■ 天皇杯の2回戦天皇杯の2回戦で、J1の大宮アルディージャと福岡大学が対戦。大宮はリーグ戦は7勝10敗11分けで14位。16位のヴァンフォーレ甲府との差は「5」と、今年も残留争いに巻き込まれている。天皇杯に力を入れている余裕はないが、学生を相手に格の違いを見せて、残留争いの大一番となる週末の浦和レッズ戦に臨みたい。
ホームの大宮は「4-2-3-1」。GK北野。DF杉山、深谷、片岡、村上。MF青木、上田、渡邉大、東、金久保。FWラファエル。DF金英權は韓国代表に招集されているため欠場。元韓国代表のFW李天秀がベンチ入りを果たした。
対するアウェーの福岡大学は「4-1-2-3」。GK藤嶋。DF岸田、牟田、串間、黒木。MF假屋、黒氏、長谷。FW田中、田村、清武。C大阪のMF清武弘嗣の弟で、大分ユース出身のFW清武功暉は左フォワードで出場。大宮のMF東とはユースの同級生となる。186cmのDF牟田は大学3年生で、J1の名古屋グランパスなどが獲得を熱望いていると報道されている。
■ 福岡大学がPK戦を制する試合は、最初のプレーで福岡大学がビッグチャンスを作る。絡んだのは大学3年生のFW清武で、味方のロングフィードをうまくコントロールして左サイドの裏に抜け出して角度のないところからシュートを放つが、GK北野にセーブされて先制ならず。
試合の入り方がまずかった大宮だったが、前半20分あたりを過ぎると、ようやく落ち着いてきて、大宮がペースを握り始める。福岡大学は、序盤は有効だったロングボールが味方につながらなくなって、奪ったボールをすぐに失う展開になって「守るだけ」の時間帯が続く。しかし、何とか前半は持ちこたえて0対0で折り返す。
後半開始から福岡大学はMF黒氏に代えて、大学1年生のFW岡田を投入。160㎝のFW岡田を3トップの中央に置いて、スピードを生かそうとするが、FW岡田の前のスペースにロングボールを送る攻撃が多くなったので、さらに単調な攻めになって、攻撃が成り立たなくなる。そんな中で、後半25分にホームの大宮が先制に成功する。ゴール右寄りの絶好の位置でフリーキックを得ると、MF上田が得意の左足で鮮やかに決めてリードを奪う。
ここまでよく辛抱してきた福岡大学は、「これで緊張の糸が切れてしまうか?」と思われたが、その直後に同点にに追いつく。ゴール前に送ったボールが浮いたところを、MF田中がいいタイミングでゴール前に飛び込んできてファインゴールを決めて、1対1の同点に追いつく。試合は1対1のままで90分を終了し、15分ハーフの延長戦突入する。
延長戦になると、大宮は、FW李天秀、MF藤本を投入し、FW李天秀がゴール前で決定機を掴むが、福岡大学のDFが体を張って守ってゴールを許さない。一方の、福岡大学は、「PKでもOK」というスタンスでセットプレーのチャンスでも人数をかけずにリスクを避けて守りきる作戦を取る。延長戦は大宮が優勢で進んだが、何とか福岡大学が守りきって、試合は1対1のままでPK戦に突入。PK戦は、福岡大学が5人全員が成功したのに対して、大宮は4番手のMF藤本がポストに当ててしまって失敗。結局、5対3でPK戦を制した福岡大学が勝利し、3回戦進出が決定。3回戦ではJ2の湘南ベルマーレと対戦することになった。
■ 福岡大学がジャイキリ達成「大学生のクラブ」と「J1のクラブ」の対戦という天皇杯の醍醐味ともいえる好カードは、学生の福岡大学が見事に勝利して、J1のクラブから金星を挙げた。土曜日の試合で横浜FCに2対0で勝利した松本山雅は、チャンスの数も多くて「快勝」といえる試合だったが、福岡大学はさすがにそこまで攻めることはできず、「耐える時間」が非常に長かったが、GK藤嶋、DF串間、DF牟田の3人を中心に守って、最少失点に抑えた。
プロのクラブにとっては、大学生と対戦するのはプレッシャーのかかるものである。高校生との対戦もプレッシャーがかかるが、高校生とは実力差が大きいので普通に戦うことができれば大丈夫という気持ちで戦えるが、大学生になると、プロレベルの実力をもった選手もいて、悪い流れになると負ける可能性も出てくる。特に、福岡大学のようなチームは、プロのクラブとしては最も当たりたくないチームであるが、大宮が今回、犠牲になってしまった。
