分かっているようで、意外と分かっていない「コパ・アメリカに関する素朴な疑問」について答えてみました。
Q1. そもそも、コパアメリカって何?
→ 南米サッカー連盟が主催する大陸選手権で、ユーロ、アジアカップ等と価値は同等である。それまでは、南米選手権と呼ばれていたが、1975年にコパ・アメリカという名称に変更になった。第1回の南米選手権が行われたのが1916年で、アルゼンチン大会で開催された。これまでのところ、42回の大会が開催されており、アルゼンチンとウルグアイが14回ずつ優勝している。ブラジルは意外と少なくて、8回の優勝にとどまっている。
Q2. いつ開催されるのか?①
→ 1916年から1927年までは、毎年、行われていた。それ以降は、2年に一度、開催されたり、4年に一度、開催されたりと、周期はまちまちである。1975年にコパ・アメリカとなってからは、1975年、1979年、1983年、1987年、1989年、1991年、1993年、1995年、1997年、1999年、2001年、2004年、2007年に行われている。次回大会は2015年が予定されている。
Q3. いつ開催されるのか?②
→ 2011年大会はアルゼンチンがホスト国で、7月1日に開幕し、7月24日に決勝戦が行われる予定になっている。日本は、コロンビア(2日)、ボリビア(7日)、アルゼンチン(11日)とグループリーグで対戦する予定になっている。グループリーグ敗退に終わると、11日のアルゼンチン戦が最終戦となる。(※ いずれも現地時間。)
Q4. いつ開催されるのか?③
→ なお、グループリーグの日本戦は、以下の時間に行われる予定になっている。
2011年7月03日(日) 03:30 コロンビア - 日本
2011年7月08日(金) 07:15 ボリビア - 日本
2011年7月12日(火) 09:45 アルゼンチン - 日本
試合は、日本でもNHKが生中継することになっているが、時差の関係もあって、生で試合を観るのは、かなり厳しい時間帯である。(※ いずれも日本時間。)
Q5. そもそも、南米サッカー連盟に所属しているのはどこ?
→ 南米サッカー連盟に所属するのは、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、チリ、ボリビア、ベネズエラ、コロンビア、エクアドル、ペルーの10か国で、ブラジルとアルゼンチンとウルグアイがW杯を制した経験がある。なお、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、チリが南アフリカW杯に出場しているが、全てグループリーグを突破している。
Q6. なぜ、日本が招待されているのか?①
→ 上のように、南米サッカー連盟に所属するのは10か国だけであるが、10ヶ国で大会を行うのは、不都合が多い。そのため、1993年から「招待国」として、よそのサッカー連盟に所属する国を招いて、12か国で大会を行っている。12ヶ国になることで、グループリーグを3つに分けて「4ヶ国×3グループ」とすることができるので、「5ヶ国×2グループ」とするよりも、大会も運営しやすくなる。また、10ヶ国しか参加しないと、毎回、同じような組み合わせになってしまうが、招待国を招くと、マンネリ化も防ぐことができる。
Q7. なぜ、日本が招待されているのか?②
→ 基本的には、北中米カリブ海サッカー連盟の国が大会に招待されており、メキシコは1993年大会から7大会連続で招待されているので「レギュラー」といってもさし支えない。それ以外の1枠として、過去、コスタリカとアメリカが3回、ホンジュラスと日本が1回、招待されている。例外的に日本代表が招待されている理由としては、「南米の国と仲がいい」、「放送権料が目当て」、「適当な強さであること」などが考えられる。
Q8. コパ・アメリカで優勝するとどうなるのか?
