■ アンゴラ戦U-23日本代表がフル代表のアンゴラ代表と対戦。日本は後半8分にMF長友のクロスをFW豊田が決めて先制。しかしながら、後半31分にアンゴラがロングボールから同点に追いつく。その後の日本は、途中出場のMF香川を中心に攻め込むが、勝ち越すことはできずに1対1でドローに終わった。
アンゴラ代表はフル代表とはいえ、前日に来日したばかりでコンディションは十分ではなかった。その部分を割り引いて考える必要はあるが、それでもピッチ上の11人が同じ意識をもって90分間、戦えたことは収穫だった。
■ スムーズさを生み出した要因この試合は、MF本田圭、MF水野、MF梶山、MF本田拓、DF水本、FW平山、MF家長、MF柏木といった、これまでの予選で長くプレーしていた中心選手の多くを欠いていたが、逆に、彼らがいなかったことが幸いしたといえる。
このチームの最大の問題は、どういう攻撃をメインに据えて戦っていくのかが定まっていないことであり、MF水野やMF本田圭らはサイドアタックを好み、MF梶山やMF本田拓、MF青山敏といった中央の選手は中盤で細かくパスをつなぐサッカーを好み、前線のFW平山らはロングボール中心の攻撃を好む傾向にある。したがって、個々の選手がバラバラであることがウイークポイントになっていたが、この試合では自己主張の強い選手が軒並みメンバーから外れていたことが、逆にスムーズに攻撃できる要因となった。
■ 1つの指針立ち上がりから、アンゴラの選手は日本選手がフリーでスペースに走り込んでいく動きに全く対応できずにいた。アンゴラ側のマイナス要因もあったが、それでも中盤の選手や最終ラインの選手が積極的に前線のスペースに走り込んでいくサッカーは、非常に良かった。
きちんとしたサッカーをしてくるチームであれば、おそらくそこまで自由にプレーをさせてもらえないだろうが、それでもチーム全体にアグレッシブにプレーするという意識が植え付けられそうなことは今後に向けて大きい。
■ 枠を勝ち取ったか?先発組で一番アピールできたのは右サイドのMF長友だろう。FC東京では開幕から左サイドバックで先発出場をしているが、この試合は右サイドで好プレーを見せた。左右両サイドバックをこなせるユーティリティー性は18人とベンチ入りメンバーの少ない本大会のメンバー入りに向けて大きなアピールポイントである。
もともと身体能力は抜群で攻守に可能性を秘める選手だが、サイドアタックだけではなくインサイドに切り込んでシュートチャンスに絡むことが出来るのも魅力である。
■ 五輪デビューの香川真司U-23代表の国内マッチではデビュー戦となったC大阪のMF香川は後半26分からMF梅崎司に代わってピッチに立つと、豊富な運動量とドリブルで好機を演出し、あわやという場面を作った。1989年生まれのため、北京世代ではなくロンドン世代の香川だが、プロキャリアは十分で、むしろ遅いくらいの五輪代表デビューとなった。
今シーズンは、水戸戦、山形戦、仙台戦と3試合を観たが、いずれの試合も相手の徹底マークに苦しんでおり、思うようなプレーは出来なかった。調子もあまりよくないという感じを受けていたが、この試合のアンゴラくらい香川に対するマークが甘いと、好き放題することができるのは、すでに昨シーズンで実証済みである。
ドリブル、パス、運動量と2列目のアタッカーに必要とされる要素をすでに十分に備えている香川であるが、もっとも優れている部分は、判断の早さと正確さである。仕掛けるタイミングとダイレクトではたくタイミングが見事で、無理な仕掛けで自滅することはなく、自分のリズムで試合を進めていくことができる。
■ フル代表入りの資格は十分通常、サッカー選手は若い選手の方が将来性があって何かと優遇されるものだが、逆にMF香川の場合は、その若さが、彼の持つ可能性を阻む危険性がある。現在、牧内監督率いるU-19代表チームの主力選手であり、次の次のロンドン五輪の出場資格も持つが、実力的には北京五輪代表チームでポジションを獲得してもおかしくはないし、それすら飛び越えて早い時期のフル代表入りの可能性も十分にある。
すでにJ2では試合ごとに相手チームから徹底的にマークを受ける特別な存在になっているが、北京五輪代表チームに入るとまだお客さんの域を超えておらず、今のまま、将来性のある若手選手というカテゴリーの状態で時間が過ぎていくのは怖い。危惧すべきは、若すぎるということが、逆に五輪代表やフル代表入りの障害となってしまうことである。それは、香川のためにも、日本のためにもならない。
MF香川は久々に日本サッカー界に現れた世代を突き抜けて周囲に刺激を与え続けることのできる存在である。温かい目と厳しい目の両方で見守っていかなければならない。
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