■ 世代交代を進めるのは難しいが・・・。アジア予選で敗退してリオ五輪の本大会の切符を逃したなでしこジャパンの軌跡を振り返ってみると一目瞭然であるが「世代交代」というのは難しい。飛び抜けた実力を持つ若手が出てきて、衰え始めたベテランたちを追い抜いて新しい時代を築いていくのがベストであるが、よほどのタレントでない限り、豊富な経験値を持ったベテランからレギュラーポジションやベンチ枠を奪い取るのは大変なことである。
「何試合かチャンスを与えたのにチャンスを掴みきれなかった若手が悪い。」という雰囲気が出来上がると世代交代は進まずに高齢化が進んでいく。「ポジションは与えられるものではない。自分で奪い取るものだ。」というのは(サッカーに限らず)どんな世界でも共通する話であり、考え方としては正しいと思うが、周囲とのコンビネーションが重要となるサッカーの世界では特にその考え方に捉われるのは宜しくない。
長い目で個人やチームのことを考えて半ば強引に世代交代を進めていくのは大事なことである。このあたりのさじ加減が上手なのは鹿島アントラーズである。ちょっと前でいうとDF秋田、少し前でいうとDF岩政を例に挙げることができるが、まだ鹿島の中で十分な戦力になり得る状況だったにもかかわらず、後継者候補が出てくるとスパッと次世代の選手に切り替えた。このあたりのタイミングの良さは絶妙である。
もちろん、GK曽ヶ端の後継者がなかなか出てこなくて、まもなく37歳になるMF小笠原も未だに代わりがいない状態である。(ようやくGK櫛引やMF永木やMF三竿健が出てきたが・・・。)全てのポジションが順調にフロントの思惑通りに世代交代が進行しているわけではないが、(他クラブと比べて)鹿島が長期的に低迷することがほとんどない理由であり、ダントツのタイトル数を獲得できている大きな理由と言える。
■ 「30歳」が大きな壁となるハリルJAPAN男子の日本代表も数年前と比べるとやや高齢化している。中心となるFW本田圭、MF香川、FW岡崎慎、MF長谷部、DF吉田、DF長友あたりは2011年1月のアジアカップの頃から変わっていない。マンネリ化を指摘する声は多くなっているが、それでもDF森重、MF山口蛍などが2013年7月の東アジアカップをきっかけに代表に定着して、アギーレ監督になってからはMF柴崎岳やFW武藤嘉などが台頭してきた。
そして、ハリルホジッチ監督になってからはMF宇佐美、MF原口などが代表に定着しており、しばらく代表から遠ざかっていたFW金崎やDF槙野やMF柏木などが常連組になりつつある。今後はDF植田直(鹿島)やDF岩波(神戸)やFW浅野拓(広島)やMF南野(ザルツブルク)やFW久保裕(ヤングボーイズ)など五輪世代が「メンバー枠の争い」に食い込んでくるのは確実。彼らがフル代表に定着できると年齢層も一気に下がる。
五輪世代がJリーグでも大きな存在感を発揮し始めているので日本代表はこれから若返りが進行すると思われるが、「ベテランが必要ないか?」というと決してそういうことはない。「平均年齢は低ければ低いほどいい。」とは言えず、特定の世代に選手が集中していることも好ましいことではない。チームとして一体感を持って戦っていく必要があるのでチームをまとめる力を持ったベテランの力は必ず必要になってくる。
ハリルホジッチ監督は「30歳」という年齢を一区切りに考えていると感じられる。2016年になってから日本代表あるいは日本代表候補に選出された選手の中で最年長はGK川島(ダンディーU)。1983年3月20日生まれなので33歳になったばかり。さらにキャプテンのMF長谷部(フランクフルト)は1984年1月18日生まれなので32歳。3番目が1986年4月16日生まれのFW岡崎慎(レスター)で29歳。もうすぐ30歳になる。
約2年後に迫った2018年のロシアW杯を見据えてある程度は年齢でカットするのは決して間違った判断ではないが、昨今はサッカー選手の寿命が以前と比べるとはるかに長くなっているので「30歳=ベテラン」とは言えなくなりつつある。35歳を超えてもバリバリで活躍できる選手は日本にも世界にもたくさんいる。そして一般的には30歳前後になると肉体的な衰えが始まることが多いがそれも人それぞれである。
■ 高まるベテラン組の代表復帰の可能性「2014年の時点で4年後のロシアW杯を考えたとき」、「2015年の時点で3年後のロシアW杯を考えたとき」、「2016年の時点で2年後のロシアW杯を考えたとき」、「2017年の時点で1年後のロシアW杯を考えたとき」は全く状況は異なる。30歳の選手に対して「4年後の姿」を想像するのはかなり難しいが、期間が短くなって「3年後の姿」、「2年後の姿」、「1年後の姿」となると少しずつイメージしやすくなる。
したがって、ロシアW杯の本大会までの期間が短くなればなるほど「年齢的な問題でカットされていると思われるベテラン組」が日本代表に戻ってくる可能性が少しずつ高まっていく。先のとおり、今の日本代表は極端に高齢化しているわけではないので、35歳前後の選手が1人・2人いたとしても全く問題にはならないし、年齢バランスを考えるとそういう選手がいた方がうまくチームが回る可能性はある。
具体的に名前を挙げていくとMF遠藤(G大阪)やMF今野(G大阪)の経験値は捨てがたいものがある。MF遠藤はプレースタイルを考えると年齢的な衰えの影響をあまり受けないタイプであり、ゲームを組み立てる力は未だに最高レベルである。MF今野は今シーズンはチーム事情からCBでプレーする機会が多くなっているがボール奪取力は日本人屈指である。守備的なポジションであればどこでもプレーできるのは魅力である。
「ゴール」という明確な結果を残しているFW大久保(川崎F)も無視できない。本人は代表復帰への思いを強く持っているが何といってもJリーグでは3年連続で得点王に輝いている選手である。最近は海外リーグでプレーする選手も増えているが「Jリーグの舞台で結果を出している選手を日本代表に呼ぶ。」という姿勢は選手選考においては基本中の基本である。Jリーグでプレーしている選手への強烈なメッセージになる。
■ 絶好調とも言える今シーズンのMF中村憲剛個人的にはMF中村憲(川崎F)の代表復帰を期待したい。今シーズンは4試合で3ゴール1アシスト。ボランチのポジションでプレーしているが「絶好調」と言っても言い過ぎではないほどプレーが冴えている。守備力を考えると国際試合でボランチで起用するのはリスクが高いがクレバーな選手なので途中出場でも試合の流れを変える働きができる。周りを使うことが絶妙に上手いので味方の良さを引き出すことができる。
ここ数年、フォワードとしてはJリーグでFW大久保(川崎F)に次ぐ数字を残し続けているFW豊田(鳥栖)も代表復帰が期待される選手の1人である。今回はFWハーフナー・マイク(デンハーグ)が久々に招集されて存在感を発揮しているがFW豊田はターゲットタイプとしては日本人最高峰の選手である。鳥栖のサッカーはロングボールが中心なので「高さだけの選手」と思われることもあるが実はスピードがあって運動量も多い。
今年の2月で30歳になったばかりなので「ベテラン」という印象はほぼ無いが、2015年のJリーグMVPのMF青山敏(広島)も代表復帰が期待される選手の1人である。約1年前のウズベキスタン戦(H)で先発出場して先制ゴールを決めているが代表でプレーしたのはこの時が最後。腰に持病を抱えているのでコンディション面を考慮されている可能性もあるが、縦に早いサッカーを目指す今の日本代表には必要なタイプである。
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