■ もっとも育成力に長けたクラブの1つJ1とJ2に所属する40クラブの中で「もっとも育成力に長けたクラブの1つ」と言えるのがコンサドーレ札幌である。古くは京都のMF山瀬功やG大阪のMF今野を高卒で獲得して日本有数の選手に育て上げたが、最近はユースからトップチームに昇格して活躍する年代別代表経験者が非常に多い。特にリオ世代は「逸材の宝庫」と言えるほどで、「札幌ユース出身のリオ五輪代表候補」の数は片手ではとうてい数えられない。
550万人と言われる北海道の人材をほぼ独占できる恵まれた環境であることが大きく関係しているように思えるが、下部組織出身でトップチームで活躍している選手ならびに下部組織に属する中学生や高校生の出身地を見ると、何だかんだで札幌生まれの選手が多い。札幌から離れた(道内の)地域からやって来る選手はあまり多くないようだ。(※ 札幌市の人口は約191万人。当然のことながら北海道の市の中では最多。)
北海道というのは道民以外のほとんどの人が思っている以上に各主要都市間の距離が離れている。そのため、育成に力を注いでいる札幌の下部組織とは言っても、道内に散らばっている逸材候補を容易に獲得できるような状況にはなっていないと思われる。距離の問題は簡単には解決しない話だと思うが、見方によっては「まだまだ伸びしろがある。」とも言える。今以上に逸材が集まってくる環境になる可能性はある。
■ 抜群のサッカーセンスを持った才能豊かな選手久々のJ1昇格を狙う現在のチームもユース出身者が多い。大きく分類すると、MF小野伸やMF稲本やDF河合など経験豊富なベテラン組、FWナザリトを筆頭にした高い能力を持つ外国人選手、生え抜きの若手から中堅の3つのグループでチームは構成されており、いずれのグループにも属さない選手は少数である。「生え抜きの若手選手を積極的にトップチームの試合で起用しよう。」という意図はヒシヒシと伝わってくる。
もっとも期待を集めているのは(やや怪我がちではあるが、)年代別代表で活躍した実績を持つMF深井一で、手倉森ジャパンの常連になっているMF荒野も大きな期待を受けている。FC東京に期限付きで移籍しているDF奈良も手倉森ジャパンには定期的に招集されているが、今シーズン、活躍が目立つのは左WBで起用されているMF堀米悠である。札幌ユース出身でプロ3年目。昨シーズンは福島ユナイテッドでプレーした。
タフな環境と言えるJ3リーグで試合経験を積んで札幌に戻って来たが、左利きで、ボールタッチが柔らかくて、判断が正確で、キック力もあるが柔らかいパスを出すこともできる。開幕当初の札幌は「攻撃が単調になりすぎる。」という点が弱点になっていたが、MF堀米悠が左WBに入るようになってからは攻撃のバリエーションが格段に広がった。抜群のサッカーセンスを持った才能豊かな選手と言える。
■ アタッカーを両WBに配置するバルバリッチ監督昨シーズンの途中に札幌の監督に就任したバルバリッチ監督は両WBの選手起用が「かなり独特」と言える。3バックを採用しているJリーグの多くのクラブはWBの位置には「サイドバックの専門家」を置いている。守備が安定すること、そして、試合中のシステム変更(=4バックへの変更)が容易になることの2つの大きなメリットがあるが、受け身になりやすくて、守備的な戦いになりやすいという弱点もある。
近年はその点を割り切って戦うチームが多くなっているが、札幌は右WBがMF荒野で、左WBがMF堀米悠なので、どちらのサイドとも中央でプレーしたほうが生きる選手を起用している。「アウトサイドの層が薄い。」、「アタッカータイプは質も量も充実している。」という点が大きく関係していると思うが、この点はMF中村俊やMF小野伸やMF本山など10番タイプを左WBに置くことが多かったトルシエ監督と重なる。
右WBで起用されているMF荒野も有望なアタッカーと言えるが、MF堀米悠は五輪代表の常連のMF荒野に優るとも劣らないポテンシャルを秘めている。ある程度はドリブルで突進することもできるが、最大の魅力はメッセージ付きのパスを出すことができる点だと言える。左サイドでボールを受けたMF堀米悠が起点になっていくつかのパスがテンポよくつながってチャンスが拡大していくシーンというのは非常に多い。
■ 最大の特徴はメッセージ付きのパス当然、試合中に言葉でプレーの意図を伝えるのは難しいが、パスの強弱やパスのタイミングやパスの質を変えることで味方選手にメッセージを送ることができる。ボールを受ける前、それから、ボールを受けた後、周りの状況を正確に判断して攻撃のイメージを膨らませるのも上手だと思うが、自分のイメージを周囲にいる味方選手に(1本のパスによって)きちんと伝えることができるのがMF堀米悠の最大の特徴と言える。
もちろん、守備面など課題は少なくない。調子の良くないときの立て直し方なども課題と言えるが、20歳という若さでこういう「メッセージ付きのパス」を頻繁に出すことができる日本人選手はほとんどいないので自然と目に留まる。手倉森ジャパンは4バックを採用することがほとんどなのでWBのポジションは無いが、ボランチの層がやや薄い。こういう選手をボランチで起用するのも面白いのではないか?と思う。
ちなみにプレー中の表情を見るとはあどけなさが残る。おっとりしたタイプのように思えるが、実際にはリーダーシップがあって強いメンタリティを持っているという。レギュラー組の中では韓国の五輪代表候補のGKク・ソンユンと並んで一番下の年齢になるので、キャプテンシーのようなものはJ2の試合の中でお目にかかることはないが、そういうメンタリティはより良い選手になるための助けになるかもしれない。
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