■ 2度目のファイナル川崎フロンターレとガンバ大阪の対戦。ともに、初めてのナビスコカップ獲得を目指す。
ホーム扱いの川崎Fは、2000年のナビスコカップで決勝に進出しているが、その当時とは比べ物にならないくらいの戦力を擁して国立に帰ってきた。ACLの準々決勝でセバハンとの死闘を演じてからやや調子を落としていたが、先週末のFC東京戦で7対0という大勝劇を演じている。のぼり調子といえる。
対するG大阪は2005年以来の決勝進出。そのときの対戦相手は、イビチャ・オシム監督率いるジェフ千葉。その試合では、PK戦の末、敗退し、ジェフ千葉がはじめてのタイトルを獲得。。名著である木村元彦氏の
「オシムの言葉 フィールドの向こうに人生が見える」の表紙となっている歓喜に沸くイレブンとイエローのサポーターを見上げるシュワーボの柔らかい笑顔が印象的である。
G大阪も夏場にやや失速したが、MF寺田の活躍もあって上昇ムード。しかしながら、前節の清水戦で完敗し、リーグ制覇は難しい状態になっている。したがって、プライドを守るためにも、なんとしても、ナビスコカップだけは勝ち取って大阪に帰りたい。
■ 情熱的な国立チケットは前日のうちに、ソールドアウト。
13:35のキックオフだが、試合前から応援合戦はヒートアップ。この日の国立は、フロンターレカラーとガンバカラーの真っ二つに分かれて、熱いバトルが繰り広げられた。その割合でいうと、川崎Fサポが5割、G大阪サポが4割、中立サポが1割という感じだろうか。G大阪サポーターの多さが目に付く。
恒例になりつつある、サポーターのマスゲームだが、フロンターレはチームカラーの水色に統一してきた。対するG大阪は、青・黒・白の3色で鮮やかに観客席を彩った。
ともに、リーグ戦では、夏場にやや失速し、9月半ば以降にやや盛り返してきたチームであるが、川崎Fは
注目されたスタメンは、川崎Fが、GK川島。DF森・箕輪・佐原・伊藤。MF寺田・中村憲・谷口・大橋。鄭大世とジュニーニョの2トップ。MFマギヌンが出場停止で、その代役にMF大橋。中央には河村ではなく寺田を配置し、変則の5バック。
対するG大阪は、GK藤ヶ谷。DF加地・シジクレイ・山口・安田。MF明神・橋本・遠藤・二川。FWバレーとマグノ・アウベス。好調のMF寺田ではなく、DF安田を左サイドバックで起用。
■ 押し込むフロンターレ立ち上がりは、川崎Fが押し込む。意図的にロングボールを多く蹴って、シジクレイと山口にプレッシャーをかける。開始10分で、ジュニーニョが決定機を作るなど、2トップの動きが脅威になる。
対するG大阪は、ややスローテンポな立ち上がりだったが、前半25分過ぎから、ようやく川崎Fのプレスがおさまってボールが落ち着くようになる。こちらも、精度の高いロングボールが効果的だった。
前半は、結局、0対0で終了。チャンスの数では互角だったが、川崎Fのチャンスがシュートまで結びついたのに対して、G大阪のシュートはフィニッシュまでつながらないことが多く、やや川崎Fが優勢だった。
■ 安田理大の決勝ゴール司令塔対決ということで注目されたこのカードだったが、双方ともに、前半は目立った無かった。しかし、後半になると、ようやく、G大阪のMF遠藤がボールに関与し始めてリズムを作る。
すると、後半10分に、FWバレーが右サイドに流れてボールをキープ。そのバレーが、意表をつく速いグラウンダーのクロスを送ると、川崎FのDFラインがクリアしきれずに、ファーサイドで待ち構えていたDF安田が、フリーで流し込む。前日にニューヒーロー賞を獲得した安田が、貴重な先制ゴールをもたらした。
追いつかなければならない川崎Fは、MF久木野、MF河村、FW黒津を投入するも、G大阪のGK藤ヶ谷の好セーブもあって、ゴールは奪えず。結局、1対0でG大阪が勝利し、初めてのナビスコカップを獲得した。
■ 決勝というステージで・・・カップ戦の決勝ということで、やや立ち上がりは硬さも見られたが、両チームとも、次第にいつものサッカーを取り戻し、カップ戦の決勝らしくない、好ゲームとなった。
川崎Fにも、十分な数のチャンスはあって、チーム力は互角であった。しかし、昨シーズンの最終戦で敗れてACLの出場権を失い、その代わりにACLに出場したのが川崎Fで、その川崎Fがベスト8に入るという、なんとも悔しい思いをしてきたG大阪の意地が大きなエネルギーとなって、紙一重の勝敗を左右したように思う。
両チームとも、勝ちたいという気持ちは同じだったが、いろいろな経緯があって負けられないという気持ちではG大阪が上回っていた。
■ 西野監督の決断ヒーローとなったのは安田であるが、その安田を先発で起用した西野采配が光った。
