■ 天皇杯の2回戦天皇杯の2回戦。先週の水曜日に行われたナビスコカップの準々決勝で浦和レッズに1対2で敗れて準決勝に進めなかったセレッソ大阪は、キンチョウスタジアムで北海道代表の北海道教育大学岩見沢校と対戦した。
北教大岩見沢は初の天皇杯出場で、1回戦は大学シード校の大阪体育大学と対戦したが、PK戦で下して2回戦に進んできた。北海道教育大学は、札幌、旭川、函館、釧路、岩見沢と道内に5つのキャンパスがあって、その中の1つである「北海道教育大学岩見沢校」が、今回、J1チームに挑むことになった。
ホームのC大阪は「4-2-3-1」。GK松井。DF酒本、茂庭、藤本、丸橋。MF中後、マルチネス、村田、ファビオ・ロペス、倉田。FW小松。日本代表のMF清武と韓国代表のMFキム・ボギョンは怪我のため欠場。GKキム・ジンヒョンは韓国代表に招集されているため、GK松井がスタメン出場。MFマルチネスが怪我から回復してきて約2ヶ月ぶりのスタメン出場。U-22日本代表のMF扇原は出場停止中。
対する北教大岩見沢は「4-2-2-2」。GK岩田。DF藤間、鈴木、船場、廣瀬。MF内田、上原、阿部、竹内。FW大西、伊藤。1回戦ではMF阿部が先制ゴールをマークしている。FW大西、MF上原、MF竹内、GK岩田とスタメン11人中4人がコンサドーレ札幌のユース出身となる。
■ 6ゴールを挙げて3回戦進出試合の立ち上がりはホームのC大阪が押し込む。しかし、前半11分に北教大岩見沢が大チャンスを迎える。GK松井から北教大岩見沢のMF阿部がボール奪って無人のゴールにシュートを放つ。「先制か?」と思われたが、戻ってきたDF藤本が胸でブロックしてゴールを許さず。さらに、こぼれたボールをFW伊藤がオーバーヘッドシュートで狙うが、今度はゴールマウスに帰ってきたGK松井がかろうじてセーブ。北教大岩見沢は大きなチャンスを逃してしまう。
このプレーをきっかけにして、試合の流れは北教大岩見沢に移って、大学生チームがペースを握っていく。しかし、C大阪が何とか踏ん張ってゴールを許さずにいると、前半24分に思わぬ形からC大阪に先制ゴールがまれる。左サイドでボールを受けたDF丸橋がゴール前にクロスを上げると、北教大岩見沢のGK岩田がキャッチミスしてファンブルしてオウンゴール。ラッキーな形でC大阪が先制する。さらに、前半30分にも、MF中後のミドルシュートがこぼれたところをMFファビオ・ロペスが押し込んで2点目。前半はC大阪が2対0とリードして折り返す。
後半開始から、C大阪はMF倉田に代えてMF大竹を投入。なかなか追加点が奪えなかったが、後半26分にDF酒本のクロスを起点にして、途中出場のFW杉本が左足で決めて3点目を挙げる。これで試合の行方はほぼ決定し、その後、後半33分にMFファビオ・ロペス、後半36分にFW小松、後半41分にMF大竹が決めて合計6ゴール。北教大岩見沢も健闘を見せたが、6対0とC大阪が格の違いを見せて勝利。3回戦進出が決定し、11月16日にJ2のファジアーノ岡山と対戦することになった。
■ 北教大岩見沢が健闘最終スコアは「0対6」となったが、北教大岩見沢の健闘が光った。C大阪に、サイドでボールを持たれたとき、1対1の対応が十分ではなかったので、1点目・3点目・4点目・5点目・6点目と「サイド攻撃」を起点にゴールを許したが、最後まであきらめずに戦って、試合後には、C大阪のサポーターからも大きな声援が送られた。
ゴールは奪えなかったが、攻撃も「形」は作れており、悪くなかった。特に、失点するまでは北教大岩見沢のペースといえる展開で、前線でしっかりボールをおさめて、2列目の選手が絡んでくる攻撃にC大阪は手を焼いた。MF倉田、MFマルチネス、MF中後ら、C大阪側に何枚もイエローカードが出たことも楽な試合ではなかったことの証で、学生らしく「すがすがしい試合」を見せた。
天皇杯は、数年前にレギュラーションが変更になって、Jリーグ勢が2回戦から登場することになった。そのため、Jリーグチームも過密日程となって、「2回戦からJリーグ勢を出す意味はあるのか?」と議論になったこともあるが、アマチュアチームにとっては、Jリーグ勢と対戦できる確率も上がってモチベーションアップにもつながる。「プラスの面」と「マイナスの面」があるが、「プラスの面」も小さくは無い。
