戦没者追悼記念日:軍国主義と兵器を慶賀する日
Camillo "Mac" Bica
2010年5月30日、"Information Clearing House"
20世紀の始まり以来、約650,000人のアメリカ人がこの国の多くの戦争を戦って戦死した。政治的所属やイデオロギーとは無関係に、あらゆるアメリカ人は、そうした私心のない犠牲を畏敬し、この悲劇的な人命の喪失がもたらす悲しみを理解し、共有すべきなのだ。Though我々のように戦争を経験した人々は、心の中で、死に行く人々の叫び声を永遠に聞き続け、生きている限り毎日苦痛と喪失感を味わうので、それを思い出させるための祝日など不要なのだが、追悼記念日というのは、正しいと信じる大義のために、その命を犠牲にすることを選んだり、強いられたりした人々を思い出し、悼み、敬意を払うため、国が設けた大切な行事なのだ。
航空ショー、“ワクワクする”ハイテク・デモ、何十億ドル、戦争の道具が、国中のあちこちで、戦没者追悼記念日の人気の“祝い”方になっている。サザン・ウィスコンシン航空フェスティバルや、ミズーリ州のサリュート・トゥー・ヴェテランズ2010はそうしたものの定型的な例だ。何千人もの人々、場合によっては何万人もの人々をひきつける、こうした華やかな祭典は軍の新兵募集用の重要な場所となっている。軍の“ストレングス・イン・アクション・ツアー”は、普通そうしたイベントを“楽しくて”“ためになる”ものとして活用し、究極的には、若者たちに入隊するよう動機付けするのだ。莫大な予算を使って、軍の新兵募集担当者たちは、どう見ても、移動軍事サーカス兼ゲーム・センターという代物をたちあげる。中にはわずか十歳程度の子供もいるのだが、通りがかりの連中は、軍のデータベースに自分の連絡先を登録するだけで、様々な軍の新兵募集資料や個人名を入れた認識票、Tシャツ、帽子、フットボール、等々の記念品がもらえるのだ。登録すると、生徒たちは“兵士のように強く”なることを奨励される。つまり、“アメリカ軍ロック・ウォール”登攀のようなインタラクティブな運動イベントに参加し(“石の様に丈夫な”“体力の力”)、友達を前にしたステージ上で“ヴァーチャル音楽演奏”し(“指揮する力”)、パックボットという名の小さなリモコン・ロボット装置を障害物のコースで操縦し(“技術の力”)、 アパッチ・ヘリコプター・フライト・シミュレーターを“操縦”し(“舞い上がる力”)、あるいは“完全に没入するような、興奮させる、まるで現実のような(ハンビー)体験に参加し”そこで彼らは“ヴァーチャル任務”を遂行し、“武装反抗勢力”と交戦し、連中を殺害する(“チームの力”)のだ。
悲しいことに、アメリカ人は、戦没者追悼記念日というのは、ショッピング・センターでの大安売りや、バーベキューや、ピクニックとは関係がないのだということを指摘されないと気がつかない。また、軍国主義や兵器を慶賀したり、きわめて巧みな、ごまかし的なやり方で、軍に入隊するよう若者を誘惑したりする時でもない。そのような見世物、人によっては心が浮き浮きするものかも知れないが、おそらくは、他の機会(おそらく5月の第3土曜日の国軍記念日、あるいは7月4日の独立記念日)に相応しく、究極の犠牲を払った人々を思い出し、悼むためにもうけられている年に唯一の機会、戦没者追悼記念日の週末には全く場違いで、非礼だ。
最も大切なことは、この記念日は、アメリカの若き軍人たちの愛国心や犠牲を、営利目的のマーケティングや企業利益のために利用することとは無関係なのだ。以下は、ベスページ・フェデラル・クレジット・ユニオンの2009年ニューヨーク航空ショー・ウェブサイトからの抜粋だが、おそらく、そうした死と破壊のための装置に対する“慶賀”の究極だろう。
“もしも御社が、ありきたりのマーケティングを超越したものをご希望であれば. . . 特別な環境に大規模な家族参加ができる、ジョーンズ・ビーチ航空ショーは、企業スポンサーやVIP接待用に絶好の機会です。ご参加を頂いているスポンサー様方は各社ブランドをワクワクする愛国的イベントと結びつけ、一番大切なお客様、従業員、家族や友人方を、まさに最高級の環境でおもてなしされています。海辺沿いに立ち並ぶ接待用特別テントにはプライベートな海岸があり、個別スポンサーのマーケティング上の狙いに合わせて、変更も可能です . . . ビジネス・パッケージは、ジョーンズ・ビーチVIPテント用チケット、10枚、VIP駐車パス、4枚つきで、テント内に小型の企業の旗を掲揚することも可能です。”価格は2000ドル。(強調は筆者)