ここ最近、安田はベンチに回ることが多く、橋本が左サイドバックに回る形式が、ここ最近のG大阪の基本形であった。そして、安田の代わりにスタメンで起用されるようになったMF寺田の運動量と技術がチームを助ける働きをしてきたので、当然、ファイナルも寺田を起用してくると思われたが、安田を大抜擢し、見事に結果を残した。
このあたりは、非常に頑固な西野氏らしい采配であると感じる。
川崎Fの右サイドバックの森は非常にスピードのある選手なので、橋本ではやや危ういと考えたのかもしれないが、セオリーでは安定感のある橋本を左サイドでスタメン起用したほうがリスクは少ない。
ただ、これまでも、再三にわたって見られた采配ではあるが、西野監督としては、スタメンを決定するときに、今シーズンのベストの布陣(開幕から続けてきたシステムと選手起用)でファイナルを戦いたいという衝動に駆られたのではないかと推測する。
今年の天皇杯での敗戦でも議論されたが、西野監督の「情」によって、G大阪はこれまでも、何度か取れそうなタイトルを落としてきたが、この日は、功を奏した。勝利のために非情になりきれない部分は、西野氏の監督としての最大の欠点ではあるが、最大の魅力でもある。
■ 値千金のプロ初ゴール決勝ゴールを挙げた安田は、これがプロ初ゴール。これまでも、積極的にゴールを狙ってプレーしてきたが、なかなか得点には結びつかなかったが、この大一番のためにとっておいたかのような最高のシチュエーションでの初ゴールとなった。
この試合は、前半はやや抑え気味だったが、後半に入ると、積極的にオーバーラップし、川崎Fの森を圧倒し、サイドを制した。前回の対戦では、森に完敗した安田だったが、この日は、見事にリベンジを果たした。
本職はサイドバックではないが、この1年間で守備力も格段に進歩し、もう不安のないレベルにまで達することができたように思う。アタッキングエリアで臆することなくドリブルで勝負の出来るサイドバックは、今年の日本には存在しなかった。
彼については、外見上、頭は悪そうに見えるが、ことサッカーに関しては、相当にクレバーで優秀な選手であると思われる。もちろん、そいうい選手だからこそ、19歳でG大阪でポジションを獲得したわけだが、欠点であるクロスの精度を磨いて、今までの日本サッカーの常識を破るサイドバックになってほしい。
■ シジクレイの大きさMVPは安田に決定したが、安田と同じくらい、シジクレイの活躍も目立った。3度ほど、軽率なパスミスがあったことはマイナス面だが、90分間にわたって、川崎Fのハイボールをほとんど1人ではね返したプレーは賞賛に値する。
特に、フィジカルの強いチョン・テセに対しても、まったく動じることなく、圧倒し続けた。スピード不足は否めないが、単調な攻撃を相手にするときは、ほとんどシジクレイが跳ね返した。
このシジクレイも35歳となって山口も30歳を迎えている。攻撃的なチームだからこそ、余計に、CBのプレーは重要であるが、シジクレイ&山口の後釜は、簡単に見つかりそうもない。
■ G大阪優勝の意義意外にも、西のチームがナビスコカップを獲得したのは、初めてである。完全に、「東高西低」のサッカー界において、この意義は小さくない。
現在の日本サッカー界は、完全に「東日本」が主体である。浦和レッズ、鹿島アントラーズ、横浜Fマリノスといったチームが常に、Jリーグでタイトルを争ってきて、静岡の2チームを除くと、それ以外のチームは蚊帳の外という状態が長かったのである。
ただ、時代は変わりつつあって、G大阪やサンフレッチェ広島のユースチームからは、毎年のように逸材が輩出されているし、九州の高校からは、すでに何人もの代表選手が生まれている。
何だかんだで関東のチームが優遇されている状態で、その状態を打破するためには、やはり結果が必要だった。G大阪は、その抵抗勢力の中心でなければならないし、また、この日の勝利で、その資格を得た。
■ もうひとつ上のステージへ・・・この優勝は、G大阪をもうひとつ上のステージに押し上げることだろう。浦和レッズ、鹿島アントラーズ、川崎フロンターレという3強を撃破した末のタイトルは、チームに自信と希望を植えつけるに十分である。
これからのG大阪に課された使命は、ずばり、現時点で、日本サッカー界の中で独走しつつある浦和レッズに対抗していくことである。浦和レッズには素晴らしいスタジアムがあって、毎試合のように5万人以上のサポーターがさいたまスタジアムに集まってくる。経営も順調で、Jのレベルを超越しようとしている。この使命は簡単ではないが、彼らであれば、可能なはずである。
■ 「強さ」だけではない「美しさ」そのためには、今後も、「強さ」だけではなく「美しいサッカー」を追求していってほしい。
