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【J1】サガン鳥栖の『一夜限りの値段のないスタジアム』は失敗だったのか？ | | |　

■　値段のないスタジアム(チケット)

5月27日(土)に行われたJ1の13節のサガン鳥栖 vs コンサドーレ札幌(@ベストアメニティスタジアム)は前半38分に左SBのDF吉田豊のクロスからMF鎌田が決めてホームの鳥栖が先制に成功した。後半の終盤はビハインドの札幌が攻め込んだが同点に追いつく事は出来ず。1対0で鳥栖が逃げ切った。今シーズンの鳥栖はホームでは結果を残しており、これでホームのベストアメニティスタジアムでは5勝1敗となった。

この試合で注目を集めたのは「(自由席の)チケットを無料で渡して試合後に「満足度」に応じた額を後払いしてもらう。」という試みだった。「値段のないスタジアム(チケット)」と名付けられたクラブ初の試みだったが、つい先日、その結果が発表された。該当するチケットは6,942枚が配られて実際に来場したのは5,620人。払った総額は456万8,215円。ということで1人当たりの平均値は812.8円だったという。

鳥栖の公式サイトを見ると対象となったのは「A自由席メインスタンド、A自由席バックスタンド、B自由席、ホームサポーター席3階」の4つ。指定席、ホームサポーター席2階、アウェイサポーター席2階、車いす席は対象外と記載されている。Jリーグチケットから各々の価格(※ 一般販売)を調べて表にまとめてみると以下のようになる。「大人向け」と「小・中・高向け」では結構な差があることが良く分かる。

表1. 各座席の一般販売のときの価格

席の種類	大人	小・中・高
A自由席メインスタンド	3,700円	2,300円
A自由席バックスタンド	3,500円	2,000円
Ｂ自由席	3,000円	1,500円
ホームサポーター席3階	2,000円	500円

■　想定を大きく下回った812.8円

この話を最初に聞いたときは「非常に面白い試みだ。」と思ったので注目していたが812.8円というのは予想を大きく下回る額だった。「お帰りの際にあなたの満足したお値段を入場口のボックスにてお支払いください。」と説明されているので、試合の結果(=ホーム鳥栖が勝つか？引き分けるのか？負けるか？)で大きく変わって来ることは十分に予想できたが、幸いにして鳥栖が1対0で勝利することができた。

「自分ならばどうなのか？」、「どういう基準や考え方でチケット代を決めるのか？」を考えてみたがベースになるのは元の価格である。『試合中に大雨が降って中断する。』、『試合後に大乱闘が起こる。』などとてつもなくイレギュラーな出来事が起こらない限りは「元の価格未満」をボックスに入れるのは難しい。応援しているチームが勝利したときは「元価格に500円をプラスした額」になるのではないかと思う。

J1の試合のメインスタンド or バックスタンドの自由席のチケット代は2,000円～3,000円程度が相場。トラブルやアクシデントも無くて鳥栖が勝利したことを考えると「平均値は2,000円程度になるのではないか？」と予想していたので812.8円というのは完全な想定外だった。「えっ!!!」と驚くような額になった。試み自体は面白くてアイディアとしては良かったが「企画自体は成功しなかった。」と言うしかない。

■　大幅な赤字は避けられない・・・。

公式サイトには『入場口のボックスにてお支払いください。』と書かれているので『誰がいくら払ったのか？』はもちろんのこと、『〇〇円を払ったのは何人だったのか？』などの情報は得られていないと思う。当然、『ボックスの中にお金を入れないと帰れない。」という話ではないはず。14,416人となると帰り際は大混雑するので、結局のところ、「1円も払わなかった人」が相当な数いるのではないか？と推測する。

「趣旨を理解して満足度をお金という形で表現してボックス内に投入した人」と「(意図的なのかアクシデント的なのかは分からないが)1円も支払っていない人」に大きく分けられて平均値を出すと812.8円という寂しい数字になってしまったと思われる。もちろん、「タダ券をばらまくよりはマシ」と考えることは出来るが、企画に携わったスタッフはもちろん、選手もサポーターもがっかりしているのではないか？と思う。

多くの人がクラブの意図や企画の趣旨を理解して「満足度」に応じた額をボックス内に入れることで「普通にチケットを捌いたとき時と比べるとプラスになる時もあるし、マイナスになる時もある。」という状況になるようだと相当に面白いが、この感じだと大幅なマイナスになるのは避けられない。今からでも遅くはないので「払い損ねた人」は意図や趣旨をしっかりと理解して正しいアクションを起こしてほしいと思う。