クレイグ・マレー - 中東における多元主義の終焉
2024年12月7日
Moon of Alabama
クレイグ・マレーcraigmurray.org.ukから転載
中東では本当に劇的な変化が実に急激に起きているようだ。核心にあるのは悪魔の取引だ。シリアとレバノンのシーア派少数派の絶滅と東アラブ世界へのサラフィー主義の押し付けと引き換えに、パレスチナ国家の絶滅と大イスラエル創設をトルコと湾岸諸国は受け入れている。
これはまた、レバノンとシリアのキリスト教共同体の終焉を意味するもので、現在アレッポではクリスマスの飾りが全て破壊され、アルコール飲料が全て破壊され、女性にベールが強制的に着用させていることからもそれがわかる。
昨日、シリア政府の要請でイラクからシリアへ向かっていた増援部隊を米軍のウォートホッグ(イボイノシシ)空対地戦闘機が攻撃し大幅に消耗させた。シリア軍事施設に対するイスラエルの何ヶ月にもわたる毎日の絶え間ない空爆がシリア政府のシリア・アラブ軍の士気低下と戦力低下の大きな要因で、アレッポとハマでシリア・アラブ軍は完全消滅した。
シリアで情勢が好転するとは到底考えられない。今、シリアの基地を地上部隊で大規模増強するか撤退するかのどちらかをロシアは迫られている。ウクライナの緊急事態に直面して、ロシアは後者を選択する可能性があり、ロシア海軍は既にタルトゥースを出港したと報じられている。
シリア崩壊の速度には誰もが驚いている。状況が安定しなければ、ISISの進撃の速度と移動距離の短さを考えれば、一週間以内にダマスカスが包囲され、ベカー高原の丘陵地帯にISISが戻ってくる可能性がある。
そうなれば、サラフィー主義者のベッカー高原侵攻と同時期にイスラエルが南レバノンに新たな攻撃を仕掛けるのは避けられないように思われる。タリバン式のシリア領土を持つ新たな隣国との国境をできるだけ北にしたいとイスラエルは明らかに望んでいるためだ。既に、アメリカが一体誰がそこを得るか画策していない限り、ベイルートを巡る争いになるかもしれない。
対シリア攻撃がレバノンとイスラエル停戦の日に始まったのは偶然ではない。ヒズボラは、イスラエルから執拗な空爆を受け、イスラエルとの戦いで疲弊しているいるにもかかわらず、ジハード勢力は、イスラエル共に戦っているとは見られたくないのだ。
イギリス・メディアと異なり、言ってはならないことを言うのに、タイムズ・オブ・イスラエルは何の躊躇もしない。
実際、イスラエル・メディアは今のところ、シリア反政府勢力についてイギリスやアメリカのメディアより、ずっと多くの真実を伝えている。これはイスラエル・タイムズの別記事だ。
このことは、現在欧米メディアで穏健派指導者として持ちあげられているアブ・モハメド・アル・ジョラニ(アル・ジュラニ、アル・ゴラニとも表記される)の場合ほど明白な例はない。彼はISIS副指導者だったが、CIAは実際彼の首に1000万ドルの賞金をかけている! そう彼に資金と装備を提供し、航空支援を与えているのも、まさにCIAだ。
イスラエルとアメリカの支援を受けていることを、シリア反政府勢力支持者は、いまだに否定しようとしている。しかし、ほぼ10年前に、その時点で5億ドル以上が、シリア反政府勢力支援に費やされ、ジハード主義者に、医療やその他のサービスや効果的航空支援をイスラエルは公然と提供してきたというアメリカ議会の公開証言があった。
シリアの聖戦集団に対するNATOとイスラエルの共同支援の興味深い結果の一つは、国内法の更なる歪曲だ。イギリスを例に挙げれば、テロ対策法第12条では、禁止された組織を支持する、または、他者にその組織を支持するよう導く可能性がある意見を述べることは違法だ。
