■ チャリティーマッチ3月26日に鳥取市のとりぎんバードスタジアムで行われたガイナーレ鳥取とサンフレッチェ広島のチャリティーマッチ。鳥取は開幕戦はアウェーで徳島ヴォルティスと対戦して0対1で敗戦したが、互角以上の戦いができており、手ごたえを感じる試合となった。一方の広島はホームでベガルタ仙台と対戦してスコアレスドローに終わっている。
ホームの鳥取は<4-2-2-2>。GK小針。DF尾崎、戸川、内間、加藤。MF実信、服部、美尾、キム・ソンミン。FWハメド、梅田。開幕戦で右サイドバックでスタメンだったDF丁東浩は韓国のU-23代表の合宿に参加しているため欠場。元日本代表のFW岡野はベンチスタート。
対する広島はGK原。DF横竹、森崎和、水本。MF青山敏、森崎浩、ミキッチ、山岸、高萩、ムジリ。FW佐藤寿。GK西川、DF森脇、FW李忠成は日本代表の合宿に参加しているため欠場。GK中林は怪我のためユース出身で3年目のGK原がスタメン。
■ 4対2で終了試合は序盤からホームの鳥取が攻め込む。新加入の19歳のMFキム・ソンミンがダイナミックなプレーを見せて攻撃をリードする。広島も新外国人のMFムジリが起点になってチャンスを作る。しかし、前半は両チームともチャンスを生かせずに0対0で終了する。
後半は一転して点の取り合いとなる。まず後半4分に広島が右サイドからフリーキックを獲得。MF森崎浩が左足で蹴ったボールをニアサイドでFW佐藤寿がヘディングシュート。このシュートはGK小針がかろうじてセーブするが、こぼれ球をゴール前のDF水本が押し込んで広島が先制する。さらに、その1分後にも、広島がMF山岸のスルーパスから裏のスペースに飛び出したMF高萩がGKとの1対1を確実に決めて2点目を挙げる。
しかし鳥取も反撃。後半12分に左サイドからMF美尾がクロスを上げると、中央でFW梅田が相手GKと競ってこぼれたボールをDF尾崎が押し込んで1点を返すと、さらにその2分後にも、中央を崩してMF美尾のラストパスからフリーになったFW梅田が決めて同点に追いつく。FW梅田が古巣の広島からのゴールとなった。
2点リードを追いつかれた広島だったが、同点を許した1分後に、右サイドからMFミキッチが左足でクロスを上げると、ファーサイドのMF高萩がうまく右足で合わせて3対2と勝ち越しに成功する。さらに、後半18分にも右サイドからコーナーを獲得。MF森崎浩のボールをニアサイドに入り込んだFW佐藤寿がバックヘッドで合わせて4対2とリードを広げる。試合は、結局、4対2で広島が勝利を飾った。
■ ガイナーレが健闘敗れたとはいえ、鳥取の健闘が光る試合となった。前半から広島のお株を奪うようなパスサッカーを見せてチャンスを作り、後半早々に2点リードを奪われたものの、見事な反発力を見せて同点に追いついた。広島は日本代表の3人が抜けていたとはいえ、残ったメンバーではベストに近い布陣であり、鳥取の選手たちにとっては自信の付く試合となった。
鳥取はJ2で1年目のシーズンで、3月13日のFC岐阜戦でホームデビューを果たすはずであったが、地震の影響で延期となっており、この試合がJ2リーグに昇格して初めてのホームゲームとなった。対戦相手は同じ中国地方のサンフレッチェ広島となって、広島からの多くのサポーターが訪れたが、ホームのサポーターにも、アウェーのサポーターにもインパクトを与えたはずである。
■ 旋風を巻き起こせるか?近年、J2に昇格してきたクラブは「攻撃力」で劣るチームが多いが、鳥取にはFWハメドというストライカーがいて、さらにはFW梅田、FW阿部、FW岡野とJリーグの経験のある選手が多くいるので、攻撃面で大きな不安はない。また、中盤もMF美尾、MF服部は経験豊富な選手である。特にMF服部の存在は大きい。
鳥取は不幸にも、JFLで2008年、2009年と2年連続で5位となって、「4位以内」という昇格条件を満たすことができずにJ2昇格が見送られたが、今、考えてみると、この「2年」がチームを強化する上で貴重な時間となって、逆に良かったといえるのかもしれない。J2に昇格して1年目のシーズンは、下位に低迷するチームが多かったが、今シーズンの鳥取は期待できそうな雰囲気はある。
■ MF高萩洋次郎が2ゴール広島ユース出身のため、「広島出身」と思われがちであるが、実際には、福島県いわき市の出身であるMF高萩がこの試合で2ゴールの活躍。いわき市というと地震や津波の影響だけでなく原発の問題もあって、非常に大きなダメージを受けているところであるが、その地元の人に元気を与えるべく、見事なプレーを見せた。
MF高萩は、いつもはプレーにムラがあって、気の抜けたプレーも多いが、この日は、気持ちの入ったプレーで、別人のような動きを見せた。2シャドーのレギュラー候補だったMF高柳が長期離脱中のため、グルジア出身のMFムジリと2シャドーを組んでスタメンに入ったが、このポジションは、FW李忠成もプレー可能であり、MF森崎浩、MF山崎という選手もいる。したがって、MF高萩のポジションも安泰とは言えず、激しいポジション争いが行われることになるが、この日のようなプレーを見せていれば大丈夫だろう。
■ MFムジリのファンタジー①一方、新外国人のMFムジリであるが、初のグルジア人Jリーガーということでも注目を集めている。シュトゥルム・グラーツで長くプレーし、オシム氏やペトロヴィッチ氏の指導を受けており、広島のサッカーにフィットするのも早いかと思われるが、あまりにも動かない選手だという評判で「4畳半の男」という微妙なニックネームを頂戴している。
ストッパーの先駆けで「8時半の男」と言われた元巨人の宮田征典投手と比べると、有り難くないネーミングであるが、さすがにグルジア代表のプレーヤーであり、テクニックは並外れたものがある。
確かにあまり動かない選手であるが、しっかりとボールをキープできるし、意外性のあるパスも出せるので、広島の攻撃力を一段上のレベルに押し上げることは間違いないだろう。右足のシュートもかなりの威力があり、ある程度の得点も期待できる。前述のように2列目のポジション争いは熾烈であるが、MFムジリもレギュラーの有力候補である。
■ MFムジリのファンタジー②それにして、こういったタイプの選手は、Jリーグでは、ほとんどいなくなった。柏レイソルにいたFWフランサと似たタイプであるが、日本人の若手では、こういった「ファンタジーを感じさせる選手」は残念ながらほとんどいなくなってしまった。
一時期、日本でも「ファンタジスタ・タイプ」の選手が何人も生まれてきた時代があったが、「ファンタジスタ」には、「守備ができない。」、「運動量が少ない。」、「プレーにムラがある。」といった少しマイナスのニュアンスも含んでおり、よほどの何かを持たない限り、今の育成システムでは、どこかの段階で矯正されてしまう可能性が高い。
もちろん、日本国内に限らず、世界中の多くの国でも同様で、マイナスの要素を改善しないと上のステップには上がれないので仕方ないのだが、観ていて面白いのは、こういったタイプの選手であり、絶滅してしまうとサッカーがつまらなくなってしまう。MFムジリも、今後、日本サッカーのスピードに戸惑うことが出てくると思うが、そのクレバーさを生かしてもらえれば、楽しいことになるだろう。
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