■ 3位決定戦クラブW杯の3位決定戦。準決勝でブラジルのサントスに「1対3」で敗れた柏レイソルと、準決勝でスペインのバルセロナに「0対4」で敗れたアルサッドが対戦した。柏は、2007年の浦和、2008年のG大阪に続く日本勢として3度目の「世界3位」を目指す。対するカタールのアルサッドはアジア王者として意地を見せたい試合である。
4試合目となる柏は「4-2-2-2」。GK菅野。DF酒井、増嶋、近藤、橋本。MF大谷、茨田、水野、ジョルジ・ワグネル。FW田中順、北島。サントス戦で通算2枚目のイエローカードを受けたMFレアンドロ・ドミンゲスとMF栗澤は出場停止で、MF水野とMF茨田がスタメン出場。また、3試合連続スタメンだったロンドン世代のFW工藤が外れて、ベテランのFW北嶋が初スタメンとなった。
対するアルサッドはGKサクル。DFベルハジ、イ・ジョンス、アル・ハマド、アブドゥルマジェド、コニ。MFアブドゥルマジド、アル・ヤジディ。FWニアン、K・ケイタ、アル・ハルファン。山形や神戸などで活躍したFWレアンドロがベンチに控える。FWレアンドロはJ1では85試合に出場して34ゴールを挙げている。
■ アルサッドがPK戦を制する 試合は柏ペースで進んでいく。MFレアンドロ・ドミンゲスの代わりに先発したMF水野もまずまずの動きを見せて攻撃に絡んでいく。前半26分には右サイドでボールを持ったFW田中順がドリブルから得意の左足で強烈なシュートを放つが、惜しくも右ポスト直撃でゴールならず。さらに、その直後にも、DF酒井宏が右サイドを突破してから中央にクロスを送って、ゴール前に入ってきたFW田中順がドフリーでシュートを放つが、相手GKのセーブにあってゴールならず。柏は立て続けの決定機を逃して、前半は「0対0」で終了する。
後半も柏のペースで進む。後半にチャンスに絡んできたのはベテランのFW北嶋で、後半17分には、DF橋本のクロスをゴール前で受けてGKと1対1のチャンスを迎えるが、GKに当ててしまってゴールならず。結局、押し込みながらも、柏はゴールを奪えずに「0対0」のままで90分を終了し、PK戦に投入する。そのPK戦では、柏の3番手で登場したFW林が失敗してアルサッドが「5対3」で勝利。アルサッドが3位となって、柏は4位に終わった。
■ アルサッドが3位「アジア対決」を制したアルサッドが『世界3位』となった。バルセロナ戦では、大量リードされながらも攻めに出る姿勢を見せず、世界中から不満の声が上がったが、この日は、カウンターからいくつかチャンスを作って、見せ場もあった。1試合で大量失点を喫するとチームが壊れてしまうので、大会期間中に立て直すことは難しくなる。したがって、バルセロナ戦のアルサッドの「消極的なサッカー」も、現実的な策として一定の評価はできるのかもしれない。この日は、守備陣も集中して守って、柏にゴールを許さなかった。
カタールは2022年にW杯を開催する予定になっているが、まだW杯に出場した経験はないため、2014年大会と2018年大会は、是が非でも予選を突破して、本大会に進みたいところである。代表レベルでは、今年1月のアジアカップを見ても分かる通りで、かなり力を付けてきているので、クラブチームも強化をしていく必要があるが、ACLを制覇し、クラブW杯でも3位となったことは、大きな自信となるだろう。ACLは東と西に分かれているので、準々決勝に進まないと西の国との対戦は無いため、中東のクラブに触れる機会は少ないが、各ポジションにタレントを揃えていて、日本のクラブも簡単には勝てなくなっている。
■ レイソル 決定力を欠くMFレアンドロ・ドミンゲスを欠きながら、何度もチャンスを作った柏だったが、チャンスに決めきれなかった。相手のGKサクルは身体能力が高くて、守備範囲の広い能力の高いGKだったが、FW田中順も、FW北嶋も、「ゴールに流し込めばOK」という超・ビッグチャンスを得たので確実に決めたかった。結局、PK負けとなったが、何度もチャンスを逃していると、こういう結果になってしまう。
