■ モロッコ戦グループリーグの2試合目。初戦でスペインに1対0で勝利して最高のスタートを切った関塚ジャパンがアフリカ予選を2位で突破してきたモロッコと対戦した。モロッコは初戦でホンジュラスと対戦したが、2対2のドローで、勝ち点「1」を獲得した。
この結果、グループDは、日本が勝ち点「3」、モロッコとホンジュラスが勝ち点「1」、スペインが勝ち点「0」というスタートで、日本はモロッコに勝つと、2000年のシドニー五輪以来となる12年ぶりの決勝トーナメント進出が決定する。
中2日の試合となる日本は「4-2-3-1」。GK権田。DF酒井高、鈴木、吉田、徳永。MF山口螢、扇原、清武、東、大津。FW永井。スペイン戦で負傷したMF大津はスタメンで起用されたが、DF酒井宏はスタメンから外れて、シュツットガルトのDF酒井高が右SBに入った。ベンチスタートとなったのは、GK安藤、DF山村、DF酒井宏、MF村松、MF宇佐美、MF齋藤学、FW杉本の7人となった。
■ 1対0で勝利!!!試合の序盤はモロッコのペースとなる。日本はスペイン戦のような連動した動きが出来ず、リズムをつかめない。逆にモロッコは、FWアムラバトを中心に攻撃を仕掛けて、ゴール前のシーンを作っていく。前半18分には、モロッコからCKから決定機を迎えるが、GK権田とDF酒井高が体を張って防いでゴールならず。前半は0対0で終了する。
後半になると、日本も動きが出てきて、シュートチャンスを作るようになる。後半18分には、右サイドからカットインしたMF清武が左足で強烈なミドルシュートを放つが、クロスバー直撃で先制ならず。試合はそのまま0対0で進んで、スコアレスドローが見えてきた後半39分に均衡が敗れる。
中盤でボールを受けたMF清武が素早いタイミングで左サイドのFW永井にパスを送ると、FW永井は自慢のスピードで相手GKよりも先にボールに追いついて右足でループシュートを放つと、これで鮮やかに決まって先制ゴールを奪う。
一方のモロッコも、終了間際に決定機を作るが、GK権田とDF吉田が懸命にブロックして同点ならず。結局、1対0で勝利した日本が勝ち点「6」に伸ばして、決勝トーナメント進出を決めた。その後に行われたホンジュラスとスペインの試合は、1対0でホンジュラスが勝利したため、日本の首位通過は決まらず、連敗となったスペインのGL敗退が決定した。
■ FW永井が決勝弾!!!激しい試合となったスペインから中2日ということで、日本の選手は動きが重くて、スペイン戦のような組織的なサッカーができなかったが、初戦でいくつかの決定機を外して悔しい思いをしたFW永井が後半39分にゴールを決めて2連勝で早々に決勝トーナメント進出を決めた。
決勝ゴールのシーンは、相手GKにとって「微妙な位置」にパスを出したMF清武も技術の高さも光ったが、やはり、FW永井のスピードが光った。GKが大きくゴールマウスを飛び出したので、「ゴールに流し込むだけ」という感じになったが、ゴールまで距離があったので、緩いシュートになると戻ってきたディフェンスにクリアされる可能性があるし、強いシュートを狙うと、枠を外してしまう可能性がある。よって、判断に迷うシチュエーションだったが、ループシュートを選択して、貴重な先制ゴールを生み出した。
先日のスペイン戦で何度か決定的なシュートを外したため、初めて彼のプレーを見た人には、「決定力の無い選手」というイメージが刷り込まれてしまったが、本来はシュートの上手な選手で、GKと1対1になったときは、いろいろなシュートパターンを持っているため、高確率でシュートを決めてくる選手である。ループシュートは得意としているが、大一番で、見事に決まった。
■ 効を奏したポジションチェンジこの試合に関しては、試合中にポジションが何度か変わったことも、プラスに働いたと思う。序盤はチーム全体の運動量が乏しくて、相手にプレッシャーをかけられなかったので、スペイン戦のようなカウンターを仕掛けられなかった。よって、FW永井を1トップの位置に置く意味が乏しい試合展開になったが、関塚監督は、前半20分あたりで、思い切って、MF大津とFW永井のポジションを変えてきた。
