■ 全18クラブの開幕節のスタメンの平均身長J1の開幕節は2月27日(土)と2月28日(日)に開催された。「史上初となる2月開幕」となったがJ1の全9試合の中でアウェイチームが勝利したのは何と8試合。順当にホームチームが勝利したのは鳥栖 vs 福岡の1試合のみ。当然のことながらホームチームの勝利を期待してスタジアムに集まった人が多かったと思われるので、寒い中、実際にスタジアムに足を運んだサポーターには残念な試合が多かったと言える。
オフに積極的な補強を行ったチームが多かったので「どういうメンバーで開幕を迎えるのか?」は興味深かったが、ここでは「J1の全18チームの開幕節のスタメン11人の平均身長」を算出してみた。ACLを見据えてFW宇佐美らがベンチスタートになったG大阪は「ベストとは言えない。」という布陣だったが大半のチームは「怪我人を除くと現時点でのベスト」と言えるメンバー構成だったので現状を知ることができる。
J1全体の平均身長は178.29センチだったが、クラブごとに大きな差があるのは興味深いところである。18クラブの中でもっとも平均身長が高かったのは小倉監督率いる名古屋グランパスで181.64センチ。199センチのFWシモビッチと191センチのDFオーマンの2人が平均身長を嵩上げしているのは確かであるが、仮にFWシモビッチを抜いた場合でも(10人の平均身長は)180.00センチとなるのでリーグ1位をキープする。
MF古林とDF安田理は173センチで、MF矢田は170センチ。小さい選手も何人かいるが、GK楢崎は187センチと長身で、右SBのDF矢野貴も187センチ。SBとしては破格のサイズを誇る。189センチのDF大武や183センチのFW川又がスタメン出場することも考えられるのでさらに高さの脅威が増す可能性がある。伝統的に高さのあるチームであるがメンバーが大きく入れ替わった今シーズンもカラーは継続されている。
■ 補強によってリーグ17位→リーグ2位にジャンプアップ2位になったのはヴァンフォーレ甲府で179.72センチ。これはかなり意外な結果と言える。昨シーズンの甲府の平均身長(=年間平均)は176.61センチ。これは浦和に次ぐリーグワースト2位だった。高さに欠ける選手が多かったので「セットプレーの守備」が甲府の大きな弱点になっていたが打って変わって今シーズンは高さのあるチームに生まれ変わった。リーグ17位→リーグ2位なので劇的な変化と言えるだろう。
意図的に大きな選手を起用して高さ不足を解消しようと努力したことはオフに補強したメンバーの顔ぶれを見ると分かる。FWニウソンが184センチで、MFクリスティアーノが183センチで、MF黒木聖は180センチで、DF新里は184センチ。(※ いつの間にか退団しているが左WBのレギュラー候補の筆頭だったMFジウトンも180センチとSBとしては大柄な選手である。)高さは弱点から一転して甲府に武器になりつつある。
3位はFC東京で179.64センチで、4位はアルビレックス新潟で179.45センチとなる。この2チームも高さのある選手を多く揃えて戦ってきた時期が長いチームなので「納得の順位」と言えるだろう。FC東京は突出して高い選手はいないが180センチを超えている選手が多くて満遍なく高い。一方の新潟は195センチのFW指宿と191センチのGK守田の高さが目立つ。195センチのFW指宿はリーグで4番目の長身となる。
5位は昇格組のアビスパ福岡で179.27センチ。新・守護神のGKイ・ボムヨンが194センチの長身で、FWウェリントンも186センチとサイズに恵まれている。福岡はJ2時代の2015年もセットプレーから多くのゴールを奪っているがMF末吉とMF鈴木惇という左右の優秀なプレイスキッカーを抱えているのは大きな強みでJ1でもセットプレーからすでに2ゴールを奪っている。セットプレーが最大の得点源になりそうだ。
表1. J1の全18クラブのスタメンの平均身長
ランク | クラブ名 | 2016年(開幕戦) | J1平均との差 |
|
1 | 名古屋グランパス | 181.64 | 3.35 |
2 | ヴァンフォーレ甲府 | 179.72 | 1.43 |
3 | FC東京 | 179.64 | 1.35 |
4 | アルビレックス新潟 | 179.45 | 1.16 |
5 | アビスパ福岡 | 179.27 | 0.98 |
6 | サガン鳥栖 | 178.64 | 0.35 |
7 | ジュビロ磐田 | 178.55 | 0.26 |
8 | ガンバ大阪 | 178.45 | 0.16 |
9 | 湘南ベルマーレ | 178.36 | 0.07 |
10 | 大宮アルディージャ | 178.00 | -0.29 |
10 | ベガルタ仙台 | 178.00 | -0.29 |
12 | 鹿島アントラーズ | 177.64 | -0.65 |
12 | ヴィッセル神戸 | 177.64 | -0.65 |
14 | 横浜Fマリノス | 177.36 | -0.93 |
