■ J2から世界へ・・・先日発表された北京五輪代表チーム。J2からは、セレッソ大阪のMF香川真司とモンテディオ山形のFW豊田陽平がメンバー入りを果たした。現役の日本代表選手でも、DF田中マルクス闘莉王、FW大久保嘉人、MF中村憲剛、MF今野泰幸らは、若いころにJ2でプレーし、力を蓄えていった選手である。
J2のレベルは年々上がっており、ヴァンフォーレ甲府、ヴィッセル神戸、京都サンガとここ3年間は、いずれもJ2のチームが入れ替え戦を制して昇格の切符を勝ち取っている。2006年シーズンのヴァンフォーレ甲府や2007年の柏レイソルといった昇格組の躍進も目覚ましく、娯楽性という意味では、今シーズンのサンフレッチェ広島やザスパ草津のサッカーは、J1のほとんどのチームを凌駕する。
「J2リーグを見ずして、日本サッカーを語ることなかれ。」という状態は、もうすぐそこに来ている。ここでは、J2の舞台で輝きを放つ選手を取り上げる。
・FW荒田智之(水戸ホーリーホック) → J2昇格以来、ずっと得点力不足に悩んできた水戸にとって、待望の救世主が登場した。第26節までで、得点ランク7位の9ゴール。シュート本数はリーグトップの69本と、ストライカーとしての才能をまざまざと見せつける。
FW荒田は専修大出身のルーキーで、1985年生まれのため北京五輪代表の資格を持つ。178cmとフォワードとしては標準的な体形だが、ゴールへの意欲は人一倍。仮に、北京五輪の開催があと1年遅かったら、代表チームに選ばれていたかもしれない。
・DF槙野智章(サンフレッチェ広島) → 今シーズンは、26節まで全試合にスタメンフル出場。首位爆心の原動力となっているカナダ世代を代表するセンターバック。今シーズンは4ゴール。思い切りのいいドリブル突破も魅力で、センターバックとしては破格の攻撃力を備える。
DFラインからの攻撃参加を推奨するペトロビッチ監督は、昨シーズンのJ1で、DF森崎和らディフェンス出身でない選手を最終ラインに起用したが、守備の弱さを露呈し、J2降格の憂き目にあった。しかしながら、DF槙野が攻守両面で大きく成長し、無理なコンバートをする必要がなくなって、チームは安定した試合運びが出来るようになった。北京五輪代表にはエントリーされなかったが、実力的には全く遜色はない。
・DF尾亦弘友希(セレッソ大阪) → 昨オフに湘南からセレッソ大阪に移籍し、新天地でも左サイドバックに定着した。FC東京ユース時代から攻撃的なサイドプレーヤーとして名を馳せていたが、FC東京では開花せずにいくつかのチームを渡り歩いたが、すっかりJ2屈指のサイドバックと認識されるようになった。C大阪の左攻撃的MFのMF香川とのコンビは成熟されており、相手チームの脅威となっている。
若い頃は、「守備に難がある選手」という評価もあったが、試合経験を積むにつれて守備力が向上。攻守ともに、バランスのとれたサイドバックとなった。実質、C大阪にDF尾亦のバックアップは存在せず、彼の出来がシーズンの行方を左右するだろう。
・MF宮沢克行(モンテディオ山形) → 開幕から昇格に向けて好位置につける山形を引っ張るベテランMF。アルビレックス新潟時代から正確な技術を持つサイドプレーヤーとして知られていたが、今シーズンも、開幕から安定したプレーを披露している。
MF宮沢が左サイドでボールをキープし、その裏をDF石川竜也がオーバーラップしてクロスを上げてゴールに結びつけるプレーは山形の最大の武器で、相手チームは分かっていても止められない。正確なクロスも魅力的で、アシストも多い。典型的なサイドハーフのお手本といえるプレーを続ける。
・FW長谷川悠(モンテディオ山形) → 五輪代表のFW豊田の怪我もあって第7節からスタメンフル出場を続ける21歳の大器。187cmという長身ながら足元のプレーも見事で、体の大きさを武器に1人でゴールまで迫ることが出来る。柏→岐阜→柏→福岡→柏→山形とプロ入り後は何度も移籍を繰り返していたが、その潜在能力は山形で開花した。
第10節にプロ初ゴールを記録すると、その後はゴールを量産し、ここまで7ゴール。悲願のJ1昇格を果たすために、これからが期待される。
・MF麦田和志(徳島ヴォルティス)プロ入り2年目でブレークの兆しを見せている右サイドアタッカー。サイドハーフあるいはサイドバックでプレーし、攻撃的なプレーがチームを活性化する。
サッカーダイジェストのデータによると、第23節までの集計で、クロスの本数がJ2トップの121本。なかなかチームの勝利に結びつくようなアシストは出来ないが、中位進出を目指す徳島にとって、重要な存在となっている。
