■ 「決定力」とは以下が、J1の第22節終了時点での、全チームの決定機の回数とゴール数である。どれだけ、決定機を作れるかで、そのチームのもつ攻撃力が図れるが、大体、イメージどおりに、攻撃力があると思われるチームが、決定機の回数においては、上位に食い込んでいる。
決定機の回数(J1:第22節終了時点)
ガンバ大阪 → 134回 (得点:46点)
浦和レッズ → 113回 (得点:40点)
ジュビロ磐田 → 110回 (得点:39点)
清水エスパルス → 107回 (得点:36点)
川崎フロンターレ → 106回 (得点:41点)
サンフレッチェ広島 → 106回 (得点:33点)
アルビレックス新潟 → 101回 (得点:36点)
ヴァンフォーレ甲府 → 99回 (得点:26点)
鹿島アントラーズ → 98回 (得点:34点)
名古屋グランパス → 93回 (得点:31点)
ジェフ千葉 → 93回 (得点:27点)
横浜Fマリノス → 93回 (得点:40点)
FC東京 → 88回 (得点:28点)
ヴィッセル神戸 → 83回 (得点:34点)
大分トリニータ → 80回 (得点:25点)
柏レイソル → 71回 (得点:27点)
大宮アルディージャ → 63回 (得点:14点)
横浜FC → 42回 (得点:16点)
そして、この統計から、決定機の何パーセントがゴールに結びついているかを考えると、どれだけ多く見積もっても、35%程度であることが分かる。面白いことに、決定機の回数では雲泥の差がある、1位のガンバ大阪と18位の横浜FCだが、決定機を得点に結び付けた割合に関しては、ほとんど同じであることに気づく。したがって、横浜FCの低迷の理由を、「決定力不足」とすることは、ありえないと断言できる。
ガンバ大阪の攻撃陣は、Jリーグでも最高の部類で、ほとんどの選手が日本代表クラスの選手であるが、一方の横浜FCには、代表選手が1人もいない状況にも関わらずである。
■ 魔法の言葉「決定力不足」という言葉を最初に言い出した人は、実況アナウンサーの金子勝彦さんが、滞空時間が長くて、鮮やかな放物線を描いてゴールマウスに吸い込まれていくシュートを表現するために、「ループシュート」という言葉を生み出したことと同じくらいの功績があるだろう。
「決定力不足」は、魔法の言葉であり、試合を分析するとき、敗戦や苦戦の原因を、「決定力不足」になり付けることで、その後の作業を、非常に簡単なものにすることができるのである。
例えば、テレビ局がオーストラリア戦をニュースとして扱うとき、前半にFW田中達也がシュートをバーに当てたシーンや、前半のロスタイムに中村俊輔が稲本潤一からのパスを受けて、GKと1対1に近い形になりながらも、決め切れなかったシーンを繰り返し扱って、「決定力不足ですね・・・。」とコメントすれば、たいていの視聴者は、敗因が「決定力不足」であったかのような印象を受ける。
実力が拮抗したチーム同士の試合の場合、たいてい、各チームは、1試合に、4度あるいは5度ほどの決定機を生み出すが、結局、そのうちの1度あるいは2度しか、ゴールに結び付けられずに終わる。したがって、1点差で敗れた試合の場合、ほぼ100%の確率で、「あのシュートが決まっていたら・・・。」というシーンが発生する。このシーンを、編集で利用すれば、どんな試合でも、「敗因は、決定力不足です。」という結論を導き出せるのである。
まずは、決定機を作っても、相手GKにセーブされたり、相手DFにブロックされたり、外的要因でも防がれる可能性があることを理解し、決定機の7割はゴールに結びつかない、ということを、しっかりと認識しなければならない。そうでないと、今、現在、「日本代表は決定力不足だ。」と考えている人は、2010年になっても、2014年になっても、2018年になっても、「決定力不足」に悩まされるだろう。
■ 「決定力不足」という言葉は封印しなければならない。日本代表において、「決定力不足」を敗因として語ることは、もうやめにしないといけない。「決定力不足」は、すぐに解決する問題ではないし、おそらく、上記のようなレトリックがある限り、永遠に解決することの出来ない性質のものである。(ごくたまに、本当の意味で、「決定力不足」が原因で、試合を落とすこともあるが、これは、かなり例外的である。)
かつてのトルシエ監督は、「決定機を多く生み出すこと」で、得点力不足という課題に取り組んで、一定の成果を得た。
簡単に、「決定力不足」という言葉を使う人は、「試合を分析していない人」か、「試合を分析できない人」か、「大衆を欺こうとする人」か、「分析を怠る怠け者」のいずれかである。
- 関連記事
-
亀レスの亀レス、失礼します。確かに「他の敗因」をきっちりと探す(分析し指摘する)作業も大切ですね。しかし、少なくともいわゆる世界のビッグクラブは、「特別な(得点力のある)FW」を手に入れることに必死ですよ。そういう一面があることも否定はできないかと思います。
はじめまして
亀※ですが・・・
決定機をいかに多く演出するか、が得点力アップに直結するのはまさにそのとおりだと思いました。
では決定機とは?どういう基準?
