■ JFLとは?日本フットボールリーグは、1999年から始まった日本におけるサッカーリーグの1つで、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)と地域リーグの間に位置する。
日本のサッカーリーグのピラミッドの頂点に立つのは「Division1(J1)」。その下に「Division2(J2)」。レベル的には、そのもう1つ下に位置するのが、「JFL」である。
現在、JFLに所属するのは以下の18チーム。
その中で、Jリーグの準加盟クラブは「栃木SC」、「カターレ富山」、「ガイナーレ鳥取」、「ファジアーノ岡山」、「ニューウェーブ北九州」の5つ。J2に参入するためには、準加盟の申請をして理事会で承認を受けていなければならず、かつ、JFLで4位以内に入ったクラブのみが、J2参入の資格を得る。
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栃木SC(準加盟クラブ) ・ Honda FC
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ファジアーノ岡山 (準加盟クラブ) ・
カターレ富山(準加盟クラブ) ・ 横河武蔵野FC
・ FC刈谷
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ニューウェーブ北九州(準加盟クラブ) ・ ソニー仙台FC
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ガイナーレ鳥取(準加盟クラブ) ・ 流通経済大学
・ SAGAWA SHIGA FC
・ MIOびわこ草津
・ TDK SC
・ 佐川印刷SC
・ FC琉球
・ ジェフリザーブズ
・ アルテ高崎
・ 三菱水島FC
JFLの大きな特徴として挙げられるのが、「Jリーグ入りを目指しているクラブ」と「Jリーグ入りを目指していないクラブ」が混在することである。流通経済大学は大学のクラブであるし、ジェフリザーブはJ1のジェフ千葉の下部組織のアマチュアクラブである。
一方で、昨シーズンのJFL王者の佐川急便サッカークラブ(現SAGAWA SHIGA FC)は、あくまでも企業スポーツの一環としての活動に留まっていて、戦力的にはJ2でも戦えるだけの力を備えているものの、J2参入の意思は無く、J2参入することは無い。したがって、今シーズンも、JFLの舞台で戦っている。
■ 初体験のJFL少し前に、当サイトで、「気になる下部リーグのチームはどこですか?」というアンケートを設置した。途中経過の段階で、合計42票の投票がなされていたが、その結果、一番、多かった「ファジアーノ岡山」という岡山県のクラブであった。
正直に言うと、それまで、「ファジアーノ岡山」については、名前くらいしか知らなかった。が、いろいろと調べているうちに、このチームについての興味が湧いてきた。
JFLの順位表を見ていると上から3番目。J2参入の資格を持つ準加盟クラブで、昨シーズンの地域リーグ決勝で優勝し、今シーズンからJFLに昇格した新興クラブにもかかわらず、いきなり、ストレートでのJリーグ入りの可能性を持つ。
ホームスタジアムは、岡山市の桃太郎スタジアムで、平均観客動員はJFLトップレベルの3000人強。地元の盛り上がりは、相当のようである。
8月2日の土曜日の18:00キックオフのガーナーレ鳥取戦のホームゲームに向けて、西へと旅立つ。
#1 JR岡山駅前■ ファジアーノとは?岡山県というと、まず思い出されるのが、「桃太郎」である。
「桃太郎」とは、いうまでもなく、桃から生まれた桃太郎が、お婆さんから黍団子(きびだんご)を貰って、イヌ、サル、キジを従えて、鬼ヶ島まで鬼を退治しに行く物語である。岡山市西部と総社市東部にまたがる地帯では、昔から桃太郎伝説のルーツともいうべき吉備津彦命(きびつひこのみこと)の鬼退治にまつわる説話が語り伝えられているらしい。
岡山駅前には「桃太郎」の銅像が建っていて、ファジアーノ岡山のホームスタジアムの名前は桃太郎スタジアム。岡山土産の定番はきび団子で、夏祭りは「ももたろう祭り」。そもそも、チーム名のファジアーノ(fagiano、ファジャーノ)は、イタリア語でキジ(雉)を意味する。まさしく、桃太郎三昧である。
#2 ファジアーノ岡山のサポーター■ ガイナーレとは?この日の対戦相手のガイナーレ鳥取。こちらも、準加盟クラブであるが、今シーズンもなかなか成績が上がらず、来季のJ2参入は厳しい情勢である。シーズン前は、元日本代表のDF小村徳男や横浜FCのMF吉野智行を獲得するなど、戦力アップに努めたが、思うような成果は上がっていない。
チーム名のガイナーレ(GAINARE)は島根県の東部から鳥取県の西部にかけての方言で、「おおきい」という意味の「がいな」と、イタリア語の「SPERARE(願う)」をもじったものである。
チームカラーは黄緑で、チームマスコットは言わずと知れたゲゲゲの鬼太郎の主人公の鬼太郎。原作者の水木しげる氏が鳥取県境港市出身で、クラブと提携している。
