俺妹3話は、沙織・バジーナの話。
むしろ槇島沙織の話といった方がよいのかもしれない。
そしてオタクサークル的コミュニティの描写と崩壊の描かれ方が秀逸だった。
12歳頃の沙織は体が弱く、そんな沙織を姉の香織は連れ回していたようだ。
ただ今回、香織が沙織を連れまわす場所は今までと違っていた。
香織は親の資産であるマンションの一室を
オタクサークルの集まりの場として使い、沙織をそこに紹介する。
マンション先で出会ったのは、香織のサークル仲間達。
そこで沙織は人と話すにも顔を隠しながら自己紹介する。
この顔を隠す描写でもわかるように、沙織は顔を隠す性質があるようだ。
グルグルメガネを付けるのもその一環。
そんな香織達の仲間の中でも、沙織の今後の方向性を決定づけたのが彼方だ。
それはこのメガネを見れば一発でわかる形。
彼方は沙織と親しくしてくれたようで、他の香織の仲間達が、
沙織を香織の妹という形で接し、一歩距離を取っていたのとは違い
先輩-後輩的な形で親密に接したようだ。
体が弱く、友人関係も少なかったであろう沙織にとっては
友人もでき、趣味も得られた意味では充実した時期だったであろう。
これも香織についてきたおかげでもあったのだろう。でも状況は変わる。
香織は海外で結婚するということで、サークルからいなくなるという。
それは、今まで沙織を連れ回していた香織がいなくなることでもある。
そして中心人物を失ったサークルは徐々に仲間が去っていくことになる。
この中心人物が去っていくと、サークルが機能しなくなる描かれ方はリアルだ。
特に少数のコミュニティが、人間関係を取り持つ中心人物の
カリスマ性に頼っていた場合、一瞬で崩壊してしまうこともある。
香織が去った後のサークルはまさにこんな感じだと思う。
ただ、香織はサークル沙織が彼方と仲良くしている姿をチラチラ見ていた。
そしてその姿に何かしら思うところを感じていたようであり、
これが香織の結婚とどう結びついてくるかが、今回のポイントなのかもしれない。
友達をサークルを失ってしまった沙織は、香織を憎んでしまう。
そして彼方と再開するも、彼方も漫画家デビューが決まり
仕事で忙しいからここには来られないという。
そして沙織は自分のサークルを作り、香織に見せつけたいという決心を彼方に伝える。
そんな香織に優しい言葉を投げかける彼方。そして沙織は彼方を師匠と呼び、
彼方は沙織に免許皆伝と称し、グルグルメガネを渡す。
顔をすぐ隠してしまうぐらい沙織が、今使っているもう一つの顔を手に入れた瞬間。
内気な素顔の自分では、コミュニティを作ることができない。
このメガネは内気な自分を隠し、コミュニティを主催する
沙織バジーナの顔であるともいえよう。
この辺りは自分の顔を隠して行動し、エウーゴという組織のリーダーだった
Zガンダムのクワトロ・バジーナ大尉(シャア)そっくりだ。
それにしても彼方が来栖可奈子の姉なのだろうから
この世界の縁というか、世界の狭さは面白い。
そして沙織の回想は終わり、現在へ時は戻る。
どうやら沙織を驚かせるために、京介達がアポ無しで沙織の家へ訪れたようだ。
そこで京介達は、沙織バジーナではなく、沙織という超美人さんと出会ったわけだ。
そんな中で、香織が部屋へやって来たようだ。
小さかった妹も、今では姉をも超える背丈に。
身長で時間経緯を感じさせる演出はやはりわかりやすくグッとくる。
かつての仲間たちとオフ会をやるということで帰国した香織。
あっという間に崩壊したサークル仲間を、こういう形で集めさせる香織に嫉妬しながらも
沙織も自身の仲間たちを紹介して、かつて誓った姉に仲間をみせる事を行う。
ここで姉の背中を追ってきた沙織が、はじめて香織と並んだ瞬間。
姉も心身共に成長した安心したのではないだろうか。
最後は沙織バジーナに戻ってEDに。
今回は沙織と沙織バジーナの二つの顔(側面)を楽しめた展開だった。
まとめ
結論からいうと、香織がかつてのサークルを
自然消滅させるようにしたのは、沙織の為を思ってのことだと思う。
確かに沙織は楽しそうにしていたが、それは沙織の力によって獲得したものではない。
みんな香織が沙織に与えたものだ。そこに妹を安住させてはいけない。
だから、みんなと仲良くしている沙織を香織はずっと見つめていたのだ。
そして沙織は沙織で自身の力で仲間を作れるようになった。
ただそれも、香織がかつてのサークルを壊したからこそであろう。
その意味では、香織は最初は手を引っ張って沙織を導きつつ
仲間との付き合い方を教え、独り立ちしても大丈夫であろうと判断してから
沙織を独立させるようにしたのだろう。全て姉の計算通りなのかもしれないし、
それは沙織も「まだ姉には追いつけていない」というセリフでもわかる。
出会いと別れ、そして新しい出会い。
コミュニティの崩壊と新しいコミュニティの結成。
そんな狭間を体験した沙織・バジーナは、
京介達の仲を今後どう深めていくのであろうか。
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香織は元々は病気持ちで、長い間生きれるはずではなく、その為にとにかくいろんな事を駆け足でしていたのです。
そして、その間、妹を放置してしまった事は、悪いとも思っているし、ある意味、残念にも思っています。
まず、最初に遊びに誘った理由は、活発でない妹を心配すると同時に、そう言った香織の「妹と関係を築きたい」と言う感情が主でした。
で、ちらちら見ていたのは、一番大きい要素は、実はカリスマ抜群で行動力があり、能力も高く完璧の様に書かれていますが、
今まで放置していた負い目もあり、妹と仲良くしたいが、接し方や会話の起点が分からなかったからです。
沙織が恨んでいた放置もそれが理由で、放置しようと思ってしていた訳ではなかったんですね。
で、どう話そうか迷ってる内に、彼方が関わって、沙織も彼方に懐いてしまって、更に接し方が分からなくなったのです。
結婚について、理由の詳細は忘れましたが、一個は何歳までに結婚を経験、も彼女の人生プランに入っていたはずです。
まぁ、結局予定の死期までには活発な活動が良い方向に繋がり、病気も感知してしまったと言う話だったと記憶してますけど。
沙織が香織を怒りに海外へ行った時のきつい言葉だけだと分かり難いですが、紅茶の事を話題に話そうとして、
先に彼方に話されて黙ってしまったり、そう言う所も描写は一応ありました。
プレゼントに書かれた「愛しい妹」はこの場合、結構本当の事なんですよ。
ゲームだと沙織ルートのラスボスになるくらい、妹を放置してしまったがゆえに、実は結構凄いシスコンです。