イギリス警察が、この規定を悪用し、禁止されている組織ハマスとヒズボラへの支援を奨励したとしてパレスチナ支持者を迫害しているのは有名で、ほんの少し言及しただけでも逮捕につながっている。サラ・ウィルキンソン、リチャード・メドハースト、アサ・ウィンスタンリー、リチャード・バーナード、そして私自身、いずれも著名な被害者で、この迫害はキール・スターマー首相により大幅に激化している。
しかし、ハヤト・タハリール・アル・シャム(HTS)もイギリスでは禁止されている団体だ。しかし、イギリスの主流メディアやイギリスのイスラム系メディアは、どちらも、一週間にわたりHTSを公然と宣伝し賞賛してきた。率直に言って、イギリスでハマスやヒズボラを支持する人を見たことがある人よりも遙かに公然とだ。そしてイギリス警察に逮捕された人や警告を受けた人は一人もいない。
それ自体、欧米諸国の治安機関がシリアに対する現在の攻撃を全面的に支援していることを示す最も強力な兆候だ。
念のため言っておくが、私はこれはひどい法律だと思うし、どちらにせよ、意見を表明したからといって、誰も起訴されるべきではない。しかし、この法律の適用が政治的に偏っていることは否定できない。
欧米諸国の商業メディアと国営メディア全体が、HTSによりアサド政権の圧政から解放されてシリア国民が大喜びしているという統一した報道を展開し、それに伴うシーア派の拷問や処刑、クリスマスの飾りや聖像破壊については一切言及しないのだから、これがどこから来ているのかは誰の目にも明らかなはずだ。
しかし、これはイギリス国内でのもう一つの反響だが、イギリスでは相当数のイスラム教徒がHTSとシリア反政府勢力を支持している。これは、サウジやアラブ首長国連邦のサラフィー主義者からイギリスのモスクに資金が注ぎ込まれているためだ。これは承認された宗教指導者に利益をもたらす公的支援プログラムや「シンクタンク」や忌まわしい強制的なPreventプログラム両方を通じて、モスクを通じて行使されるイギリス治安当局の影響力と結びついている。
ミドル・イースト・アイやファイブ・ピラーズなど、表面上親パレスチナ派のイギリス・イスラム系メディアは、パレスチナ人虐殺への抵抗勢力の壊滅を確実にするイスラエルのシリア同盟国を熱烈に支持している。アルジャジーラは、パレスチナでの恐ろしい虐殺の詳細を伝える記事と、イスラエルと同盟を組んだシリアの統治をシリアにもたらしているシリア反政府勢力を称賛する記事を交互に放送している。
彼らがこの問題を解決するために採用している手段の一つは、イランからヒズボラへの武器供給を可能にするシリアの重要な役割を認めないことだ。この供給は今やジハード主義者に遮断されており、イスラエルにとって非常に喜ばしいことに、イスラエルとアメリカの空爆と連携して行われている。
結局、中東と西洋の多くのスンニ派イスラム教徒にとって、パレスチナ国家の最終的破壊を防ぐことよりも、シーア派に対する宗派的憎悪とサラフィー主義の押し付けの方が強いように思われる。
私はイスラム教徒ではない。イスラム教徒の私の友人は、ほとんどスンニ派だ。千年以上も前の宗教指導者を巡って分裂が続いていることは何の役にや立たず、不必要な憎しみの根源だと私は個人的に考えている。
だが、何世紀にもわたり、スンニ派とシーア派の分裂を、西洋植民地勢力が意識的に、明示的に利用して分割統治をしてきたことを私は歴史家として知っている。1830年代、シインドにおけるシーア派支配者とスンニ派住民の分裂をイギリス植民地拡大に役立てる方法についてアレクサンダー・バーンズが報告書を書いていた。
1838年5月12日、アフガニスタンへの最初のイギリス侵攻を開始する決定を述べたシムラーからの手紙の中で、イギリス総督オークランド卿はインドとアフガニスタン両国におけるシーア派とスンニ派の分裂を利用してイギリス軍の攻撃を支援する計画を盛り込んだ。
何世紀にもわたり、植民地勢力はこれを行っており、イスラム教共同体はそれに騙され続けており、中東の改造を進めるためにイギリスとアメリカは現在これを行っている。