もしもウキウキする実に楽しい航空ショーが不十分なら、お祭り騒ぎをする方々はロング・アイランドのアメリカ空軍力博物館10周年記念を祝うことも可能です。2010年の戦没者追悼記念日の週末、今や“空軍力の伝説に敬礼”と改名された週末に、わずか35ドルで、"スポンサー、VIP、航空ショー出演者の特別イベントに参加いただけます。ビッグ・バンド音楽の夕べ、戦闘機カレンダー・ピンナップ、航空ショー・パイロットとの交歓、戦闘機・軍用機(見学) 、更には、たそがれ時の特別戦闘機飛行デモ . . . これ以上のものはありません。”いや実はあるのです。更にわずか425ドルで、完璧に復元されたB17飛行機で実際に飛行し、おそらくは、ご自分がドレスデン、ハンブルグ、あるいは東京への爆撃任務を担い、何百万人もの無辜の一般市民を焼いて灰にしようとするのをご想像いただけるでしょう。
このあからさまな愛国感情の営利化、戦没者追悼記念日の利己的な利用、戦争用殺人装置に対する慶賀は、こうした主要スポンサー出し物に対する、銀行や企業幹部の主な関心、動機が、儲けであることをまたもや実証している。誇りをもって軍服を身につけ 、アメリカを愛し、犠牲の本質や国家への貢献を理解し、認識している人々にとって、彼らの傲慢さ、無神経さや、拝金主義は、嘆かわしい侮辱だ。最も嘆かわしいことに、それは戦争で、こうして命を失った若者たちについての思い出を汚すことであり、もう二度と息子、娘、夫や妻を抱擁することはかなわず . . . 決して肉親を無くした悲しみから回復することのない彼らの家族に対する侮辱だ。
それゆえに、戦死した人々の思い出と犠牲に敬意を表する全てのアメリカ人は、戦没者追悼記念日のこうした利用への怒りで声を上げ、こうしたグロテスクな見世物や、兵器の慶賀、営利的マーケティングや軍の採用活動を取りやめるか、別の機会に設定するよう要求すべきなのだ。おそらく、より良識的なのは、暴力と殺戮へのこうした心酔を止め、これらの武器を犂に変え、もうこれ以上戦争のことを研究したり、祝賀したりしないことだ。
Camillo“Mac”Bica博士は、ニューヨーク市のスクール・オブ・ヴィジュアル・アーツの哲学教授、元海兵隊将校、ベトナム戦争に従軍した退役軍人で、ロング・アイランド平和のための退役軍人会のコーディネーターである。
記事原文のurl:www.informationclearinghouse.info/article25577.htm
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似た趣旨の記事に、大量殺りくの慶賀:戦争と集団的健忘症-Chris Hedgesのコラムがある。
イスラエル、経済封鎖で苦しむパレスチナ救援に向かったガザ救援市民船団を強襲し、多数の死者をだした。死者は20人にのぼるとも報じられている。
韓国の謎の哨戒艦沈没の真犯人、当然悪辣だが、救援市民船団を公然と襲って虐殺するイスラエルも悪辣だ。これがテロでなくて、何がテロだろう。
「対テロ戦争」なるもの、こういう場合にこそ発動すべきでは。
宗主国に素直な、民主党や自民党、公明党、かれらの党や、その他大勢たけのこ党が大多数議席をとり、やがて、この国にも、めでたく戦没者追悼記念日が新設されだろう。
宗主国がおこした戦争に出兵した傭兵の戦没者追悼記念日が。
ホンジュラスで、セラヤ大統領が、突然軍事クーデターで追放された事件、不思議なことに、マスコミではほとんど話題にならなかった。今もなっていない。
ことの本質は、基地廃絶、自主憲法制定への動きに対する攻撃だった。
この自主憲法は、民主党や、自民党や、みんなの党等が狙っている、宗主国の希望に沿ったエセ自主憲法、実質壊憲とは、全く違う、国民の顔を向いた立法だ。
セラヤ大統領、ホンジュラスのソトカノ米軍基地を、ホンジュラスの民間空港に変えようとしていた。
ホンジュラスの国民により有利な憲法を制定すべく、憲法制定会議招集の賛否も、選挙時に投票で問おうとしていた。
そこで、まさにソトカノ米軍基地の米軍の支援・承認を受け、ホンジュラス国軍が、突如セラヤ大統領邸を襲い、パジャマ姿の彼を拉致し、ソトカノ米軍基地を利用して、国外追放したのだ。
ことの顛末を見ていれば、米軍基地を無くそうとする属国政治家の運命がどうなるか予想はつくだろう。あれは日本へのメッセージでもあっただろう。
「日本の与党政治家が、米軍基地を無くそうとするわけがない」と、セラヤ大統領追放の背景を書いた上記記事を読みながら考えた。
日本の商業マスコミ、宗主国の完璧な広報機関になっているが、それで、こもうるさい国民はいる。
