■ 精彩を欠いたイラク戦の本田圭佑アジア最終予選の3戦目でイラクと対戦した日本は後半50分に途中出場したMF山口蛍(C大阪)が見事なミドルシュートを決めて2対1で劇的な勝利を飾った。その後に行われたUAE vs タイは3対1でホームのUAEが勝利したので日本は4位に転落したが、2連勝同士の直接対決となったサウジアラビア vs オーストラリアは2対2のドロー。首位のオーストラリアならびに2位のサウジアラビアとの勝ち点差が「1」に縮まった。
サウジアラビア vs オーストラリアが引き分けに終わったのは日本にとってはラッキーだった。次のオーストラリア戦(A)で勝利すると2位以内に浮上することができるが、状況を考えると「オーストラリア戦は引き分けでもOK」と言える。もちろん、勝ち点「3」を獲得できるとその後の戦い方が楽になるが、まだ序盤から中盤戦であることを考えると無理をして勝ち点「3」を狙いにくい必要性は全くないと言える。
勝ち点差が縮まったことで精神的な余裕が生まれて戦い方にも幅が出てくると思うが、先のイラク戦(H)はロンドン世代のMF清武(セビージャ)とMF原口(ヘルタ)とMF山口蛍(C大阪)の3人が目立った一方で、これまでずっと代表を支えてきたMF香川(ドルトムント)とDF長友(インテル)はベンチスタートで出番なし。MF本田圭(ACミラン)は右SHでスタメン出場したがミスが目立った。精彩を欠いて途中交代となった。
■ 本田圭佑をスタメンから外せない4つの理由「日本代表の中で徐々に世代交代が進行しつつあるのでは?」ということを感じる試合になったが、スタメンで出場したMF本田圭のパフォーマンスに関しては批判の声が集まっている。結局、後半34分にMF小林悠(川崎F)との交代でベンチに下がったが、1点を争う緊迫した試合で絶対にゴールが欲しい状況であるにもかかわらずMF本田圭がベンチに下げられるというのは日本代表の試合では非常に珍しいことである。
この交代は思い切った選手交代だったが、残念ながら交代で投入されたMF小林悠はほとんど見せ場を作れなかった。MF山口蛍のヘディングシュートにつながったDF酒井宏のクロスを引き出したプレーは目立ったが、その他では印象に残るプレーはなかった。ゴール前で仕事のできる選手が欲しいタイミングだったので、MF小林悠の投入自体は正しい策だったと思うが、成功したかどうかは微妙である。
MF本田圭に関しては所属のACミランで出場機会に恵まれていないことが原因となるコンディションの悪さを否定するのは難しいレベルのパフォーマンスだったが、「MF本田圭は代表には不要なので別の選手を起用しよう。」となるかというともちろん「No」である。言うまでもなく、簡単にはスタメンから外せない選手であり、よほどのことがない限り、当分はレギュラーから外されることはないだろうと考えられる。
その理由としては以下の4点が挙げられる。イラク戦(H)では不動のレギュラーとしてずっと扱われてきたDF長友とMF香川の2人がベンチスタートになるなど最近のハリルホジッチ監督は「その時点でのベストの11人」をスタメン起用する傾向が強くなってきたがMF本田圭に関しては特異なプレースタイルであることも絡んで「MF本田圭と同じような仕事ができる日本人選手は現時点では他にはいない。」と言える。
(1) 近年の日本代表の攻撃陣の中で誰よりも結果を残している。→ 「誰よりも日本代表で結果を残してきた。」という明らかな事実がある。表1はアギーレJAPAN以降の個人成績をまとめたものであるが、MF本田圭はゴール数もアシスト数もともに全選手の中で1番多くなる。24試合に出場して13得点/8アシストというのはかなりの数字である。直近の2試合については直接的にゴールに絡めていないが平均するとほぼ1試合に1回はゴールかアシストを記録している計算になる。
もちろん、これまでに対戦したチームのほとんどがアジアの国なのでワールドクラスのチームと対戦したらゴールやアシストのペースは間違いなく落ちるとは思うがアジアの国が相手であったとしてもこれほどハイペースで得点に絡める日本人選手を探し出すのはほぼ無理である。これまでの活動を通して十分すぎるほどの結果を残してきた選手を2・3試合の不出来でスパッと切るのはノーマルなことではない。
表1. アギーレJAPAN以降の個人別の成績 (出場時間のベスト20)
