■ 準々決勝決勝トーナメントの3試合目。グループCのオーストラリアと、グループDのイラクの対戦。グループCのオーストラリアは2勝1分けでグループリーグを首位で突破した。一方のイラクは2勝1敗のグループ2位で通過した。
オーストラリアはFWケーヒルとFWキューエルの2トップ。名古屋グランパスのFWケネディは怪我のためアジアカップのメンバーからは外れている。イングランドのプレミアリーグのフラムに所属するGKシュワルツァーがゴールを守る。対するイラクはエースストライカーのFWユニス・マフムードに期待がかかる。
■ オーストラリアが勝利試合はスローな展開。オーストラリアがボールを保持して攻め込む時間が続くが、中盤が展開力に欠けるため、変化のある攻撃が出来ずに、FWケーヒルやFWキューエルへのロングボールが主体となる。前半の中盤にFWキューエルが裏に抜け出してフリーでループシュートを放つもシュートは枠外。絶好機を逃す。前半は0対0で終了する。
前半は抑え気味だったイラクは後半開始からギアを上げて攻めに出るが、後半の半ばを過ぎるとイラクの足が止まり始めて、再び、オーストラリアのペースとなる。しかし、オーストラリアもチャンスを決めきれずに0対0のままで90分を終える。
延長戦に入ってからもスタミナが切れて限界に近づいていたイラクが耐える時間が続く。オーストラリアはFWマクドナルドら運動量のある選手を投入して前線を活性化させると、延長後半13分に左サイドからDFマッカイがアーリークロス。これをゴール前のFWキューエルが頭で合わせてようやく先制ゴールを奪う。FWキューエルは初戦のインド戦に続く今大会2ゴール目。
試合はそのまま1対0でオーストラリアが勝利。初のベスト4入りを決めた。一方、前回大会の覇者のイラクは2連覇を狙っていたが、ベスト8で散った。
■ キューエルが決勝ゴールオーストラリアはベテランの域に入っているFWキューエルの決勝のヘディングシュートで勝利を飾った。
プレミアリーグのリーズ・ユナイテッド時代の活躍が印象的なFWキューエルも32歳。かつては世界トップレベルのアタッカーだったが、度重なる怪我の影響もあって「スピード」や「キレ」は全盛期とは比べ物にならないほど落ちている。
今大会も凄さは感じさせないが、ただ、ポジショニングがいいのか、先日の韓国戦でもゴール前のいい位置にいて、惜しいシュートシーンを何度も作っていた。ことごとくシュートが枠に行かなかったので得点につながらなず、かみ合わせの悪さも感じさせたが、終了間際に大仕事をした。
オーストラリアがアジアカップに参加するのは2007年大会に次いで2度目。前回大会は日本とベスト8で対戦し、1対1の末、PK戦で破れて準決勝進出は果たせなかった。PK戦になったときは、GKシュワルツァーがいるとはいえ、嫌な雰囲気になっていたことは容易に想像できたので、値千金のゴールといえた。
■ 高齢化が進むオーストラリアオーストラリアは、2007年、2008年に浦和レッズを率いていたオジェック氏が監督をつとめている。南アフリカのW杯後に監督に就任したばかりなので、就任して間もないという事情は考慮する必要はあるが、未来を感じさせるサッカーではないことは明らかである。
改めてメンバー表を見るまでもなく、今大会のオーストラリアはベテラン選手ばかりである。力があれば年齢は関係ないが、FWキューエルを筆頭に峠を過ぎてる選手が多く、日本や韓国が若返りを図っているのは対照的で、下の世代が育ってきていないからベテラン中心なのか、下の世代は育ってきているが信頼がおけないためベテラン中心のメンバーになっているのか、詳しいことはオーストラリア人に聞かないと分からないが、この先、苦労しそうな状況であることは間違いない。
とはいっても、力はある。今大会に出場している選手は経験も豊富で、コンビネーションも確立されている選手たちであり、新戦力が多くて大会に入ってからチームを熟成させていく必要のある日本や韓国と比べると、一日の長はある。オジェック監督のリスクを避けて前線のタレントに頼るサッカーは、浦和時代は批判の声も大きかったが、フィジカルに優れた選手が多いオーストラリアの監督というのは、もしかしたら「適役」なのかもしれない。
■ 変化を生み出すホルマンバテバテになったイラクを攻めきれなかったのは、大黒柱のFWケーヒルのコンディションが良くなかったことに加えて、中盤でゲームを作れるタイプが見当たらないことも理由である。FWケーヒルはプレミアリーグで活躍するスター選手であるが、ゲームを作るタイプではなく、FWキューエルも以前のような輝きはみられず、運動量も少な目であり、どうしても単調な攻撃になってしまう。
必然的にチャンスとなるのはセットプレーが中心となっているが、唯一、アクセントになっているのが背番号「14」のMFホルマンであり、彼の豊富な運動量が攻撃を活性化させているシーンは多い。準決勝で対戦するウズベキスタンとは対照的に後方から飛び出していくような選手は少ないが、MFホルマンは唯一、労を惜しまずにチャレンジし続けることが出来る。
■ 後半に落ちたイラクイラクは後半になるとチャンスを作り始めたが、後半20分過ぎあたりから、急激に運動量が落ちて、オーストラリアのペースになってしまった。
今大会、中東勢は準々決勝で全滅になってしまったが、他地域の国と比べると、スタミナが切れるのが早い傾向にあって勝負所で競り負けているチームが少なくない。カタールは冬の時期なので、それほど気候的には問題ないはずであるが、ことごとく中東勢の足が後半に止まってしまうのは気になるところである。技術的に優れており、フィジカルコンタクトも強い選手が多い中東のチームであるが、スタミナの問題を解決しないと上位には食い込めない。
また、イラクはエースのFWマフムードが精彩を欠いたのも誤算だった。何度かゴール前でチャンスになりかけたが、シュートがヒットしないことが多く、体のキレは感じなかった。前回大会は優勝を果たし、コンフェデ2009にも出場したイラクであるが、オーストラリアという看板に負けたのか、本来のパフォーマンスは見せられずに大会を去ることになった。
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