簡単に言えば、ガザ地区の圧倒的多数を占めるスンニ派住民に対して現在大量虐殺を行っている連中よりもシーア派イスラム教徒を憎むよう、多くのスンニ派イスラム教徒は洗脳されているのだ。
私がイギリスに言及したのは、ブラックバーンの選挙運動中に、これを直接目撃したからだ。だがイスラム世界全体でも同じことが言える。パレスチナ人の大量虐殺を阻止するために、スンニ派イスラム教徒主導の国々は指一本動かしていない。
彼らの指導部は、反シーア派宗派主義を利用して、実際抵抗の実際的支援をパレスチナ人に与えようとしている唯一の集団であるイラン、フーシ派、ヒズボラに対抗し、イスラエルとの事実上の同盟に対する国民の支持を維持しようとしている。そして物資供給を容易にしたシリア政府にも対抗している。
暗黙ながら、非常に現実的な合意は次の通りだ。パレスチナ国家全体の消滅と大イスラエルの形成をスンニ派勢力は受け入れるが、その見返りとして、イスラエルとNATOに支援される軍隊(トルコを含む)がシリアとレバノンのシーア派共同体を絶滅させるのだ。
もちろん、この大同盟には矛盾もある。イラクにおけるアメリカのクルド人同盟者が、シリアのクルド人集団をトルコが破壊したのを喜ぶ可能性は低い。これは、トルコがシリア打倒で非常に積極的な軍事的役割を果たしたことで、エルドアン大統領が得た利益で、油田に対するトルコの支配を更に拡大したことによるものだ。
イランに友好的なイラク政府は、自分たちが次の標的だと認識しており、自国の大部分をアメリカが占領し続けるのを受け入れるのは更に困難になるだろう。
レバノン軍はアメリカ支配下にあり、イスラエルとの悲惨な停戦に合意するには、ヒズボラは大きく弱体化していたに違いない。伝統的にイスラエルと同盟を結んでいたキリスト教ファシスト民兵はベイルート各地で益々目立っているが、彼らが北のジハード主義者と手を組むほど愚かかどうかは疑問かもしれない。だがシリアが完全にジハード主義者の支配下に陥れば ― それはすぐに起きるかもしれない ― レバノンもすぐ、それに追随し、サラフィー主義の大シリアに統合される可能性も否定できない。
ヨルダンのパレスチナ人がこの悲惨な事態にどう反応するかは定かではない。大イスラエル計画のもと、民族浄化されたヨルダン川西岸のパレスチナ人の行き先として指定されているのは、イギリス傀儡のハシミテ王国だ。
これら全てが意味するのは、レバントにおける多元主義の終焉と、それが優越主義に置き換わることだ。民族優越主義の大イスラエルと宗教優越主義のサラフィー主義の大シリアだ。
多くの読者と違い、私はアサド政権のファンだったこともなければ、その人権侵害に目をつぶったこともない。だがアサド政権が確実に成し遂げたのは、スンニ派(多くのスンニ派はアサドを支持している)、シーア派、アラウィー派、初期キリスト教徒の子孫や、イエスの言語であるアラム語話者を含む最も素晴らしい歴史的宗教と共同体の伝統が全て共存できる多元主義国家の維持だ。
レバノンも同様だ。
我々が目撃しているのは、その破壊とサウジアラビア式支配の押し付けだ。クリスマスツリーから語学教室、ワイン醸造、ベールを脱ぐ女性まで、多元主義を示すあらゆる小さな文化的物事がアレッポで破壊されたばかりで、ダマスカスからベイルートまで破壊される可能性がある。
アサド反対派の中には真の自由民主主義者はいないと私は言わない。だが彼らの軍事的重要性は無視できるほど小さく、彼らが新政府に影響力を持つという考えは妄想だ。
多元主義国家を装っていたイスラエルで、仮面は剥がされている。イスラム教徒の礼拝の呼びかけが禁止されたばかりだ。ネタニヤフ首相と大量虐殺を批判したためクネセト(議会)のアラブ系少数派議員は議員資格を剥奪された。不法占領地域だけでなく「イスラエル国」自体でもアパルトヘイトを強制するための壁や門が日々建設されている。
