■ 2012年の全ゴール集 今年もサッカーダイジェストの付録に付いていた2012年のJ1の全ゴール集のDVDを見ながら、各チームのセットプレー絡みの得点と失点の数をカウントしてみました。直接ネットを揺らしたゴールはもちろんのこと、セットプレーの流れの中から生まれたゴールもカウントしています。
どこまでを「流れの中」と判断するかについては、昨年と同様で、「CKやFKのとき、プレイスキッカーがボールを蹴る瞬間がDVDの中に映像として収録されていること」をセットプレーとみなす条件としました。したがって、ショートコーナーやトリックプレーなど、いろいろと細工をしてから決まったゴールや、波状攻撃でゴールまでに時間がかかっている場合などは、セットプレー崩れであっても、カウントされていないことがありますので、ご了承ください。
まずは、攻撃に関してです。「CK」、「FK」、「PK」、「スローイン」の4項目に分けて、クラブ別にまとめると、表1のようになりました。(ちなみに、今シーズンのJ1の総ゴール数は855ゴールで、4つを合わせると210ゴールとなったので、パーセンテージで言うと24.6%になります。)
目立つのは、仙台がCKから13ゴールを記録している点です。J2の頃からMF梁勇基の精度の高いキックからゴールを奪うというのを、得意としていましたが、MF梁勇基が不在だった序盤戦もセットプレーからたくさんのゴールを奪っています。
PKに関しては、普通に決まった場合に加えて、GKやバーにはじかれて、跳ね返ってきたボールを押し込んで決めたときもPKにカウントしています。一番右のスローインは、鳥栖のお家芸と言えますが、スローインから決まったのは、意外と少なくて、2ゴールのみでした。
表1. セットプレーで挙げたゴール数
| 得点 |
| CK | FK | PK | スローイン |
コンサドーレ札幌 | 3 | 1 | 2 | |
ベガルタ仙台 | 13 | 4 | 3 | |
鹿島アントラーズ | 2 | 2 | 2 | |
浦和レッズ | 6 | 3 | 3 | |
大宮アルディージャ | 3 | 1 | 2 | |
柏レイソル | 5 | 8 | 2 | |
FC東京 | 5 | 3 | 1 | 2 |
川崎フロンターレ | 4 | 7 | 3 | |
横浜Fマリノス | 7 | 6 | 1 | |
アルビレックス新潟 | 4 | 2 | 2 | 1 |
清水エスパルス | 2 | 4 | 5 | |
ジュビロ磐田 | 7 | 3 | 1 | |
名古屋グランパス | 4 | 5 | 1 | |
ガンバ大阪 | 9 | 3 | 5 | 1 |
セレッソ大阪 | 2 | 3 | 3 | |
ヴィッセル神戸 | 3 | 5 | 2 | 1 |
サンフレッチェ広島 | 6 | 3 | 5 | |
サガン鳥栖 | 5 | 7 | 0 | 2 |
| 90 | 70 | 43 | 7 |
■ CKとFKを得意にしていたのは・・・ 下の表2は、CKとFKの数を合わせた数字のランキングです。このとおり、仙台が17ゴールで1位となって、柏と横浜FMが13ゴールで2位タイ、G大阪と鳥栖が12ゴールで4位タイとなりました。MF梁勇基、MFレアンドロ・ドミンゲス、MFジョルジ・ワグネル、MF中村俊、MF遠藤、MF藤田と、どのチームにも優秀なキッカーがいます。
一方、下位の方を見ると、札幌と鹿島と大宮の3チームが4ゴールで最下位となりました。鹿島については、「なかなかセットプレーからゴールが生まれない。」とシーズン中から言われていましたが、こうしてみると、今年は、セットプレー(CKとFK)でほとんど点が獲れなかったとことがよく分かります。
ちなみに、直接FKが決まったのは30回でしたが、複数回、直接FKでゴールを決めているのは、FWレナト(川崎F)、MF中村俊(横浜FM)、DF駒野(磐田)、MF野沢(神戸)の4人で、FWレナトとDF駒野とMF野沢が3回で、MF中村俊は2回でした。
日本人で直接FKを決めたのは、上の3人以外では、MF小笠原(鹿島)、MF柏木(浦和)、DF槙野(浦和)、MF田口(名古屋)、MF藤本(名古屋)、MF扇原(C大阪)、MF遠藤(G大阪)、MF森崎浩(広島)、MF藤田(鳥栖)の9人です。
表2. CKとFKからのゴール数のランキング
| | CK | FK | 得点(CKとFK) |
1 | ベガルタ仙台 | 13 | 4 | 17 |
2 | 柏レイソル | 5 | 8 | 13 |
3 | 横浜Fマリノス | 7 | 6 | 13 |
4 | ガンバ大阪 | 9 | 3 | 12 |
4 | サガン鳥栖 | 5 | 7 | 12 |
6 | 川崎フロンターレ | 4 | 7 | 11 |
7 | ジュビロ磐田 | 7 | 3 | 10 |
8 | 浦和レッズ | 6 | 3 | 9 |
8 | サンフレッチェ広島 | 6 | 3 | 9 |
8 | 名古屋グランパス | 4 | 5 | 9 |
11 | FC東京 | 5 | 3 | 8 |
11 | ヴィッセル神戸 | 3 | 5 | 8 |
