■ 鵬翔が初優勝 今年の全国高校サッカー選手権の決勝戦は、PK戦の末、宮崎県代表の鵬翔高校が勝利して初優勝となった。ここ数年、初優勝を飾るチームが多くて、「戦国時代」と言われているが、どこが優勝してもおかしくないほど、出場校のレベルは接近している。Jリーグの下部組織に人材が流れていく中で、Jリーグのクラブを持たない宮崎県の高校が優勝したというのも、近年の流れを考慮すると、驚くべき事象ではない。
この試合も、リードされた鵬翔が粘りを発揮して、2度、同点に追いついた。準決勝の星稜戦でも、2度、追いついて、PK戦に持ち込んで勝利しているが、PK戦を制して勝ち上がってきたチームなので、選手たちはPK戦に自信を持っていた。110分で勝負が決まらなかった時点で、鵬翔の初優勝の可能性がグンと高まったと言えるだろう。
PK戦では、相棒のFW小屋松に並ぶ5ゴール目を挙げて、大会得点王に輝いたFW仙頭が1番手で登場したが、ポストに当てて、失敗してしまった。このように試合中に活躍した選手やエース格の選手がPKを決められず、敗退するというのは、サッカーではよくあるが、失敗したとしても、責められない選手をわざと神様が選んでいるのか?と思ってしまう。
■ 読売テレビの録画中継 ということで、試合は稀に見る激闘となったが、残念ながら、この試合が「名勝負」として、語られることはないだろう。「名勝負」と言われるためには、多くの人が、同じ時間に、リアルタイムで試合を観て、感動を分かち合うことも必要になるが、この試合が生中継されたのは、宮崎県と神奈川県の2つだけで、ほとんどの人は、蚊帳の外に置かれた。
この試合は、読売テレビで観ていたが、中継が始まったのは15:00で、終了予定時刻は16:25となっていた。そのため、90分で試合が終わったとしても、詰め込むのは無理なので、完璧な中継は期待しておらず、カットされるシーンが出てくると予想していたが、予想以上の作りだった。
こういう中継というのは、滅多にないと思うので、いい機会だと考えて、細かく調べてみると、今回、以下のような中継が行われた。(※ 秒に関しては、若干の誤差が発生している可能性もある。)
15:04:48 放送開始
15:04:15 試合開始 (キックオフ) 15:14:22 CM突入 (前半10分7秒)
15:16:52 前半38分53秒から再開 15:25:12 前半終了 CM突入
15:27:58 後半開始 15:32:11 CM突入 (後半4分13秒)
15:35:12 後半15分14秒から再開 15:39:32 CM突入 (後半19分34秒)
15:42:32 後半33分45秒から再開 15:57:22 CM突入 後半終了
16:00:22 延長後半開始 16:24:02 CM突入 (放送終了)
■ 放送された時間 整理すると、110分の試合のうち、きちんと放送されたのは、次の時間帯だけで、それ以外のところはカットされた。
00:00 → 10:07
38:53 → 前半終了まで
45:00 → 49:13
60:14 → 64:34
78:45 → 後半終了まで
延長戦後半のはじめ → 延長戦終了まで
まとめると、表1のようになる。延長戦に突入したので、アディショナルタイムを除くと、合計110分の試合だったが、放送されたのは、41分42秒間で、カットされたのは、68分18秒だった。(ちなみに、CMは合計7回で、19分46分だった。)これでは、どういう試合だったのか、把握するのは、難しい。
表1.
| 分 | 秒 | (%) |
中継された時間 | 41 | 42 | 37.9% |
カットされた時間 | 68 | 18 | 62.1% |
CMの時間 | 19 | 46 | --- |
■ 気の利かない不親切な中継 もちろん、いきなり試合が中止になって、19日(土)に延期されることが決まったので、関係者は苦労したと思う。「たとえ、録画中継であっても、中継してくれたことに感謝したい。」と考える人もいるとは思うが、個人的には、こういう中継になるのであれば、しないほうがマシだったと思う。「深夜でもいいので、ノーカットの試合をきちんと見たかった。」と思った人は、たくさんいるだろう。
生中継できなかったことに文句を言うつもりはない。いろいろなしがらみがあると思うので、たとえ、4日という期間があったとしても、調整するのは、難しかったのかな?と思う。ただ、延長戦の可能性があるにもかかわらず、1時間25分という時間しか確保できなかったことに対しては、どうにかできなかったのか?と思う。前半10分過ぎにCMが入って、前半38分まで飛んだ時点で、試合が延長戦にもつれ込んだことは、容易に想像できた。
そして、録画中継になったことや尺が短かったこと以上に、不満に思ったのは、編集の仕方である。CM明けは、ひどいケースでは、30分ほどカットしているが、何もなかったかのように、話が進んでいく。視聴者も事情は理解しているので、ところどころカットしていることをきちんと説明してくれたら、納得できたと思うが、何の説明もなかった。
解説の城彰二さんは、前半終了間際に「あっという間の前半45分でしたね・・・。」とコメントして、実況アナも、後半15分に「あっという間に後半15分(になりました。)」とコメントしているが、決勝戦を楽しみにしていたサッカーファンの神経を逆なでするような発言であり、全体としてみると、傲慢で、不親切で、編集した人のセンスを疑うような中継だった。
試合が延期になったこと、延長戦になったことなど、いくつかの不運はあったが、こういうアクシデントに対応できたならば、評価も高まったが、残念ながら、そうはならなかった。地上波でJリーグの試合を中継していた1993年や1994年には、こういう気の利かない中継もいくつかあったが、最近は、地上波であっても、至らない中継は減ってきている。少なくともここ15年のサッカー中継の中では、最低レベルだったと言わざる得ない。
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