サガン鳥栖の2007年シーズンを振り返る。■ スタートダッシュの失敗昨シーズンはリーグ4位とチーム史上最高のシーズンを送ったサガン鳥栖。さらには、昨シーズンの順位で鳥栖よりも上位に位置した『横浜FC』、『柏レイソル』、『ヴィッセル神戸』の3チームがいずれもJ1に昇格するという追い風も吹いたため、待望のJ1昇格に向けて大きなチャンスが訪れた。
しかしながら、カリスマ的存在であった松本育夫監督が勇退し、さらには絶対的なエースであったFW新居辰基もジェフ千葉に移籍。不安要素も少なくないシーズン前であった。
案の定というべきか、シーズン序盤は非常に苦しんだ。
開幕戦では、最大の宿敵であるアビスパ福岡にホームの鳥栖スタジアムでまさかの0対5と大敗を喫すると、3試合連続無得点の3連敗スタート。最初の10試合で2勝6敗2分けと最悪の序盤戦となった。
しかしながら、試合を重ねるごとにチームの目指す形が発揮されるようになっていって、経験不足の選手達が大きくステップアップしていった。第4クールに勝ち点を伸ばせず、最終順位は8位だったが、手ごたえの少なくないシーズンだった。
■ 藤田の活躍と未来目立ったのは、なんといってもエースに成長したFW藤田。FW新居が移籍したことでシーズン前には得点力不足が懸念されたが、06年にわずか4得点だった藤田が大ブレークし、柱となった。
第8節の水戸戦でシーズン初ゴールを記録すると、以後、コンスタントにゴールを重ねて、結局、日本人ではダントツトップの24ゴール。さらに、アシストも8つを記録し、チームのほとんどのゴールに絡んだ。
前エースのFW新居は典型的なストライカータイプであり、ゴール前での動きに特徴のある職人であったが、藤田はもっとオールラウンドなプレーヤーであり、幅広いエリアで活躍が期待できる。高い得点力に加えて、尽きることの無い運動量で前線からのチェーシングも精力的にこなした。185cmの高さに加えてレフティという特性も魅力であり、J1のチームからも大いに注目される存在となった。
怪我もあって、今オフに移籍をするかどうかはわからないが、現時点でJ1に移籍を果たしたとしても、シーズン7~8得点は可能だろう。だが、もっと高いレベルで経験を積んで得点感覚を磨いていけば、J1でも15得点程度を期待できるだけのポテンシャルを秘めている。
■ 大型2トップを形成した金信泳の加入前線では、シーズン途中にC大阪からレンタルで獲得したFW金信泳の存在も大きかった。29節に鳥栖デビューを果たした金は、まもなくレギュラーポジションを獲得。リーグ戦では20試合に出場し7ゴールをマークした。当初はなかなかチームになじまなかったが、移籍後4試合目となった34節の東京V戦で初ゴールをマークすると、以後は、コンスタントにゴールを重ねた。
大型選手らしいスケールの大きなプレーが魅力で、強引なドリブル突破と思い切りのいいシュートは、チームに多大な貢献もたらした。決定力に欠ける面はあるが、アグレッシブなプレースタイルは鳥栖のチームカラーにマッチし、エース藤田との2トップは、相手チームにとって脅威以外のなにものでもなかった。
■ 取りこぼしの目立った中盤戦第1クールの出遅れを第2クールで取り戻したが、第3クール終盤になると、下位チーム相手に取りこぼしが目立つようになって、J1昇格争いのグループからは外れていった。爆発力のあるチームではなく、チーム全体でハードワークをして戦っていかなければ勝利をつかむことは難しいが、疲労の影響もあって、そういう試合運びはできなくなっていった。
しかしながら、シーズン終盤は、京都と札幌を連破するなど、4連勝を記録。天皇杯でもJ1のアルビレックス新潟に勝利するなど、大きな存在感を示した。ライバルの7位福岡との勝ち点差は、わずかに「1」だけだった。
■ 中盤のリーダーとなった高橋義希中盤の鍵になったのは、22歳のMF高橋義希。シーズンを通してキャプテンマークを巻いてチームを引っ張った。若さに似合わず安定したプレーが持ち味で、攻守ともに計算の出来る選手である。
チーム内では、すでに欠かせない存在になっているが、プレーヤーとしてよりステップアップするには、明確な武器がほしい。中でも、展開力については、まだまだ向上の余地がある。彼のさらなるレベルアップは、鳥栖のレベルアップにもつながるだけに、さらなる上を目指してほしい選手である。
■ レフティ高地系治高橋と並んで、中盤の核となったのは、MF高地。ボランチだけでなく、左サイドバック、攻撃的MFと様々なポジションをこなした。
元韓国代表のMF尹晶煥が怪我がちで26試合の出場にとどまる中、高地は44試合に出場し、貴重なパサーとして司令塔役をこなした。左足のキッカーとしても優秀で、7得点5アシストをマークし、無くてはならない選手となった。今シーズンは、怪我人続出もあっていろいろなポジションを任されたが、やはりどこか1つのポジションに固定してあげたい。そうすれば、もっと力を発揮するだろう。
■ 人材を欠いたミッドフィールダー中盤では、高橋と高地の奮闘は目立った。しかしながら、J1昇格を狙うチームにしては、中盤に弱さがあった。MF尹晶煥は怪我があって10試合の先発にとどまり、MF清水康也やMFレオナルドらが頻繁に攻撃的MFの位置で試されたがなかなかフィットせず、力不足も目立った。
一筋の光明は、三重大学出身の新人MF野崎陽介。シーズン中盤にJリーグデビューを飾ると、左サイドを主戦とした得意のドリブル突破で打開力の高さを披露。アグレッシブなプレーでスーパーサブの地位を築いていき、シーズン終盤には先発組に昇格した。
また、終盤戦になって怪我で戦列を離れていたMF衛藤が復帰すると、高橋とボランチコンビを組んで見事に機能し、連勝の立役者となったことも収穫だった。MF高橋義希とMF高地系治に続く選手の台頭が待たれる中盤に、タレントが芽生えつつあった。
■ 情熱的な岸野監督松本監督のあとを受けて監督に就任した岸野監督だったが、地道に、しかし着実にチームを作っていった。トレードマークとなった赤い帽子と同様に、熱い情熱的な指導が、若手選手の成長を促し、鳥栖の新しい顔となった。
鳥栖スタジアムという、日本最高峰のスタジアムをホームにしているだけに、魅力的なサッカーを続けていければ、おのずと、観客も増していくことだろう。チーム規模は、J2でも下の方であり、資金力のあるチームではないので、主力流出も致し方ない部分もある。焦ることなく着実に強化をして欲しいところである。
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