■ 大阪ダービーACLの決勝トーナメント1回戦。グループEで首位のガンバ大阪と、グループGで2位のセレッソ大阪が対戦。G大阪は2008年にアジアを制したが、2009年、2010年と2年連続でベスト16で敗退している。一方のC大阪は、初のACLでグループリーグ突破を果たした。決勝トーナメントは1発勝負の戦いで、グループ1位のチームとグループ2位のチームが対戦するが、首位通過したチームのホームで試合を行うため、G大阪のホームの万博競技場での試合となった。
ホームのG大阪は<4-2-2-2>。GK藤ヶ谷。DF加地、中澤、内田、武井。MF明神、遠藤、二川、宇佐美。FWイ・グノ、アドリアーノ。DF山口、DF高木が不在のため、ガンバユース出身で19歳のDF内田が初スタメンとなった。FWイ・グノは韓国代表に招集されている。
対するC大阪は<4-2-3-1>。GKキム・ジンヒョン。DF高橋、藤本、上本、丸橋。MFキム・ボギョン、マルチネス、倉田、清武、乾。FWホドリゴ・ピンパォン。スタメン出場も予想されていたMF中後はベンチスタート。DF茂庭は出場停止でDF藤本がスタメン出場。C大阪では、MFキム・ボギョン、GKキム・ジンヒョンが韓国代表に招集されている。
■ 終了間際に決勝ゴール序盤はアウェーのC大阪ペースとなる。積極的な守備でG大阪の攻撃のリズムを崩して、試合を優位に進めていく。しかし、前半20分あたりからC大阪の3シャドーにミスが出始めて、逆にG大阪がボールを支配する展開になる。しかし、G大阪も最後の精度を欠いて決定機はほとんど作れず。前半は0対0で折り返す。
嫌な流れで前半を終えたC大阪は、後半開始からMF乾とMF倉田に代えて、FW小松とMF中後を投入。MFキム・ボギョンを右サイド、FWホドリゴ・ピンパォンをシャドーにポジションを移動させて、<4-3-2-1>気味の布陣に変更する。これまでの試合ではあまり見られなかったトリプルボランチのような布陣になるが、これが大成功。FW小松も前線でしっかりと起点になって、C大阪が押し込んでいく。
チャンスがありながらも、なかなかゴールネットが揺らせずに、延長戦も見え始めた後半43分にC大阪は高い位置でボールを奪うと、MFキム・ボギョンのキープから右サイドを駆け上がったDF高橋大がオーバーラップしてきて思い切って右足でシュート。これがニアサイドを破って、ついにC大阪が先制する。
その後、G大阪はFW平井を投入。終了間際にはビッグチャンスを作るが、シュートはポストに当たって同点ならず。結局、DF高橋大のゴールが決勝点となって、C大阪が1対0で勝利。見事にベスト8進出を決めた。一方のG大阪は3年連続で決勝トーナメントの1回戦で姿を消すことになった。
■ セレッソがベスト8前半の半ばまではC大阪ペース、前半の半ばからは終わりまではG大阪ペース、後半はC大阪ペースと、時間帯によって、極端に流れが片方のチームに傾くという面白い展開になったが、アウェーのC大阪が1対0で勝利し、初のベスト8入りを果たした。
戦前の予想は「G大阪有利」というのがほとんどだった。2008年にアジアを制しているG大阪に対して、C大阪はアジアは初挑戦。今シーズンのリーグ戦の成績も、G大阪が4勝1敗であるのに対して、C大阪は0勝1敗5分け。過去の対戦成績もG大阪が圧倒しており、「G大阪はホームでお得意様のC大阪を問題なく下す。」というのが一般的な見方だったが、C大阪のイレブンの気迫が歴史的な勝利を生み出した。
C大阪が大阪ダービーで勝利するのは、モリシの引退試合を兼ねて行われた、2009年2月のプレシーズンマッチ以来であるが、リーグ戦に限定すると、2003年7月以来勝利から遠ざかっている。しかも、ここ10戦で見ると、G大阪が9勝1分けと圧倒している。
G大阪にとっては、C大阪に勝利することは当たり前の出来事になっていたが、C大阪にとっては、何としてでも倒したい大きな壁であり、この試合は、チーム全体にいつもとは違うパワーがみなぎっていた。G大阪に油断があったとは思わないが、勝ちたいという意欲が優っていたのでC大阪の方であり、スコアは僅差となったが、内容的にも、気迫でもC大阪が上回って、妥当な結果となった。
次は準々決勝となる。試合が行われるのは9月中旬なので、かなり先の話であり、相手がどこになるかは分からないが、今度はホーム&アウェーとなるので、ホームのサポーターの歓声を背にプレーすることもできる。戦前、C大阪はグループリーグ突破を目標にしていたので、ベスト8でも十分に成功の部類であるが、ここまで来たら、一つでもう上を目指してほしいところである。
■ ハーフタイムの交代で流れをつかむC大阪は後半からFW小松とMF中後を投入して流れを引き寄せた。前半の立ち上がりは悪くなかったが、前半20分過ぎから攻撃陣にミスが増えてきて、なかなかセカンドボールを拾えなくなっていたが、FW小松が入って、しっかり相手DFと競ってくれるようになったので、セカンドボールも拾いやすくなって、C大阪ペースとなった。
MFキム・ボギョンを右サイドに張らせたことも成功し、後半はMFキム・ボギョンのところでボールが落ち着いたので、DF高橋大も攻撃参加しやすくなった。決勝ゴールは、まさに、その二人から生まれたが、西野監督もMFキム・ボギョンのところを警戒しており、FWアドリアーノに戻って左サイドの守備を要求するなど気にしてはいたが、徹底しきれなかった。
