■ グループDグループDの北朝鮮とイランの対戦。北朝鮮は初戦はUAEとスコアレスドロー、イランはイラクに2対1で逆転勝利を挙げている。イランは勝てば決勝トーナメント進出が決まる。
北朝鮮は<4-4-1-1>気味の布陣。ドイツ2部のボーフムでプレーする元川崎フロンターレのFW鄭大世がスタメン出場。ベガルタ仙台のMF梁勇基はベンチスタート。大宮から柏に移籍したMFアン・ヨンハはボランチでスタメン出場となった。対するイランはメンバー23人のうちの4人が風邪によるコンディション不良ということで混乱が生じている。
■ イラクが勝利試合は北朝鮮ペース。序盤から豊富な運動量でイランにプレッシャーをかけて主導権を握る。イランは宿敵のイラクとの戦いを終えた後ということもあってか、その試合と比べるとトーンは低い。北朝鮮はFW鄭大世の強烈なフリーキックなど、何度かチャンスを作るが、ゴールは奪えず。前半は0対0で終了する。
試合は後半18分に劣勢だったイランが先制する。単純なスローインから左サイドの裏を取ると、クロスボールをFWカリム・アンサリ・ファルドが決めて1対0とリードを奪う。北朝鮮は仙台のMF梁らを投入し、試合終了間際にはゴール前でFWホン・ヨンジョが決定的なシュートチャンスを作るが、シュートはクロスバーにはじかれる。
結局、1対0でイランが勝利。2連勝でグループ通過を決定し、準々決勝ではグループCで2位となった韓国と対戦することになった。一方の北朝鮮は1敗1分けで勝ち点「1」のみ。最終戦のイラク戦で生き残りをかけることになった。
■ 首位通過を決定2連勝のイランが死のグループと言われたグループDの勝ち抜けを決定させた。
イラク戦と比べると、内容はあまりよくなくて、チャンスも少なかったが、いい時間帯に先制ゴールを奪って、早々に首位通過を決めた。準々決勝では相性のいい韓国との対戦となるが、すでにグループ首位が決定しているので、ラストとのUAE戦は消化試合となった。よって、コンディションを崩している選手も休息できる期間が増えたことになる。流れは非常にいいといえる。
清水エスパルスの監督に就任するゴトビ氏が監督を努めているということで注目されているが、イメージはこれまでのようなスーパーなタレントはいないが、組織的で好チームという印象である。上位に食い込む力があるかというと微妙であるが、韓国を下すことになれば乗っていけるかもしれない。
特徴的なのは「ロングスロー」であり、相手ゴールに迫ったときは、右サイドでも、左サイドでも、超ロングスローを入れてくることが多い。アジア大会の準決勝の日本戦でもロングスローを武器にしていたが、距離が出るだけでなく、スピードもあるのはDFとしてはクリアしにくい厄介な球質である。
また、右サイドからのスローインでも、左サイドの選手がロングスローを放りに来るので、インターバルが生じるので、守っている方にとっては大きなピンチではないにもかかわらず、ピンチであるかのような精神状態になってしまう。韓国のセンターバックはDFイ・ジョンス、DFカク・テヒという選手がいるが、ロングスローにどう対応できるかが、勝負のポイントになるだろう。
■ 鄭大世は不発一方の北朝鮮はスローインで右サイドの選手の対応が遅れて裏を取られてクロスを入れられたことが響いた。スローインの少し前にMF梁勇基を投入し、先制ゴールを狙うシフトにチェンジしたが、一瞬のすきを突かれてしまった。普通のスローイン一発で抜けられてしまったので、ボーンヘッドというしかない。
攻撃ではFW鄭大世、FWホン・ヨンジョが中心で、2トップにボールを渡してから崩すという狙いがあるが、この日はFW鄭大世とFWホン・ヨンジョの距離が遠くて、ともに孤立してしまった。この悪い部分を修正するべくMF梁勇基が投入されたが直後に失点。その後、運動量が少なめだったFW鄭大世もベンチに下がって、攻撃の迫力はなくなってしまった。
運動量は世界レベルである北朝鮮で、「惜しい試合」は出来るようになってきているが、アジアのトップクラスのチームと比べると、「あと一歩届かない。」という試合が多い。若い年代はアジアの大会で好成績を残しているので、今後、フル代表レベルでも優れたタレントが出てくる可能性は高いが、このチームはFW鄭大世とFWホン・ヨンジョの二人が仕事をしないと始まらない。FW鄭大世はコンディションがあまりよくないということであるが、最後の試合の爆発に期待したいところである。
■ ベンチスタートの梁ベガルタ仙台の後半途中から出場。精度の高いパスでチャンスを作り、自身もゴール前に飛び込んでいってあわやのシーンを作っていた。
以前と比べると、高いレベルの選手が揃ってきているが、中盤で技術のある選手は少なく、MF梁のような選手は北朝鮮にとっては貴重だと思うので、スタメンから外れたことが疑問であったが、国際試合でも仙台で見せているようなプレーは出来ている。最後のUAE戦チャンスはそう多くはないだろうから、セットプレーは非常に重要となる。MF梁の右足が試合を決めるという可能性も十分にある。
■ アジアのレベルもうすぐ、アジアカップのグループリーグが終わろうとしている。グループCのインドは数段レベルが落ちるが、グループBのヨルダンが2勝1分けでグループリーグを突破するなど、全体のレベルは明らかに上がってきている。少し前であれば、日本代表がヨルダンやシリア程度の国を相手にしたとき、3点あるいは4点くらいのゴールを奪うことを期待されていたが、どの国も守備がしっかりしてきており、そう簡単に崩されなくなってきた。
よって、強豪国の苦戦が目立つグループリーグとなっているが、そうはいっても、結果を見ると、(サウジアラビアがグループリーグ敗退になったことを除くと、)順当に前評判の高かったチームが決勝トーナメントに進んできている。
日本代表が世界の強国と戦う時のシチュエーションにも似ているが、下のレベルの国が上のレベルの国と対戦した時、「惜しいところまでいくが負けてしまうこと。」と「引き分けること。」と「勝ち点3を奪うこと」の3つは、近いところに位置するように見えて、それぞれは、やはり「距離」はある。
今大会も、韓国、オーストラリア、日本、イランといった国は、苦戦しながらも、最後には勝利を奪ってきている。間違いなくアジア全体はレベルアップしており、特に北朝鮮やカタール、バーレーンといった中堅国の進歩は目覚ましいが、「トップチームとはまだ差は大きい。」と感じるグループリーグになっている。中堅国がさらに上のトップクラスの国のレベルまでたどり着くのは、やはり、容易なことではない。ただ、転落するのは「すぐ」である。
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