13 | アルビレックス新潟 | 4 | 2 | 6 |
13 | 清水エスパルス | 2 | 4 | 6 |
15 | セレッソ大阪 | 2 | 3 | 5 |
16 | コンサドーレ札幌 | 3 | 1 | 4 |
16 | 鹿島アントラーズ | 2 | 2 | 4 |
16 | 大宮アルディージャ | 3 | 1 | 4 |
■ 2011年との比較 今度は、表2の数字を2011年シーズンと比較したいと思います。2011年と2012年の数字を並べて増減を記入すると、表3のようになります。(昇格組のFC東京・鳥栖・札幌は表から省いています。)
これを見ると、仙台はCKやFKからのゴール数を大幅に増やしていることは分かります。注目したいのは、神戸と鹿島の数字です。神戸は2011年は2ゴールでしたが、今年は8ゴールと4倍になりました。「セットプレーからのゴールが少ない。」というのが、2011年の神戸の問題点でしたが、MF野沢という日本人屈指のプレイスキッカーを獲得したことで、セットプレーに関しては、劇的に改善されました。
一方、MF野沢を引き抜かれた鹿島は、18ゴールから4ゴールに大幅ダウンとなりました。もちろん、ゴール前に上がってくる選手の顔ぶれも変わっているので、それだけの問題ではないと思いますが、ここまではっきりと差が出ているので、「プレイスキッカーのMF野沢の穴は埋められなかった。」と言っても間違いではないでしょう。
他には、名古屋も18ゴールから9ゴールに減っています。こちらに関しては、キッカーのMF藤本の調子が上がらなかったことと、194センチのFWケネディが欠場することが多かったことが、主な原因と考えられます。とは言っても、鹿島にしても、名古屋にしても、「セットプレーが強力」というイメージは残っているので、対戦するチームにとっては、脅威になります。
表3. CKとFKからのゴール数のランキング(2011年との比較)
| 2011年 | 2012年 | ± |
ベガルタ仙台 | 9 | 17 | +8 |
ヴィッセル神戸 | 2 | 8 | +6 |
浦和レッズ | 4 | 9 | +5 |
横浜Fマリノス | 10 | 13 | +3 |
川崎フロンターレ | 9 | 11 | +2 |
サンフレッチェ広島 | 7 | 9 | +2 |
アルビレックス新潟 | 4 | 6 | +2 |
ガンバ大阪 | 11 | 12 | +1 |
柏レイソル | 13 | 13 | ±0 |
ジュビロ磐田 | 10 | 10 | ±0 |
大宮アルディージャ | 5 | 4 | -1 |
セレッソ大阪 | 7 | 5 | -2 |
清水エスパルス | 11 | 6 | -5 |
名古屋グランパス | 18 | 9 | -9 |
鹿島アントラーズ | 18 | 4 | -14 |
■ CKの成功率攻撃編のラストは、CKの成功率を表4にまとめました。1位は仙台で7.14%で、17位がC大阪、18位が鹿島になりました。C大阪は身長の高い選手が多くて、MF清武、MF扇原、DF酒本、DF丸橋など、キッカーも揃っているように感じられますが、セットプレーは得意ではありません。
C大阪や鹿島の成功率は1%強なので、「なかなか決まらない。」という状況ですが、1位の仙台7.14%というのも、冷静に考えてみると、それほど高い数字ではありません。CKを得るとゴールの期待は高まって、スタンドも盛り上がって来ますが、実際には、CKからゴールを決める確率というのは、非常に低いことが分かります。
攻撃に関しては、以上のような結果になりました。次回は、守備編です。セットプレーの守備の時に失点の多かったチームと少なかったチームはどこなのか?を中心にまとめてみたいと思います。
表4. CKの成功率
| ゴール数 | 本数 | 成功率 |
コンサドーレ札幌 | 3 | 133 | 2.26% |
ベガルタ仙台 | 13 | 182 | 7.14% |
鹿島アントラーズ | 2 | 181 | 1.10% |
浦和レッズ | 6 | 166 | 3.61% |
大宮アルディージャ | 3 | 133 | 2.26% |
柏レイソル | 5 | 193 | 2.59% |
FC東京 | 5 | 167 | 2.99% |
川崎フロンターレ | 4 | 184 | 2.17% |
横浜Fマリノス | 7 | 172 | 4.07% |
アルビレックス新潟 | 4 | 163 | 2.45% |
清水エスパルス | 2 | 171 | 1.17% |
ジュビロ磐田 | 7 | 191 | 3.66% |
名古屋グランパス | 4 | 150 | 2.67% |
ガンバ大阪 | 9 | 203 | 4.43% |
セレッソ大阪 | 2 | 176 | 1.14% |
ヴィッセル神戸 | 3 | 144 | 2.08% |
サンフレッチェ広島 | 6 | 155 | 3.87% |
サガン鳥栖 | 5 | 140 | 3.57% |
| 90 | 3004 | 3.00% |
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