■ 第10節J1の第10節。0勝6敗3分けで勝ち点「3」の大分トリニータと、1勝4敗4分けで勝ち点「7」のサガン鳥栖が大分銀行ドームで対戦した。大分はリーグ戦は開幕から9試合勝利なしで、ナビスコカップも0勝1敗3分けという成績なので、公式戦は13試合勝利が無い。一方の鳥栖もリーグ戦はここ6試合で0勝4敗2分けと2年目のジンクスに苦しんでいる。J1の舞台で両チームが対戦するのは史上初となる。
ホームの大分は「3-4-3」。GK清水。DF深谷、高木和、児玉。MF丸谷、村井、辻尾、チェ・ジョンハン。FW高松、小松、森島康。元日本代表のMF村井がボランチで今シーズン初スタメンとなった。日本代表として国際Aマッチは5試合に出場している。前線は3トップ気味で、頂点にFW小松が入って、その下にFW高松とFW森島康が並ぶ形となった。高さのある選手を並べる思い切った布陣となった。
対するアウェーの鳥栖は「4-2-3-1」。GK奥田。DF金井、金正也、呂成海、金民友。MF藤田直、高橋義、水沼、早坂、野田。FW豊田。結果が出ていないこともあって、DF金井やDF金正也やMF早坂らがスタメンに抜擢された。キーパーはGK赤星が体調不良ということで、大卒3年目のGK奥田がスタメンとなった。エースのFW豊田は9試合で7ゴールを挙げている。
■ アウェーの鳥栖が快勝J1の舞台では2006年以来となる九州勢同士の対戦となったが、J1に昇格して2年目の鳥栖が試合を支配する。まず前半29分に左サイドでMF野田がボールをキープして飛び出してきたボランチのMF高橋義に絶妙のパスを送ると、MF高橋義が左足で落ち着いて決めて鳥栖が先制する。3試合ぶりのスタメンとなったMF高橋義は今シーズン初ゴールとなった。
しかし、大分も前半44分に左サイドでボールを受けたストッパーのDF児玉がゴール前にクロスを入れると、大分のFW小松と鳥栖のGK奥田が競り合って、GK奥田はパンチングでクリアしようとするが、FW小松が高さで上回って競り勝つと、頭に当たったボールがゴール方向に飛んで行って同点ゴールとなる。川崎Fから移籍のFW小松は移籍後初ゴールとなった。前半は1対1で終了する。
追いつかれた鳥栖は後半3分にDF金民友のヘディングシュートのこぼれ球をFW豊田が頭で押し込んで2対1と勝ち越しに成功する。FW豊田は今シーズン8ゴール目となった。さらに後半5分にも左サイドでボールを受けたMF野田が右足でキーパーの頭上を越える鮮やかなループシュートを決めて3対1と突き放す。MF野田は今シーズン2ゴール目となった。
勢いに乗る鳥栖は、後半18分にもボランチのMF藤田直の攻撃参加が相手のオウンゴールを誘って4点目を挙げる。終了間際に大分はFW森島康のPKで1点を返すが、時すでに遅し。結局、4対2でアウェーの鳥栖が勝利して、3節の川崎F戦以来となる久々の勝ち点「3」を獲得した。一方の大分はリーグ戦10試合勝利なし。勝ち点は「3」のみで、最下位に沈んでいる。
■ 好プレーを見せた野田隆之介メンバーを何人か入れ替えてきた鳥栖が4対2で勝利した。鳥栖は九州の交通の要所なので、かなり便利なところにあるが、それでも大分とは距離があって、特急や新幹線を利用しても3時間弱かかるので、近いとは言えない距離にあるが、大分銀行ドームにたくさんのサポーターが訪れてチームをバックアップした。これは選手や監督やスタッフの大きな力になったと思われる。
疲れがピークに達している時期であるが、フレッシュな選手も多くて、最後まで運動量は落ちなかった。最後のPKでの失点は余計だったが、ほとんどの時間帯で試合を支配して、完勝と言える結果と内容だった。3節で川崎Fに勝利してから6試合勝利が無かったので、J1に上がってから最も苦しい時間を過ごしたが、J1で勝つことの大変さと喜びを知ったというサポーターは多かったと想像できる。
この日は、左サイドハーフで起用されたMF野田がキーマンになった。先制ゴールをアシストして、さらに3点目のゴールを自らゲットしたが、微妙なところにポジションを取って、フリーでボールを受けて、起点を作るプレーが光った。サイドハーフで起用されるときは、サイドに張ってしまうことが多かったが、この日は、頻繁に中央のエリアにも入って来て、大分の守備陣を混乱させた。