どちらかというと現実的な浦和レッズのサッカーに対して、G大阪のサッカーは非効率的な部分もある。それが、これまでにいくつかのタイトルを失う要因となっていることは確かだが、それでも、現実的に戦うG大阪に魅力は感じないし、らしくないのである。
基本的には、「勝てるチーム」を作ることは非常に難しいことだと思うが、「美しいチーム」を作ることは、それよりもずっと難しいことだと思うし、意義のあることだと思う。
記録用紙に残るのは「勝てるチーム」であるし、タイトル数は「勝てるチーム」の方が多くなるのかもしれないが、人々の記憶に残るのは、間違いなく「美しいチーム」の方なのである。
ナビスコ王者にふさわしいチームが、その称号を手にした。
■ 痛かったマギヌンの不在一方の川崎Fは、あと一歩のところでタイトルを逃した。FWジュニーニョの決定機など、G大阪と同数以上の決定機を作っていただけに、惜しい敗戦となった。実力的には、まったく互角だったといえる。
ただ、1つ悔やまれるのは、MFマギヌンが出場停止でいなかったことである。MFマギヌンの代わり入ったMF大橋のプレーも悪くなかったが、ジュニーニョとチョン・テセのスピードに苦戦していた前半に、MFマギヌンのような3人目の動きの得意な選手がいれば、G大阪としてはかなり脅威だっただろう。
また、スーパーサブ的な存在のMF大橋がスタメンで出場したことで、攻撃的なカードがFW黒津とMFフランシスマールくらいしか残っていなかった。控えに、MF家長、FW播戸、FW前田、MF寺田がいたG大阪と比べると、ベンチの層の薄さは否めなかった。
関塚監督の考え方次第だが、もう少し早い時間帯にFW黒津を投入して、FWジュニーニョとFWチョン・テセとFW黒津の3トップに変更しても面白かった。
- 関連記事
-
>>> くうさん
コメントありがとうございます。
おっしゃるとおり、試合内容といい雰囲気といい非常にいいファイナルだったと思います。国立の試合運営だけは、いまひとつだったとはお思いますがね・・・。
>>> へろへろさん
イーブンな試合だと思いましたが、先制ゴールが大きかったですね。川崎Fが先制ゴールを挙げていれば、一方的な展開もありえました。
安田のコメントについてですが、本人も反省しているようなので・・・。悪意のあるコメントではないように思いますが、フロンターレ側からすれば気分のいいインタビューではなかったことは間違いないです。
>>> ネロさん
そういう程度の低いコメントは、どこか別の場所でしてください。フロンターレサポならびに他サポの方の気分を害するような発言は慎んでください。
つまり川崎サポーターとしては安田に「川崎は強かった。
勝てるとは思えませんでした」とでも言って欲しいのかね?
19歳のガキの照れ隠しのコメントにマジギレして、カッコ
悪いんじゃないの?
悔しい気持ちは次の試合にぶつければ済むこと。
試合後のエール交換さえできないようじゃ、「新興クラブの
サポなんてこんなもんだよね」と思われても仕方が無い。
通りすがりの川者ですが。
確かにガンバは強かったですね。
うちも頑張ったけれども、やっぱり足らないものがあった。
それがACLノックアウトステージ敗退であり、
昨日の準優勝だと思います。
ですが、今後も川崎は川崎らしく。
この借りはこの先にきっと返していきます。
横レスですが、くうさん。
ブーイングが出たのは安田選手のコメントがあまりにあまりだったからです。
自分は勝者には、MVPには賞賛を与えたかったですが、
あの場であのコメント。耐えられませんでした。
それでもがっかりだと仰るのであれば、構いませんが、
そういう事情もあるのだとご承知おきください。
あの場にいた方なら、少しはお分かりいただけると思いたいのですが。
国立に観戦に行きました。(清水サポですが)
両サポともに大入りで、試合内容と合わせ素敵な試合だったと思います。
ただ、最後の安田選手のインタビューでの川崎サポのブーイングは正直がっかりです。ガンバサポのフロンターレコールにも応えないし…。
両チーム好印象だっただけに、最後の後味が悪くて、少しだけ残念でした。
トラックバックURL:https://llabtooflatot.blog.fc2.com/tb.php/802-01d707f6
今回の話題の商品紹介はこちら!安田初タイトルでコーラファイトだデイリースポーツ“自力”でつかみ取る初のタイトルだ。未成年のため、優勝後のシャンパンファイトは隔離されるが「コーラファイトっす」と勝利の“美コーラ”を思い描いている。 23歳以下が対象のニュー?...
| トップページ | 人気ブログランキング | Jリーグブログ村 | 全記事一覧 (2018年-2023年) | お気に入りに追加 |