そこでとうとう、国民監視システム、DPI登場。(コメントを頂いたが、余りに重大なので、コメント欄でお答えさせていただく。)
イスラエルにも好評の作家によるベストセラー『1Q84』、この題名、ジョージ・オーウェルの『1984年』からとっているのだろう。
その『1984年』ビッグ・ブラザーが支配する全体主義・永久戦争社会を描いた名作だ。
『1984年』の中で、主人公は役所で、毎日、歴史の書き換えを仕事にしている。政府は日々、好きなように政策を変える。昨日の友は今日の敵。政府に都合の悪い「友好国」、あっというまに「敵国」に書き換えられる。まずい過去の記事は、メモリー・ホールに捨てられる。
全ての家に、双方向スクリーンが設置されている。洗脳と同時に、部屋にいる国民の挙動、発言を、みな中央で把握するのだ。
独裁政党のスローガンは「戦争は平和である。自由は服従である。無知は力である。」
しかし、これまで、それはSFのお話だった。
それが、まもなく日本で現実化する。下記の記事をお読みいただきたい。
個人がどのような記事を読んでいるのか、全てプロバイダーが把握することが許されるようになるのだ。
これはジョージ・オーウェルが『1984年』で描いた国民監視の双方向テレビそのもの。
米国と英国では業者による利用が問題化し、いずれも実用化に至っていない。
と記事にはあるが、属国では、導入されるのだ。
原口総務大臣がこの悪法を推進している。もちろんブロガーの皆様が支持してやまない大幹事長の意向を受けてのことだろう。
blogやtwitterで騒ぎになる話題ではと思えるが、そうした声ほとんどみかけない。
ビデオニュース・ドットコムで、別のとんでもない法案の衆院通過の実態が聞ける。これも当然ネット上のうるさい個人・小企業を狙うものだろう。番組をご覧あれ。有り難いことに、何と無料。
砂川浩 慶立教大学社会学部准教授 インタビュー
「改正」は「改悪」。「放送法改正」は「放送法改悪」。一般ユーザーにとって、百害あって一利なしの法律。番組では、「参議院で廃案にすべき」といっておられる。そううまく行くだろうか?
沖縄基地問題に注目が集まっている間に、ちゃっかり強硬突破。いつもの手口。
与党、与党経験政党である、民主党、自民党、みんなの党などは、もちろん、こうした監視法成立を狙っているだろう。こうした政党に対する国民の支持が圧倒的に多い現状では、これらのトンデモ法案、簡単に成立するに違いない。自分の首を締めてくれる人に投票する心理、本当にわからない。
SFの悪夢、間もなく現実となる。
『1Q84』愛読者の皆様『1984年』も読まれてはいかがだろう?
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私は80年代にアメリカに流れ着いた瘋癲ですが、そんな私でも日本と比較してアメリカでは軍人や戦争が公に尊敬されていて、リベラルとか進歩派と呼ばれるアメリカ人以外はアメリカが戦争をする時は常に正義の戦争をしていると信じ込んでいるのに驚きました。(当時は共和党が“ヴェトナム後遺症からの脱却”と言うプロパガンダをやっていました)
America exceptionalismやManifest Destiny等を信じている国民の多い国ですから“アメリカは常に正しい”と疑わないのは当然といえば当然ですが、昔大日本帝国で神国日本を教えていた事が日本人に“日本は特別な存在である”と言う幻想を持たせ第二次大戦敗戦と言う最終的な崩壊に導き、中国の中華思想も中国が世界の中心である(良くは知らないのですが)と言う思想で19世紀後半~20世紀中期の中国の混乱期の原因になったのを考えると“俺が一番で何時も正しい”と言う考えは個人の生活でも国家や民族のレベルでも余り良い結果を生み出さないようですね。
処で、国民が明らかに反対する資本層の為の政策はアメリカ企業の為に外国で実施すると言う政策は第二次大戦後はイランのパーレビ皇帝を権力の座につけ石油をコントロールした事から始まりチリのピノチェット政権でのミルトンフリードマンのネオリベラリズム経済の実験等、主に中南米諸国で行われ、当然日本も米中央情報局による保守右翼政治家への援助、其の後トライラタラルを利用した日本の政治経済界のコントロール等で属国として支配されていますから日本政府の政策のは日本国民としては常に監視の目を惰らない様にしたほうが安全の様ですね。民主主義とは政治家や政府を疑う事で始まると言いますますから。
投稿: ejnews | 2010年6月 2日 (水) 04時42分