→ 「名誉」以外では、2013年にブラジルで開催されるコンフェデレーションズカップに参加することができる。地元のブラジル代表は「地元枠」として、すでに出場権を得ているおり、ブラジルが優勝すると、準優勝チームが出場権を得ることになる。
ちなみに、空気を読めずに、日本代表やメキシコ代表が優勝してしまったときは、準優勝チームが出場権を得ることになる。(※ ブラジルが準優勝の場合は3位のチーム。)もちろん、日本は1月のアジアカップで優勝しているので、コンフェデレーションズカップの出場権はすでに獲得している。
Q9. 1999年に日本が招待されたときの成績は?①
→ 1999年に日本が初参加したときは、2敗1分けでグループリーグ敗退に終わった。このときは、シドニー五輪予選の日程と重なっており、A代表での活躍も期待されていたFW柳沢敦、MF中村俊輔、MF小野伸二、MF稲本潤一といった五輪世代は参加せず、ペルージャに在籍していたMF中田英寿も出場しておらず、フル代表と言いながら、実質、「Over-23日本代表」といえるメンバーだった。
ちなみに「梨花騒動」があったのはこの頃で、シドニー五輪予選でゴールを量産していたFW吉原宏太が「ご褒美」でコパ・アメリカに参加することになったこともあって、シドニー五輪代表チームはフォワードのコマ不足に陥った。
Q10. 1999年に日本が招待されたときの成績は?②
→ この大会でゴールを決めたのが、FW呂比須ワグナーとMF三浦淳宏で、FW呂比須ワグナーは2ゴールをマークしている。大会で輝いたのは清水エスパルスのMF伊東輝悦で、トルシエ監督からも絶賛されたが、一方で、不本意なプレーしかできなかったMF名波浩は、トルシエ監督はチームの中心だった名波に「一生、リーダーにはなれない。」と酷評されて、話題になった。
Q11. なぜ、一度は、辞退という結論を出したか?
→ J1のリーグ戦が震災の影響で延期になったため、リーグ戦をコパ・アメリカの開催期間である7月に組み込むしかない状況になったが、リーグ戦(J1)とフル代表の活動が重なることは、基本的にはありえないのでことなので、Jリーグのクラブが「辞退してほしい」という要望を出して「辞退する」という結論に至った。
そのため、今月初めに、小倉会長が南米を訪問して事情を説明し、南米サッカー連盟に「辞退」を了承されたが、開催国であるアルゼンチンのグロンドーナ会長に再考を強く促されたため、結論を保留として、日本に帰国してきた。
Q11. なぜ、留意されたか?
→ 表向きの理由は「日本の復興の手助けをしたい。」ということで、「日本のための大会にしたい。」というとありがたい発言があった。一方で、その裏では、すでに、アジア向けにコパ・アメリカの放送権料を売ってしまっているため、日本が辞退すると、それがキャンセルになって「放送権料」が入って来なくなるので困ってしまうという相手方の事情もあるのでは?という憶測もある。事実かどうかは不明である。
Q12. なぜ、7月に延期分のリーグ戦を行うのか?①
→ 延期になった分(J1=5試合、J2=6試合)を、どこかに組み込む必要が出てきたが、空いていたのは、コパ・アメリカに出場するためリーグ戦(J1)を中断することになっていたこの期間くらいであり、他に選択肢はなかった。J1は、6月25日・26日に18節、7月30日・31日に19節が行われる予定になっており、延期分はこの期間に入ってくることになる。
Q13. なぜ、7月に延期分のリーグ戦を行うのか?②
→ プロ野球のように閉幕を遅らせるのはどうか?という意見もあるが、今年の12月には、日本で開催予定のクラブW杯があって、ACLで日本のクラブが優勝できなかった場合、2011年のリーグ王者がクラブW杯に参加することになるので、12月のクラブW杯までにリーグ王者を決めるようなスケジュールにしないと、都合が悪い。
ほかにも、12月や1月にずれ込むことで、「契約期間の問題」、「雪国で試合ができるのかどうかという問題」、「オフがなくなるという問題」があって、さらに複雑な事態となる。ただし、7月という暑い時期に過密日程で試合を行うことに対しては、パフォーマンス低下等の別の問題も考えられる。
Q14. Jリーグのクラブが選手の派遣に難色を示している理由は?
