■ スコアレスドローキリンカップの日本とパラグアイの対戦。日本は<4-5-1>。GK楢崎。DF阿部・闘莉王・寺田・長友。MF鈴木・中村憲・中村俊・山瀬功・遠藤。FW巻。
試合は、前半25分あたりまでは完全に日本ペース。MF中村俊の展開力を生かしてDF長友のいるエリアから打開を見せる。しかし、MF中村俊のクロスからDF闘莉王の決定的なヘディングシュートがGKの正面に飛ぶ不運もあってゴールを奪えない。
その後は、パラグアイが南米の伝統国らしい粘り強い守備とカウンターを見せてやや押され気味になる。日本は、後半にMF松井、FW高原、FW大久保らを次々と投入。しかし、両チームともゴールを割ることはできずに、スコアレスドローに終わった。
■ リズムをつかんだ前半土曜日のコートジボワール戦からスタメンを大きく変えてきた岡田ジャパンは、鈴木・中村憲・中村俊・山瀬功・遠藤の5人で中盤を構成。さらに1トップでFW巻を起用。この攻撃陣は、MF山瀬功とFW高原が入れ変わっているだけで、それ以外は07年のアジアカップとまったく同じ構成だった。
そのコンビネーションの良さもあって、前半は、中盤がリズムよくボールを展開し、何度か決定的なチャンスを作った。特に、MF中村俊の存在は絶大で、巧みなキープと大きな展開力で、好機を演出した。
■ リズムを失った後半ただ、後半に入ると失速。MF遠藤の代わりにMF松井を投入し、MF松井のキープからサイドを破る展開も見られたが、MF松井が持ちすぎてリズムを壊すことが多く、パラグアイにしっかりと対応されて、いい形をほとんど作れなくなった。
ルマンでは左ウイングでプレーすることが多いMF松井だが、この試合は1トップ下でプレー。もちろん、中盤の選手のポジションは流動的で、それが日本の攻撃の持ち味だが、MF松井のプレースタイルを考えると、あえて左サイドのエリアに固定させて、そこを起点に攻める作戦も効果的だったかもしれない。
■ 憲剛のゲームメークコートジボワール戦は、MF今野とMF長谷部がダブルボランチを組み、この試合はMF鈴木とMF中村憲がダブルボランチを組んだが、やはりMF鈴木とMF中村憲のコンビネーションの方がスムーズで、特に、MF中村憲の気の利いたプレーがボールの回しをスムーズにした。
これはプレースタイルの問題で、プレーヤーとしての優劣の問題ではないが、やはりダブルボランチの一角はMF中村憲がベストだろう。ボールをもった選手にタイミングよく接近してパスを受けて、素早く展開するプレーが見事だった。
■ 申し分ないデビュー戦32歳で代表デビューを果たしたDF寺田周平は、やや緊張も見られたが、初めての代表キャップということを考えると、申し分ない出来だった。189cmという高さはやはり国際舞台でも脅威で、パラグアイがロングボールを蹴って前線で起点を作ろうとしてきたが、DF闘莉王と連携してことごとく起点をつぶした。
DF闘莉王とDF中澤のセンターバックコンビは強力だが、そのバックアッパーはDF坪井が代表を引退し、さらにはDF水本が調子を落としているという状況で、ウイークポイントの1つになっていたが、一気に、DF寺田が第3の男に名乗りを上げた。
ノビシロは少ないが、2010年の本大会までと考えると年齢的にも十分に戦力として計算できる。試合後のDF寺田の充実しきった顔が印象的だった。
■ 阿部の右サイドバックDF阿部のプレーも1つの収穫だった。代表では左サイドバックでスタメン起用されたことはあったが、右サイドバックで先発した経験は無かったはずであるが、守備はもちろん、攻撃でもうまく絡んで貢献した。
逆サイドが積極的にオーバーラップするタイプのDF長友だったこともあって攻め上がる回数は控えめだったが、その分、下がり目の位置からビルドアップにも多く絡んだ。
DF加地やDF駒野といった純粋なサイドバックの専門家と比べると、アップダウンの頻度では劣るが、その分、空中戦の強さやボール回しでの安定感といった部分では上回る。最終ラインから落ち着いてボールを回したいときには、DF阿部をサイドバックに起用するのは、今後も効果的だろう。
■ 岡田流って何なのさ?①MF中村俊輔やMF松井が代表に復帰し、ある程度は、中盤でタメが作れるようになったことが大きかったのか、このキリンカップの2試合を見る限り、W杯3次予選のタイ戦(H)や東アジア選手権(中国)の3試合と比べると、チーム全体がレベルアップしていることは明らかであり、極端に出来の悪かったバーレーン戦を除くと、確実な進歩の跡は見受けられる。
コートジボワール戦の得点シーン、前半早々にDF長友のオーバーラップからFW大久保の決定機を生み出したシーン、パラグアイ戦の前半でFW山瀬功の決定的なシュートチャンスを導いたシーンなど、チームで連動して崩すシーンも増えてきてきており、DF長友の台頭もあって、サイド攻撃も改善しつつある。
もちろん、決定力の部分では課題は残っているが、この調子でトレーニングを重ねていけば、少なくとも6月の予選4試合で苦戦することは無いだろう。
■ 岡田流って何なのさ?②前半の25分あたりまでのプレーを見ていると、オシムジャパンのようなダイナミックさがあった。しかしながら、徐々に衰退し、後半は個人プレーが目立つ展開となった。出来の悪かったMF遠藤の交代は間違いではないが、代わりに入ったMF松井もうまく攻撃陣をリードできなかった。
バーレーン戦後に、「これからは、自分のやりたい方法でやる。」と発言した岡田監督は、選手選考に関しては、DF寺田、MF香川、DF長友の召集など独自色を見せたが、戦術面や戦略面では、この2試合の戦いぶりは、バーレーン戦のときよりも、はるかにオシムジャパンのスタイルに近かった。
そうなると、「岡田流って何なのさ?」という疑問が生じるのは必然である。あの発言はいったい何だったのか?あの発言の真意は?
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