告白するが、かつて私はヒズボラ自体、宗教至上主義の組織だという印象を持っていた。指導者の服装やスタイルは神政主義的に見えた。その後、私はここへ来て、数十年ヒズボラが選出した地方政府下にあったティルスなどの場所を訪れ、海岸で水着やアルコールが許可され、ベールが任意な一方、そこには全く妨害されないキリスト教徒共同会があると知った。
私はもうガザに行くことはないだろうが、ハマスの支配にも同じように驚いたかもしれないと思う。
中東全域で宗教的過激主義を推進し、欧米の規範に似た社会的多元主義の終焉を推進しているのはアメリカだ。これはもちろん、イスラエルとサウジアラビアという二つの宗教至上主義の中心地とアメリカが同盟を結んでいる直接的な結果だ。
多元主義を破壊しているのはアメリカで、多元主義を守っているのはイランと同盟諸国だ。ここに来なければ、私はこれをはっきり見ることができなかっただろう。しかし、一度見れば、目もくらむほど明白だ。
ベイルート 2024年12月6日
---
クレイグの活動をご支援願いたい。
記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2024/12/craig-murray-the-end-of-pluralism-in-the-middle-east-.html#more
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Moon of Alabama
クレイグ・マレーcraigmurray.org.ukから転載
中東では本当に劇的な変化が実に急激に起きているようだ。核心にあるのは悪魔の取引だ。シリアとレバノンのシーア派少数派の絶滅と東アラブ世界へのサラフィー主義の押し付けと引き換えに、パレスチナ国家の絶滅と大イスラエル創設をトルコと湾岸諸国は受け入れている。
これはまた、レバノンとシリアのキリスト教共同体の終焉を意味するもので、現在アレッポではクリスマスの飾りが全て破壊され、アルコール飲料が全て破壊され、女性にベールが強制的に着用させていることからもそれがわかる。
昨日、シリア政府の要請でイラクからシリアへ向かっていた増援部隊を米軍のウォートホッグ(イボイノシシ)空対地戦闘機が攻撃し大幅に消耗させた。シリア軍事施設に対するイスラエルの何ヶ月にもわたる毎日の絶え間ない空爆がシリア政府のシリア・アラブ軍の士気低下と戦力低下の大きな要因で、アレッポとハマでシリア・アラブ軍は完全消滅した。
シリアで情勢が好転するとは到底考えられない。今、シリアの基地を地上部隊で大規模増強するか撤退するかのどちらかをロシアは迫られている。ウクライナの緊急事態に直面して、ロシアは後者を選択する可能性があり、ロシア海軍は既にタルトゥースを出港したと報じられている。
シリア崩壊の速度には誰もが驚いている。状況が安定しなければ、ISISの進撃の速度と移動距離の短さを考えれば、一週間以内にダマスカスが包囲され、ベカー高原の丘陵地帯にISISが戻ってくる可能性がある。
そうなれば、サラフィー主義者のベッカー高原侵攻と同時期にイスラエルが南レバノンに新たな攻撃を仕掛けるのは避けられないように思われる。タリバン式のシリア領土を持つ新たな隣国との国境をできるだけ北にしたいとイスラエルは明らかに望んでいるためだ。既に、アメリカが一体誰がそこを得るか画策していない限り、ベイルートを巡る争いになるかもしれない。
対シリア攻撃がレバノンとイスラエル停戦の日に始まったのは偶然ではない。ヒズボラは、イスラエルから執拗な空爆を受け、イスラエルとの戦いで疲弊しているいるにもかかわらず、ジハード勢力は、イスラエル共に戦っているとは見られたくないのだ。
イギリス・メディアと異なり、言ってはならないことを言うのに、タイムズ・オブ・イスラエルは何の躊躇もしない。
