■ J1の第2節J1の第2節。3月1日(土)に行われた開幕戦でG大阪をアウェーで下して好スタートを切った浦和レッズと、昇格組の徳島にホームで5対0で圧勝したサガン鳥栖が埼玉スタジアムで対戦した。このカードは打ち合いになることがほとんどで、浦和側から見ると、4対3(H)、1対3(A)、6対2(H)、1対4(A)。どの試合もたくさん点が入っており、4試合ともホームチームが勝利をおさめている。
ホームの浦和は「3-4-2-1」。GK西川。DF濱田、永田、槙野。MF阿部、柏木、森脇、宇賀神、梅崎、原口。FW興梠。怪我人が出ていることに加えて、鳥栖の高さに対抗するために186センチのDF濱田を右ストッパーで起用して、MF森脇は右WBで起用された。また、3バックの中央はDF那須が欠場となったので、元日本代表のDF永田が起用された。G大阪との開幕戦はDF槙野が決勝ゴールを挙げている。
対するアウェーの鳥栖は「4-2-3-1」。GK林彰。DF丹羽、菊地、呂成海、安田。MF谷口、藤田直、早坂、池田圭、金民友。FW豊田。スタメン11人は開幕の徳島戦と全く同じで、MF水沼、MF岡本知、DF金井らがベンチスタートとなった。ニュージーランド戦に出場した日本代表のFW豊田は徳島戦で2ゴールを挙げている。左SBはDF安田が2試合連続スタメンで、MF金民友が左サイドハーフに入る。
■ 1対0で鳥栖が逃げ切る試合は開始9分にアウェーの鳥栖が先制する。左サイドでボールを受けたMF藤田直のスルーパスから左SBのDF安田がサイドを駆け上がって左足で高精度のクロスを上げると、ゴール前で待っていたFW豊田が豪快なヘディングシュートを決めて鳥栖が先制に成功する。エースのFW豊田は早くも3ゴール目となった。相性の悪い埼玉スタジアムでの試合だったが、前半は1対0と鳥栖がリードして折り返す。
後半は浦和がずっとボールを保持して攻め込む展開となる。鳥栖はほとんどボールを保持できなくなって、後半は全くチャンスを作れない。浦和は後半10分にFW李忠成、後半25分にMF関口を投入。攻撃的な布陣で同点・逆転を狙うが、CBのDF菊地を中心とした鳥栖の堅い守備をなかなか崩すことができなくて、決定機を迎えても体を張ったブロックにあって思い通りにシュートを飛ばすことができない。
結局、浦和は17本のシュートを放ったが、鳥栖は3本だけ。後半は浦和が圧倒したが、最後まで同点ゴールは生まれず。1対0で鳥栖が勝利して開幕2連勝となった。一方の浦和は左ストッパーのDF槙野が6本のシュートを放つなど、DF槙野が攻撃を引っ張ったが、ホーム開幕戦は完封負けとなった。次節は鳥栖はホームで鹿島と対戦して、浦和はアウェーで広島と対戦する予定になっている。
■ 攻撃は悪くなかったが・・・これで浦和は1勝1敗となった。DF槙野のシュートがバーに当たるなど運はなかったが、形はそれなりに作っており、後半は完全に試合を支配した。主力メンバーは昨シーズンとほとんど変わっておらず、攻撃に関して大きな問題があるわけではないので、気持ちを切り換えて広島戦の準備をする必要がある。因縁のある相手なので、是が非でも勝ちたい試合であり、両チームの選手がヒートアップするのは確実である。
残念だったのは失点シーンである。右ストッパーにDF濱田を起用して、MF森脇を右WBで起用したので、右サイドは(いつもよりは)守備を重視した布陣だったが、右サイドを破られて、最後はゴール前でFW豊田をフリーにしてしまった。一番、警戒していた形でゴールを決められたと言えるが、MF森脇とDF濱田の右サイドは攻撃でもあまり貢献できなくて、左右両サイドからバランス良く攻撃することはできなかった。
唯一、気になるのは、新加入のFW李忠成がフィットしていない点である。終了間際にボレーシュートを放って相手ゴールを脅かしたが、うまく攻撃に絡むことができたのは、このシーンくらいである。開幕のG大阪戦(A)も後半途中に投入されたが、ほとんど存在感を発揮することはできなかった。五輪代表や日本代表などで一緒にプレーした経験のある選手が多いと思うが、良さはほとんど発揮されていない。
■ スケールの大きいGK林彰洋一方の鳥栖は開幕2連勝となった。前半9分にFW豊田のゴールで先制した後はかなり攻め込まれたので、流れはあまり良くなかった。どこかの段階で浦和に同点ゴールが生まれていたら、その勢いのままで逆転まで持っていかれた可能性は高かったと思うが、GK林彰、DF丹羽、DF菊地、DF呂成海、DF安田の5人が奮闘した。攻撃力のある浦和をアウェーで完封したことは大きな自信になるだろう。
