴールだったが、さらに価値があるのは、後半40分に勝ち越しゴールである。「鳥栖のホットライン」と言えるMF水沼のクロスをゴール前で合わせたが、相手2人が近くにいたので、簡単な場面ではなかった。しかしながら、執念で押し込んだ。
最近のFW豊田はポストプレーの精度も上がっていて、チームへの貢献度は絶大であるが、何と言っても、勝負強さが光っている。終了間際の決勝ゴールが非常に多い選手であるが、中でも印象に残っているのは、7月10日(水)に行われた15節の甲府戦で、後半36分にGK赤星の信じられないミスから同点に追いつかれて、重苦しい雰囲気となったが、後半46分にFW豊田が勝ち越しゴールをマークした。
もちろん、フォワードなので、ゴール数やアシスト数は大事になってくる。こういった数字には説得力があって、この部分でも申し分ない選手であるが、FW豊田という選手の価値をより高めているのは、本当にチームが困っているとき、味方がミスをして落ち込んでいるときに、全てを帳消しにするゴールを決めることができる点である。天性の勝負強さを持っていて、頼りになるエースストライカーである。
■ 1005日ぶりのゴール一方のFC東京は、内容は悪くなかったが、リズムをつかみかけていた時間帯にFW豊田とMF池田にゴールを許した。2つの失点に絡んだDF加賀をハーフタイムに入る前にDFチャン・ヒョンスと交代させるなど、ポポヴィッチ監督は厳しさを感じさせる交代を行った。その後、FW平山とFW渡邉千のゴールが生まれて2対2の同点に追いついたが、直後に訪れた決定機をFW渡邉千が決め切れなかったことが痛かった。
ただ、FW渡邉千のゴールシーンは見事だった。これで16ゴール目となったが、シュートレンジが広くて、右足でも、左足でも、精度が高くて、パワフルなシュートを放つことができるところが、最大の武器と言える。今シーズンは、日本人ストライカーが揃って結果を残しているので、「代表に・・・。」という声はなかなか上がって来ないが、日本代表の中でも活躍できる力を持っている。
追撃のゴールを決めたのは、国見高校の1年先輩となるFW平山だったが、2010年11月27日の山形戦以来のゴールということで、1005日ぶりだった。FC東京の選手は国立でプレーすることに慣れていると思うが、やはり、FW平山という選手は、国立との相性が良い。過去にも、印象に残るゴールを幾つも決めているが、復活弾も国立だった。本人にとっては、もっとも印象に残るゴールになったのではないか。
彼も震災の影響でサッカー人生が狂ってしまった選手の1人である。J2ではあったが、2011年シーズンはフォワードの軸としてフル回転するはずだったが、3月11日の震災の影響でリーグ戦が中断となって、リーグ戦が再開する少し前の練習試合で脛骨と腓骨を骨折して、長期離脱することになった。1年間に渡るJ2生活で、大きな経験ができるはずだったが、逆に、1年近く戦列を離れることになった。
FC東京には、FW渡邉千という柱がいて、さらには、MFルーカスもいる。なので、FW平山がスタメンの機会を得る可能性は低い。2011年は1試合、2012年は5試合の出場にとどまっており、試合経験を積まなければならない時期にベンチやスタンドで試合を観ることが多かったことは、致命傷になりえるが、それでも、まだ28歳である。大型フォワードは30歳を超えてから、円熟期を迎える選手もいる。
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