福岡大学の一番の強みは、プロ顔負けの高さである。「将来の日本代表の中心」と期待されるDF牟田が186㎝で、パートナーのDF串間も183㎝。前線や中盤でプレーしたMF田村も185㎝で、途中出場したFW大武も187㎝ということで、大型選手が揃っている。うまく大型選手を使っていて、高さだけなら大宮以上で、これだけの高さがあると、セットプレーでも「互角以上」となって、大宮はたくさんセットプレーのチャンスをつかんだが生かし切れなかった。
■ 攻撃は改善の余地ありPK戦になると、「運次第」のように思えるが、実際には、カテゴリーの違うチームが対戦する場合、「キックの精度」や「GKのレベル」が全く違ってくるので、意外とPK戦では「アップセット」は起こりにくいが、福岡大学の選手は5人全員が落ち着いて決めて、見事にジャイアントキリングを達成した。
次はJ2の湘南と対戦するが、ここまで来ると、Jリーグのクラブを食って天皇杯を面白くしてほしいが、攻撃陣は「もうひと頑張り」が必要である。主力を数名欠いていた影響が大きかったのか、立ち上がりの数回を除くと、チャンスは作れなかった。
試合を通して、3トップの中央に誰を置くかで苦心した。前半は185㎝のFW田村を置いて、彼にロングボールを集めることで、序盤にいくつかのチャンスを作ったが、時間が経つにつれて読まれてきて対応され始めたので、後半頭からFW岡田を投入。スピードでかき回そうとしたが、DF片岡にうまく対応されて、FW岡田は得意のドリブルを披露することはできなかった。その後、MF田中をトップに回したり、187㎝のFW大武を投入するなど、テコ入れを図ったが、なかなか機能させられなかった。次の湘南との試合は、さらに上のレベルの試合を見せてくれることを期待したい。
■ FW清武の弟が奮闘日本代表のMF清武の弟として注目を集めたFW清武功暉は、左フォワードで出場。序盤はうまく味方と連携してチャンスを作った。「ボールの持ち方」や「ミスをしたときに頭をかくしぐさ」は、よく似ているが、よりストライカー的な資質を持つ選手で、ゴール前でクロスに合わせて決定的なヘディングシュートを放つシーンもあった。後半になると、スピードタイプのFW岡田が投入されて、FW岡田のところで起点が作れなかったので、FW清武もいいところが出せなかったが、オールラウンドな能力を見せた。
また、186㎝のDF牟田も安定したプレーを見せた。跳ね返す能力は大学レベルを超えており、190㎝のFWラファエルに対しても、しっかりマークして自由を与えなかった。大型センターバックにありがちな「脆さ」も感じさせず、プロに進んでも、かなりの活躍が期待できるのではないだろうか?
■ 大宮はチャンスに決められず一方の大宮は、チャンスがありながらも決められなかった。先制ゴールを奪った直後にゴールを奪われたことも痛くて、ホームで情けない敗戦となった。「チャンスがありながら決められずに勝利を逃す。」という展開は、リーグ戦でもよく見られるものであるが、本格派のストライカーがいない弱さは感じられる。1トップは、FWラファエルが任されているが、FWラファエルもゴールゲッターというキャラクターではないので、ここぞというときに決められないことも多い。
それでも、今の大宮にとっては、「J1に残留すること」が第一で、天皇杯の結果は「二の次」なので、この結果は早く忘れた方がいいが、埼玉ダービーを前にちょっと嫌な流れになってしまった。浦和はナビスコカップで決勝進出を果たしており、対照的なチーム状況で対戦することになりそうだ。「引き分けでもOK」の試合であるが、敗れると浦和に抜かれてしまう。週末のダービーは熱い試合になりそうだ。
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