■ 3回戦天皇杯の3回戦。2回戦で富山新庄クラブに7対0で完勝したJ1で3位のC大阪。この試合でシュート数42本と相手を圧倒した。一方のソニー仙台は2回戦でJ1のベガルタ仙台を延長戦の末、1対0で下していジャイアントキリングを達成。波乱の少なかった2回戦の中では最大の驚きとなった。会場はベガルタ仙台が勝ち上がってくることを想定していたためか、仙台のユアテックスタジアムでの試合となった。
ソニー仙台は昨シーズン3位。今シーズンは10位と順位は落としているが、昨シーズンの順位で言うと、J2に昇格したギラヴァンツ北九州よりも上の順位であり、実力的にはJ2に昇格してもおかしくないチーム力を備えている。
ホームとなるソニー仙台はGK山内。DF橋本、山田、比嘉、斎藤。MF大瀧、瀬田、今田、麻生。FW大久保、澤口。ベンチ入りメンバーのMF桐田がベガルタ仙台戦で決勝ゴールを挙げている。
対するアウェーのセレッソ大阪は<4-2-3-1>。GK松井。DF高橋、茂庭、上本、丸橋。MFアマラウ、マルチネス、乾、家長、清武。FWアドリアーノ。リーグ戦も間隔が空くという余裕のスケジュールなため、ベストメンバー。U-19日本代表でFW永井、FW杉本が不在。
■ 順当勝ち試合の序盤はソニー仙台がC大阪のMFマルチネスを厳しくマーク。MFマルチネスのところで何度かうまくボールを奪って攻撃につなげる。しかし、時間が経つにつれてC大阪のポゼッション率が上がっていってC大阪ペースとなる。すると前半29分にC大阪はバイタルエリアでボールを持ったMF乾がドリブルからミドルシュート。これが決まって先制する。しかし、ソニー仙台はその直後に右サイドを突破。DF橋本のパス突破からFW大久保が決めて同点に追いつく。
1対1に追いつかれたC大阪だったが、前半40分にMF乾がペナルティエリア内でファールを受けてPKを獲得。FWアドリアーノが決めて勝ち越しに成功する。前半はそのまま2対1で終了する。
後半はソニー仙台がセットプレーからいい形を作が、C大阪は後半23分に左サイドで粘ったMF家長のクロスをMF清武が折り返して最後はFWアドリアーノが決めてヘディングで決めて3点目を挙げる。FWアドリアーノは2ゴールの活躍。結局、そのまま3対1でC大阪が勝利。4回戦で鹿島アントラーズと対戦する。
■ 2ゴールに絡んだ乾貴士必ずしもいい内容の試合とはいえなかったC大阪であるが、少ないチャンスをものにして3対1で勝利した。前半のシュート数はわずかに2本。ソニー仙台の忠実な守備に苦しんで、なかなかシュートに持ち込めなかったが、MF乾が「個の力」を発揮して2ゴールを奪った。特に2点目のPKにつながったターンは、MF乾の得意とするプレーであり、ソニー仙台のDFはMF乾のアジリティーについていけなかった。
中断明け以降、ドルトムントに移籍したMF香川の穴を感じさせないほどの快進撃を見せてきたC大阪であるが、「MF香川の得点力」の穴は埋め切れておらず、勝ちきれない試合も出てきている。首位の名古屋との差は「10」と非常うに厳しいが、ACL出場の可能性は十分に残されている。MF乾、MF清武、MF家長の3人には常にゴールを意識してプレーしてもらいたいところである。
■ 健闘及ばず一方のソニー仙台は戦い方は悪くはなかった。しっかりと守備を固めてC大阪の中盤に自由を与えず、前半はほとんどシュートチャンスもなかった。わずかなチャンスを生かされてしまったのは「個人能力の差」としか表現できないが、忠実なサッカーをすればJ1で3位のチームともいい勝負ができるということが分かっただけでも収穫といえるだろう。
誤算だったのは攻撃面。しっかりとした守備が出来ていたので、もう少し攻撃で脅威を与えられれば良かったが、なかなかうまくつながらなかった。後半になると、若年層の日本代表を経験しているMF麻生を中心にいい形を作るようになったが、C大阪のDF茂庭がことごとく危険なシーンをつぶしていて、決定機は少なかった。
■ JFL勢は全滅天皇杯は3回戦に入っているが、これでJFL勢は全滅。今年は、1回戦と2回戦が中1日で行われて、2回戦から登場したJリーグチームに有利な日程になったことが大きく極めて波乱の少ない大会になっている。(また、例年であればリーグ戦の終盤の戦いに集中するためか、メンバーを落としてくるJ2で昇格争いをしているチームも、過密日程ではないので、ベストに近いメンバーをそろえており、取りこぼしがほとんどない。)2回戦で東京ヴェルディを下した町田ゼルビア、ベガルタ仙台をソニー仙台の奮闘が目立つくらいである。
実力上位のチームが順当に勝ち上がることは別に問題ではないが、カップ戦の醍醐味といえる部分が少なくて、ある意味では面白みのないカップ戦になってきている。2回戦は中1日の格下チームが格上チームのホームに乗り込んで試合を行う必要があったため、よほどのことがない限り波乱は起きない状況だった。
■ 天皇杯改革の必要性昨年の天皇杯からJ1のチームが2回戦から登場しているが、本当に2回戦から登場する必要があるのだろうか?確かに、1勝すればJ1のチームと戦えるというのは大きなモチベーションになるかもしれないが、力の差はあるし、5点・6点と差がついてしまうと、J1のチームにとって、メリットがなくなってしまう。
諸事情によって、2回戦からの登場になってしまったJ1勢であるが、以前のように3回戦からいいのではないだろうか?今年は夏場が過密日程になったが、J1チームが3回戦から登場するスケジュールであれば、ミッドウイークにリーグ戦を組み込む回数が1つ減って、日程にも余裕が生まれる。
また、遠征費の問題もあって一概に悪いとは言えないが、1回戦と2回戦は近場のチームとの対戦となることがほとんどである。例えばソニー仙台の場合は、1回戦が福島ユナイテッドFCで2回戦がベガルタ仙台との対戦であり、名古屋グランパスは四日市大学と中京大学の勝者との対戦であり、コンサドーレ札幌はグルージャ盛岡と札幌大学の勝者との対戦。選手にとっても、見る側にとっても刺激は少なくなってしまう。
この試合の観衆が1366人。ビッグスワンで行われた新潟と町田の試合でも5645人。非常に少ない数字であり、毎年、準決勝くらいまで進まないと注目度は上がって来ない。高校、大学、社会人、プロとすべてのカテゴリーのチームを対象としており、コンテンツとして非常に魅力的な大会になりうるが、当たり前のように代表勢が不在での試合となること等、天皇杯はいくつかの改革を必要としている。
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