延長戦の可能性もあったにもかかわらず、思い切ってハーフタイムに2枚を交代させてきたクルピ監督と、思い切った交代ができなかった西野監督の決断力の差も結果に現れてしまった。
■ DF高橋大輔が決勝ゴール決勝ゴールはDF高橋大輔だった。今シーズンのDF高橋は不出来が続いており、スタメンから外されることはなかったが、途中交代することも多く、攻守ともに不満の残るプレーが多かったが、すべてを帳消しにするような値千金のゴールとなった。MFキム・ボギョンのパスはクロスを上げることを期待したものだったと思うが、思い切ってシュートを狙ったことがゴールにつながった。
ニアサイドを破ったシュートというと、南アフリカ大会のブラジル代表のDFマイコンの北朝鮮戦のゴールが思い出されるが、同じような感じで、GKのポジションを考えて、思い切って右足を振りぬいたことがゴールに結びついた。これで、DF高橋が吹っ切れて、本来のプレーを取り戻してくれると、C大阪にとっては非常に心強い。
■ DF茂庭の穴を感じさせず「C大阪が不利」という予想が多かった理由としては、C大阪側がチームリーダーのDF茂庭が出場停止でいないことも影響していたが、代わりに先発で起用されたDF藤本が遜色ないパフォーマンスでG大阪の攻撃を封じて見せた。FWアドリアーノとは、昨シーズンはチームメイトだったので、お互いに手の内は良く知っていたと思うが、FWアドリアーノにスピードに乗らせず、MOM級のプレーを見せた。
逆に不満が残るのはMF乾のパフォーマンスである。前半からミスばかりでハーフタイムに交代させられるのも納得というプレー内容だった。ACLのグループリーグの終盤はコンディションも上がってきており、決定的な仕事を見せていたが、一転して、この日は最低のパフォーマンスだった。
「キレが命」の選手であるが、コンディションが悪かったり、精神状態が不安定だったりすると、極端にパフォーマンスが悪くなってしまう。「いいときは素晴らしいが、悪いときは最悪」という点を改善していかないと、今後、チーム内でも苦しい立場になってくる。後半のメンバーが良かっただけに、MF乾はレギュラー落ちのピンチである。
■ ガンバは3年連続でベスト16で敗退一方のG大阪も、何度かビッグチャンスを作ったが、効果的な攻撃が多かったのはアウェーのC大阪の方で、内容的にもG大阪はC大阪を下回った。出場停止のDF茂庭を除くと、ほぼベストメンバーのC大阪に対して、G大阪は、DF山口、DF高木、DF下平が不在で、ベストメンバーが揃わなかったのも痛かった。代わりに起用されたDF内田はよく頑張っており、正確なフィードも光ったが、経験の少ない選手が多く、最終ラインは苦しいメンバー構成だった。
これでG大阪はベスト16で敗退となった。C大阪戦は非常に相性がよくて、しかもホームゲーム。ということで、内心は「対戦相手がセレッソに決まってラッキー。」だと思っていたはずであるが、C大阪の気迫に押し切られてしまった。ラウンド16は一発勝負なので運・不運に左右されやすいが、G大阪のような大きなクラブが、3年連続でラウンド16で敗退となると、西野監督に批判の声が出てきても不思議ではない。
■ 安定感を欠いたGK藤ヶ谷G大阪はGK藤ヶ谷のビッグセーブに助けられるシーンもあったが、飛び出しのミスから2度の超決定機を許すシーンもあって、安定感を欠いて落ち着きがなかった。DF内田に加えて、左サイドバックのDF武井も本職ではないので、経験のあるGK藤ヶ谷がDFラインに安心感をもたらさなといけなかったが、DF内田以上にGK藤ヶ谷が不安要素だった。
最後のシュートの場面は、DF高橋大の決断力が見事で、シュートもうまかったのは間違いないが、あれだけニアサイドを豪快に抜かれてしまうと、GKの責任になってしまう。攻撃陣もあまり出来は良くなかったので、GK藤ヶ谷だけの責任ではないが、GK藤ヶ谷のミスが目立つ試合になってしまった。
■ 「中2日」対「中3日」勝敗を分けた要因としては、C大阪が中3日での試合だったのに対して、G大阪が中2日だったということも挙げられる。C大阪は先週末に川崎Fとホームゲームを行ったが、通常であれば土曜日(or 日曜日)に日程が組まれるところを、ACLを見越して、金曜日にホームゲームを行ったことで、中3日となって体力的に有利に働いた。
もちろん、リーグ戦の日程が組まれた時点では、C大阪がグループリーグを突破できるかどうかも、決勝トーナメントの相手がどこになるかも分かっていないが、対戦する可能性があるグループEに、オーストラリアのメルボルン・ビクトリーが入っていて、メルボルンに遠征することを想定して、金曜開催に踏み切ったという。結局、となりのG大阪との対戦となったので、遠征はなくなったが、これが、大きなアドバンテージとなった。
金曜日に試合を行う場合、どうしても、土・日に比べると観客は少なくなるので、営業面を考えると痛手であり、また、アウェーチームのサポーターにとっては生で試合を観ることが困難になる。いろいろと、マイナス面がありながらも、話をまとめたC大阪と川崎Fのフロントは、いい仕事をしたといえる。
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