実際、イスラエル・メディアは今のところ、シリア反政府勢力についてイギリスやアメリカのメディアより、ずっと多くの真実を伝えている。これはイスラエル・タイムズの別記事だ。
HTSは2016年に正式にアルカイダから離脱したが戦闘員数万人を擁し、アメリカ、EUや他の国々でテロ組織に指定されているサラフィー主義ジハード組織であり続けている。これを、テレグラフ紙やエクスプレス紙からガーディアン紙に至るイギリス・メディアが、欧米諸国のジャーナリストを含む非スンニ派の大量拷問や処刑に関与した同じ組織だけでなく、同じ人々が、今や甘やかされたリベラル派だという公式見解を広めてきたことと比較しよう。
突然の増派によってシリアが占領されればイスラム主義のタリバンのような政権に変貌し、南西国境のイスラエルに影響を及ぼすのではないかという懸念が生じている。だが、この攻勢は、イスラエルにとっては前向きな展開で、地域におけるイラン枢軸への更なる打撃となると見る者もいる。
このことは、現在欧米メディアで穏健派指導者として持ちあげられているアブ・モハメド・アル・ジョラニ(アル・ジュラニ、アル・ゴラニとも表記される)の場合ほど明白な例はない。彼はISIS副指導者だったが、CIAは実際彼の首に1000万ドルの賞金をかけている! そう彼に資金と装備を提供し、航空支援を与えているのも、まさにCIAだ。
イスラエルとアメリカの支援を受けていることを、シリア反政府勢力支持者は、いまだに否定しようとしている。しかし、ほぼ10年前に、その時点で5億ドル以上が、シリア反政府勢力支援に費やされ、ジハード主義者に、医療やその他のサービスや効果的航空支援をイスラエルは公然と提供してきたというアメリカ議会の公開証言があった。
シリアの聖戦集団に対するNATOとイスラエルの共同支援の興味深い結果の一つは、国内法の更なる歪曲だ。イギリスを例に挙げれば、テロ対策法第12条では、禁止された組織を支持する、または、他者にその組織を支持するよう導く可能性がある意見を述べることは違法だ。
イギリス警察が、この規定を悪用し、禁止されている組織ハマスとヒズボラへの支援を奨励したとしてパレスチナ支持者を迫害しているのは有名で、ほんの少し言及しただけでも逮捕につながっている。サラ・ウィルキンソン、リチャード・メドハースト、アサ・ウィンスタンリー、リチャード・バーナード、そして私自身、いずれも著名な被害者で、この迫害はキール・スターマー首相により大幅に激化している。
しかし、ハヤト・タハリール・アル・シャム(HTS)もイギリスでは禁止されている団体だ。しかし、イギリスの主流メディアやイギリスのイスラム系メディアは、どちらも、一週間にわたりHTSを公然と宣伝し賞賛してきた。率直に言って、イギリスでハマスやヒズボラを支持する人を見たことがある人よりも遙かに公然とだ。そしてイギリス警察に逮捕された人や警告を受けた人は一人もいない。
それ自体、欧米諸国の治安機関がシリアに対する現在の攻撃を全面的に支援していることを示す最も強力な兆候だ。
念のため言っておくが、私はこれはひどい法律だと思うし、どちらにせよ、意見を表明したからといって、誰も起訴されるべきではない。しかし、この法律の適用が政治的に偏っていることは否定できない。
欧米諸国の商業メディアと国営メディア全体が、HTSによりアサド政権の圧政から解放されてシリア国民が大喜びしているという統一した報道を展開し、それに伴うシーア派の拷問や処刑、クリスマスの飾りや聖像破壊については一切言及しないのだから、これがどこから来ているのかは誰の目にも明らかなはずだ。
しかし、これはイギリス国内でのもう一つの反響だが、イギリスでは相当数のイスラム教徒がHTSとシリア反政府勢力を支持している。これは、サウジやアラブ首長国連邦のサラフィー主義者からイギリスのモスクに資金が注ぎ込まれているためだ。これは承認された宗教指導者に利益をもたらす公的支援プログラムや「シンクタンク」や忌まわしい強制的なPreventプログラム両方を通じて、モスクを通じて行使されるイギリス治安当局の影響力と結びついている。