振り返ってみると、柏は準決勝のサントス戦でも、MF澤が2度のビッグチャンスを外すなど、決定機にシュートを決められなかった。「あのシュートが決まっていれば・・・。」というのが、今大会の柏には何度かあったが、決勝戦を見ても分かる通り、バルセロナも、サントスも、かなりの数の決定機を逃していて、「フィニッシュの精度」というのは、どのチームにも共通の課題であり、簡単には向上しないものである。
1つのチャンスで決められるか、外すかで、結果は大きく変わってくるので、確実にゴールを決められる選手がいれば心強いが、「チャンスを多く作ること」、「決定機の質を上げること」に加えて、「非決定機からゴールを生み出す力」も重要になってくるように思う。具体例を挙げると、準決勝のサントスのFWネイマールのゴールや、FWボルジェスのゴールとなるが、何でもないようなシーンからゴールを生み出せる選手の出現を期待したいところである。
■ 4試合で得た経験3位決定戦は残念な結果に終わったが、今大会は、柏にとって、かけがえのない経験になっただろう。もし、初戦のオークランドシティ戦に敗れていると、1試合だけで大会を去ることになったが、オークランドシティに勝利し、モンテレイにもPK戦で勝利したので、3位決定戦も含めて「4試合」もクラブW杯を経験することができた。こういう経験はなかなかできるものではないので、クラブは、大きな財産を手に入れたといえる。
個人では、MFレアンドロ・ドミンゲスがもっとも目立ったが、FW田中順、MF大谷、DF酒井宏の3人の活躍も目立った。FW田中順は、これまでほとんど国際経験が無かったが、ポストプレーもできていて、外国人選手の当たりにも負けていなかった。ダイナマイト級の左足も魅力で、こういう舞台でここまで出来るとは思わなかった。同じく、MF大谷も予想以上のパフォーマンスを見せた。柏はボランチの二人に関しては、攻撃面で大きな役割を課していないが、正確なつなぎを見せて攻撃を安定させた。余計なミスをほとんどしないので、こういう選手がいると中盤が安定する。読みの鋭さを生かしたパスカットも多くて、個人としては申し分ない活躍だった。
もっとも海外クラブのスカウトの注目を集めたと思われるDF酒井宏は、「スピード」と「パワー」が国際レベルであることを証明した。今大会は、左SBのDF橋本が精彩を欠いて、攻撃が右サイドに偏ってしまったが、DF酒井宏が積極的にサイドを駆け上がって、いくつものチャンスを作った。サントスが獲得に興味を示していると報道されたが、欧州でもDF酒井宏の獲得を希望するクラブは多いと思われる。とりあえず「残留」を表明しているが、ロンドン五輪後は、争奪戦となるのは必至である。
■ 発展途上のクラブW杯3位決定戦のあと、バルセロナとサントスがファイナルを戦って、今大会が終了した。3位がアルサッドで、4位が柏という結果となったので、アジア勢の健闘が目に付いたが、バルセロナとサントスの決勝戦を見る限り、「欧州と南米の2強」というよりは、「欧州の1強」になってきている。近年、ブラジルが好景気なので、FWネイマールやMFガンソら、欧州行きが噂される逸材を引き留めることにも成功していて、南米も盛り返してきたのかと思っていたが、バルセロナとサントスではサッカーの次元が違った。
もちろん、「バルセロナは欧州の中でも特別なチーム」なので、欧州にもバルセロナと同レベルのチームは存在しないが、他地域と差が広がってくると、「クラブW杯は必要なのか?」という話にもなってくるだろうが、「クラブW杯」という舞台を目指して強化しているクラブは増えてきているので、ここで縮小してしまうのは、全くいいこととは思えない。
クラブW杯は、来年も、日本で開催されるので、どこかのチームがクラブW杯に出場することができるが、柏の活躍を見ていた他のクラブのサポーターはうらやましく感じただろうし、ACLに出場することが決まっている名古屋グランパスやガンバ大阪は、特にモチベーションが高くなっているだろう。欧州のクラブにとっては、モチベーションの上がりにくい大会になっているかもしれないが、非欧州や非南米のクラブには、魅力的なステージになっているので、スタートしたときはどうなるかと思われたクラブW杯も、いい感じでは発展してきているように感じる。
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