■ グループリーグの2試合目AFCのU-16選手権のグループリーグの2試合目。初戦はU-16香港代表に2対0で勝利して白星発進となったU-16日本代表がU-16中国代表と対戦した。中国は初戦で豪州に0対3で敗れており、この試合の前に行われた豪州と香港の試合は3対0で豪州が勝利したため、この試合で日本が中国に勝った場合は早くも日本と豪州の2位以内が確定する。
U-16日本代表は「4-1-2-3」。GK千田(横浜FMY)。DF石川啓(鳥栖U-18)、森岡陸(磐田U-18)、DF冨安(福岡U-18)、阿部雅(星稜高校)。MF渡辺皓(東京VY)、菅(札幌U-18)、永澤(神戸U-18)。FW斧澤(C大阪U-18)、杉浦(名古屋U-15)、 渡邊陽(浦和Y)。スタメンは総入れ替えとなって、全員が今大会の初スタメンとなった。
今回のU-16日本代表チームは1998年生まれと1999年生まれの選手が対象となるが、1998年の早生まれの選手は2人だけ。彼らが高校2年生となる。そして、MF吉田峻(清水JY)とMF藤本寛(東京VJY)とFW杉浦(名古屋U-15)の3人は中学3年生で、それ以外の18名は高校1年生となるので、高校1年生が主体となるチームである。
■ 3対0で日本が勝利試合の序盤は負けるとグループステージ敗退が決まる中国の勢いがやや上回って、日本は持ち味であるパスサッカーができない。なかなかシュートを打つこともできなかったが、前半30分あたりを過ぎると中国のペースが落ちてきて、日本が決定機を作るようになる。しかしながら、いくつかあったチャンスを生かせず。0対0で前半を終了する。
迎えた後半2分に日本は星稜高校の2年生で左SBのDF阿部雅がサイドを抉ってクロスを入れると、ファーサイドで待っていたC大阪U-18のFW斧澤が倒されてPKを獲得。これを札幌U-18のMF菅が左足で豪快に決めて先制ゴールを奪う。初戦の香港戦は途中出場でFKから豪快なゴールを決めているMF菅は2試合連続ゴールとなった。
さらに後半9分に神戸U-18のMF永澤が高い位置で相手ボールを奪うと、下がってボールを受けた名古屋U-15のFW杉浦のスルーパスから裏に飛び出したFW渡邊陽が決定機を迎える。浦和YのFW渡邊陽は中央をよく見て中に折り返すと、フリーでゴール前に入ってきたC大阪U-18のFW斧澤がうまく合わせて2点目を奪う。
さらに直後の後半11分には鳥栖U-18の右SBのDF石川啓のスルーパスから神戸U-18のMF永澤が裏に抜け出して相手キーパーと1対1の場面を迎える。MF永澤が放った最初の強烈なシュートは惜しくもクロスバーに直撃したが、こぼれてきたボールをMF永澤が自ら左足で流し込んで試合を決める決定的な3点目を挙げる。
これで豪州と得失点差&総得点で全く同じになった日本は4点目を奪って「3戦目の豪州戦は引き分けでも1位通過が確定する。」という有利な状況に持ち込みたかったが、その後、何度か訪れた決定機をゴールに結びつけることはできず。しかしながら、3対0で日本が勝利して2連勝。B組は豪州と日本の決勝トーナメント進出が確定した。
■ 前半は苦労したが・・・。初戦の香港戦と同様に前半は苦労した。この日は試合中はほとんど雨は降っていなかったが、試合前に大量の雨が降っていたようで、ピッチコンディションが非常に悪かった。水たまりができていて、ボールが止まってしまう箇所もあるほどだったが、後半の立ち上がりから連続してゴールを奪った日本が3対0で勝利して2連勝となった。
トータルの内容はあまり良くなかった。試合後のインタビューで吉武監督は内容に関して「不満いっぱい」という感じだったが、前半はなかなかパスが回らなくて、シュートシーンも少なかった。軽率なミスも少なくなかったが、初戦の香港戦と同様で相手が疲れてきて動きが悪くなったところを突いて後半早々に試合を決めてしまった。
後半2分にPKを獲得して、これで先制できたことが大きかったが、PKの判定に関してはややラッキーだった。C大阪U-18のFW斧澤がゴール前に入っていったが、激しくチャージされたわけではなかった。PKを取られた中国の選手には同情せざる得ないが、先制ゴールを奪ったことで日本の選手の重荷が取れて2点目と3点目が生まれた。
後半開始早々にPKで先制してから後半20分あたりまでの時間帯のサッカーは非常に良かった。ゴールには結び付かなかったものの、華麗なパスワークで完璧に相手の守備陣を崩したシーンもあった。ここまでの2試合の中で「もっともいいサッカーができた時間帯」と言えるが、後半20分あたりを過ぎると再度ペースダウンしてしまった。
■ 眠れる獅子はまだ目覚めず・・・。結局、この試合で対戦相手の中国が放ったシュートは3本ほどだった。序盤こそ互角だったが、日本と中国の力の差は大きかったと言わざる得ない。中国は初戦の豪州戦も0対3で敗れているが、中国はこの世代も苦しんでいる。「眠れる獅子」と言われて久しい中国代表であるが、目覚めるのはまだまだ先の話なのかもしれない。
10億人を超える人口を抱えている中国のサッカー界がなかなか強くならないというのは、日本にとっては良い話ともいえるが、良くない話ともいえる。あまりにも強くなりすぎると厄介なことであるが、現状ではどの世代も中国と対戦した時はそれほど苦労することなく勝利を手にすることができる。強化という視点で考えると残念に感じるところもある。
近年、Cリーグのチームが欧州の有名監督やビッグネームを次々に獲得してACLで好成績を残しているが、サッカーに費やしているお金は相当なものである。Jリーグの創生期に似た雰囲気もあるが、日本は景気減速がきっかけになって若手を育成せざるえない状況になって、それが功を奏したといえるが、果たして、中国はどうなるだろうか。
■ スペシャルな選手が見当たらないという不安「98ジャパン」は2試合を終えた段階でB組の2位以内が確定して決勝トーナメント進出が決定した。10年ほど前までは「U-16世代」はアジアでもなかなか勝てなくて、「もっとも世界から遅れている世代」だったが、改善されてきた。簡単なグループではなかったが、2連勝で危なげなく決勝トーナメント進出を決めたことは評価できる。
ただ、気になる箇所はいくつかある。早々に敗退が決まった中国と比較すると「ぜいたくな悩み」と言えるが、U-16日本代表もスペシャルな選手は見当たらない。結局、まだ出場機会が与えられていないのはC大阪U-18のGK井上だけで、他の22名はスタメンの機会を得たが、「飛び抜けた選手がいない。」というのは気になるところである。
もちろん、全体のレベルは上がっており、テクニックや運動量は総じて高いレベルにある。吉武監督がそういうタイプを好んで招集しているという事情もあるが、攻撃において「個の力」で圧倒できる選手はおらず、将来性のある選手というよりは実践的な選手が多くて、いい意味でも、悪い意味でも、大人な選手がほとんどである。
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