15 | 川崎フロンターレ | 177.27 | -1.02 |
16 | 柏レイソル | 177.09 | -1.20 |
17 | 浦和レッズ | 176.36 | -1.93 |
18 | サンフレッチェ広島 | 176.09 | -2.20 |
■ オフの補強によって大型化に成功したヴァンフォーレ甲府磐田・G大阪・湘南・大宮・仙台あたりは「J1の平均程度」と言える。その下の177センチ台となるのは鹿島・神戸・横浜FM・川崎F・柏の5チーム。この中で意外に感じるのは鹿島と横浜FMの2チームである。鹿島というと伝統的にセットプレーが強くてDF秋田やDF岩政といった屈強なタイプのCBを中心に制空権を握って勝利を手にすることが多かったが開幕節の平均身長は177.64センチ。平均よりも低かった。
同様に横浜FMも「セットプレーに強い。」というイメージを持たれているが、平均身長ではリーグ14番目。当然、186センチのDFファビオと187センチのDF中澤がいてキッカーにはMF中村俊がいる。この3人だけで脅威を生み出すことができるが、「他に背の高い選手は誰がいるのか?」というと184センチのFW伊藤翔くらい。冷静に考えるとセットプレーのときに警戒すべき選手は限られるので的は絞りやすい。
最後に176センチ台となるのは浦和と広島の2チームである。「ペトロヴィッチ監督が土台を作ったチームである。」という共通点を持つ。17位の浦和が176.36センチで、18位の広島は176.09センチ。リーグ1位だった名古屋は181.64センチなので、1位の名古屋と18位の広島の間には「5.55センチ」もの差がある。これは大きな差である。「マンマークを採用したらほとんどがミスマッチになる。」と言える。
当然のことながら、「高さがある割には空中戦に強くない。」という選手もいるし、その反対で「背が低いのに空中戦に強い。」という選手もいる。広島関係の選手を例に挙げるとFCソウルでプレーするMF高萩は前者の典型のような選手で、左ストッパーでプレーするDF佐々木翔は後者の典型のような選手なので、一概に平均身長やサイズだけでは判断できない部分もあるが、無視できない要素であることは確かである。
表2は2015年シーズンの年間平均との比較である。すでに触れたとおり、甲府の大型化が目立つ。「3.11センチ」というのは相当な違いである。他には湘南・名古屋・大宮あたりは平均身長が1センチ以上高くなっている。磐田・FC東京・鳥栖・浦和あたりはほとんど変わっていない。逆に神戸と広島が1.5センチ以上ダウンしている。DF増川やMFチョン・ウヨンが抜けた神戸も地味ながらチーム全体が小型化している。
表2. J1の全18クラブのスタメンの平均身長 (2015年シーズンとの比較)
ランク | クラブ名 | 各クラブの平均身長(センチ) |
増減(前年比) | 2015年(年間) | 2016年(開幕戦) |
1 | ヴァンフォーレ甲府 | 3.11 | 176.61 | 17 | 179.72 | 2 |
2 | 湘南ベルマーレ | 1.71 | 176.65 | 15 | 178.36 | 9 |
3 | 名古屋グランパス | 1.62 | 180.02 | 1 | 181.64 | 1 |
4 | 大宮アルディージャ | 1.38 | 176.62 | 16 | 178.00 | 10 |
5 | アビスパ福岡 | 1.03 | 178.24 | 8 | 179.27 | 5 |
6 | 川崎フロンターレ | 0.48 | 176.79 | 14 | 177.27 | 15 |
7 | ガンバ大阪 | 0.43 | 178.02 | 9 | 178.45 | 8 |
8 | ジュビロ磐田 | 0.17 | 178.38 | 7 | 178.55 | 7 |
9 | FC東京 | 0.11 | 179.53 | 3 | 179.64 | 3 |
10 | サガン鳥栖 | 0.08 | 178.56 | 6 | 178.64 | 6 |
11 | 浦和レッズ | 0.03 | 176.33 | 18 | 176.36 | 17 |
12 | 柏レイソル | -0.20 | 177.29 | 13 | 177.09 | 16 |
13 | 横浜Fマリノス | -0.28 | 177.64 | 12 | 177.36 | 14 |
14 | 鹿島アントラーズ | -0.35 | 177.99 | 10 | 177.64 | 12 |
15 | アルビレックス新潟 | -0.51 | 179.96 | 2 | 179.45 | 4 |
16 | ベガルタ仙台 | -0.61 | 178.61 | 5 | 178.00 | 10 |
17 | ヴィッセル神戸 | -1.69 | 179.33 | 4 | 177.64 | 12 |
18 | サンフレッチェ広島 | -1.82 | 177.91 | 11 | 176.09 | 18 |
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