大卒3年目となるMF野田は非常にポストプレーの上手い選手である。183センチとサイズがあって、リーチもあって、懐が深い点が特徴の選手である。身体能力はそれほど高くないが、体の使い方も上手なので、「彼よりポストプレーがうまい。」と断言できる現役の日本人選手は、磐田のFW前田や鹿島のFW大迫くらいで、日本人のポストプレーヤーとしては5本の指に入るほどの選手である。
鳥栖はFW豊田と絶対的な選手がいるので、フォワードではなくて、サイドハーフで起用されることが多くて、サイドで起点になる働きが期待されているが、今シーズンはスタメンで起用されたときは思うような活躍ができずに、2012年の終盤ほどのプレーは出来ていなかったが、この日は、素晴らしい出来だった。彼がサイドでボールをおさめるプレーをしてくれると、FW豊田が楽になるので、重要な選手である。
■ 豊田陽平は8ゴール目エースストライカーのFW豊田は勝ち越しゴールをマークして、リーグ戦は10試合で8ゴールとなった。2012年はJ1で33試合に出場して19ゴールをマークしているが、FW豊田という選手はスロースターターで、2010年も、2011年も、2012年は前半戦はなかなかゴールを決めることができず、夏以降に量産している。よって、過去3年間とは全く異なっており、ハイペースでゴールを量産している。
数字だけを見ると「文句なし」のレベルで、FW豊田のような点取り屋は日本代表に必要なので、個人的には、早期の日本代表入りを期待したいところであるが、ここ最近は、そこまでいいプレーはできていない。要求されるレベルも高くなっているので、期待の裏返しとも言えるが、前線でボールをおさめるプレーができなかったり、決定機に決められなかったり、精彩を欠く試合も多い。
4節以降、チームが勝てなかった責任はエースのFW豊田にもあるので、諸手を上げて、「豊田陽平を日本代表に呼ぶべきだ。」とは言いにくい状況で、「試合を見ていなくて、得点ランキングしか見ていないのでは?」と思われてしまう可能性もあるので、注意が必要であるが、とはいっても、十分な結果は残しており、高さと強さとゴール前のポジショニングは魅力がある。
特にゴール前のポジショニングが、年々、良くなっている。鳥栖は1トップ気味の布陣なので、CFのFW豊田はクロスが上がる時はニアサイドに入って行くのがセオリーであるが、ニアにはいかなくて、ファーサイドで待っていて、フリーでネットを揺らすことも多い。抜群の身体能力を持っているので、本能で勝負する野性的なストライカーのように思われるが、意外とクレバーである。
■ トリプルタワーは機能せず一方の大分は10試合を終えて勝ち点「3」と苦しいスタートになった。10節を終えた時点で「10得点/20失点」となったが、僅差の試合も多くて、1点差負けが4試合で、2点差負けが3試合。どの試合も勝ち点を得るチャンスはあって、「J1で全く通用していない。」というわけではないが、ここまで結果が出ないと、選手も監督もスタッフも自信を失ってしまう。
今シーズンは甲府と湘南と大分の3チームがJ1に昇格してきたが、いずれのチームも前評判は高くなかった。「降格候補」に挙げる人も多くて、3チームとも厳しい戦いになることが予想されたが、甲府がいいスタートを切っている一方で、湘南と大分は苦しんでいる。特に大分が頑張らないと「やっぱりプレーオフは失敗だった。」という話が出てくるのは確実なので、責任は重大である。
この日は、FW小松、FW森島康、FW高松の3人を併用して、トリプルタワーと表現することができる奇抜な布陣で臨んだが、十分には機能しなかった。FW高松が完全に試合から消えてしまったのが誤算だったが、初スタメンのFW小松がゴールという結果を残したのは、数少ない収穫と言える。起用な選手では無いが、得点力はあるので、救世主になることが期待される。
関連エントリー 2012/12/28
【Jリーグ】 セットプレーからのゴールが多かったチーム (攻撃編) 2012/12/29
【Jリーグ】 セットプレーからのゴールが多かったチーム (守備編) 2013/03/22
日本代表入りが期待されるフォワードは誰か? 2013/04/07
【鳥栖×清水】 3度目の鳥栖スタジアム(生観戦記) (上) 2013/04/08
【鳥栖×清水】 3度目の鳥栖スタジアム(生観戦記) (下) 2013/04/09
ベアスタで気になったところ 2013/04/10
ベストアメニティスタジアムの旅 (4月5日-4月6日) 2013/04/28
セレッソ大阪の応援に感じた違和感
- 関連記事
-