■ GKのミスから失点北教大岩見沢の立場に立って考えると、悔やまれるのは1失点目である。DF丸橋のキックは、楽々とGKがキャッチできるボールで、近くにC大阪の選手は誰もいなかったので、「イージーボール」だったが、GK岩田はきちんとしたポジションが取れていなかった。しかも、ゴール方向にはじいてしまってオウンゴールとなった。失点するまでの10分間ほどは、北教大岩見沢が連続してチャンスを作っていたので、先制ゴールを挙げる可能性もあっただけに、痛いミスだった。
C大阪側も、GK松井にバックパスの処理ミスから失点しそうになったシーンがあったので、プロ選手もミスをしないわけではないが、1失点目以外にも、北教大岩見沢はGK岩田のミスが目立って、ミスが失点に直結した。2失点目も、MF中後のミドルシュートがきっかけになったが、はじいた位置が甘くて正面に跳ね返ったところを押し込まれて失点し、6失点目もパンチングが不十分で、MFファビオ・ロペスに拾われて、MF大竹に決められてしまった。
もちろん、ミスばかりだったわけでなく「ファインセーブ」も多かったので、よく頑張っていたが、落ち着いてプレーしていれば、もう少し失点を防ぐことはできたはずである。実力差のある相手と戦うときは、通常以上の力を発揮する必要があるが、これだけGKにミスが出てしまうと大量失点になっても仕方がない。
■ 好プレーをみせたMF大竹洋平6ゴールを奪ったとはいえ、C大阪は内容的には褒められた試合ではなかった。立ち上がりの入り方は悪くなかったが、GK松井のバックパスの処理ミスから北教大岩見沢に「ビッグチャンス」を作られると、途端にリズムが悪くなった。
モチベーションを上げにくい試合とはいえ、これからのことを考えるとちょっと不安になる試合であったが、後半から出場したMF大竹は、随所に光るプレーを見せた。今夏、FC東京からレンタル移籍してきて、リーグ戦、ACL、ナビスコと途中出場でチャンスを与えられているが、まだ「遠慮」があるのか、思い切りのいいプレーは見せられていなかったが、この試合はよくボールに触って「チャンスシーン」を演出していた。
MF大竹は、ユースからFC東京のトップチームに上がって1年目から活躍した選手なので、ここ最近は「伸び悩み」気味であるが、こういう選手を育てるのは、クルピ監督は得意としている。現状では、「運動量」、「守備意識」、「フリーランニング」といった点で物足りないが、クルピ監督は、うまい選手を走らせることができるタイプの指導者なので、試合に出続けることで改善されていくだろう。今後、MF清武、MF倉田らとのコンビネーションが確立されていくと、ボールを持ったときに「人と違ったプレー」ができる選手なので、相乗効果も期待できる。
MF大竹にとって、次の甲府戦は、ターニングポイントになる試合である。この試合は、MF倉田が出場停止となるので、スタメン入りが有力視されているので、今後、出番が増えていくか、ベンチスタートのままなのか、決定付ける試合となるだろう。似たようなシチュエーションだった9月18日の大宮戦は、MF大竹も怪我をしてしまって出場できなかったので、甲府戦は是非ともチャンスを生かしたいところである。
■ FW杉本が3点目のゴール2ゴール1アシストのMFファビオ・ロペスの活躍も光ったが、後半途中から出場したFW杉本も結果を残した。現状は、FW小松、FW播戸と「1トップのレギュラー」と「ベンチ枠」を争っているが、FW播戸が好調を維持しており、FW小松も怪我から戻ってきてゴールを挙げているので、「3番手」に甘んじているが、クラブも期待している選手で、U-22日本代表のことを考えても大事な選手なので、天皇杯で学生チーム相手とはいえ「ゴール」という結果が残ったのは良かった。
実質1年目なので、まだまだ未完成の選手で、「ソフトな部分」が目立つが、ポストプレーに関しては、センスを感じさせる。187㎝のサイズでは考えられないほど、ボールタッチも柔らかくて、体の使い方も上手なので、国際レベルでも通用するポストプレーヤーへ育つ可能性がある。
課題はゴール前のプレーである。「ストライカー」として見ると、貪欲さに欠けていて、きれいにプレーしようとしすぎる傾向がある。体の大きさは全く違うが、FW播戸といういい見本がいるので、いいところだけを吸収して、U-22日本代表にも絡んでいってほしい選手である。
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