・MF衛藤裕(サガン鳥栖) → プロ3年目の24歳。派手さはないが、堅実なプレーで中盤を引き締める高質のバランサー。キャプテンのMF高橋義希とのダブルボランチはJ2屈指で、高い安定度を保つ。
怪我から完全復帰した2008年シーズンは、より前への意識が強くなって、もともと定評のあった守備力に加えて、攻撃力もアップ。展開力も増して、攻守にバランスのとれたセントラルミッドフィールダーとなった。
・FW石原直樹(湘南ベルマーレ) → 昇格の有力候補と言われながら、なかなか波に乗り切れない湘南だが、エースFW石原は開幕からコンスタントにゴールを重ねて、早くも10ゴールに到達した。高崎経済大学附属高等学校から2003年に湘南に入団して6年が経過し、押しも押されぬチームのエースストライカーとなった。
173cmと上背はないが、豊富な運動量と裏に抜けるスピードは脅威で、シュート精度も年を経るごとに向上してきた。福岡から獲得したFWリンコンがやや精彩を欠く中、FW石原にかかる期待は大きい。
・MF梁勇基(ベガルタ仙台)昨オフにFW萬代とMFロペスを失ったベガルタ仙台だが、最重要選手であるMF梁を失わなかったのは大きかった。北朝鮮代表にも選ばれているMF梁は、仙台で背番号「10」を背負い、攻撃の核となった。
特別、派手なプレーをする選手ではないが、運動量豊富に動き回って、ラストのエリアで仕事のできる選手であり、実効性のあるプレーが光る。昇格を果たすにはやや攻撃力に難のある仙台だが、MF梁がいる限り、昇格レースから外れることはないだろう。
・小松塁(セレッソ大阪) → 187cmとは思えないほどのスピードで迫力満点にゴールに迫るC大阪のエースストライカー。MF香川、MF柿谷、MF乾らチャンスメーカータイプのの多いC大阪にとって、FW小松のフィニッシュにかかる期待は大きい。
開幕当初は、FWカレカとFW森島康との熾烈なポジション争いを強いられたが、すでにFWカレカは退団し、FW森島康も大分に新天地を求めた。FW小松のバックアッパーと呼べる選手は誰もおらず、ポジションは約束された。すでに10ゴールをマークしているが、昇格を果たすには、シーズントータルで20ゴール以上は必要である。
・MF久永辰徳(アビスパ福岡) → 確かな技術を持ついぶし銀のドリブラー。第23節終了時点で「ドリブル数」はリーグ8位。福岡にカムバックして2年目で、30歳を超えた今も、リーグ有数のアタッカーとして君臨する。
チームは開幕から不振を極めており、リトバルスキー監督は解任。J1昇格の夢も遠くなる状態で、難しいチーム状態ではあるが、同じくベテランのMF布部やMF久藤とともに、チームを引っ張る。エネルギッシュなプレーに衰えは見られない。
・FW片桐淳至(FC岐阜)2001年の全国高校サッカー選手権で大活躍し、鮮烈な印象を残したストライカーであるが、プロ入り後は伸び悩み、2005年に名古屋グランパスを退団。JFLに活躍の場を移すことになったが、そこで腐らずにサッカーに取り組んで、2008年に所属のFC岐阜の一員としてJの舞台に復帰。チームは昇格組ということもあって苦戦が予想されたが、思わぬ快進撃を見せていて、その中心にFW片桐が君臨している。
典型的な技巧派ストライカーで、スピードや運動量に見るべきものは乏しいが、それを補って余りあるテクニックはリーグでもトップレベルで、絶妙なキープとパス出しで数多くのゴールをアシストしている。ゴール数が5つのみとやや伸び悩んではいるが、大黒柱としてチームに多大な貢献をしている。
・DF飯尾和也(サガン鳥栖) → リーグ2位の失点数を誇るサガン鳥栖のディフェンスリーダー。177cmとセンターバックとしては小柄だが、読みの鋭さと体を張った懸命のブロックで失点を防ぐ。
読売育ちで仙台でもプレーしたが、2004年には地域リーグでプレー。苦労した時期もあったが、2005年にJ2のサガン鳥栖に加入し、完全にチームの中心となった。チームのまとめ役としての貢献も高い。
・MF島田裕介(ザスパ草津) → 2006年シーズンに草津で大活躍したレフティ。2007年は大宮アルディージャに所属し、2008年に草津に復帰すると、いきなりチームの軸として活躍し、リーグに旋風を巻き起こしている。精度の高い左足のキックは健在で、魅惑的なプレーで攻撃にアクセントを加える。
天才肌の選手であるため、MF島田の才能をチームにフィットさせるには並大抵のことではないが、植木監督は見事なチームを作った。J2では最高のレフティ。
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