ポジション | 名前 | 試合数 | 先発 | 途中出場 | 出場時間(分) | シュート数 | 得点 | アシスト |
DF | 森重真人 | 25 | 25 | 0 | 2,279 | 24 | 1 | 3 |
DF | 吉田麻也 | 24 | 24 | 0 | 2,184 | 28 | 7 | 0 |
MF | 本田圭佑 | 24 | 21 | 3 | 1,928 | 99 | 13 | 8 |
MF | 長谷部誠 | 21 | 21 | 0 | 1,869 | 20 | 0 | 2 |
FW | 岡崎慎司 | 25 | 22 | 3 | 1,768 | 66 | 10 | 1 |
MF | 香川真司 | 22 | 19 | 3 | 1,635 | 48 | 8 | 5 |
DF | 酒井高徳 | 18 | 17 | 1 | 1,547 | 10 | 0 | 0 |
DF | 長友佑都 | 17 | 17 | 0 | 1,539 | 11 | 0 | 3 |
GK | 西川周作 | 15 | 14 | 1 | 1,269 | 0 | 0 | 0 |
GK | 川島永嗣 | 13 | 13 | 0 | 1,191 | 0 | 1 | 0 |
DF | 酒井宏樹 | 12 | 12 | 0 | 1,051 | 5 | 0 | 2 |
MF | 山口蛍 | 12 | 10 | 2 | 890 | 12 | 2 | 3 |
FW | 宇佐美貴史 | 18 | 8 | 10 | 790 | 42 | 3 | 4 |
FW | 武藤嘉紀 | 19 | 7 | 12 | 768 | 18 | 2 | 2 |
MF | 柴崎岳 | 13 | 7 | 6 | 743 | 14 | 3 | 1 |
DF | 槙野智章 | 9 | 8 | 1 | 740 | 6 | 0 | 0 |
MF | 清武弘嗣 | 13 | 7 | 6 | 694 | 20 | 2 | 5 |
MF | 原口元気 | 14 | 6 | 8 | 670 | 23 | 4 | 1 |
MF | 柏木陽介 | 7 | 5 | 2 | 419 | 3 | 0 | 1 |
(2) ピッチ上にいるだけで相手のマークを集中させることができる。→ 言うまでもなく日本人選手の中ではMF香川と並んでもっとも名前が知られている選手なので特にアジアの国と対戦するときはMF本田圭の自由を奪おうとどのチームも対策を練ってくる。キープ力が高くて相手のマークを引き寄せることが出来る選手であるが、名前と顔でも相手にプレッシャーをかけることができる。その結果として周りでプレーする選手は少し楽な状態でプレーすることができている。
(3) 左利きの選手ならびに左利きのプレイスキッカーは貴重。→ 最近はMF柏木(浦和)がボランチで起用されるケースが増えており、ベンチには高度な左足を持つDF太田宏(フィテッセ)も控えているが、ハリルJAPANは左利きの選手がそもそもとして少ない。ピッチ上に左利きのキッカーがいないとセットプレーのときに相手に与える脅威は半減する。MF柏木も常時スタメンというわけでないが、その上、MF本田圭も外れるようだとセットプレーに関しては期待薄となる。
(4) セットプレーの守備のときに重要な役割を担っている。→ MF本田圭は182センチとサイズがあって空中戦に強い選手である。なのでセットプレーの守備の局面で重要な役割を担っているが、アタッカー系の選手でこの役割をこなせる日本人選手は少ない。空中戦の強さに関してはスタメン11人の中でDF吉田とDF森重に次いでチームで3番目だと思うが、イラク戦(H)のときは相手のCKの場面ではストーン役としてニアサイドに入ってきたボールを跳ね返す役割が与えられた。
MF小林悠はまずまず空中戦に強いのである程度のレベルで同じ役割を果たせると思う。また、MF武藤嘉はジャンプ力があるので同様にそれなりのレベルで貢献できると思うが例えばMF宇佐美やMF齋藤学のような選手をMF本田圭の代わりにスタメンで起用した場合、相手のセットプレーの場面でゴール前に入って来たボールを跳ね返す力が極端に弱くなってしまう。この点はMF本田圭を外しにくい大きな理由である。
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