ミドル・イースト・アイやファイブ・ピラーズなど、表面上親パレスチナ派のイギリス・イスラム系メディアは、パレスチナ人虐殺への抵抗勢力の壊滅を確実にするイスラエルのシリア同盟国を熱烈に支持している。アルジャジーラは、パレスチナでの恐ろしい虐殺の詳細を伝える記事と、イスラエルと同盟を組んだシリアの統治をシリアにもたらしているシリア反政府勢力を称賛する記事を交互に放送している。
彼らがこの問題を解決するために採用している手段の一つは、イランからヒズボラへの武器供給を可能にするシリアの重要な役割を認めないことだ。この供給は今やジハード主義者に遮断されており、イスラエルにとって非常に喜ばしいことに、イスラエルとアメリカの空爆と連携して行われている。
結局、中東と西洋の多くのスンニ派イスラム教徒にとって、パレスチナ国家の最終的破壊を防ぐことよりも、シーア派に対する宗派的憎悪とサラフィー主義の押し付けの方が強いように思われる。
私はイスラム教徒ではない。イスラム教徒の私の友人は、ほとんどスンニ派だ。千年以上も前の宗教指導者を巡って分裂が続いていることは何の役にや立たず、不必要な憎しみの根源だと私は個人的に考えている。
だが、何世紀にもわたり、スンニ派とシーア派の分裂を、西洋植民地勢力が意識的に、明示的に利用して分割統治をしてきたことを私は歴史家として知っている。1830年代、シインドにおけるシーア派支配者とスンニ派住民の分裂をイギリス植民地拡大に役立てる方法についてアレクサンダー・バーンズが報告書を書いていた。
1838年5月12日、アフガニスタンへの最初のイギリス侵攻を開始する決定を述べたシムラーからの手紙の中で、イギリス総督オークランド卿はインドとアフガニスタン両国におけるシーア派とスンニ派の分裂を利用してイギリス軍の攻撃を支援する計画を盛り込んだ。
何世紀にもわたり、植民地勢力はこれを行っており、イスラム教共同体はそれに騙され続けており、中東の改造を進めるためにイギリスとアメリカは現在これを行っている。
簡単に言えば、ガザ地区の圧倒的多数を占めるスンニ派住民に対して現在大量虐殺を行っている連中よりもシーア派イスラム教徒を憎むよう、多くのスンニ派イスラム教徒は洗脳されているのだ。
私がイギリスに言及したのは、ブラックバーンの選挙運動中に、これを直接目撃したからだ。だがイスラム世界全体でも同じことが言える。パレスチナ人の大量虐殺を阻止するために、スンニ派イスラム教徒主導の国々は指一本動かしていない。
彼らの指導部は、反シーア派宗派主義を利用して、実際抵抗の実際的支援をパレスチナ人に与えようとしている唯一の集団であるイラン、フーシ派、ヒズボラに対抗し、イスラエルとの事実上の同盟に対する国民の支持を維持しようとしている。そして物資供給を容易にしたシリア政府にも対抗している。
暗黙ながら、非常に現実的な合意は次の通りだ。パレスチナ国家全体の消滅と大イスラエルの形成をスンニ派勢力は受け入れるが、その見返りとして、イスラエルとNATOに支援される軍隊(トルコを含む)がシリアとレバノンのシーア派共同体を絶滅させるのだ。
もちろん、この大同盟には矛盾もある。イラクにおけるアメリカのクルド人同盟者が、シリアのクルド人集団をトルコが破壊したのを喜ぶ可能性は低い。これは、トルコがシリア打倒で非常に積極的な軍事的役割を果たしたことで、エルドアン大統領が得た利益で、油田に対するトルコの支配を更に拡大したことによるものだ。
イランに友好的なイラク政府は、自分たちが次の標的だと認識しており、自国の大部分をアメリカが占領し続けるのを受け入れるのは更に困難になるだろう。