それは、結局、試合が終わった後に振りかえって、あそこが決定機だった、と(いわば、結果論的に)論じられるのではないでしょうか?
または気の早い人なら3分後、5分後に言うかも。
とするなら、前線の選手に求められるのは、その瞬間、瞬間に、一瞬の判断で、「ここで決めないと!(もうチャンスはないかも!)」という研ぎ澄まされたゴールへの嗅覚ということになるでしょうね。
個人的には決定力不足という言葉はトップ下が決定的なパスを出してFWが決めるという王様システムとセットになった言葉な気がする。
だから俊輔の代表引退と共にFWの決定力不足って言葉は日本代表から亡くなったんじゃないかな?
「決定力不足」を「日本人FWの得点力不足」と捉えるべきではないでしょうか?
あえて「日本人」と「FW」としたのは、
1.Jで得点ランク上位にいるのは主に外国人選手であるため、
2.MFやDFの得点を期待するのは、基本的に間違いであると考えるため、
です。
2.について補足します。もちろんランパードやジェラードのように、異様な得点力を示すMFや田中のようなDFもいますが、どの国のリーグを見ても得点ランク上位は基本的にFWです。やはりゴールに近い人が点を決めると考えて監督はチームを構成するのではないでしょうか。
この原因として2点。日本(代表およびJ)ではFWにゲーム作りや守備まで要求しており、純粋にゴールを求めることができないのではないでしょうか?また外国人FWほどエゴイスティックにゴールに向かえない日本人的な謙虚さ(悪く言えば責任逃れ)が大きな問題かと思います。
極論をすれば、日本人FWの得点しか認めないとするルールでも作らない限り解消しないでしょうね(ありえませんが)。
せめて外国人FWの登録制限(シーズン10点取ったらもう試合に出れないとか)は行うべきかと思います。Jリーグが成熟し、ビッグネームの外国人FWがいない現在がタイミングとしてちょうど良いのではないかと思います。
決定機も決定力も不足しているんだと思います。
それは↑のような数字で現れるものなんかではなく。
決めるべきとこで決めていれば数字が悪くても
そんな印象は受けないし、話しに出ないでしょう。
>>> takaさん
確かに、傾向として、「正確に蹴る技術」が、日本では、やや軽視されてきている感じはします。
>>> ryuさん
どうもコメントありがとうございます。
どう基準でカウントされているんでしょうかね。この数字は、サッカーダイジェストからの引用です。サカダイで、一定の基準があるのではないかと思われます。
ただ、例えば、「CKから相手DFと競り合って、ヘディングでゴール」というシーンや、「意表を突く超ロングシュートでゴール」というシーンは、ゴールにはなったものの、決定機としてはカウントされていないように思います。したがって、「決定機をゴールに結びつけた割合」というのは、ここで書いた確率よりも、もっと低くなると思われます。
>>> conticさん
確かに、オーストリア戦でも、「田中達也がポストに当てたシーン」は、他の決定機よりも、ゴールに結び付けられる確率が高かったように思いますので、得点の可能性が高い決定機だったといえますね。
>>> HemRockさん
どうも、コメントありがとうございます。
当然、「決定機を外したこと」が、敗因になる試合もあるのですが、現状は、何度もかんでも、敗因を決定力不足にもっていってしまいます。それは、明らかに、問題だろうと思います。
おっしゃるとおり、「バランス」が大切です。「得点が多ければOK」、「失点が少なければOK」という単純なものでもないと思います。
>>> ひきさん
どうも、コメントありがとうございます。
セリエAやプレミアリーグは、優秀なFWが多いので、Jリーグよりも、「決定機を得点に結びつける確率が高い」かもしれないですが、それだけ、優秀なGKやDFも多いので、結局は、同じくらいの数字になるのではないでしょうかね?
