■ 3位と好位置につける長崎J2は14節が終了して、神戸が勝ち点「30」で首位を走っている。勝ち点「27」で2位のガンバ大阪が神戸を追う形になっているが、この2チームについては、開幕前から評価が高かったので大きな驚きはない。順当な順位に落ち着いていると言えるが、最大のサプライズに挙げられるのは、高木琢也監督率いるV・ファーレン長崎が勝ち点「26」で3位に付けていることである。
0勝2敗1分けからスタートだったが、4節以降は7勝4分けという成績で、11試合負けなしが続いている。JFLからJ2に上がって来たチームは苦戦するのが当たり前で、2012年は昇格1年目の松本山雅が12位に入ったが、「よく頑張った。」と称えられた。昇格1年目のチームは下位に低迷することが普通であるが、大方の予想を裏切る快進撃を見せている。
DF山口、DF高杉といったJ2経験の豊富な選手を補強出来たことが大きかったが、JFL時代からチームを支えてきた選手の活躍も目立っており、特に、ストライカーのFW水永とボランチのMF岩間のパフォーマンスが光っている。ゴリゴリ系ストライカーのFW水永は、ここ最近、マークが厳しくなったこともあって、ゴール数が止まっているが、フィジカルの強さと空中戦の強さは見事である。
■ ハードワークが持ち味の岩間一方のMF岩間は、派手なところは一切感じられないが、90分を通してハードワークできる選手で、今シーズンの躍進を支えている選手の1人に挙げられる。「職人」を感じさせるプレースタイルで、余計なことはせずに、与えられた役割を静かに全うしようとする。先日の栃木SCとの上位決戦では前半途中に怪我で交代となったが、長崎にとっては、一番大事な選手であり、替えの利かない選手と言える。
FW水永とMF岩間の2人は長崎のサッカーの象徴と言えるが、高木監督の選手起用で面白いのは、センターラインにはハードワークできる選手を起用しているが、両WBにはアタッカータイプを置いていることである。MF金久保、MF小笠原、MF山田晃、MF古部など、2列目で起用されたときに最も力を発揮しそうな選手を、あえてWBで起用しているが、ここからチャンスを作るシーンが目立っている。
最近の試合では、左WBで起用されることの多いMF山田晃の活躍が光っていて、6節からスタメンで起用されるようになったが、すでに2ゴールを挙げている。C大阪の下部組織出身で、野洲高校ではMF乾と同級生だった。草津でも切り札的な活躍を期待された時期があったが、なかなか結果を残すことが出来ず、アメリカに渡った時期もあったが、キレ味鋭いドリブルがアクセントになっている。
■ 左足のスペシャリスト同じく野洲高校出身でMF乾やMF山田晃と同級生になる鳥取のMF田中雄大も今シーズンは出場機会を得て、プレーヤーとしての価値を高めている。即戦力という評価で2011年に川崎Fに入団したが、なかなか出場機会を得ることが出来ず、2012年の後半戦は栃木SCにレンタル移籍したが、ここでもチャンスはほとんどなくて苦しい時期を過ごしたが、鳥取ではレギュラーを勝ち取った。
左サイドのスペシャリストで、類稀な左足のキックが特徴の選手であるが、スピードや運動量といった点がJリーグのレベルでは見劣りするので、ネックになっていたが、小村監督は彼をボランチで起用して、レジスタ的に使うことで、左足が生きるようになった。5節の栃木SC戦ではミドルシュートで初ゴールをマークしたが、素晴らしい弾道のシュートだった。
伸び悩んでいた選手が再浮上するケースが多いのも、J2の面白いところであるが、愛媛FCのFW河原は復活の兆しを感させるプレーを見せている。調子ノリ世代を代表するフォワードで、本大会では大分のFW森島康と2トップを組んだが、2009年に栃木SCでブレークした後、レンタルバックした新潟では結果を出せず、ここ数年はさっぱりだったが、ここまでのところ、1トップのレギュラーを確保している。
11試合で2ゴールという数字はフォワードとしては物足りないが、ボールの受け方が上手で、起点となるプレーのクオリティーはさすがに高い。新潟時代から動き出しの良さを高く評価されており、万能型のフォワードとして将来を嘱望されたが、今シーズン、持ち味である動き出しの良さが戻って来て、2列目のMF赤井やMF加藤大などを生かすシーンが頻繁に見られる。
■ 飛躍のシーズンになりそうな選手は・・・飛躍のシーズンになりそうなのは、岡山のMF田中奏、水戸のFW山村、徳島のMF大崎、熊本のMF堀米、愛媛FCのMF三原、北九州のMF小手川、福岡のFW石津、群馬のDF増田といった選手たちである。この中で、徳島のMF大崎はリーグ戦で4ゴールを挙げているが、ボールの受け方の上手な選手で、ゴールへの意識も高い。キレもあって、レンタル先の徳島でいい経験を積んでいる。
岡山のMF田中奏は右サイドのスペシャリストで、積極果敢なドリブル突破でチームに勢いをもたらすことができる。大卒2年目となるが、これだけ積極的に縦に仕掛けられる選手はなかなかいない。不動のレギュラーと考えられていたMF澤口からポジションを奪った時期もあったが、プレースタイルの異なるMF澤口とのレギュラーン争いは熾烈である。
水戸の新人のFW山村も3ゴールと結果を残しているが、彼はFC東京U-18出身である。先のMF田中奏しかり、徳島の新人のMF藤原しかり、近年はFC東京の下部組織で育って、大学を経由してプロ入りを果たす選手が増えている。FC東京のトップチームにはあまり還元されないが、レベルの高い選手をたくさん輩出してJリーグのレベルアップに貢献している点はきちんと評価されるべきである。
「期待の若手」という話になると、どうしても攻撃的なポジションの選手が多くなってしまって、名前が挙がっている選手のほとんどが「攻撃力」に魅力を感じる選手たちであるが、その中で、群馬のDF増田は守備的なポジションの選手の有望株と言える。新潟からレンタルで群馬にやって来たが、10試合に出場しており、CBのレギュラーポジションをつかみつつある。
最近はチーム状態が上がって来ているが、5節から6連敗を喫するなど、勝てない時期も長かった。失点も非常に多かったので、守備的なポジションの選手にとってはつらい時期だったが、何と言っても、189センチの高さは魅力である。まだまだ線は細いので、強さやタフさはこれから身に付けていく必要があるが、注目の若手CBの1人であることは間違いないだろう。
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