■ ファイナルの舞台ついに迎えたACLのファイナル。初のアジア制覇を目指すガンバ大阪は、準々決勝で鹿島アントラーズ、準決勝でウズベキスタンのクルブチを破ったオーストラリアのアデレード・ユナイテッドと対戦。アデレードの監督は、元サンフレッチェ広島のMFビドマー氏。1998年から1999年の2年間、広島でプレーした。
初戦をホームの万博で戦うG大阪は<4-5-1>の布陣。GK藤ヶ谷。DF加地、山口、中澤、安田。MF橋本、明神、二川、遠藤、佐々木。FWルーカス。FW播戸、FWロニー、FW山崎はベンチスタート。
■ ルーカスの先制ゴールから・・・どちらかというと立ち上がりに不安のあるG大阪だったが、この日は、始めから全開。左サイドバックのDF安田と右攻撃的MFのMF佐々木が果敢に1対1で仕掛けて相手に圧力を加える。
前半の20分あたりから、ややアデレードが盛り返し、G大阪が攻めあぐめるシーンが多くなったが、しかし、前半37分にMF二川の裏のスペースへのラストパスからFWルーカスがGKと1対1になると、落ち着いて決めて先制。
さらに、前半42分にも、MF佐々木のパスカットからFWルーカスにボールが渡ると、そのFWルーカスからのパスを受けて左サイドに流れたMF遠藤が、そのまま左足で流し込んで貴重な2点目を挙げる。
後半は立ち上がりからアデレードがやや前掛かりになってくるが、後半23分にMF遠藤の左CKからDF安田がダイレクトで決めて3対0。その後も、何度かゴールチャンスを迎えたG大阪は、アデレードを圧倒。アウェーでの戦いに向けて、大きなアドバンテージを得た。
■ 圧倒的なボールテクニック体格差のあるアデレードとの対戦だったが、G大阪の選手は落ち着いていた。
中でも、相手が飛び込めそうな位置にボールを置いて晒すプレーが秀逸。相手をギリギリまで引きつけてパスを受ける味方がプレーしやすい環境を、連続で作り出す。それは、MF遠藤やMF二川といったボールテクニックのある選手だけでなく、MF明神やMF橋本、DF加地といったバイプレーヤーまでもが、そういうボールの持ち方が出来る。その点で、異質である。
アデレードのディフェンダーは190cmオーバーの選手が揃う巨人軍団だったが、彼らは、170cmそこそののMF二川やMF佐々木やFW山崎らのプレーに90分間、翻弄され続けた。アデレードの選手の体格の良さは、G大阪の選手を前にしたら、ディス・アドバンテージでしかなかった。
■ 1トップのルーカスこれまでは、2トップが多かったG大阪だが、FWロニーを外しFWルーカスの1トップでスタート。切り札的存在となっているMF佐々木をスタメンで抜擢した。中盤とサイドを厚くする<4-5-1>は、アデレードに対して、非常に有効に働いた。
1トップを努めたFWルーカスは、1ゴール1アシストの活躍。序盤は、アデレードの厳しいプレッシャーもあって、シュートチャンスを作れなかったが、前半37分のゴールで試合の流れを一気に引き寄せた。その後、MF遠藤のゴールもアシストした。
スペースの出来た後半は縦横無尽にピッチを走りまわり、FWロニーの投入のあとは、攻撃的MFに下がって守備でも貢献。攻守に抜群の存在感を見せた。
■ 休むことの無い遠藤保仁大黒柱のMF遠藤はこの試合でも、1ゴール1アシストの活躍。もちろん、ゴールに絡むシーン以外にも、つなぎや守備でも、多大な貢献をした。相手チームのマークが徹底されていなかった面もあったが、多くの場面でフリーでボールを受けて、攻撃を牛耳った。
思えば、2年と少し前、MF遠藤保仁はドイツW杯のメンバー入りは果たしたが、試合に出場することはなかった。あの屈辱をバネに、MF遠藤はまだまだ、進歩している。20代後半の時期に、これだけ、着実にプレーヤーとしてステップアップできる選手は、稀である。
多くの日本人が絶望感を味わったあの試合と同じオーストラリア人のチームを相手に、MF遠藤が率いるチームは、ファイナルという舞台で、「知力」と「想像力」と「技術」で圧倒した。
■ ガンバらしいサッカーで・・・後半の10分過ぎ当たり、ややパスミスが増えてリズムが悪くなったが、それ以外の時間帯は、パーフェクトな戦いぶりだった。西野監督は2点リードにもかかわらず、FW山崎、FWロニーと次々に前線の選手を投入。最後まで、攻撃サッカーを貫いた。
ロスタイムのMF遠藤のフリーキックやFW山崎のゴールが決まって入れば、4点リードという最高の状態でオーストラリアに遠征することが出来たが、それでも、3点リードをひっくり返される可能性は、限りなく低いだろう。G大阪は、初のアジアチャンピオンを、自らの手でたぐい寄せた。
アジアチャンピオンズリーグというこの試合。いったいどれだけのアジア人が注目して観戦したのかは分からないが、その多くは、G大阪の「ガンバらしいサッカー」に魅了されただろう。「出来すぎ」という表現も出来そうなくらい、完璧な試合だった。
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