代表レベルだと、試合数自体が少ないことと、対戦相手のレベルが異なるので、傾向を見るのは、難しいように思います。
とりあえず、得点を奪うためには、決定機を多くすることが大切ですし、ジーコ前監督が行っていたように、シュート練習を多く行って、シュートへの意識を高めることも、一定の効果はあるのではないでしょうか?
>>> 芋煮鍋さん
どうもコメントありがとうございます。
まあ、そんな感じでしょうか。
確かに、決定力不足論は、原因なき結果論だと思います。
ただ、それにしても、「決定機」の定義・範囲が問題でしょうね。
シュートで終わらない決定機もある訳ですから、「ゴール枠に飛んだシュート数」とイコールではないでしょうし。
例えば、観戦者の65%以上が、「あ~あ」「かぁ~」と残念がった場合とか。まぁ、決定機に関する大体のコンセンサスはあると思いますが。
35%と言えば、野球の打率だと3割5分。4割だったら歴史に残る超強打者ですからねぇ。
決定力率がほぼ一定だとすれば、やはり決定機を増やすしかないですよね。
ただ、決定機の中でも、更にケースを分析すれば、より得点率の高い「カタチ」が見えて来ると思います。
はじめまして。サポティスタから来ました。
とても興味深い考察だと思います。
が、そもそも「決定機」って、どういう基準でカウントされてるんですか?
日本の決定力不足はイタリアやフランスのそれとはレベルが違います。
ヨーロッパレベルではイージーに見える場面でもシュートすら打てない。また打っても枠へ飛ばない。
ようするに決定力不足というより技術力不足です。
FWからGKまで、素早く、強く、正確に蹴る事が出来てないんです。
では、決定機創造力不足とでも…
たいへんおもしろいデータをありがとうございました。これって、国の代表でも成立する傾向なのでしょうか?Jリーグの場合は、大抵はFWに外国人がいるので、そのレベルが同じなら、こういうデータになることに不思議はありません。しかし、ブラジルやイタリアと日本でも同様な結果が得られるのでしょうか。これ、凄く興味ありますね。もしそうなら、トルシエやオシムがやっているように、チャンスの数を増やすことが、現実的にも理論的にも最も優れた方法だといえるのではないでしょうか。
大いに同意!私も言いたいことでした!
A代表千葉勢における批判や、決定機に外したFWに対する評価を見るたびに、「違うんじゃないかな」と思ってました。
世界のビッククラブにおいても、「絶対的な決定力」を持つ選手なんて、いないのではないですか?見てないので解りませんが。普通に考えても、全てのチャンスを得点にするなんて、どんなスポーツでも無理かと。
おっしゃる通り、「決定機をいかにして多く作り出すか」そしてそれは、単に攻めることだけを考えるわけでなく、守備時のことも念頭に置いたのであるとおもいます。上手く言えませんが、「バランス」的なものと思います。
なので、そのせめぎ合いが、試合を見る上での最高の楽しみであり、そこに至る、選手の瞬時の判断・監督の戦略をいろいろ勝手に推測するのが面白いいんですものね。
其れを「決定力不足」で片付けてしまう愚かさ。試合の楽しみを放棄してると思わざるを得ません。
いやはや、本当、大いに賛同する次第です。・・私も十分気をつけたいところですはい。
>>> チャンさん
どうも、コメントありがとうございます。
クロアチア戦は、もっと分かりやすい例ですね。あの試合は、2度しか、決定機はなかったと思いますが、それでも、試合後は、「決定力不足」という報道でしたね。分かりやすい問題点が、もっと他の部分にあったと思いますが・・・。
試合を見ていれば、決定機を作っても、それが、イコールゴールに結びつかないことは、分かると思うのですが・・・。残念です。
試合を振り返るとき、「決定機を何度、作れたか」は、もっと重視されていい数字のように思います。
ドイツでのクロアチア戦について、マスコミは決定力不足をかなり叩いていたと思います。(柳沢を筆頭に)
ただあの試合は、そもそもまともなチャンス自体がクロアチアの半分ぐらいだったと思います。決定力不足(好きな言い方ではないです)というよりは、決定機不足のほうがふさわしいと思ってます。
オーストリア戦を見ても思いますが、もっともっとチャンスを作らないといけないと思います。
オーストリア戦
トラックバックURL:https://llabtooflatot.blog.fc2.com/tb.php/724-e1ac96bc
管理人の承認後に表示されます
| トップページ | 人気ブログランキング | Jリーグブログ村 | 全記事一覧 (2018年-2023年) | お気に入りに追加 |