レバノン軍はアメリカ支配下にあり、イスラエルとの悲惨な停戦に合意するには、ヒズボラは大きく弱体化していたに違いない。伝統的にイスラエルと同盟を結んでいたキリスト教ファシスト民兵はベイルート各地で益々目立っているが、彼らが北のジハード主義者と手を組むほど愚かかどうかは疑問かもしれない。だがシリアが完全にジハード主義者の支配下に陥れば ― それはすぐに起きるかもしれない ― レバノンもすぐ、それに追随し、サラフィー主義の大シリアに統合される可能性も否定できない。
ヨルダンのパレスチナ人がこの悲惨な事態にどう反応するかは定かではない。大イスラエル計画のもと、民族浄化されたヨルダン川西岸のパレスチナ人の行き先として指定されているのは、イギリス傀儡のハシミテ王国だ。
これら全てが意味するのは、レバントにおける多元主義の終焉と、それが優越主義に置き換わることだ。民族優越主義の大イスラエルと宗教優越主義のサラフィー主義の大シリアだ。
多くの読者と違い、私はアサド政権のファンだったこともなければ、その人権侵害に目をつぶったこともない。だがアサド政権が確実に成し遂げたのは、スンニ派(多くのスンニ派はアサドを支持している)、シーア派、アラウィー派、初期キリスト教徒の子孫や、イエスの言語であるアラム語話者を含む最も素晴らしい歴史的宗教と共同体の伝統が全て共存できる多元主義国家の維持だ。
レバノンも同様だ。
我々が目撃しているのは、その破壊とサウジアラビア式支配の押し付けだ。クリスマスツリーから語学教室、ワイン醸造、ベールを脱ぐ女性まで、多元主義を示すあらゆる小さな文化的物事がアレッポで破壊されたばかりで、ダマスカスからベイルートまで破壊される可能性がある。
アサド反対派の中には真の自由民主主義者はいないと私は言わない。だが彼らの軍事的重要性は無視できるほど小さく、彼らが新政府に影響力を持つという考えは妄想だ。
多元主義国家を装っていたイスラエルで、仮面は剥がされている。イスラム教徒の礼拝の呼びかけが禁止されたばかりだ。ネタニヤフ首相と大量虐殺を批判したためクネセト(議会)のアラブ系少数派議員は議員資格を剥奪された。不法占領地域だけでなく「イスラエル国」自体でもアパルトヘイトを強制するための壁や門が日々建設されている。
告白するが、かつて私はヒズボラ自体、宗教至上主義の組織だという印象を持っていた。指導者の服装やスタイルは神政主義的に見えた。その後、私はここへ来て、数十年ヒズボラが選出した地方政府下にあったティルスなどの場所を訪れ、海岸で水着やアルコールが許可され、ベールが任意な一方、そこには全く妨害されないキリスト教徒共同会があると知った。
私はもうガザに行くことはないだろうが、ハマスの支配にも同じように驚いたかもしれないと思う。
中東全域で宗教的過激主義を推進し、欧米の規範に似た社会的多元主義の終焉を推進しているのはアメリカだ。これはもちろん、イスラエルとサウジアラビアという二つの宗教至上主義の中心地とアメリカが同盟を結んでいる直接的な結果だ。
多元主義を破壊しているのはアメリカで、多元主義を守っているのはイランと同盟諸国だ。ここに来なければ、私はこれをはっきり見ることができなかっただろう。しかし、一度見れば、目もくらむほど明白だ。
ベイルート 2024年12月6日
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クレイグの活動をご支援願いたい。
記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2024/12/craig-murray-the-end-of-pluralism-in-the-middle-east-.html#more
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