ヒーローは何人かいるが、まずは、キーパーのGK林彰である。この試合は2007年のU-20W杯に出場した「調子ノリ世代」の選手がたくさんいて、GK林彰、DF槙野、DF安田、MF梅崎、MF柏木と本大会のレギュラー5人がスタメンに名を連ねた。(それ以外の6人は、FW森島康、FW河原、MF田中亜、MF青山隼、DF内田、DF福元。)働き盛りの年齢の選手が多かったが、GK林彰の高さと安定感が目立った。
GK林彰は195センチとサイズに恵まれており、スケールの大きな選手である。2012年に清水に入団するまで、ちょっと遠回りをした感じもするがまだ26歳。キーパーとしては若手の部類と言える。キーパーに関しては、監督の好みにも左右されるので、監督が決まらないと何とも言えない部分もあるが、ロシアW杯までの4年間、GK林彰が日本代表の正キーパーとなって活躍することも十分に考えられる。
決勝ゴールをアシストしたDF安田も存在感を発揮した。攻め込まれる時間帯が長かったので、攻撃参加する回数は少なかったが、ゴールシーンはパーフェクトなクロスだった。2014年の選手名鑑を見ると「両利き」と記載されているが、本来は右利きである。左足が利き足ではないが、左足の精度も非常に高い。磐田では思うような活躍はできなかったが、この2試合は全盛期に近いプレーを見せている。
■ 豊田陽平をW杯メンバーに・・・鳥栖で注目を集めているのは、何と言ってもエースのFW豊田である。3月5日(水)に行われたニュージーランド戦は15分ほどプレーしてゴールに絡むことはできなかったが、W杯の登録メンバー発表前の最後の試合で日本代表に召集された意味は小さくない。遠ざかりつつあったブラジルW杯出場が、再び、近づいてきたので、相当にモチベーションがアップしたと思うが、開幕2試合で3ゴールと結果を出している。
この試合は日本代表のザッケローニ監督が視察に訪れていた。GK西川を筆頭に浦和にも何人か代表候補はいるが、一番の目的は鳥栖のFW豊田だったのではないか?と推測できる。関東地方に住んでいるザッケローニ監督がベストアメニティスタジアムまで行くのはちょっと大変で、関東近郊の鳥栖戦というのは限られてくるが、ピンポイントで狙いを定めて埼玉スタジアムにやって来たのではないかと思う。
ザッケローニ監督の御前試合で大きなアピールができたが、個人的にはFW豊田を23人の最終登録メンバーに選んだ方がいいのではないかと思う。現状は、FW柿谷とFW大迫に次ぐCFの3番手と言えるが、CFの枠が「2枠」と決まっているわけではない。SBやボランチやCBや2列目との枠の取り合いになってくるので、CFを3枠にするためにはどこかを削る必要があるが、それだけの価値はあると思う。
もちろん、長丁場の戦いになることを想定して、守備的なポジションの選手を多めに召集するのがセオリーである。しかしながら、今の日本代表はユーティリティーな選手が多くて、DF今野やDF伊野波はボランチよりも後ろのポジションであればどこでもプレーできるし、MF細貝もいろいろなポジションでプレーできる。1つのポジションしかできない選手は少ないので、十分にやり繰りは可能だと思う。
CFがFW柿谷とFW大迫の2人になるとパワープレーを行うのは難しくなるが、点が欲しい時間帯でパワープレーができないのは非常にきつい。また、FW豊田という選手は「空中戦の強さ」が最大のウリであるが、実はスピードもある。鳥栖の2列目はスルーパスを出すことが得意な選手が少ないので、鳥栖ではそういうシーンはあまり見られないが、裏に抜けるプレーも普通にこなすことができる。
そして、もちろん、セットプレーの守備のときも大きな力になれるので、1点リードを守りたいケースでも投入できる。非常に使い勝手のいい選手と言えるだろう。守備的なポジションは怪我人や出場停止が出やすいので、当然、守備的なポジションの枚数を削るのは勇気がいるが、日本代表の目標はとりあえずは「ベスト16」である。後のことは考えずにGLの3試合に全力を尽くした方がいいのではないか?と思う。
関連エントリー 2008/01/14
金子達仁さんのレッズサポ批判 2013/01/31
【読エ】 鳥栖サポーターにとっての豊田陽平とは? 2013/04/07
【鳥栖×清水】 3度目の鳥栖スタジアム(生観戦記) (上) 2013/04/08
【鳥栖×清水】 3度目の鳥栖スタジアム(生観戦記) (下) 2013/04/09
ベアスタで気になったところ 2013/07/17
サガン鳥栖のサポーターの夢がかなった日 2013/08/26
日本人でもっともポストプレーが上手な選手は誰か?について考える。 2014/03/08
全記事一覧(2005年-2014年)
- 関連記事
-