→ 国内組で、代表に選ばれるのは「チームの顔」となる選手ばかりであり、彼らが欠けることは戦力ダウンにつながるだけでなく、観客動員が減少することが予想される。現状では、スタジアムに新規サポーターを呼び込むためには「代表選手がいるか、どうか」という点は無視できない要素である。また、同時開催されることで、リーグ戦の注目度に対する低下や、代表選手がいない中でリーグ戦を続けることが「価値の低下」につながるという懸念もある。
Q15. 海外組にはどんな選手がいるのか?①
→ したがって、今回のメンバーは海外組が主力となることが確実になったが、海外組というと、CSKAモスクワのMF本田圭佑、ドルトムントのMF香川真司、シュツットガルトのFW岡崎慎司、インテルのDF長友佑都といったよく知られている選手以外にも、たくさんいる。
今回、選手の招集に関する交渉を行う南米連盟に28名のリストを提出したと伝えられているが、ルーマニアでプレーするMF瀬戸貴幸、ラトビアでプレーするMF佐藤穣、エストニアでプレーするMF和久井秀俊といったあまり知られていない名前があるのでは?と予想されている。彼ら以外にも、東南アジアのリーグでプレーしている選手も多いため、海外組が合計で何人くらいいるか、把握するのは難しい。
Q15. 海外組にはどんな選手がいるのか?②
→ ネックとなるのは、GKのポジションであり、海外で活躍しているGKといって思い浮かぶのは、ベルギーでプレーするGK川島永嗣くらいであるが、同じくベルギーでプレーするGK林彰洋もいる。
GK林は、オシム監督時代の2007年に日本代表候補にも選ばれており、カナダで開催されたU-20W杯の日本代表の正GKとしてベスト16入りに大きく貢献した。将来を嘱望されたGKであったが、ただ、大学を卒業する前に海外に渡ったため、現時点でどのくらいの実力を持つのかははっきり分からない。
Q16. 本当に海外組は招集できるのか?①
→ 辞退を申し入れた日本代表に対して、南米連盟は「自分たちが欧州のクラブと直接交渉して日本人選手を招集する」と約束した。ただ、これで「海外組はみんな招集が可能になった。」というわけではなくて、欧州のクラブが南米連盟の言うことを聞いてくれるかというと疑問であり、南米と欧州の間で、数々のトラブルが生まれてきた歴史や、欧州のクラブの「発言力」や「行動力」の強さを考えると、「南米連盟にそこまでの力はない。」と考えるのが自然である。
Q17. 本当に海外組は招集できるのか?②
→ 海外組からは、15人程度の招集が必要となる。南米連盟が交渉にあたるが、大きなクラブを相手にすると、南米連盟が話をしたところで、そんなに簡単に事は運ばないだろうが、逆に、小さなクラブにとっては、所属選手が代表チームに呼ばれること自体が大きなアピールになるので、快く、応じてくれる可能性は高い。
すでにDF内田の所属するシャルケが拒否反応を示したという報道もあるが、15名程度であれば、何とかなるのでは?と思われる。
Q18. 国内組はどんなメンバーになるのか?①
→ 一方の国内組は、少なくとも8名~10名程度が必要となる。J2は、当初からリーグ戦を中断する予定はなくて、7月にも5試合のリーグ戦が予定されていたので、J1のクラブと比べると「準備」はできていたと考えられるが、より一層の過密日程になることが確実であるので、DF今野泰幸、GK権田修一が所属するFC東京も全面的な協力に応じない意向である。
Q19. 国内組はどんなメンバーになるのか?②
→ 一方で、コパ・アメリカに参加するというのは、めったに経験できない貴重な機会であるため、G大阪のMF遠藤保仁、C大阪のMF乾貴士といった選手が「選ばれたら出場したい。」と発言している。「国内組でも各クラブの主力は除く。」という方針であると伝えられているが、選手が希望し、クラブも容認するとなると、障害はなくなってくる。
もし、FW前田、MF遠藤、DF今野ら各クラブの主力は招集しないということであれば、「若い」、「クラブでは出場機会に恵まれていない。」、「代表に選ばれてもおかしくない実力がある。」という選手がターゲットになるが、アジアカップの予備登録50人に入っている選手でいうと、G大阪のFW平井、鹿島のMF本田拓、鹿島のDF西といった名前が浮かんでくる。
Q20. 五輪代表の参加は不可能か?
→ 同じく招待国のメキシコは、「U-22代表+オーバーエイジ」でチームを構成するといわれている。これについて、南米連盟からは、「ベストメンバーでないと、次からは招待しない。」とプレッシャーをかけられているが、日本もU-22代表を派遣すればいいのでは?という意見もある。
ただ、日本の場合、6月19日と23日にロンドン五輪のアジア予選(クウェート戦)が組まれており、五輪代表の選手を長期間、拘束するのは不可能といえる。(H&Aのクウェート戦に敗れると「ロンドン五輪出場」の可能性がなくなるので、このチームで参加するメリットが薄くなる。)また、五輪世代と言えども、FW永井、FW山崎、MF宇佐美、MF米本、DF酒井といった選手はクラブでも不可欠な存在なので、現実的な話ではない。
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