■ 第30節J2の第30節。17勝8敗4分けで勝ち点「55」の京都サンガが西京極で松本山雅と対戦した。松本山雅は9勝10敗10分けで勝ち点「37」。京都は夏前に失速して、勝利から遠ざかった時期があったが、6連勝中と調子を上げてきた。勝つとクラブタイ記録の7連勝となる。一方の松本山雅もここ5試合負けなしで、順位も14位に上げてきた。
ホームの京都は「4-2-3-1」。GK水谷。DF安藤、染谷、バヤリッツァ、福村。MF秋本、チョン・ウヨン、中山、工藤、中村充。FW宮吉。U-19日本代表に招集されていたFW久保が戻ってきてベンチスタートとなった。MF中村充は10ゴール、FW宮吉は9ゴールを挙げている。
対する松本山雅は「3-4-2-1」。GK白井。DF飯田、飯尾、多々良。MFユン・ソンヨル、喜山、玉林、鐡戸、楠瀬、船山。FW塩沢。守護神のGK野澤が怪我で長期離脱となったため、大卒2年目のGK白井がスタメン起用された。今シーズン3試合目の出場となる。攻撃の軸となったMF船山は7ゴールを挙げている。
■ 松本山雅が逃げ切る試合は立ち上がりからアウェーの松本山雅のペースとなる。1トップのFW塩沢が前線で起点となって、シンプルな攻撃からチャンスを作っていく。先制ゴールが決まったのは、前半39分で、MF鐡戸のCKをニアでFW塩沢がヘディングで合わせてリードを奪う。FW塩沢は今シーズン5ゴール目となった。前半は1対0で松本山雅がリードして折り返す。
後半開始から京都はボランチのMF秋本に代えてドリブラーのMF駒井を投入。すると、後半の立ち上がりは厚みのある攻撃を見せるが、時間が経つにつれて、松本山雅が試合の流れを取り戻して、再び、松本山雅のペースで試合は進んでいく。
ビハインドの京都は後半22分にMFチョン・ウヨンに代えてFW久保を投入。SBSカップの3試合で5ゴールを挙げたストライカーに命運を託すと、後半44分にMF中村充のスルーパスを受けたFW久保がペナルティエリア内で倒されてPKを獲得。絶好の同点のチャンスを迎えるが、FW久保のPKをGK白井が防いで同点とはならず。
結局、試合は1対0で松本山雅が勝利し、今シーズン10勝目。トータルで10勝10敗10分けでイーブンの成績となった。一方の京都はクラブタイの7連勝達成はならず。ホームで痛い敗戦を喫した。
■ 守護神のGK白井松本山雅の勝利の立役者となったのは、GK白井である。28節の試合中にGK野澤が負傷して全治2ヶ月と診断されているので、28節の試合の途中からゴールを守っているが、前半のMF中村充との1対1を防いで波に乗ると、終盤のPKもストップした。
PKを与えたシーンは、松本山雅のディフェンスラインに乱れが生じて、MF中村充にフリーでボールを持たれて、そこからFW久保にパスが渡ってPKを献上したので、絶体絶命のピンチであったが、GK白井がディフェンスのミスを帳消しにするビッグセーブを見せた。
もちろん、FW久保のシュートコースが甘かったという理由もあるが、勝負どころで勝負強さを発揮した。29節の熊本戦も無失点で凌いでおり、今のところ、GK野澤の穴を感じさせない仕事を見せている。ニューヒーローの誕生と言えるだろう。
■ 前線で奮闘するFW塩沢もう一人のヒーローは、決勝ゴールを挙げたFW塩沢で、値千金のヘディングシュートとなった。このシーンは、CKを得るまでの過程が素晴らしくて、相手のCKを防いで自陣の深い位置でMF喜山にボールが渡ると、MF喜山は得意の左足のロングキックで右サイドに大きく展開して、一気に局面を変えて見せた。
ボールを受けた右サイドのMF鐡戸も無駄の無いプレーをして、ドリブルで運んでから逆サイドのゴール前に高精度のクロスを送って、京都のDF福村がかろうじてクリアしたことからCKのチャンスを掴んだ。この一連の流れは見事で、CKからのゴールも含めて松本山雅らしい形から決勝ゴールを奪った。
FW塩沢の貢献度の高さに関しては、今さら、言うまでもないが、この試合も、サボることなく全力で戦って、ロングボールをマイボールにしようと前線で奮闘した。182センチと高さがあって、バネもあるので、高確率でヘディングに競り勝つことができるが、運動量も多いので、競り合いのシチュエーションをたくさん作ることが出来る点も、FW塩沢の武器である。
■ チームの強み好調の京都が相手ということで、「金星」と表現されてもおかしくないが、トータルの成績は10勝10敗10分けと全くのイーブンで、一桁順位を狙える位置である。これは、J2に参戦して1年目ということを考えると、ありえないほどの好成績で、近年、J2に昇格してきたクラブの中では、群を抜いて素晴らしい結果を残している。
攻撃的なポジションで、実績のある選手やスター選手はおらず、個の能力で劣る点は否めないが、どのチームに負けない運動量があって、最終ラインの集中力が途切れることはない。シュートであったり、クロスであったり、攻撃のときに、「やり切ること」を徹底している点が、松本山雅の大きな特徴で、仮に、技術的なミスが起こったとしても、相手にカウンターを食らう可能性は低くて、技術的な差をうまい具合に隠すことに成功している。
試合の流れを相手に渡さない「したたかさ」を持っている点も、好成績の理由と言える。劣勢になりかけたとき、上手く時間を使って時計を進めることもできるし、相手をイラつかせるような行為も、認められている範囲で実行することができる。この辺りは、反町監督の指導の賜物だと思うが、1年目のチームとは思えないほど、大人の戦いが出来ている。
攻撃についても、4月や5月の頃と比べると、スムーズさが増している。このチームの特徴の1つは、3バックを採用していて、右ウイングバックにMF玉林、左ウイングバックにMF鐡戸を起用している点で、共にSBがメインポジションと言える選手なので、相手に押し込まれたときは、5バック気味になることもあるが、攻撃に切り替わったとき、一気に前に出ていく走力を持っており、難しいウイングバックのポジションを上手にこなしている。
開幕当初は、流れの中ではチャンスを作れず、セットプレーのとき、もっとも得点が入りそうな雰囲気だったが、サイド攻撃が練れてきたので、流れの中でも、チャンスを作るようになっている。今後も昇格1年目ということで、侮っていると、上位のチームは痛い目に合うだろう。
■ 痛恨のPK失敗一方の京都は、6連勝といい流れ出来ていたので、一気に首位まで駆け上がりたかったが、松本山雅の勢いに押されてしまった。前半のビッグチャンスにMF中村充が決められず、先制できなかったのも痛かったが、最後のFW久保のPK失敗も痛かった。
もちろん、ホームゲームなので、勝ち点「3」の欲しい試合であるが、こういう展開になったので、勝ち点「1」でも御の字という試合であり、同点の絶好のチャンスを迎えたが、FW久保のシュートはコースが甘くて、簡単にセーブされてしまった。U-19日本代表の試合でゴールを量産して、いい形でチームに戻ってきたので、決まっていれば、波に乗れそうな大事なPKだったが、決められなかった。
ただ、試合は続いていくので、早く気持ちを切り替える必要がある。J2は大混戦になっているので、「1敗」程度であれば、十分に挽回することができる。相手にリードされたときにどう打開するのか、京都に限った話ではないが、今後の課題と言えるだろう。
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