初戦のスペイン戦を見ればわかる通り、「FW永井の1トップ」というのは、FW永井にかかる負担が大きい戦略なので、ポジションを動かさなかったら、FW永井のスタミナを無駄に消費する形になっただろう。44年ぶりのメダルを獲得するには、エースの大車輪の活躍が不可欠であるが、FW永井をサイドハーフに回すことで、FW永井の体力の消耗を防ぐことに成功した。
結局、後半33分にMF大津に代えて、MF齋藤学を投入したので、また、「FW永井の1トップ」に戻ったが、無駄に体力を消費しなかったことが、鮮やかなシュートに結びついたように思う。もちろん、無理をさせなかったことは、次のホンジュラス戦や、準々決勝でも効いてくるだろう。
■ MF清武が決勝アシストFW永井の決勝ゴールをアシストしたのは、右サイドで起用されたMF清武で、FW永井のスピードが最大限に生きるパーフェクトなパスを出して、先制ゴールをお膳立てした。MF清武は、それ以外でも、後半18分にクロスバーに当たるシュートを放つなど、後半はチャンスに絡んできた。
MF清武はフル代表にも定着し、五輪代表の中心として期待されてきたが、今シーズンは、パフォーマンスが上がらずに苦しんできた。「決まっていれば、波に乗れそうなシュート」が決まらず、C大阪でも、五輪代表でも、いいところを見せられなかったが、決勝トーナメント進出がかかった試合で、大きな仕事をした。これが浮上のきっかけになれば、五輪代表の攻撃力はアップする。
その他の中盤の選手では、MF扇原は、前のスペイン戦と比べるとボールも集まってきて、効果的なパスも増えた。最近は、C大阪でも、五輪代表でも、MF扇原のところにプレッシャーをかけられることが多くて、パス回しの中心になることができなかったが、モロッコは、そこまでプレッシャーをかけてこなかったので、落ち着いてボールを回すことができた。
■ ビッグセーブを見せたGK権田一方の守備陣は、序盤はモロッコのゴリゴリ来るドリブルへの対応に苦しんで、何度か危ないシーンを作られた。前線の選手の守備の貢献度も、この日は低かったので、トータルでは、3度ほど、やられていてもおかしくないシーンがあったが、GK権田がビッグセーブを見せて、ゴールを許さなかった。
特に、後半ロスタイムのモロッコの決定機を防いだシーンは見事で、決まっていれば、勝ち点「2」を失うところだったが、果敢に飛び出して、体に当ててシュートを阻止した。もちろん、GK権田に見せ場が無い方が、日本にとっては、有りがたい展開であるが、「やられた・・・。」というシーンを防いでくれると、本当に助かる。この試合は、FW永井やMF清武に匹敵する働きを見せた。
これで、日本は決勝トーナメント進出を決めた。ホンジュラスとスペインの試合が引き分けに終わると、2試合を終えた段階で、首位通過が決まるところだったが、またしても番狂わせが起こって、ホンジュラスが勝利したため、首位通過は決まらなかった。
とはいっても、次のホンジュラス戦は、引き分け以上でグループDを首位で通過することができる。グループCを首位で通過するチームは、ブラジルが有力なので、首位で通過できると、エジプト・ニュージーランド・ベラルーシと準々決勝で対戦することになるので、ベスト4入りのチャンスが膨らんでくる。
FW永井、MF東、MF清武、MF大津といった攻撃的な選手は、守備にも参加しているので、体力的には、厳しい状態だと思うので、できれば、彼らを休ませたいところであるが、負けると、ホンジュラスが首位通過となる。よって、「どれくらい選手を入れ替えればいいのか?」というさじ加減は難しいが、うまく選手に休息を与えつつ、GLを首位で通過し、ベスト4入りの可能性を広げて欲しいところである。
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