#3 ガイナーレ鳥取のサポーター■ 桃太郎スタジアムファジアーノ岡山のホームスタジアムである桃太郎スタジアム(通称:ももスタ)は、JR岡山駅西口から岡山大学方面へ徒歩で約15分。市内の中心部にあるスタジアムである。約1kmという道のりは、アウェーサポーターにとっても、やさしい距離である。
この日の岡山駅周辺は、おかやま桃太郎まつり(第35回納涼花火大会)のため、大賑わい。花火大会は「19:30~21:00」で、ファジアーノの試合は18:00にキックオフ。幸か、不幸か、時間が重なってしまっている。
#4 スタジアムへの道のり #5 人見絹枝さんの銅像収容人数は約2万人。2005年の「おかやま国体」のために、2001年から2年間かけて全面的な改築を実施し、生まれ変わった。岡山県内では最大のスタジアムである。
アクセスは優れているが、もともと、プロサッカーの試合を行うことを想定していなかったようで、ゴール裏はほとんどスペースが確保されておらず、ファジアーノのサポーター集団は、バックスタンドに陣取る。
#6 桃太郎スタジアム周辺■ スタジアム内で・・・土曜日のナイトゲーム。18:00キックオフということで、暑さも心配されたが、思っていたよりは涼しかった。「秋-春制」への移行が噂されるJリーグだが、夏場のナイトゲームは、やっぱり気持ちがいい。あまりにも気温が高いままだと選手たちは大変であるが、うちわを片手に、試合を観戦するのは夏場の醍醐味の1つである。
この日、スタジアム内で、「ファジアーノ岡山」の選手たちのサイン会が行われていた。4選手の中で、一番人気は、先日、クラブに加入した期待のFW鴨川奨。2005年に名古屋グランパスに入団し、ルーキーイヤーから、快速を生かしたアグレッシブなプレースタイルが、注目を集めた。
#7 サイン会の様子その脇の売店で、ファジアーノのGoodsを眺める。購入したのは、「日本フットボールリーグガイドブック2008(¥1000円)」と「オフィシャルTシャツ エンブレム入り(¥2000円)」。ワインレッドの鮮やかな色がひときわ目に付く。
#8 チームTシャツ■ 大事な試合3位につけるファジアーノ岡山としては、下位に低迷するガイナーレを下して勢いに乗りたい大事なホームゲームである。
ホームのファジアーノ岡山は<4-4-2>。GK李彰剛。DF重光貴葵・野本安啓・伊藤琢矢・池松秀明。MF関隆倫・小野雄平・妹尾隆佑・川原周剛。FW喜山康平・小林康剛。
FW小林は鹿島や徳島でプレーした183cmの大型選手で、後期5節までで17ゴールを挙げているエースストライカー。JFL得点ランキングトップを走る。MF関隆倫は2006年と2007年にコンサドーレ札幌でプレーし、2006年にはリーグ戦で29試合に出場している。
対する<4-4-2>でGK井上敦史。DF冨山達行・加藤秀典・小原一展・吉瀬広志。MF小井手翔太・水本勝成・実信憲明・鶴見聡貴。FW戸田賢良・秋田英義。
DF小村徳男、MF吉野智行はベンチ外。DF加藤は鳥栖から獲得したばかりで、FW小澤竜己はFC東京からレンタル移籍中。FW小澤は今シーズン6ゴールをマークしている。
#9 試合前の様子■ 小澤の決勝ゴール試合は総合力で優るホームの岡山が優勢。FW小林のポストプレー、右MFの妹尾のドリブル突破、ボランチのMF関の飛び出しを生かして、主導権を握る。しかしながら、鳥取の最終ラインの頑張りもあって、ゴールは奪えない。前半は0対0で終了。
#10 後半開始前後半に入ると、鳥取はMFハメドを投入。コートジボワール出身で21歳のドリブラーの前に、岡山のDFが苦戦し、徐々に、鳥取も好機を作り始める。
後半も、ホームのサポーターの声援を背に、岡山は何度もセットプレーでチャンスを作るが、クロスの精度を欠いてネットを揺らすことは出来ない。
試合はそのまま0対0で終了かと思われたが、後半44分にCKのチャンスを得た鳥取が劇的なゴールを挙げる。混戦からゴールに押し込んだのは途中出場のFW小澤。1対0でアウェーの鳥取が勝利した。
■ アウェーで勝利鳥取は、最後のチャンスをゴールに結びつけて、1対0で岡山を撃破。アウェーの地に駆けつけたサポーターに、嬉しい勝利をプレゼントした。
ガーナーレ鳥取は、2001年からJFLに参入しているが、16位、13位、14位、10位、12位、11位、14位と、なかなか結果が出ていない。さらに、今シーズンは、JFLに参入した近県のファジアーノ岡山が快進撃を見せてJ2入りも視野に入り始めている状況。先輩JFLクラブとして複雑な心情にならざる得なかったが、見事に意地を見せた。
攻撃力という部分では、岡山に見劣りする鳥取だったが、中盤の守備力では上回った。派手さは無いが粘り強い守備は、確実に、岡山のアタッカー陣にプレッシャーをかけた。
#11 ガイナーレのイレブン■ リズムを変えたMFハメド鳥取は後半からFW秋田英義に代えて、MFハメドを投入。前半は185cmの長身FW戸田賢良にロングボールを当ててこぼれ球を狙う攻撃パターンで、なかなか岡山のディフェンスを破ることは出来なかったが、MFハメドが入って、彼が完全にムードを変えた。
168cmと体格には恵まれていないが、スピードとテクニックがあって、1人で敵陣に侵入することが出来る。フィニッシュの意識が低いのか、最終局面でシュートでなく、パスを選択してしまう判断のミスが何度かあったが、それでも岡山のディフェンスに脅威を与え続けた。
■ 見事なハーモニー敗れはしたものの、ファジアーノ岡山は、JFLで上位に食い込むだけあって、しっかりとしたサッカーが出来ていた。11人全員の意識が統一されていて、守備でもサボる選手は見当たらず、監督の意図したサッカーがピッチ上でも表現されているであった。
そんな組織的なサッカーの上に、FW小林のポストワーク、MF妹尾のドリブル突破、FW喜山のサッカーセンスがうまくミックスされていて、見ていてストレスの少ないサッカーを展開した。
難点は、クロスボールがなかなか中央に合わず、シュートまでつなげるシーンが少なかったことであるが、鳥取の最終ラインに入った前鳥栖のDF加藤秀典が良く頑張った結果ともいえる。ノーゴールに終わった理由は、不運で片づけられるかもしれない。
#12 ファジアーノイレブン■ 飛び抜けたセンスを感じさせる喜山中でも、もっとも印象的だったのは、FW喜山康平。2007年途中、東京ヴェルディからレンタルで獲得した20歳のフォワードである。
各年代で日本代表歴のあるFW喜山は179cmのレフティ。JFLのガイドブックを見ると、2007年の中国リーグでは、14試合で24得点16アシストという結果で、得点王とアシスト王をダブル受賞している。
いずれもリーグ新記録で、尋常でない成績を残している。
ただ、この試合のプレーを見る限り、その成績も納得である。
前半15分過ぎに、サイドからの難しいクロスをトラップしてそのままクロスバー直撃の強烈なシュートを放ったが、この一連のプレーは、スタジアム中の全ての人がどよめいた超スーパープレーであった。このプレーを見れただけでも、この試合に足を運んだ価値があったとさえいえる。
正確な技術、アイディアのパス、左足の重く正確なシュートを見ると、かつてのレフティーモンスター小倉隆史を連想せずにはいられなかった。運動量や守備力といった面でも大きな問題は無く、いずれ東京ヴェルディに復帰するはずだが、J1でも十分な戦力となるだろう。
#13 喜山康平20歳■ 夢がかなう日この試合の内容を見る限り、今後、ファジアーノ岡山が大きく失速する可能性は低いだろう。ただ、カターレ富山や横河武蔵野FCといったチームがすぐ下の順位に迫っており、厳しい戦いは最終節まで続くだろう。
17ゴールのFW小林と12ゴールのFW喜山の2トップの能力に不安は無いだけに、この2トップにどの程度、いいボールを供給できるかがポイントになるだろう。ファジアーノと岡山の夢がかなう日は、近いのかもしれない。
#14 スタジアムからの花火■ まとめ前述のように、J2に参入するためには、「準加盟に承認されること」、「4位以内に入ること」の2つが絶対条件だが、それに加えて、ホームゲームの平均観客動員が3000人以上というのも、チェックされる。岡山の今シーズンは3200人弱。この基準もおそらく満たすことだろう。
初めてのJFL観戦ということで、スタジアム内の盛り上がりはどうなのか?、運営はどうなのか?、エンターテイメント的にどうなのか?、と少し不安もあったが、試合は見どころ十分で、非常に面白くて、新鮮な体験となった。
チケット代は¥1000円。十分にお釣りの来るものとなった。
#15 試合後のスタジアム① #16 試合後のスタジアム②
Q1. 気になる下部リーグのチームはどこですか? →
New!!! ・グルージャ盛岡
・栃木SC
・Honda FC
・AC長野パルセイロ
・カターレ富山
・ツエーゲン金沢
・三重ランポーレFC
・SAGAWA SHIGA FC
・FCMiOびわこkusatsu
・パンディオンセ加古川
・カマタマーレ讃岐
・ガイナーレ鳥取
・ファジアーノ岡山
・デッツォーラ島根
・レノファ山口
・ニューウェーブ北九州
・V・ファーレン長崎
・ヴォルカ鹿児島
・FC琉球
・上記以外のクラブ
投票する 途中経過を見る
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サッカー好きのGENと言います。
今年はJFLが熱いと言う事で興味があり拝見させて頂きました。
その中でも日本で一番人口が少ない鳥取県からJを目指しているガイナーレ鳥取に注目しています。
多くの投票で、次回ガイナーレ鳥取側からの視点で見たコラムを期待してます。
ヴェルディサポーターのカーツと申します
岡山のレポート楽しく読ませていただきました
喜山のことは常に気になってましたが情報が少ないうえに東京からは遠すぎるため見にも行けないので大変参考になりました
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